IS×Fate(笑) 衞宮家の非日常的な生活   作:カズノリ

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ご主人! 私と共にハロウィンパーティーにゆくぞ!

「ご主人! 私と共にハロウィンパーティーにゆくぞ!」

 

 10月31日、今日は土曜日という学生にとっては嬉しい曜日だ。次の日は日曜な為、遅くまで起きていられるし、なにより学校がないと感じられる曜日でもあるのだ。そんな土曜日の休日それは突然のことであった。

 冬木市にある日本の武家屋敷である衛宮邸、現在この家には家主以外に織斑家が居候している、と言っても家主である衛宮士郎は家族と住んでいる意識であるが。

 しかしながら現在は居候中の弟、織斑一夏とサーヴァントのタマモキャットのみである、それはなぜか、家主の衛宮士郎が居候中の姉である織斑千冬、魔術の師の遠坂凛、学校の後輩である間桐桜、サーヴァントのセイバーと共に新都の方へ遊びに行っているのである。

 衛宮士郎が断言しているので間違いなく、例え4人が黒いオーラだしていたり、真っ赤なオーラだしていたり、剣気を出していたりして戦闘するかのような気迫を放っていたとしても、様々な手を使い2人きりになろうと策を練っていたとしても新都へ遊びに行ったのだ(大事なことなので2度め)

 ちなみに姉の織斑千冬は弟の一夏が一人になることに不安を覚え、悔しながらも遊びに行くのをやめようとしたが、あまり話が通じないタマモによってそれは防がれた。

 よって現在織村一夏は部屋で漫画を読んでいたのだが、突然、襖がバーン!と開けられた! そこには一夏のサーヴァントであるタマモキャットだった。手には黒い手紙を持っており、ニッと笑っていた。

 

「タマモ、ハロウィンパーティーってどうしたのさ」

「うむ! ニンジンが食べたいと思った私は電話をかけ、ハロウィンパーティーに参加することにしたのだ!」

「そっか、でもそのパーティーってボクも参加してもいいの?」

「むっふふー! 安心するがいいご主人! すでに迎えはチャーターしているぞ!」

「え!? 本当に!?」

「報酬になでなでして欲しいんだワン!」

「うん、いつもありがとうね、タマモ。ほらおいで」

 

 一夏はそういって態勢を変えてタマモキャットの頭を膝の上に乗せた。そう膝枕というやつだ。そして、ゆっくりとタマモキャットの頭を撫で始める。お日様のような香りとさらさらとした桃色の髪がどこか一夏はゆったりとした気持になっていった

 

「むっふふー! ほかのナイン共と駄狐にはマネ出来ないこの優越感! サイコーだワン! ご主人! もっと撫でて撫でて!」

「うん、いいよ」

  一夏はタマモキャットの要求に応えて30分ほど撫でていく。

 そんな時だ、どこからか音楽が鳴り始めた。

 

 ○○○○歯ごたえ欲しいし! 甘酸っ○○のもそそられる~わ!

デザートは別ピッ!

 

 そう、タマモキャットが持っているボタンが下に1つしかなく、板状で折れやすそうなケイタイだった。また一夏はこの様なケイタイはCMですらあっておらず、本当にケイタイかと疑うときもある。

 とくにメールや電話するときなど、画面をタッチするそうだが、一夏はその姿を見たことがない。

 

「むぅ~~! せっかくのご主人堪能タイムがぁ~!!

誰なのにゃ! こんなタイミングで~!! 

ハイハイ! もしもし!? 誰なのにゃ!? こんなさいっこう!のタイミングで電話をかけて来やがったのわ!!?

ん? おお! 妲己ちゃん! 元気にしてたー? おお!忘れていたのだ! 行く! 行くぞ! 行こうぞ! ゆくぞ! んではよろしくな!

というわけでハロウィンパーティーに行くぞ! ご主人!」

「うん、でもそのチャーターしたって言っていたけどまだきてないよ?」

「む、それもそうであるな、ちょっと待っているのだ!

