『我は影……真なる我……お前たちの好きな真実を与えよう……ここで死ぬという逃れえぬ定めをな!』
「はっ、俺達が知りたいのは過去、そして現在での起きた事件の真実だ。未来なんて確定してないものに真実はねえ!」
巨大化して暴走し、不気味な姿になったクマのシャドウ。その言葉に雄二は吐き捨てるように言う。
「そういうこと、それに決まっているとしても足掻いて結果を変えるだけだ!」
少なくても未来は変えられるはず。
『愚かしい隣人どもよ、末期は大人しくするが良い』
「悪いけど僕はバカだからね、諦めは悪いんだよ!」
クマのシャドウは愚かだというけど、諦めの良いことが頭良いってことなら僕はバカのままで良い!
「行くよ、雄二、それとも元神童である雄二は諦めは良いかな?」
「今の俺はFクラス代表だからな。むしろバカの大将だ」
僕の言葉に雄二は答える。もちろん僕もこいつが諦めるとは思っていない。
「はっ、勝てない戦いね。むしろこういうのを逆転させるから面白いんだろうがよ! 行くぜ、ペルソナ!」
雄二がペルソナ、ウラを呼び出すのが見える。そして……
「ペルソナ!」
僕は雄二に連携してペルソナ『オニ』を呼び出す。
「「いけぇ!」」
雄二のウラと僕のオニ、二体の鬼が連携してクマのシャドウを殴りつける。
『無駄なことはやめろ。抗っても何も見えはしない。故にまずは貴様らの悪足掻きを止めてやろう』
「気を付けて!それを受けたらペルソナを使えなくなるよ!」
クマのシャドウが放つ力『愚者のささやき』に対してりせが警告の声を上げてくれる。おかげでペルソナの付け替えが間に合う!
「ミトラ!」
僕は魔封に対する耐性を持つミトラにペルソナチェンジする。
「明久シールド!」
雄二は僕を盾にして回避する……
「って僕を盾にするな!」
「気にするな。結果的に問題はなかったんだからな」
これで僕のペルソナチェンジが間に合わなかったら僕だけペルソナが封じられる所だった……
『気に食わぬやつらだ……ならばこれは防げるか……』
クマのシャドウの左手に何か力が溜まっていくのが見える。
「え、なに? ……何か嫌な予感がする」
愚者のささやきの効果を読んだりせもどんな攻撃が来るかはわからないみたいだ。
「久慈川、チャージの終わるタイミングはわかるか?」
クマのシャドウがその状態で動きを止めたのを見て雄二がりせに尋ねる。
「え? うん、もう少し時間かかりそうだけど……」
「ならやることは決まったな」
「うん、この隙だらけの状態でギリギリまで殴ってからだね! タイミングは任せたよ!」
「う、うん、攻撃の来る直前に教える」
防御に回るタイミングを計るのはりせに任せて僕と雄二は全力で攻撃に回ることにする。
「いけ、ヤマタノオロチ!」
姫路さんとの絆で生まれた月のペルソナ、ヤマタノオロチでガルーラを放つ。
「行け、ウラ、デットエンドだ!」
そして雄二のペルソナと雄二本人が同時に殴り掛かる。
「この感じ……攻撃が来るよ!」
動けない状態のクマシャドウを二人で殴っているとりせからの指示が来る。
そしてその言葉に少し遅れてクマのシャドウの左手が僕たちを薙ぎ払おうとする。
「あぶねえな、指示がないと間に合わなかった」
「ナイスタイミング、助かったよ」
『何故だ……無駄なことのために、どこから力が湧いてくる』
「そんなの決まってるよね」
「ああ、俺たちはバカだからな、無駄だと思ってねえんだよ」
クマのシャドウの言葉に僕と雄二は即答する。
『ならば……避けられぬように攻撃を繰り出すまでだ』
クマのシャドウが全力で殴りつけてくる。
「させるかよ!」
雄二が僕の前に出てその攻撃を受ける。
「雄二!」
「……」
「ダメ、気を失ってる!」
物理に強いはずの雄二が気を失うほどの強烈な攻撃ってことか!?
『今度こそ楽にしてやろう』
そして今度は魔力を集中する……これを無防備状態で雄二が食らったら……
「りせ、何の属性の魔法が来るかわかる?」
「自信ないけど……私が見てるとあいつ、氷に耐性があるから使うのも氷結かも……」
可能性が高いならそれだけで十分!
