コツ、コツと歩く1人の黒髪の美少女、なぜか来ている服は制服ではなく、烏天狗の様な恰好、修験者の恰好に背中には真っ黒な烏の様な羽が生えていた。そして右手にはマイクを持ち、左手には団扇の様な扇を持っている。
美少女はピタリと真ん中で立ち止まり、右方向、いや観客がいる方を振り向きながら真剣な顔つきでゆっくりとマイクを口元へ近づける。
『第34回、穂群原学園 学園祭。メインイベントを開催いたします!!』
その言葉に同調するように美少女の前にいる観客は大声を出す、それは一体何を現すのだろうか、男どもは歓喜の声はどこか、と言うよりかなりうるさい。
『さぁ! 今回のメインイベント『新聞部』主催で行われる『ミッション:鳥天狗を捕まえよ』です!』
美少女はニコニコとどこか「おぉ怖い怖い」と言うようなニタニタとした笑みを浮かべながらルール説明をしていく。後ろにコロコロと同じ服装をした新聞部の2人の部員(1人は幽霊部員)がプロジェクターを持ってきて、1枚1枚を舞台の壁に当てながら観客に見える様に見せていく。
『基本的なルールは至ってシンプル! 『烏天狗』となる我ら新聞部を捕まえる事です! フィールドはこの穂群原学園内! た だ し ! 校舎内はダメです! 入ってショートカット、待ち伏せする参加者はその場で失格! 1ラウンド1時間のゲームとなります! しかーし! それだけでは簡単すぎて物足りない! だからと言って難しすぎても面白くない! ならばどうするか! 私たちは(主に私)は考えました。その結果!』
マイクから口を離し、司会の美少女はホワイトボードを持ってきた部員たちを見る。その笑みはまさに「越後屋、お主も悪よのぉ」「いえいえ、お代官様には敵いません」的な悪の笑み。
ちなみに見られた部員たちは寒気を覚えさせるその笑みに嫌な予感がしてならなかった。彼女たちはこの日までメインイベントの主催なのにこの美少女新聞部部長、藤田文からなんにも説明が無かったのだ。
『 捕 ま え た 鳥 天 狗 は お 好 き な よ う に (R18未満のお手付き)』
その瞬間、誰もが言葉を失う。いや、誰もが聞き間違えだろう、そうに違いないとしか考えられなかった。特に男子生徒諸君。
しかし後ろにいた部員たちは顔を真っ赤にして部長へ詰め寄ろうとする。その様子は観客も見て取れる。いや、むしろ前を向いている美少女新聞部部長よりも早く解る。
だが、美少女新聞部部長である藤田文は詰め寄ってくる部員の行動すら予想していたかのように自然な動作で自身のポケットから2枚の何かを取り出し、2人に見せる。
ハガキサイズからおそらく写真だろうと勝手に推測する。観客からは見えないが部員の顔が赤から一気に青くなり数度、藤田文を見ると、藤田文は2度ほどコクリと頷く。
すごすごと後ろに下がっていく様子から取られてしまったのだろう。
弱みを取られてはいけない相手に。写真付きで。 藤田文とはそういう人間だ。
藤田文はくるりと観客の方へ再び向いた。
『さて! 我ら烏天狗を捕まえることが皆さんの勝利条件です! ですが、穂群原速さランキング一位である私を捕まえる無理だろう! そう思われる方! 今、私たちが着ている恰好をよく見てください!』
そういわれて観客は藤田文の恰好をみる。
修験者の様な恰好に下はミニスカートをはいており、足には……何も履いていない。
観客はここであれ? っと不思議がった。後ろにいる部員はちゃんと靴を履いているのに司会をしている藤田文は何も履いてないのであろうと。
『ふふふふふ、皆さん。今回私たちは烏天狗です。 よって!!』
今度は後ろの部員がある2つで1つのモノを持ってきた。
高下駄だ。しかも1本足で通常の高下駄より3倍ほど高いという一種の竹馬じゃね? 的なモノだった。
藤田文はゆっくりと高下駄を付けて立ち上がる。
『ふっふふふ、お分かりいただけたでしょうか?』
おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!
歓声が学園中に、いや街全体に届くが如く。野太い男たちによる歓声の声が鳴り響く。
観客にいる男たちは解ったのだ。例えこの日の為に練習を積んだとしても高下駄で走ろうとなれば難しいという事に、そして頑張ればあの『ミニスカート』の中を見ることが出来るという事を!!
戦争だ。一心不乱の大戦争だ。
すでに男たちの眼は獣の如くバーサークしており、司会の説明を心に刻み付ける様に聞いている。
『では女性の方々はどうするか。 女性の方に関しては希望者に対して私たちと同じ『鳥天狗』をすることが出来ます。これはあくまで『希望』ですので無理矢理はダメですよ?
