IS×Fate(笑) 衞宮家の非日常的な生活   作:カズノリ

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こうして私は衛宮邸で居候になった2

 

 誰もいない公園の片隅、涙を流す女子生徒を男子生徒が強く抱きしめる。 男子生徒――衛宮士郎の温かさに女子生徒――織斑千冬はさらに涙を流す。 この場に2人だけしかいない空間が寂しいはずなのに、どこか温かい。

 

「す、すまない。衛宮」

「気にするな、俺は気にしてないから」

 

 あたりが暗くなったころにようやく二人は離れた。

グゥゥ~~。

 2人のお腹から鳴った、そんな些細な事なのにクスっと笑ってしまう。

 

「あ!? 一夏!!」

 

 織斑千冬は叫んでから公園においてある時計を見る、6時28分。 小学校は終わっているし、確実に家の前で立ち往生しているだろう。織斑千冬は急いでカバンを持って走ろうとする。

 衛宮士郎は走ろうとする織斑千冬の手首をつかんで静止させた。

 

「え?」

「なぁ織斑。今日は俺の家で食べていかないか? その、弟と一緒にさ」

「だ、だが迷惑じゃないか? それに弟はよく食べるし……」

「俺も今から作らないといけないし、どうせなら皆で食べたほうがおいしいだろ? 家はどっちだ?」

「……深山町だ」

「なら、俺も同じだし、なら弟を拾って一緒に商店街に行かないか?」

「……迷惑じゃないか?」

「迷惑なら話を持ち込まない。行こうぜ」

 

 衛宮士郎はそういって織斑千冬を引っ張ってバスに乗り込み深山町へ向かう。 織斑千冬はそれに戸惑いながらも着いて行く。

 その様子を見ていた衛宮士郎は学校で流れている『オーガ』なんて誰がつけたんだ?と想いながら、少し顔を赤くする。

 

 

 織斑家の前まで行くと織斑千冬の弟である織斑一夏は体操座りで家の扉前で座り込んでいた。それを見た織斑千冬は駆け出し、織斑一夏を抱きしめる、何度も謝る。

 冬木市は夏以外では寒い地方でいくら小さいころから住み慣れていたとしても風邪をひくのは当たり前だろう。織斑千冬は自分の計画の無さに軽いショックを受けた。あのまま衛宮士郎に見つかっていなければ確実に電話をかけ、身も心もそして弟の体調も壊していただろう。

 弟の織斑一夏には両親は急な予定が入り家にいないと説明し、織斑一夏から見て初めての姉が男の友達を連れて来たことに軽い興奮しながら、右手を姉と握り、左手を衛宮士郎と握りながら商店街を回る。

 のちに商店街の方々はこう語る。「アレは将来良い家族になる」と……。

 

 夜7時30分、中学生が帰るにしては少し遅い時間。衛宮士郎は初めて「クラスメート」を晩御飯に誘ったことに少し感動と美味しいものを出さねば! という使命感が心の中で浮いていた。すでに何通りのレシピが頭の中に出ては消え、出ては消えてを繰り返しながら、今現在衛宮士郎ができる最高の料理を考えていた。

 腹をすかせた虎のことなど忘れて……。

 

「ただいまー」

 

 そう、忘れていたのだ。腹をすかせた獣ほど恐ろしいものなどなく、諺にもあるだろう「食いの恨みは恐ろしい」と……。さて、問題です。

 

 お腹を空かせた腹ぺこ虎はあるとき、自分の家に来ました。しかし、自分には虎が来た事で驚いているばかり、お腹がすいているなどと知りません。ではどうなるでしょう?

 ①お腹がすいているのか!! スグに食べさせてやろう!

 ②大丈夫かい? ほら、これをお食べ

 ③あれ? なんでこんなところに虎がいるんだ?