『属性がわかったからと言って守りながら戦えるのか?』
そう言って魔力を高めてマハブフーラが放たれる……僕と雄二、二人分……なら
『ふん、二人分を防ぐなど不可能……なんだと!?』
おそらくクマのシャドウから見えるのは巨大な雪だるま……
「こいつほどのサイズがあれば二人分の範囲くらいならカバーできるんだよ」
キングフロスト……ジャックフロストたちの王であるこいつはそれにふさわしい巨体だ。
「完二のおかげで助かったよ」
完二との絆で生まれたペルソナだ。
「う……すまんな、明久」
「あ、雄二、気が付いた?」
「ああ、おかげで助かった、使い捨て装甲板」
「その前に殴り掛かってきたのを耐物理シールドが防いでくれたからね」
雄二の軽口に僕も返す。
『何故抗うことをやめない……!? たとえ勝っても先に続くのは苦しみだけだ!』
「はっ、何度も言わすなよ」
「だからと言って諦めるほど僕たちは利口じゃない。それに」
「「苦しみには普段から接してるから慣れてるんだよ!」」
この先事件を追うことでどれほどの苦しみがあるかはわからない。でも僕と雄二にとっては苦しみなんて日常だ。それ以上に楽しいこともあるのに僕たちが歩みを止めるはずがない!!
「それじゃ、そろそろ締めるぞ。行け、明久!」
雄二のウラが僕にタルカジャをかける。
「これで終わりだ!」
クマとの絆の証……星のアルカナを持つペルソナ。
「セタンタ!」
『グ、グァァァ』
そしてセタンタの一撃を受けクマのシャドウが叫びをあげて倒れる。
「みんな、大丈夫?」
僕たちは倒れているみんなのところに行く。
「クマも大丈夫そうだな」
シャドウに吹き飛ばされたクマもみんなと一緒のところにいた。
「お前ら、すごいコンビネーション良いな……」
陽介が驚いたように僕たちに話しかけてくる。
「あはは、去年は一緒になって色々やったからね」
おかげで不本意なことに問題児コンビと呼ばれたくらいだ。
「俺は明久の問題行動に付き合わされただけだがな」
「はは、なに言ってるのさ、僕は雄二の普段の行いが悪いせいで一緒にいた僕が迷惑をしてただけなのに」
僕と雄二は互いに睨み合う。
「普段はこんな感じなのに何かあったらコンビネーション良いのよね」
美波が呆れたように言う。
「……少し吉井が羨ましい」
雄二が素直になれば霧島さんともうまくコンビネーション取れそうな気がするけどなあ。
「…………問題児同士で似た者同士」
「「ムッツリーニに言われたくねえ!?」」
こいつの盗撮、盗聴の方がよほど問題のはずだ。
僕たちのツッコミに周囲が笑う。冗談抜きでムッツリーニ以上の問題児扱いは不本意なのに。
「ところであれもクマさんの一部なの?」
天城さんが話題を変えてクマに尋ねる。
「まさかクマくんにも押さえ込んでいた一部があったなんてね……」
「クマ……クマは、自分が何者かわからないクマ……」
『……』
クマの言葉にシャドウは何も答えない。ただじっとクマの言葉を聞いている
「ひょっとしたら答えないのかも……なんて、確かに時々、そんな気もしたクマ。だけどクマは、今ここにいるクマよ、生きているクマよ……」
「大丈夫だよ、ここで事件を追っているときっと見つかるし」
「だな、事件のついでに探してやっても良い」
僕の言葉に雄二が続ける。
「明久、雄二……ありがとうクマ」
「二人が言うならしゃーねえ、俺も探してやる」
「うん、この世界を探っているうちにきっと見つかるよ」
陽介と天城さんも続けてクマを慰める。
「み、みんな……! クマは、クマは果報者クマ! およよよよ」
クマが喜びの声を上げたのに反応するかのようにシャドウが輝き始める。
「これって……」
クマのシャドウもペルソナに変化する
「これ、クマのペルソナ……?」
「それ……すごい力感じるよ……良かったね、クマ」
りせが苦しげに声を上げる。
「あ、ごめん、疲れているのに」
戦闘させた上に長々と話し込んでいて無理させていたかも……
「そうだな、早く外に出よう!」
僕たちはそのまま外に向かう。
「クマは大丈夫?」
外に出る前にペラペラ状態のクマに声をかける。
「しばらく一人にしてほしいクマ」
「お、おい」
クマの返事に陽介が心配して声をかけるが
「自慢の毛並みもカサカサだし。鼻も効かんで迷惑かけてるし……毛が生え変わるまでトレーニングに励むクマ!」
そう叫んでそのまま腹筋を開始する。
「だ、大丈夫そうね」
その様子を見て美波もそういう。
「そっとしといてやろうぜ。男には、一人で乗り越えなきゃならん時があるもんだ」
「そんなハイブローな話?」
完二に促されてクマはそっとしておくことにした。
そして帰ろうとすると……
「アキヒサ」
クマは最後に出ようとした僕に声をかけてくる。
「どうしたの?」
「アキヒサはバカだけどアキヒサの力にはなにか特別なものを感じるクマ。きっとクマにはクマだけの特別な役割がある。アキヒサといるとそんな気がするクマ。だからそれを探すためにクマは強くなるクマー!」
そしてクマは決意あふれる熱い目で僕の方を見つめてくる。
「わかった、バカだけどの一言余計だけど……クマもがんばってね」
最後にクマに声をかけて僕もみんなを追ってテレビから外に出ることにした。
クマ戦終了、あとはもう一話やって劇場編は終了です。
では次回もよろしくお願いします。