IS×Fate(笑) 衞宮家の非日常的な生活   作:カズノリ

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こうして私は衛宮邸で居候になった11

 

藤村組の長に衛宮を任され、援助をしてもらうことになったのだが、私、織斑千冬と弟の織斑一夏は衛宮の家に居候することになった。理由は簡単で藤村組の長に言われたからである。

 援助してもらっている身に断る術なんぞない。了承すると藤村組一同が私たちの家に詰め寄った。こちらも理由は簡単、引越し屋の変わりだ。

 申し訳が無いという気持ちはあるが、なぜか部下の方々は生き生きとしておりみなさん笑顔で運んでいる。黒スーツの黒サングラスを付けている極道の方々がしていると思うとものすごくシュールだが。

 

「なんでさ」

 

 ちなみに私の部屋は衛宮横にある部屋で一人部屋だ。まぁ一夏はまだ小さいから寝るときは一緒だがな。

 

「諦めろ、それにお前が長に私たちの援助をしてもらうように言ったのだろう?」

「いや、それはそうだけど、まさかその日のうちに引っ越しから書類やら全部やってくれるとは思わなくってさ」

 

 それは確かにそうだ。早い方がいいからと言っても早すぎである。

 しかし前に比べると家と学校の距離が短くなっているし、何気に道場からも近い。いいこと尽くしだ。無論、高校生になったらバイトをしなければならんな、いくら一夏が成人するまでと言っても早めに返済して行かなくては私の気が落ち着かん。

 

 む、そういえばこれからは一緒に住むことになるのだ。何時までも名字呼びもいかんな。

 

「し、ししししししっっっ!!」

「行き成りどうしたんだ?織斑」

 

 恥ずかしい。

 なぜ名字から名前呼びに変えるだけなのにこんなにも恥ずかしいんだ!? だが、ここはやらねばならん! そう! 敵を切り込むが如く、素早く喉を切り裂く様に!

 冷静になれ、頭が冷静でなければすべては敗北へつながるのだ。頭は冷やせ! 体は熱くしろ! 対峙する者を観察しろ、一瞬たりとも眼を離すな。あるのは1体1の戦い、戦闘だ! 目の前にいる敵に一瞬で距離を詰め、刀を振るう! 狙うは喉元! 一瞬で切り裂き、血が噴き出す前に距離を取る! 

 タイミングを計れ、瞬時にできる瞬間を待つのだ! 最高の瞬間を―――!

 

「士郎!」

「お、織斑?」

 

 おぉ! 言えた! ふむ! やはり戦闘論が一番正しいようだな。敵(士郎)は戸惑っているが、気にすることはないか。

 先ほどなぜあれほどまでに恥ずかしい気持ちになったのかはわからんが、気にする必要は無いな。一夏も衛宮、いや士郎の事を気に入っているし、高校生になれば私もバイトをするだろう。家に一夏を一人だけ残すなんて可哀そうなことは出来ないと思っていたんだ。

 士郎の家に居候するという手は恥ずかしいが良い一手だったのだな、としみじみに思う。

 

「なんだ。士郎」

「いや! なんでいきなり名前呼びなんだよ!?」

「何を言う。これから一緒に住むのだぞ? 何時までも名字呼びではいけないと思っていな」

「それは、そうかもしれないけど」

 

 怯んだ。この隙を見逃すな、殺るのは一瞬の出来事だ。攻めるときに攻め込め、一撃離脱をし続ければ倒せれるだろう。

 

「確かにいきなりで私も少しばかり恥ずかしいと思うところも有るが、これもそれもお前が私たちにしてくれたのだ。ならばコチラも仲をよくするのが普通ではないか?」

「むっ……」

「それに、私も一夏も『織斑』なんでな、私に『織斑』と言えば一夏も反応するだろ?」

「それは、そうだろうけど」

「たかが名字読みから名前読みになった程度だ。それに……」

「それに?」

 

 この時、私は何も考えずに言ってしまったのだ。遠くない未来で柱に頭を叩きつけて何本もダメにしてしまった私が言うのだから間違いはあるまい。

 だけど、そう、この時にはすでに『衛宮士郎』という一人の男を信頼してしまったからだろうな。今の私の周りにいる男性と言えば士郎を除けば家庭を持つ篠ノ乃道場の師範代位しかいない。

 流石に篠ノ乃家にお世話になるわけには行かん。アイツに借りを作るのも癪に障るしな。

 だから、士郎。 お前だけは

 

「お前の事を『信じている』からな」

 

 信じさせてくれ。

 

「――わかった。なら俺も『千冬』って呼ぶよ。これからこの家に一緒に住むんだし、俺たちは『家族』みたいなものだろ」

 

 ああ、どうしてお前はそう欲しい言葉をくれるんだ。

 その事が嬉しくも有り、私の事を知られているという恥ずかしさがある。

 

 急に失踪した両親の事は解らない。普通の人だと思う、どのような借金をしたのか、なぜ「私たち」を置いて行ってしまったのか。

 今の私には探す術も調べる術もない。もう、『家族』はバラバラになったのだ。

 けれど一夏だけは、何も知らない私の可愛い弟だけは何をしてでも守ろうと決意をしたし、立派な大人にしてやろうと心に決めたのだ。

 例え、私が穢れ切ってでも……。

 

「ち、千冬も何かあったら言ってくれ、俺はお前の助けになりたい」

 

 あの時、あの公園で見つけてくれたのが、お前で本当によかったと思える。

 お前は真剣に私の事を考え、バカなマネをしようとした私を引っ張り上げて、私が考え付かない方法で私たちを助けてくれた。実行してくれた。

 だから……

 

「ありがとう、士郎」

 

 流れ出る涙は今日で最後だ。

 私はもう涙を流さない。あるのは私なりの笑顔にしよう。

 私はお前に助けられた。だからお前がバカな事をしようとするならば、私はお前を助けよう。

 





居候編一応完結です。
おまけでもう少し書きます。

我らが千冬姉様はこの様な感じで衛宮家に居候することになりました。
最初に投稿したのが去年の11月の6日、現在6月の23日。
長かったですね、いろいろと書いてたらこんなにかかるもんなんですね。

皆さんの感想で書き続けることが出来ました。
本当にありがとうございます。
他の章、過去編なども完結していこうと思いっきり妄想していく所存です(笑)

誤字脱字、ご意見ご感想があれば「感想」にてお願いします。
またアドバイス等も募集しています!

この様な作品で良ければ読んでくれるとうれしいです。
感想をくれるとさらに嬉しいです。

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