 

 

「しぃぃぃぃろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

 

→④ 現実は無常

 

「ふ、藤姉ぇ!!?」

「こんな時間まで何をしているかぁぁ!!! 人中!!!」

 

 パァァァァンンンン!!!! 高い音を立てながら人型の虎に竹刀という名のキバを向けられた衛宮士郎(餌係)は哀れにも頭を守る時間もなく、バタンと倒れるのであった。

  完

 

 

 

 

 その後、衛宮士郎はなんとかザオリク(織斑千冬の膝枕)によって顔を真っ赤にしながら復活を果たし、調理場(戦場へ)に立った。

 衛宮士郎に見えるのは2人と1匹の虎の腹。彼らを制さねばならない。そう、これは戦争である、己が持つ力(料理術)と幾つもの刀(包丁)と防具(調理器具)を使い、満たすまで戦う。それ以外に生き残る道などありはしない。あとは己が信じるモノ(具材)を手に火を灯す(コンロに)。

 自然と体が動き出す、まるで自分の体が機械のように、全てを作り出すかのように頭には先ほど考えてあったレシピが複数同時に現れる。当たり前のように体はその様に動く、右手でフライパンを動かし、左手で魚を焼く。それも束の間、スグに火を弱め、蓋をしてからレンジで野菜を温野菜にできたのを確認し、フライパンの中へ流し込む。

 ピィィという音が鳴る、ご飯が炊けた、ならばあとは盛り付けるのみ!!

 衛宮士郎はこの時、限界を超えたと言っていいだろう。まさに炎の調理人エミヤとなったのだ!

 

 この様子を弟の織斑一夏が光り輝くような瞳で衛宮士郎の背中を見つめていることは織斑千冬と藤村大河しか知らぬことであった。

 これが冷徹に全ての物事を運ぶ料理人、またの名を氷の調理人イチカと称される事になる織斑一夏の最初にして始まりであった。

 

40分後、テーブルに広げられるのはまるで光り輝くようにな晩御飯。美味しそうな匂いを醸し出す焼き魚、ふっくらとしてなぜか輝いて見えるご飯、深い匂いに捕らわれそうになる味噌汁、普通は逆だろう! 男心を掴む肉じゃが。他にも煮物やきんぴら、漬物を用意され、織斑千冬は圧倒された。例えるならば攻撃力3000の青い目を持つ白竜が攻撃力300しかないはずのクリボ○が魔導士○力×2の3枚伏せによって攻撃力を越えられた驚愕の瞬間、又は月を見て大猿になった子供悟空を見てしまったブ○マ達といったところか。

 

 これには不機嫌だった虎も満足いったようで食後は大の字で横たわっている。織斑姉弟も満足の様で学校では見られないクールビューティーチフユの笑顔を見てしまった衛宮士郎にとって少し居心地が悪くなったのか、皿洗いに入る。なぜか弟の織斑一夏も手伝うことになったが。

 食後、30分ほどだろう、お腹が落ち着いたところで衛宮士郎は切り出した。

 

「織斑、送っていくぞ」

「い、いや、それは流石に申し訳ないから、いい」

「けど、女の子と一夏もいるんだ。送らせてくれ、じゃないと学校で顔見るまでは心配で眠れなくなる」

「け、けど……」

「千冬ちゃん! ここは士郎に送られなさい! それに何があったら士郎を盾にすればいいからね!」

 

 弟分である衛宮士郎を盾替わりとはこれは信用、信頼している証とみるべきか、からかっていると見るべきか。とまぁ、藤村大河の説得により、織斑姉弟は家まで士郎に送られる事になった。ちなみに織斑一夏は寝てしまっている。学校でよく動いたのだろう。今は衛宮士郎の背中でおんぶされ、夜の町を歩く。

 

 織斑千冬は申し訳なさと何故か熱くなる顔を見られたくないので顔を伏せる。衛宮士郎も深く聞こうとはせず、無言で歩く2人。それは気まずい筈なのだが、どこか安心できる時間でもあった。

 




居候編第2話です。
本当ならもう少し食い込ませる予定だったんですけど、
予想以上に長くなりました。
すこし、ほのぼのしてるかな?と思います。

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