えーっと、る、るる……、あ違うにゃん、カ行だった、あ、あったあった。

オーイッス! うん! そ! ん! 待ってるぞよ!」

 

 タマモキャットの電話をしているのか、してないかよくわからない会話が終わり、電話を切った瞬間、一夏の部屋にある障子が破けた。いや何かが飛んで来て破けたといった方がいいだろう、『それ』は一夏のベッドの中に入り込んでしまったが、スグに飛んで正体がわかった。

 まるでステッキ、棒のところはピンク、先端には○の中に☆があり、両端には天使の羽のようなモノが付いている。例えるなら魔法少女が使うような可愛らしい杖。そう、魔法の杖が体(?)をぐにぐにさせ、宙に浮かんでいるのだ。そして、タマモキャットのところへ飛び……。

 

『おひっさしぶりですねー! キャットちゃん!」

「おうさっ! 何百年ぶりかにゃー! ルビー!」

『そうですねぇ~、一万の二千年ほどでしょうか?』

「では行くぞ! ルビーよ!」

『ええ! 良くわかりませんが行きましょう! 無限の彼方へ! さぁ!いくぞ!』

 

 話がよく分からないまま進もうとしているのだ。読者の皆様は知っているだろう、ssモノでうっかりやはっちゃけ爺さんの次いで使われている便利な魔法の杖であり、最近では主人公に使われるようになった存在するだけで災害でもある『カレイド・ルビー』である。 主にエミヤやうっかり凛が被害にあっているのは言うまでもない。

 そんな魔法の杖であるカレイド・ルビーの力により、着いた先は姉である織村千冬が意外にも大っ嫌いなホラー映画で出てきそうな黒いお城であった。

さらに詳しく言うならゼルダの伝説 時○オカリナに出てくる7年後ハイラル城といえばいいだろうか、ただし現在の城下町は大変にぎわっている。

空にはコウモリが飛び交い、少し怖い音楽と陽気な音楽が流れている。

 

「うわぁ、ここがハロウィンパーティーの会場なのだ!」

『ええ! イチカ君でしたよね? 私はカレイド・ルビー、ルビーちゃんと呼んでくださいね! ではではー! ようこそ! イチカ君! カボチャと幽霊が沢山いる世界一のハロウィンパーティーへ! あちらをご覧くださーい!』

 

 そういってカレイド・ルビーは手(羽根)を門の方へ向ける。門にはたくさんの幽霊ぽいものとかかぼちゃを被ったスケルトンが並んで行列ができていた。普通では見られない幽霊やカボチャのスケルトンに一夏は大興奮になる。

 

「ねぇねぇ! あのスケルトンやお化けってどうやってるの!? CG!?」

 

 本物の魔物です、などと言えるはずがない状況を脱してくれたのは過激な衣装を身にまとった女性だった。

 オレンジ色の露出が多い衣装に一夏は驚きながらも花飾りを付けた女性を見る。

 

「あらあら、可愛らしいボウヤね。 ハロウィンパーティーに来たのかしら?」

「うん、そうなんだ。 お姉さんは?」

「うふふ、私はパーティーのお手伝いしている。アナタ名前は?」

「織斑一夏!」

「そう、私の名はマタ・ハリよ。招待状はお持ちかしら?」

「むっふふー! それならば我が持っているぞ! さぁ! 見るがいいワン!」

 

 いつの間にか一夏の隣に立ったタマモが黒いカボチャが描かれている招待状をマタ・ハリに見せた。

どこかのドラマでのシーンにそっくりだ。そう、「この紋所が目に入らぬか―!」という有名なシーンに……(ちなみに作者は2代目が好きです)

 

「招待状は本物ね、では今宵一夜限りのお祭り騒ぎ。どうか楽しんでくださいませ」

「うん!」

「おうさ!」

『ではではー! いっきますよー!』

 

 マタ・ハリとタマモキャットはお化けたちを押し退けて一夏を門まで通した。

 街はハロウィン一色だ。いたるところにカボチャやランタン、お化けになっている人たちで一杯であり、おいしそうな小さいケーキやコウモリのクッキー、キャンドルのお菓子、カボチャのランタン等といった沢山の面白そうなのがある。

 

「ご主人! お城に行くぞ!」

「そうだね! 招待状をくれた人がいるんだよね?」

「むっふふー! その通りだ! あとゲスト達もいるみたいなんだワン!

