IS×Fate(笑) 衞宮家の非日常的な生活   作:カズノリ

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始まりの夜

 

 

「やめるんだ! セイバー!」

 

衛宮士郎の声は停止するセイバーと赤い外套を纏った男、そして衛宮士郎には見えなかったが、赤い外套の男の後ろにいる1人の少女は良く聞こえた。

 

「なぜです。マスター。彼はサーヴァントとそのマスター! わたしたちの敵です!」

「俺をマスターだっていうならまず状況をちゃんと説明してくれ!」

「それは後程改めて説明します! ですが今は目の前の敵を排除が最優先です。停止を解いてください!」

 

 セイバーは震える体でその両手で持ちながら見えない何かを構えながら先ほどまで戦っていた赤い外套の男から視線を外さず衛宮士郎に停止解除を求めた。

 セイバーも召喚されてから近くにいたランサーが居たために『聖杯戦争』の事を何も知らないマスターに説明する暇が無かったのだ。しかもランサーが去った後に今度は別のサーヴァント―――目の前にいる赤い外套の男とそのマスターが居たのだ。

 説明するよりもまずは敵の排除に動くのはマスターを守るサーヴァントをしては当たり前の行動であろう。寧ろ説明しようとするサーヴァントだったことに衛宮士郎は感謝するべきだろう。自分勝手なサーヴァントならば衛宮士郎をマスターとして認めず、いずれは殺されるだろう。

 

「俺と同じマスターがいるってなら、ます俺が話をするから。戦闘は後にしてくれ」

「……正気ですか? 何も知らないマスターが交渉するなど、歴戦の軍師と無学な民が戦局を話し合うようなモノ。 アナタには無理な話です」

 

 はっきりとした声でセイバーは言う。歴戦の軍師と無学な民、それはまさしくセイバーと衛宮士郎を指している。歴史の中で無学な民が戦略を練るなどと言うのは不可能と言っても良い。なぜならば『知らない』のだから。

 知っている事と言えば自分たちが日常の生活に役立つ事、農家ならばその売値と野菜の価値、鍛冶師ならば打つ金属の性質と火加減、料理人ならばレシピと料理の事柄。

 さらに簡単に言えば素人がプロの仕事に口出しをするようなモノ、何も知らない素人にプロは嗤う、怒るかはプロの性格次第と言える。

 だが、プロとしては「知らない癖に仕事に口出すな」と言うだろう。今の状況も同じ事だとセイバーの言葉には詰まっている。

 

 衛宮士郎はセイバーの言葉に厳しさと優しさに感謝した。

 

「ありがとう、セイバー。だけど俺をマスターだって言うなら、今は俺に付き合ってくれ」

 

 はっきりとした言葉、甘さがある覚悟、そして衛宮士郎の真っすぐとした性格。その全てがセイバーは感じ取った。

 記憶に残るマスターと違いを比べれば考え方、覚悟、魔術師としての実力、全てが明らかに劣るだろう。だが、真っすぐとした性格だけは好めるとセイバーは少しだけ思った。

 

「……いいでしょう。今は貴方がマスター、私はそのサーヴァントです。その指示に従いましょう」

「すまん、セイバー」

「ですが、この停止だけは解除してください」

 

 セイバーとしてはマスターである衛宮士郎との会話中という隙だらけの状況で目の前にいるマスターである少女が赤い外套の男のサーヴァントに指示をしなかった事も踏まえながら衛宮士郎の指示に従うことにした。

 

「あー、もういいかしら? 衛宮君?」

 

 敗北寸前で敵のマスターの衛宮士郎に助けられ、戦闘中にも拘らずサーヴァントと話し合うという隙だらけの状況に白けてしまった。マスター、サーヴァントの両方とも。

 

「お前は、遠坂!? 何で遠坂がこんなところに?」

「はぁ、もうなんていうか。アーチャー、今日のところはセイバーと衛宮君との戦闘は禁止。いいわね?」

 

 衛宮士郎が通う穂群原学園の同期であり文武両道、容姿端麗でありマドンナ的存在だ。衛宮士郎としても実は憧れている所があるのだが、某友人が遠坂凛の事が嫌いな為、口に出したことはない。

 疲れ気味に赤い外套の男、アーチャーに指示を出すと、アーチャーはヤレヤレといったポーズをして消えた。

 

「衛宮君が何も知らない事が解ったわ。セイバー? 今日のところは一時休戦しない? 私としてはルールを知らない素人を甚振る趣味は持ってないしね」

「……いいでしょう。今日のところは信じましょう。アナタは優秀なマスターの様だ」

「あら、最優のサーヴァントにそう言われるのは嬉しいわね。さて、衛宮君? 家に上がらせてもらうわよ」

「え? あ、あぁ」

 

 衛宮士郎とセイバーの間を通り過ぎて遠坂凛は衛宮士郎の武家屋敷へ入っていった。衛宮士郎とセイバーは少し茫然としてから慌てて家の中へ入っていった。セイバーとしてはいくら休戦したとはいえ拠点となる場所を勝手にされては困る。衛宮士郎としては客に茶を出さなきゃと思いながら弟分がまだちゃんと寝ているかを見るため。

 

 この夜から始まる聖杯戦争――7人のマスターと7体のサーヴァントの生き残りをかけた戦いが始まろうとしていた。

 果たして、生き延びるのは「誰」か? 誰が死にぬのかはまだ誰も知らない事。

 手に入れる『聖杯』はただ1つ。また手に入れるマスターとサーヴァントのコンビもまた1つ。

 

 汝、聖杯を欲するのならば――『最強』を持って証明せよ。

 




お久しぶりです。
とりあえず、気が向かない限りはFateの方を書いて行こうと思います。
次はバーサーカーとイリヤまでは書きたいですね。

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