IS×Fate(笑) 衞宮家の非日常的な生活   作:カズノリ

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こうして私は衛宮邸で居候になった10

 

 

大河さんが弟の一夏を連れて行き、部下の人だと思われるスーツ姿の男性が私たちにお茶を出して数分、しばし静寂がわたしたちの間にあった。チラっと横を見ると私たちをここへ連れて生きた同級生、衛宮の瞳は瞑っており、よく見ると深呼吸をしている。

 なぜ、私たちをここへ連れて生きたのかは解らない。だが私たちをここへ連れて生きた以上は私たちに関する事で間違いはないだろう。

目の前にいる老人は私の師匠並みの覇気を感じさせる。極道である藤村組の長と言うのは伊達ではない様だ。

 

「それで? 呼吸は落ち着いたか? 士郎防」

「……ああ」

 

 問われた衛宮がそっと瞳を開ける。衛宮の容姿は日本人とは思えない赤銅の様な髪は何時もバカをしている私にいろいろと迷惑をかけてくれる親友(一応)であり、様々なモノを作り上げる天才、篠ノ乃束がよく学校から出た瞬間に使う発明品の「神! からーりんぐくん52号」で髪を黒から桃色へ変えている姿をよく見る。

が、衛宮は天然モノ、いつも髪色を変えている束とは全く違う。面もまぁなかなかなモノではないかと自分では思っている。

(あの日から織斑千冬が衛宮士郎の事をチラチラと見ている姿をクラスメートはニタニタとした表情で見ているという事を彼女は知らない。また、賭け事でいつカップリングになるかと言うのもやっている。)

 

「爺さん、織斑に援助してくれないか?」

「……それを言うつー事は、諦めるんだな?」

「……」

「待ってくれ、援助とはどういうことだ? それに諦める? すまないが1から説明してくれ」

 

 コッチが考えているときに勝手に進まないでくれ。衛宮を見れば再び目をつぶり、呼吸を落ち着かせている。藤村組の長を見れば覇気は増し、殺気すらにじみ出ている。

 

「なんでぇ、士郎坊、嬢ちゃんにはまだ言ってなかったのか?」

「言えば、断られると思ったからな」

「ほう、なら「けど」

 

 藤村組の長の言葉を衛宮は遮り、瞳を開け、私の方を見る。己の意思と決意が籠った力強い瞳だ。その瞳に私の心臓は一瞬止まったと思った。それほどまでに力強い衝撃を受けたのだ。あの日以来たまに衛宮を見ているが学校では見た事が無い衛宮の姿になぜか顔が熱くなる。

 しかし嫌な予感が私の脳内でベルの様に鳴り響いている。言わせてはいけない。後悔するぞっと。

 衛宮は私から再び藤村組の長へ向き直る。

 

「爺さん、オレは『衛宮切嗣』から貰ったモノを捨てる事は出来ない。例えそれが『呪い』だったとしても、『衛宮切嗣』が大切に持っていたモノを受け継いだ以上、オレはコレを捨てる事は出来ない」

「……なら、嬢ちゃんを諦めるってわけか?」

「それも出来ない」

「士郎坊、それは我がままってやつだぞ?」

 

 急展開で着いて行けない織斑千冬です。 え? どういうことだ? 真剣で真面目な話だという事はハッキリとわかるのだが、何が私を諦めるのだ? 何でエミヤキリツグという人、おそらくは父か祖父だろうが、受け継いだものを捨てないといけない?

 タイム、待ってくれ。私にもわかるように状況整理してから話を進めてくれないか? しかしこの2人が真剣に話している以上、いきなり展開を変えれば今流行りの「KY(空気読めないやつ)」というモノになるだろう、それにはなりたくない。

 しかし、止めなければ進むだけだ。ならば内容的に考えるしかないな。

 ①衛宮は藤村組の長と何か約束をしていた。

 ②約束については私に援助に関する事

 ③私を諦める=援助

 ④衛宮が受け継いだモノを捨てる=私の援助

 

 むぅ、なぜ援助に衛宮が受け継いだモノを捨てなければならない?

 

「我がままっていうのは解ってる。けど、目の前で不幸になろうとする人を見捨てる事なんかできない!」

「……はぁ、士郎坊。オメェは気づいてねぇ、その先に道なんざねぇんだよ。あるのは崖だけだ」

「爺さん、「大切」っていう漢字は「大を切る」んだ。残った限りない「小」は俺にとって皆や織斑、衛宮切嗣から受け継いだモノなんだ。これだけは斬り捨てる事も見過ごすことも出来ない!」

 

 気迫の籠った声に、力強い瞳に、決意した譲れない心に、目の前にいる藤村組の長に衛宮は獣の咆哮の様に言い放った。何かに動かされるようにただ真っすぐな姿はさながら物語に出てくる王に魔王討伐の使命を心に刻んだ勇者の様だった。

 『魔王討伐』という使命だけを胸にひたすらに旅をし仲間を連れず1人で試練を乗り越えて、魔王を討伐する。姫と結婚するというハッピーエンドが王道だが、私はなぜかその勇者が衛宮に見えて仕方なかった。

 誰の力も借りず、1人で成そう。人の為になろうという姿はまるで現代に蘇った勇者ではないか。思いついた瞬間から勇者の姿は青い鎧を着こんだ衛宮士郎になっていた。

 

「そう、か。儂じゃあ止めきれん、か」

 

 藤村組の長は項垂れる。悲しそうに、衛宮を見つめる。その姿を見て私は口走ってしまった。

 

「ならば私が衛宮を止めよう」っと。

 なぜこの様なことを言ったのかは未だ自分でもわからないが、衛宮が道を外そうとするのならば私が剣で切り裂いてでも道を戻させればいい。2度も道を外そうとした私を救ってくれたんだ。それくらいは良いだろう。

 

「嬢ちゃん、士郎坊は固いぞ?」

「ならば叩き割ろう」

「士郎坊は頑固だぞ?」

「なら切り裂いてやろう」

「……士郎坊を頼む、代わりに嬢ちゃん、お主たちを援助してやる」

 

 む? 良く解らんが援助してもらえるようになった。

 




久々の居候シリーズ更新。
千冬さんを少しでも可愛くかけたかな?っと自分では思います。

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