この世界には私がいるみたいだしな!」

「ん? タマモがいるって?」

『簡単なことですよー! イチカさんがいた世界とは別世界』

「ゆえにこの世界にはご主人がもう1人いても普通なのだ! 平行世界ってやつだな」

「えっと○ングダムハ○ツみたいなかんじでいいのかな?」

「そうだな。考え方としてはそれでいいぞ。今はな」

「?」

 

 たまに真面目なことをいうタマモキャットに話についていけるカレイド・ルビーに一夏は少し戸惑いながらも街を抜け、城の中へ入っていく。城の中はなんだかハロウィンの怖さがあり、わざわざ血糊(?)で置いてある拷問器が使ったばかりと表現してあった。

 

「うわぁ! これがこの世界でのハロウィンなんだね! 窓もないし、まるでみっしつ殺人事件が起こりそう! ハロウィンパーティーって初めてだけどこんな風なんだ、来年は鈴と弾達一緒にやろう! 箒があと1年引っ越ししなかったら誘えたのになぁ~」

『ではその時はこのルビーちゃんがサイコーのハロウィンパーティーにしてあげましょう!』

「うむ! キャロットケーキつくるぞ!」

 

 一夏達が城の長い廊下を歩いていると、まさに貴族的なドレスを着た女のひとがモップを持って廊下を拭いていた。しかし、その動きにヨタヨタとしており、腰が入っていないのがわかる。

 

「こんばんわー!」

「ええ、忌々しい小娘……って、誰?この子ブタは」

「ブタ? ボクは織斑一夏! お姉さんは?」

「ふん! わたくしはこの城の主であるカーミラよ。で?子ブタはなぜこの城にいるのかしら?」

「タマモに誘われたから来たんだよ! お姉さんはなんでハロウィンパーティーなのにお掃除しているの?」

「お、お姉さん!? 子ブタにしては可愛い事いうわね、」

「おお! デレてるぞ! しかしそろそろニンジン不足、ご主人ニンジンをくれ」

 

 一時間もニンジンを食べてないタマモキャットに拍手しよう。しかし彼女が暴れればただでは済まないのは間違いない。一夏もそのことに気が付いているのか辺りをキョロキョロと見渡す、しかしあるのはモップで掃除しているカーミラのみ。

 

「ねぇ、カーミラのお姉さん。ニンジンが欲しいんだけど貰えない?」

「そうだー! 寄こすのだ―!」

『そうですねぇ~私としてはニンジンよりも可愛らしい(面白味がある玩具のような)少女を要求いたします! 例えるなら魔法少女的な子を!』

「(変な杖は無視するとして)あそこを曲がってキッチンに行きなさい、そこならニンジンの100本や10000本位はあるでしょう」

「おぉぉぉ!! ではサンキュー! サンクス! ゆくぞ! ご主人! まだ見ぬ理想郷へ!」

「た、タマモ~引っ張らないでぇ~!」

 

 キッチン、曲がって真っすぐ。この言葉を聞いた瞬間、タマモキャットは一夏を引っ張りながら走っていく、彼女の突き動かすのは少し卑猥な形をしてオレンジ色している野菜、ニンジンだ。ちなみにルビーは一夏の服の中でおとなしくしている。

 時たまにルビーの手(羽根)が変なところを触り、笑いをこらえる一夏であった。

 

 キッチンにたどり着くと白地に黄色ヒヨコが数匹ついているエプロンを着ているダンディな男の人がカボチャに穴をあけて中身を取り出していた。近くにはボウルやコンロなどもあり、何やら調理しているのがわかる、

 