さて、とここでスペシャルゲストを紹介しましょう』
藤田文が観客にもわかる様なまっくろくろすけな笑みを浮かべながら舞台袖を見つめて数分、渋々来る者、顔を真っ赤にする者、顔を赤くする者などなどがやってきた。
この穂群原学園の学生生徒はやってきたスペシャルゲストの姿に驚く。いや、分かっていた人もいるかもしれない。スペシャルゲスト達は藤田文と同じ格好をしているのだから。
『皆さんも知っているかもしれませんが私の右隣順からご紹介しましょう!
パーフェクト・オブ・パーフェクト! 遠坂凛さん!
文武両道! 我らが姉御! 美綴綾子さん!
切り捨て御免! IS日本代表生! 織斑千冬さん!
陸上部部長にして自称『穂群の黒豹』! 蒔寺楓さん!
同じく陸上部未だ高跳びトップ1! 氷室鐘さん!』
藤田文による簡単の紹介される当人たち、いろんな意味で顔を赤くする者が多いが無表情な方もいる。
外部から来た観客は美少女揃いで喜び、生徒たちは「なぜ!?」と思うところもあるが、参加しようという意欲を増している。
さて目の保養とされているスペシャルゲスト達の皆さんは顔を未だに顔を隠しながらも考えている事は完全に一致している。シンクロしていると思っていいほどだ。
(アレさえ撮られて無ければ!!)
スペシャルゲスト、いや藤田文に弱みを握られた哀れな生贄達。
観客と生贄の表情にご満悦な藤田文はニコニコしながら再び声を出す。
『さて、皆さん! いきなりゲームを開始してもいいですが、念には念を、まずは模擬戦を見てもらい改めてルールを確認してもらいたいと思います! カモン!』
パチンと指ぱっちんをすると、後ろの方で爆発音が鳴り響く。全員がどの音の方を向くとそこには3人の男たちが腕を組み、足を少し広げた状態で立っていた。
しかし、その姿は異様である。
3人とも『罪』と書かれた覆面を被り、それぞれA、B、Cと書かれた正体不明の男の顔つき! 次に褌を付けており、男の象徴の場所には大きな葉っぱが付けられた男の美学! 紳士的であるジェントルメーンとして赤、黒、青のネクタイをそれぞれ付けていた。
しかし、覆面、褌、ネクタイ、靴以外は何も着ておらず、鍛えているその体つきは割れており女子生徒たちはキャーという黄色い声を張り上げる。
ふっ見るがいい。これが真の男である戦闘服だ。
『皆さん! あれが今回イベント用衣装! 『罪袋』です! 参加者はあの恰好をして1ラウンド中、我ら鳥天狗を捕まえてください! 今回は皆さんに見せるという意味からあらかじめ罪袋たちが作り上げた円状のフィールドでゲームしようと思います。』
そういわれて、フィールドの方をよく見ると小さいカラーコーンが円状に並んでおり、藤田文の説明からあの中でゲームをするのだろうと解る。
『とまぁ、これでルール説明は終了として、まずは罪袋さん達に意気込みを聞いてみましょう! あ、本人特定防止の為罪袋さん達にはヴォイスチェンジャーをお渡ししていますので探さないでくださいね! では紅葉行きなさい!』
藤田文に言われて後ろでプロジェクターを操作していた1人の鳥天狗姿の女子生徒、立川紅葉はため息を吐いてから予備マイクを持って罪袋たちの方へ走っていく。
その姿、いや後ろ姿には不憫としか言えない。
『では、意気込みをどうぞ』
『ふん、まぁこの僕が参加する以上、勝利は確実だね。さっさと終わらせてようか』
青色のネクタイをしたCの罪袋がそう答えて隣にマイクを渡す。隣にいた黒色のネクタイをしたBの罪袋はため息を吐き、気だるげに応える。
『屈辱だ。この様な事をせねばならんと思うと己が情けなくなる。だが、これも精神鍛錬と思いやりとのみ』
どこか固い口調で嫌々ながらも応えてマイクを隣にいる赤いネクタイをしたAの罪袋に渡す。
『意気込みはともかく、藤田! 少し聞きたい事がある!』
『あや? なんでしょうか!? 罪袋Aさん!』
『捕まえられたら、「アレ」は本当にネガごと渡してくれるんだろうな?』
ああ、なるほど。この罪袋達は弱みを握られていたのか。っと観客、新聞部部員、スタッフ、スペシャルゲスト達は憐みの瞳で見つめる。
特にスペシャルゲスト達は自分と同じ境遇だと思い。仲間だと判断した。AとBのみ。Cはなんかえらそーだから抜き。
『フフフフ、無論ですよ? この『模擬戦』で捕まえられればアナタ達罪袋さんの「アレ」はネガごとお渡しいたします』
『わかった。それだけ聞ければ大丈夫だ。早くやろう』
『おやおや、では早速やっていきましょう!』
ネタとして作りました。
次は模擬戦ですねぇ、ねったりと作りますよー。
一体この罪袋達は何者なんだ(笑)
誤字脱字、ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。
またアドバイス等も募集しています!