IS×Fate(笑) 衞宮家の非日常的な生活   作:カズノリ

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こうして私は衛宮邸で居候になった9

 

 

眼と眼が合う、力強く、優しい瞳、けれどどこか盲目的で支えなければいけないと思い込んでしまう。昨日のお、お姫、いや横抱きされて彼の心の一部を聞いてから私はどこか上の空でこの日の授業を乗り越えてしまった。学校で『オーガ(鬼神)』と呼ばれている私が彼を、衛宮を見るとなぜか顔が熱くなる、伸ばされる両手はゆっくりと私の顎から、髪にそして髪を上げられ近づけられる彼の顔、先ほどの瞳は瞑られており、その仕草に私の心臓は爆発しそうな位に活発だ。

 

 この時、私は時が止まった気がした。重なる私の額と衛宮の額。間近で見る衛宮の顔にすでに売ってしまった漫画の一部を思い出してしまう。そう、唇と唇が重なり合う―――キス。

 瞬間、私は

 

 ドン!

 

 衛宮を突き飛ばしてしまった。 ああ、やってしまった。嫌われたなと自分の心がチクチクと痛みだす。だが時は戻らない。しかし心のどこかではこれで良いのだと思ってしまう、衛宮は純粋だ。だから穢れようとした私を助けたが、私は一夏に何かがあれば止められないだろう、交換条件など出されれば従ってしまう。

 

「いていて、スマン、少し近づきすぎたな」

「い、いや気にするな」

 

 なぜ突き飛ばした私を怒らないのだ? 距離を取ろうとしないのだ? 私に優しくしないでくれ、その優しさに勘違いをしてしまう。

 その後も衛宮は私との距離は離れなかった。再びゆっくりとして静かな時間が流れる。いや、何を話せばいいのかわからなくなる。私が考え込んでいると私の左手に触れる温かさを感じた。そちらを見れば幼い手が私の手を握られており、その手の持ち主はただ1人の肉親となった弟の一夏であった。

 

 一夏は何を思ったのか私と衛宮の真ん中に入り、私の左手を握り、反対を見れば衛宮の右手を握っていた。

 

「一夏?」

「ねぇ! ちふゆ姉! 今日学校で面白いやつと友達になったんだ! 名前がイッセーって言って、女の子になんか良く解らない事をやって、せんせいに怒られたりするのにいつもニコニコしてるんだ!」

「何か?」

「うん! えーっとちふゆ姉がきてる、そのひらひらをね? バサー!ってひろげてた!」

「そうかそうか。いいか? 一夏、絶対にマネするなよ?

 したら わ か っ て い る な ?」

 

一夏に一応脅しておく、全く誰がその男の子にスカート捲りなどを教えたのだ。もし見つけたらキン肉バスターとマッスルスパークをお見舞いしてやらねばならんな。全くどこのドイツだ、幼い子にそのような事を教え込んだ者は……。

 一夏はすごい速さでコクリコクリと頷いた。

 

「いいか? 女の子はそれをされるとイジメられてるって思い込むから一夏はやったらダメだぞ?」

「え!? そうなの?」

「ああ、そうだな、ズボンをいきなり下げられると嫌だろ?」

「うん」

「女の子にとってはソレと同じなんだ」

「そっかー、うん! わかった! しろ兄!」

 

 一夏が、衛宮に懐いていた。

 私は知らない事であったが、前に一夏を連れて行ったときに懐いて時々ではあるが衛宮の家に行くようになったらしい。ただ、私は忙しそうなので言わなかった様だ。衛宮は一夏が言っていると思っていたと後に解った。

 

「着いた」

 

 一夏と話している内に衛宮が目指していた場所に着いた様だ。ふと前を見ると大きな屋敷で『藤村組』と書かれた大きく立派な看板が飾られていた。

 

「へ?」

「おおぉ! おおきぃ!」

 

 藤村組、中学の私でも知っている冬木市で最も大きい極道、ヤクザで警察でも居場所は知られているのに手を出せないという力を持っている。

 

「む? おお士郎じゃねぇーか。どうした? ベッピンさんと子供連れて」

「爺さんに会わせてほしいんだが、今大丈夫か?」

「まぁ士郎なら大丈夫だろ? 虎の間に行きな」

「ありがとう、ていうか相変わらず虎の間が好きなんだな」

 

 ……衛宮が極道の部下と楽し気に話をしている。どこか笑いがこみ上げてくる気がした。なぜ衛宮が極道の人と仲がいいかは知らないが、滅茶苦茶すぎるだろうと思った。

 一夏は目がキラキラしながら家の中に飾られている壺やら絵やらに興味を持っているらしく忙しく目をキョロキョロさせている、なぜか虎が多いな

 

そして

 

「爺さん、少しいいか?」

『ぬ? 士郎坊か、入りな』

 

 私はこの時本気で衛宮が何者なのか知りたくなった。一般人である衛宮が極道の頭と知り合いというのは無理があるだろ!? 一体どういうコネなんだ!?

 

「ほう、ベッピンさん連れてついに色気づいたか?」

「織斑と俺はそういう関係じゃないぞ」

「そうかい、そりゃあ残念だな。それで?」

 

 その瞬間、私の体は勝手に動き、一夏の前に出てかばう様に構えた。いや、構えさせられた、この人から感じる気迫、いや殺気はそれほどのモノだ。しかし私が構えた事を目の前の老人はニタァと哂う

 この人は一体何なのだ、私が構えさせられるなど師匠と対峙する時だけなのに

 

「そう、身構えるな、安心しな。だが、子供に聞かせる話でもねぇな。オーイ! 誰か! 大河を読んで来い!」

『ヘイ!』

 

 しばらくしてドタバタと走る足音が聞こえ、襖を思いっきり開け、パーン!と言う音が響き渡る。襖を開けたのは年上に見える女性だった。大人しそうな雰囲気を出していて、いや前にモロあったことがある人だ。

 

「あれー? なんで織斑さんと一夏君がいるの?」

 

 藤村大河さんだ。以前衛宮の家で食べさせてもらったときに一撃で衛宮を葬った人物で結構面白い人だ。

 

「なんだ大河、知り合いか、ならええ、そこの子供とちょっくら遊んでやってくれ」

「む? 織斑さんと士郎は?」

「話し合いだ」

「! そっか、わかった。よし! いくぞ! 一夏君!」

「うん!」

 

 

 あれ? なんか一夏が行っちゃうことになってないか? 後ろにいた一夏が藤村さんと出ていき、ずっと立って構えていた私は急に恥ずかしくなり、元の位置に戻って座る。

 

 




お、終わらない。 
本来なら上中下で終わらせる予定がどんどんと長くなってしまいました。


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