「こんばんわー!」

「む? まさか君のようなゲストが来るとはな。 もう少しお菓子を用意しておくべきだったか」

「タマモに誘われたんだ! ボクは織斑一夏! おじさんは?」

「余はヴラド・シェペシュだ。ボーイ」

「ニンジンだ! ニンジンを用意せよ!」

「さて、そこのサーヴァントはなぜニンジンを所望する?」

「ニンジン、キャロット。それは我が癒しにして力となるものなるのだ。わかったか! 悪魔候!」

「そのような話は初めて知ったが、うむ、世界は広いという事か。

しかし、悪いがこの城で使う食材についてはエリザベートに聞け、この部屋を出てまっすぐ行けば着くだろう」

「よし! わかった! 聞いた! 行くぞ! 出てまっすぐだぞ! ご主人!」

 

再びというかニンジンがそれほど食べたいのだろう、一夏を抱えるように持ち走る、走る、走る。すべてはニンジンのため。長い廊下を走りぬく。どんどんと魔力が高まるのもわかる。

 そして、1つの扉の前へついた。

 

「ココだな、さっさとエリザベートから許可をもらって(ニンジン)ハントするワン!」

『そうですねぇ~では行きましょう! 突撃~!』

 

 タマモキャットとカレイド・ルビーが部屋の中へ突撃するとそこには可愛い女の子がお部屋にハロウィンの飾りつけをしていた。この時、一夏は静電気が体中に走ったのがわかった。そして眼は彼女から離せない。

 タマモキャットとは違う赤み残る桃色の気品がある長い髪、好奇心旺盛そうなエメラルドの瞳。柔らかそうな桃色の唇、エルフのような耳、角のようなリボン、少し大胆な服装、リボンが付いたトカゲのような可愛い尻尾。

 そう、一夏はこの時ぼーっと彼女を見続けていた。しかし部屋に入ってきた彼らを見た彼女はその唇を開いた。

 

「アナタ、誰かしら? 私のファンとか?」

「ふえっ!? え、えっと、ボクは織斑一夏、今日はタマモに連れられてきたんだ」

「ふぅん。まぁいいわ、アナタ私の手伝いをしなさい!」

 

 そして、一夏は体の中に残るシコリに首を傾げながらも彼女、エリザベートと共に部屋の飾りつけを手伝い、タマモキャットと共にデザートを作り(タマモキャットはキャロット系専門)その間カレイド・ルビーはタマモキャットと同じ機種のケイタイでゲームをしていた。エリザベートは部屋の奥にあるステージの準備に勤しんでいた。テレビで見るマイクの調整や音量の調整、ステージの台を歩いてみたりと。

 

 ふと一夏はタマモキャットを部屋の中で探すが見つからなかった。

 

「ルビー、タマモどこに行ったか知らない?」

『タマモさんなら、他のゲストの方々をお迎えに行きましたよー!』

「そうなんだ。」

 

噂をすれば影が差す。ドアの向こう側からタマモキャットの声が聞こえ始める。

また知らない声も聞こえる。

 

「ご主人(真)! マスター(雇い主)! ゲストのやつらが来たぞ! 準備はいいか―!?」

「ちょ、ちょっと待ちなさい!

イチカ、アレとソレは大丈夫!?」

「うん、大丈夫だよ」

「あーかーと―かーげ―! 早くキャロットケーキ食わせろ!」

「誰が赤トカゲよ! 竜よ! 竜でしょ! 竜なの! 敬いなさい! だからちょっと待ちなさい!」

「エリザベート、大丈夫だよ。タマモ、開けていいよ」

 

 一夏がそういうと聞きなれない2つの声が聞こえた。突撃とかなんやらと。瞬間――ドアがバーン!と開けられ入ってきたのは複数の男女。 緑の着物を着ている角の生えた女性、大きな盾を持った露出が多い女性、なぜかいる遠坂凛のサーヴァント、アーチャー、上半身着物?下半身はパンツのみの侍、一度一夏達を襲ってきたランサー、どこから見ても幼くなっているセイバー。 そして赤みのかかったツインテールの女性が部屋に入ってきた

 アーチャー、セイバー、ランサーを見た一夏は驚きながら彼らを見ていた。特にランサーとは敵同士のはずなのに、チームの一員としているのだから。

 

