バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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日常編2
第九十話


花村陽介視点

 

 

りせを無事救出しあとは彼女が元気になるのを待つという状況になり、俺達に日常が戻ってきた。

「なあ、明久、今日どうするんだ? 暇だったらどっか遊びに行かね?」

俺は今日はバイトもなく、暇なので明久を遊びに誘うことにした。

「う~ん、そうだね、どうしようかな」

明久はなにか他にもあるのか悩む素振りを見せる。

「明久くん! この前のリベンジで今日は料理を作ったんです、よかったら食べてくれませんか?」

「おっと、今日はバスケ部に行かないといけないんだった。陽介、遊びに行くのはまた今度ね。それじゃ!」

そこに声をかけてくる姫路、そしてその手に持つ料理を見た瞬間ものすごい速度で逃げていく。

「そうだ、姫路さん、陽介なら時間空いているみたいだよ」

「まて、明久! 姫路はお前に食べてほしいと思ているはずだ!」

明久の野郎、どさくさに紛れて俺に毒物を押し付けていく。

「くそ、あいつ最近平気で俺を犠牲にしるようになったな!」

「花村、そう言いつつなんか微妙に嬉しそうじゃない?」

様子を見ていた里中が俺に声をかけてくる。

「見捨てられてうれしいわけねーだろ!」

そう言いつつも明久の俺に対する態度が雄二達への態度に近くなっていることが少し嬉しい気もする。

明久は雄二や康太には遠慮なしで見捨てたり攻撃を仕掛けたりする。俺に対する遠慮がなくなったのは仲が良くなった感じがして少し嬉しかったりもする。気恥ずかしくて口には出せないが。

「それで、花村、瑞希の料理は食べないの?」

「そ、それは……」

全力で拒否するのは姫路に悪い気もする。俺が迷っていたら……

「吉井はおるかー?」

モロキンが教室に入ってくる。

「吉井くんは部活に行きましたよ」

里中がモロキンに答える。

「なんだと、あいつには任せるべき仕事があるのに、これだから都会から来たやつは協調性がなくてだめだ」

ブツブツと文句を言い始める。そんなこと言っても事前に言ってないんだから仕方ねーだろうが。

俺はモロキンに文句を言おうとするが……

「う、そ、それは……」

姫路の持っている物体を見てモロキンの顔色が変わる。林間学校のことは覚えてないはずなのに体には刻まれているのか……

「は、花村! お前吉井と病欠者の代わりに保健委員に行くように! わ、わしは用事を思い出したから職員室に戻る!」

「ええ!? なんで俺が……」

そもそも明久も保健委員じゃないはず……つまり病欠した保健委員の代わりに明久にやらせようとしたけどいないから俺にってことか……

「お前は委員会に所属しておらん! つまりは怠け者だ。行かないと停学だ!」

モロキンはそれだけ言って逃げるように教室から出ていく。

「そうですか、花村くんも用事じゃお料理は食べられませんよね」

「あー、そう。それ! 俺行かないといけないから、それはやっぱ部活中の明久に差し入れするべきだな。それじゃ!」

考えてみれば姫路の料理から逃げる良い口実、俺は全力で逃げてそのまま保健室に向かう。

 

 

「すんませーん、病欠者の代わりに来ましたー」

「あ、そうなの? よかった、人手が足りなくて困ってたんだ。あたしたち校内中回らないといけないからここに残っていてくれる?」

すでに集まっていた保健委員の人は校内の見回り、正式な委員じゃない俺は留守番をしていればいいらしい。

「オッケー」

別に難しいことではない。これなら姫路の料理から逃げる口実ができただけラッキーかもな。俺はそんなことを考えていたが……

「すんません、遅れて……」

そんな考えはその生徒が入ってきた瞬間に全部吹き飛んだ。

「……なんであんたがいるんですか」

「あ、いや、保健委員が病欠したから代わりに来ることになってな」

その生徒……小西先輩の弟が保健委員として入ってきて俺をにらむように見ながら言葉をつづける。

「他の委員の人は?」

「あ、ああ、見回りに行った」

俺は自分の影を見て、前に進んでいるつもりだったが小西先輩の弟と突然会って混乱していた。向こうも俺のことを嫌っているのか、一応先輩として敬語で話してはいるが言葉の端々が刺々しい。

そのあとは無言のまま居心地の悪い空気で他の保健委員が戻ってくるのを待つことになった。

けど戻ってきた保健委員も小西先輩の弟であるということに気遣っているのか腫物を扱うかのような態度で接する。そして小西先輩の弟は仕事を免除されて帰ることになった。俺もそのあと少ししてから帰ることになった。

 

 

「はぁ……」

なんとなく気が重いまま俺は帰路に着く。

「あれ? 花村先輩じゃないっスか、なんか元気ないっスね」

そこで声をかけてきたのは完二だ。

「なんだ、完二か」

「ちょ、なんだはないんじゃないっスか、先輩がなんか落ち込んでるから声をかけたのに!」

そうは言うが後輩に愚痴を言うわけにもいかない……ってそういえばこいつも一年だったか。

「なあ、完二、お前一年の小西って知ってるか?」

「小西って尚紀のことか? あいつとは家も近所だし幼馴染だけど……それがどうしたんスか?」

そういえばこいつの家と小西先輩の酒屋ってすぐ近くだったっけ……そんなことすら頭が回らなかったのか……

自分が予想以上に参っていることに気付いた俺は完二に今日のことを話してみることにした。

「あー、そういうことっスか、でもあいつ根が真面目だからそういう扱いは嫌がってるかも」

完二はそう言って考える。

俺としても小西先輩の弟に嫌われている状態は嫌だしこの問題から逃げずに立ち向かいたい、そういう気持ちはある。

「しかし、先輩に対して生意気な態度っスね。俺から言っておきましょうか?」

「いや、良いから、でも何かあったらお前の力も借りっから」

とりあえずいい手が思いつかない、今度雄二辺りにでも相談してみるかな……幼馴染というなら完二にも頼むかもしれないし。しかし事件の起こる前とは違い頼れる仲間が増えたもんだな……




あけましておめでとうございます。今年もこのバカと田舎とペルソナをよろしくお願いします。
日常編に突入。そして小西尚紀登場、本来はこのイベントは主人公の役割ですが明久は逃亡、刑死者コミュ埋まってますしね。ということで陽介&完二に、原作だと完二仲間入りの少し後にこのイベントが起こるんですがそこではいろいろイベントあったのでこんな時期になりました。
では次回もよろしくお願いします。

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