「ふっふふふ、よく来たわね! 子ジカども! ってアンタ達も来たの?」

「やはり君だったか、エリザベート、全く面倒なことしてくれたな」

「全くです、さぁその後ろにある食事を渡しなさい!」

「おいおい、ここまで来たならもう1体倒すってーのはどうだ?」

「こ、こら! 今は敵方の話中なんだからさえぎったらダメだよ!」

 

 上から順にアーチャー、セイバー、ランサーが勝手に話し始めたのをツインテールの女性が止める、それを見たエリザベートはゴホンと1度咳払いをして何事も無かったかのように話し始めた。

 

「ごほん、あなたたちも来たの?」

「ええ。同じセリフを2度吐くとは相変わらず芸のない方ですわね」

「それにしても、ココ先輩の個室じゃないですか」

「あ! 本当だ! ってかカボチャだらけだ!?」

「ふふふ! 驚いたようね! 子ジカ! そう! あなたたちが戦っている間にチョイチョイ聖杯の力で改装させてもらったわ!」

「え? あの飾りつけって聖杯だったの?」

 

 一緒に飾りつけをしていた一夏が呟く、その声に反応してタマモキャット以外の男女がようやく一夏の存在に気が付いた。

 と同時にもう1人研究服を着たオレンジ色の髪をもった眠そうな男性が入り込んできた。

 

「現場は会議室で起きているんじゃない! 現場で起きているんだ―! ってあれ?今どういう状況だい?」

「あ、Dr.ロマン!」

「うむ、ロマン殿、少し落ち着かれよ」

「いやいや! 落ち着いている場合じゃないから! どうなってるんだい!?」

 

 うむ、物凄く人数が増えてきたな。 新しく入ってきた男性に侍っ娘が説明をしている間、大人しくしていたタマモキャットはいつの間にかキャロットケーキホール3個攻略に勤しんでいる。一夏はエリザベートの隣に立って見知らぬ人物たちに驚きながら見ている。

 ボッチになったエリザベートから一言

 

「ね、ねぇ? 驚かないの?」

「はい?」

「何がでしょう? 旦那様の部屋に繋がっていた事ならかなり驚きましたが……」

「むー! ちーがーうー! 名前のない謎の招待状を送ったのはこのアタシ!

ハロウィン特別使用の鮮血魔嬢のキャスターにしてアイドル! エリザベートバートリー!

ま、まぁアイドルとしてはまだまだ新人だしぃ? 将来有望だしぃ? 歌にドラマに絶好調(になる予定)だしぃ? そう、ブレイク寸前と言っても差し支えのないビッグアイドルの登場に驚天動地してもいいくらいなのよ?」

 

 エリザベートはそうニコニコと笑みを浮かべながら入ってきた人物たちを見つめる。しかし帰ってきたのは驚きの声! ではなく、共通してため息だった。侍っ娘と盾を持った女性が簡単にぱちぱちーと拍手をし、犬? のような動物は言葉がわかるのか相槌を打っていた。

 一夏はエリザベートがアイドルということに初めて知ったらしく、1人で「おぉぉ」と驚いていた。

 

「ちょっと、なによその気の抜けた返答は! もっとほら! イチカみたいに驚くところじゃないの!?」

「いや、だって予想通りすぎて驚く要素がかけらもなくて……」

「ガーン! ノーサプライズ!? ここまで正体をひた隠していたのに!? シルエットだったでしょ!? 声も変えていたのよ! アタシ!」

「無様ですわね、監獄城チェイテを舞台にした時点で13割バレていますわ」

「あ」

「やっぱり気が付いてなかったんですね」

「ねぇねぇ、お姉さんチェイテってなぁに?」

 

 エリザベートが顔を赤くし俯いている間に一夏は緑の着物を着た女性のところまで歩いて着物の裾を少し引っ張りながら聞いた。

 ようやく一夏のことに気が付いた清姫は少し驚きながら目を同じ位置にして頭を撫でながら答えた。

 

「ふふふ、監獄城チェイテはこのおバカさんがもつこのお城のことですわ。 アナタも自分の部屋でサプライズをしようとしてシルエットと声を変えても誰が誰なのかわかってしまうでしょ?」

「あー、なるほどー」

「アナタお名前は? わたくしは清姫と申します」

「ボクは織斑一夏! 今日はタマモに連れられてハロウィンパーティーに来たんだ!」

「あら? そうでしたの。あそこにいるタマモキャットはあなたの何なんですの?」

「えーっと、サーヴァントとマスターなんだって! ほら見てみて! ここにれーじゅがあるんだよ!」

 

 そういって一夏は自分の首筋を見せた。 そこには複雑な模様……というよりタマモキャットの似顔絵が描かれていた。ちなみに1度も使われて無いようだ。それを見た清姫は苦笑い。

 

「おぬしは何故ここにいるのですか?」

「ん? お姉さんだれ?」

「む、失礼した。私は牛若丸だ。よろしくな」

「うん! ボクは織斑一夏! よろしくね、牛若丸のお姉さん!」

 

 ぽつんと1人になった一夏に話をかけてきたのは上半身着物、下半身パンツ?の侍っ娘である牛若丸であった。しかし牛若丸も1人だ。一夏があたりを見渡すとセイバーは周りのお菓子をタマモキャットとランサー達と食べており、アーチャーは部屋の隅にあったコンロを使いパンケーキを焼き始めている。

 不思議な光景である。清姫と盾を持った女性、ツインテールの女性はエリザベートと話し込んでいる。

 

「みんなあんなに仲がいいんだね」

「そうですね、皆違う時代、国々から来ているのにアンナに仲がいいなんて、うらやましいです」

「え? 牛若丸のお姉さんは?」

「え、ああ違いますよ。私も彼らとは仲がいいでしょう。しかし、私は兄上ともっと……」

 

 そうつぶやき暗くなる牛若丸に一夏はおろおろして始めた。そして意を決し牛若丸の頭を撫で始めた。背伸びして

 その様子に牛若丸は少し瞳から光るものを流し、スグに拭く。

 

「ありがとうございます、一夏君。わたしは

「エリザベート・バートリーが子ジカの部屋で歌う、ワンサイトコンサート!

 

 牛若丸の声を遮るほどのボリュームでエリザベートの声が部屋の中に響き渡る。 お菓子を食べていたタマモキャットもセイバーもランサーもそして一夏と牛若丸もエリザベートへ注目する。

 

「今宵この日のためだけに! アタシが! 歌うの! 声高らかに!!」

「おぉぉ」

 

 一夏驚いて声に出るが、他はなぜか無言。

 氷づいたと言っても過言でもない部屋でテクテクとタマモキャットが一夏の隣まで来て一言言った。

 

「皆の衆、ぐっとこらえず、ドッカーンと吐き出したまえ」

「あ、あのエリザベートさん? 少しいいですか?」

「ん? 何よ?」

「それでしたらわざわざこんな事しなくても、普通にカルデアに来て頂ければよかったと思うのですが……」

「え、そんなのダメに決まってるじゃない。良い? アイドルのライブっていうのは一世一代のお祭りよ! 面白くなければダメなの! 夏の暑さにも負けず、冬の寒さにも負けずチケットのために並び、グッズを買うためだけにやっぱり並んでいるのよ?

隣の人と方がぶつかり合うほどの満員のコンサート会場でぎゅうぎゅう詰めになりながらもそれでも歌姫の奏でるセレナーデに絶頂し狂乱し、夢のような無我夢中になるのがファンの本懐なのよ!

 

つまらないコンサートなんか誰も来やしないわ、アイドルたるもの、ファンに驚きと感動を与え続けなければならないのよ!」

 

 エリザベートは握りこぶしを作り、力説する。 素直に聞けば「そうかも」と思ってしまうアナタは魔力耐性Aランクですのでご注意を。 いやいやと反論できる方は魔力耐性Sランクでしょう。 

 周りにいた一夏を除いた男性陣はなるほどと頷き、女性陣はため息を吐く。

 

「うん、わかるわかる。まさにその通りだ。エリザベート嬢は実に正しいと言える。そもそもアイドルという職業はですね、ボク達ファンに夢と希望を与えると言っても過言ではない。ただただああ、あの子可愛いなとかのやつはファンCランクのやつらだ。

Bランク以上のボク達が求めているのは歌って踊って驚き、笑い、感動を与えてくれるアイドルであって、」

「ドクター、ノートパソコン没収されたくなければ黙っていてください」

「はい、ごめんなさい黙ります。 エリザ嬢! 続きをどうぞ!」

「え、あいいの? それじゃあ――こほん。

とにかくアイドルはファンを焦らすのが大切なのよ、いきなり子ジカの部屋で歌ってもそれはただの目玉焼き過ぎない、けど焦らすことでそれは素敵な料理へと変わるの!

そんな最ッッッッ高のご馳走を取り上げるなんてアタシには出来ない!」

 

 エリザベートは嬉しそうに、そして希望を胸に抱え語る。一夏はそんな姿に「可愛いな」と思い始めたのは時間の問題であった。 しかしそれは一夏のみである、タマモキャットを除いてツインテールの女性と共に入ってきたサーヴァントたちは正直に言うとボロボロの状態なのだ。

 そうなった目的の元凶がご馳走だなんて何を言ってい(セイバーを除いて)

 

「で、ではチェイテの招待状もハロウィンパーティーの為ではなく、きのこ先輩にエリザベートさんの歌を聴かせるためだったのですか?」

「ええ! アタシの歌を心地よくリラックスした状態で聞いてもらうための過酷な試練だったの! 素敵でしょ!?」

「ふふふふふふ! 私の中の切れてはいけない何かが切れてしまいましたわ。 まとめて燃やし尽くして差し上げましょう!! 塵も残さず! 灰すら残しませんわ!」

「え? え? え? なんでアタシ、怒られているの? ってステージに火を吐かないで―!

 

 清姫のなってはいけない表情からの口から図れる炎とは優しい表現、火炎。 そう例えるなら火遁豪火球の術といったところか。さらに言うなら火影級の威力とだけ言っておこう。 むろん、感知器が作動しスプリンクラーが起動する。

 それに察知したのは他でもない。聖杯戦争で最優のサーヴァントであるセイバーであった。彼女はすぐさま料理をスプリンクラーが当たらないところへ避難させることができた。その時間は3秒もかからないだろう。

 

「お? やる気(バトル)か? それじゃあしょうがない。

リバースカード発動! 「者どもであえ」 このカードの効果により! すべてのパンプキンヘッド、幽霊共、ほかもろもろ(デーモン種、キメラ種)を特殊召喚するぞ!

これで会場は満員御礼札止め! さぁ!ラストライブのはっじまりだー!」

「おぉぉぉ! すごいよ! タマモ!」

「いいわ! 素敵じゃない! 予想していたものとはだいぶ違うけどこれはこれで盛り上がってるじゃない! ノッテきたわ! 今ならアタシ、この歌で世界を救うこともできる!! 

さぁ! みんな行くわよー! キャスター、エリザベート・バートリー、ラストステージ! 本気で歌うわよ~~~!!!!」

 

 曲名 ドラクル・ミラクル

 作詞作曲 エリザベート・バートリー

 

 エリザベートが歌い始めると彼女は赤いエネルギーを身にまとう。 それは遮断。どんな攻撃も炎もこの赤いエネルギーの前では無力、例えかの英雄王全力を持った一撃でさえも軽々と耐え抜くだろう。

 清姫の炎による一撃も、セイバーの剣撃も、ランサーのマシンガンのような突きによる攻撃も、アーチャーの複数の宝具も、牛若丸の素早い一撃も彼女の前では無意味であった。

 

「マシュ!」

「ハイ! きのこ先輩!」

 

 ツインテールの女性、「きのこ」が盾を持った女性、「マシュ」へ指示を出し、空からの一撃を加えた。しかしそれはエリザベートのマイクスタンドによって跳ね返される

 

「エ・リ・ザ! エ・リ・ザ! うぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

 

 観客席にはきのことDr.ロマンがいつの間にかあるペンライトを振っている。サーヴァントたちの攻撃も空しく、エリザベートの35曲を歌いきるまで続いた。

 

「ああ……! 歌い切ったわ……! アタシ……だ・い・ま・ん・ぞ・く……!!」

「はぁ、はぁ……聖杯、確認、回収します!!」

「歌い切ったわー! やっぱり歌は至高の芸術! アイドルは星を作り出した幻想ね!」

「お姐さん、お姉さん大丈夫?」

「……」

 

 ダメージはないのに疲れているサーヴァントたちとは別に元気満々のエリザベート、そして初めてコンサートに参加した一夏は目がキラキラだ。(歌はやばい表現盛り沢山だが)

 Dr.ロマンは習慣なのか自分の財布を開いてお札を数えている。

 

「マスターが期待していたものとは違いましたが、ともあれ聖杯の欠片を拐取しました。コレをカルデアに持ち帰れば貴重な魔力資源として再利用できるでしょう。

ですのであとは帰還するだけです、あ、でもココは先輩の部屋ですからすでに帰還しているのでしょうか?」

「ねぇ、ねぇタマモ、このお姉さん大丈夫?」

「うむ、「みねうち」でHPを1にされた状態で「悪あがき」寸前の状態だな。

おーい、皆の衆! 先ほどからマスターがちょいヤバ系の痙攣の仕方をしているのだが大丈夫か?」

 

 きなこの瞳から光が消え、肩は上下に、顔は横に、体は前後に震えていた。この様な症状については作者自身知らないし、あったらすごいと思う。 恐ろしい震え方に一部を除いて一同唖然からの驚愕、そして恐怖へ変わるのもすぐのことである。

 このことは歴史に「さいきょうの歌声」として残されることになるとは思いもしない。またこの事をきっかけに一夏は『歌』というものに興味を持つのは自然的なことであろう、例え友達に「一番のお気に入り以外を歌え」と言われるほど上手になりプロ級になったとしても……

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「うむ、今帰ったぞ!」

 

 タマモキャットと一夏が衛宮邸に帰ってくるとそこには織村千冬が扉の前で正座しており、扉を開けてきたタマモキャットの頭を片手で握りしめ、アイアン・クローによる連行で外へ連れられ、宙へ投げられそこからの筋肉バスターが爆発する。そして逃がさぬようにコブラツイストで体を痛めつけ、ジャーマンスープレックスによる攻撃で怯ませ、最後はジャンピングドロップによる一撃がタマモキャットに与えられた。

 

 ふぅと爽やかな汗をぬぐいとった千冬は一連の惨劇をみて震える一夏の元へ歩き、右頬を打つ。 パン!という音が響き渡った。

 

「私がどれだけ心配したと思っているんだ! 電話もなく、置手紙もない! こちらから電話をかけても繋がらない! 私が今日一緒にいなかったことだけは謝ろう、だがお願いだから心配させないでくれ……!」

 

 一夏を力強く(一夏が耐えられる程度)抱きしめた。 一夏は普段見ることがない姉の姿に涙をながし「ごめんなさい」と何度も謝った。

 そんな姉弟による感動の姿に衛宮邸の人々は涙をそっと拭き、タマモキャットは犬塚家のようになっていることをアウト・オブ・眼中とした。

 

 その後、一夏による1日の長い冒険話は衛宮邸を盛り上げ、記念に取った写真にセイバーは顔を赤くし、アーチャーはアチャーとしていた。




今回はいつもより長く書いてしまいました。

一夏君とタマモキャットを中心とした冒険話でした。
少し無理があるかな?と自分でも思います。
これで特にタマモキャットのしゃべり方に似てるかな?と思います。

またこの作品は少しづつですが前編、中編、後編へと変えます。

誤字脱字、ご感想、ご意見もろもろをお待ちしております。




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