バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第八十六話

「…………間違いなくここにりせがいる」

「クマもそう思うクマ、ちょっと自信ないけど」

りせのシャドウを最初に見た時からしばらく探し回り、ようやく反応のあるところにたどり着いた。

「ようやく着いた……」

「ああ、結構長かったな」

陽介と雄二の言う通り、なんでここで作り出される場所はこんなに広いんだろう。

「…………いくぞ」

出血がたたり顔色が少し悪いがムッツリーニが張り切って先に進む。

「いた!」

そこにいたのは水着姿のシャドウと割烹着を着た本人。

『キャーハハハハ! 見られてるぅ! 見られているのね、いま、アタシィ!』

「やめて」

僕たちが入ってきたのに気付いたシャドウが僕たちを見て声を上げる。

『んっもー! 本当は見てほしいくせに。ぷんぷん! こーんな感じで、どう?』

そして彼女はそこにあったポールに手を突き……そこで突然視界が途切れる。

「アキは見ちゃダメ!」

「……雄二は見てはダメ」

「「ギャァァぁ、目が、目がぁ!?」」

僕と雄二の悲鳴と

 

プシャーーー

 

ムッツリーニの鼻血の音があたりに響く。

「…………あ、明久、苦しんでいる場合ではない。写真を……」

と言っても目が見えない僕にカメラを渡されても……しかも渡そうとするムッツリーニの手が明らかに震えているし。

「もう……やめてぇ……」

りせの声が聞こえる。くっ、一体どんな状況なんだ!

「お、おい、同士討ちしてる場合じゃ……」

陽介のまともな意見が聞こえるが

「陽介、僕たちのことは良い!」

「…………そうだ、そんなことよりやるべきことがある」

僕の言葉にムッツリーニも続ける。そう、僕たちの思いは一つ。

「「この状況を画像に残しておくんだ!!」」

「いやいや、違うだろ!」

「アキ、あんたはこの状況で何言ってるの!」

「腕が引きちぎられたように痛いぃ!!」

僕の言葉に里中さんが否定する。そして美波が僕の言葉に怒り僕の腕をひねる。

「ま、まて翔子、俺は何も言ってないだろう!?」

目が見えなくてわからないけど雄二も巻き添えを受けているみたいだ。

『ふふ、おっかしー。やめてだって。ざっけんじゃないわよ!! アンタはあたし、あたしはアンタでしょうが!!』

「違う、違うってば」

僕たちが仲間内で争っている間にも本人とシャドウの会話は続いている。

『キャハハハハ、もっと見なさい、見なさいよ』

見えないです。

『これがあたし、本当のあたしなのよ!』

「ちょっと、みんな、争ってる場合じゃないよ」

そう思うなら天城さんには霧島さんと美波を止めてほしい。

『ゲーノージンのりせなんかじゃない! ここにいるあたしを見るのよ!! ベッタベタなキャラつくりして、ヘド飲み込んで作り笑顔なんてまっぴら! りせちー? だれそれ、そんなやつこの世になんていない! あたしはあたしよぉぉぉ! ほら、あたしを見なさいよぉぉ』

今の僕と雄二には見たくても見えないです。

「わ……たし、そんなこと」

『さーて、お待ちかね、今から脱ぐわよぉぉ。丸裸のあたしを焼き付けなぁ!!』

「「なんだと!?」」

僕たちは反応するが……

「「回復しかけていた目がぁぁ!?」」

 

プシャアア

 

「おんなじこと繰り返すなよ……」

先ほどのことのやり直しとなった。

「やめ……て、やめてぇ!」

「ちょ、先輩、バカなことやってる場合じゃないっスよ!」

「やりたくてやってるんじゃないからね!?」

「それ以上言ったらダメ!」

里中さんが止めようとする。

「あなたなんて、私じゃない!」

りせがシャドウを拒絶する言葉を言ってしまう。

『うふふ……ふふ、あはは、オーホホホッ! きたきたきたぁ!! これであたしはあたしぃ!』

「くるぞ!」

「って明久、雄二、康太、いつまで倒れているんだ!?」

相手がシャドウに変化する音が聞こえるが僕たちの目は見えないまま、そしておそらくムッツリーニは血の海に沈んでいるんだろう。

「仕方ない、あたしたちだけでやるよ!」

里中さんの声が聞こえる。

「すまん、少しの間任せる!」

「仕方ねえ、やるぞ!」

 

 

花村陽介視点

 

 

明久と雄二が霧島と島田の手によって戦闘不能に、康太は勝手に鼻血の海に沈んだ。まさか大型シャドウ相手に明久抜きで戦うことになるとはな。

『我は影……真なる我……さあ、お待ちかね、モロ見せタ~イム!』

そういってポールダンスっていうのかな、エロい格好で戦闘態勢を取るシャドウ。これは見えていたら明久も勝手に戦闘不能になったかもな……

『ふふふ、特等席のお客さんには、メチャきっついのを特別サービスよ!』

「これは明久と雄二は戦闘参加しなくてよかったかもな」

「そっスね、先にお仕置き食らうか後で食らうかの違いになりそうっスからね」

俺の言葉に完二が同意を示す。

「しかし俺もこんな風だったんスか?」

「あー、完二くんのはある意味もっときつかった」

「これよりっスか!?」

天城が発言し驚く完二からみんなが目を逸らす。

「それじゃ、行くぜ!」

いつもなら戦闘の中心は明久と雄二だ。その二人が戦えない分俺がカバーしないとな。

「島田! 援護を頼む、相手の能力を落としてくれ!」

「わかったわ、キヨヒメ!」

島田がペルソナを使いラクンダを放ち相手の防御力を落とす。

さらにこちらの攻撃力を上げたいところだが万能な明久も雄二もいない……

「花村、タルカジャならあたしも使えるよ!」

そ、そっか、里中もタルカジャは使えたか。

「お、おう、ならタルカジャを完二に!」

「ん、わかった、トモエ!」

「そして完二は攻撃をしてくれ!」

「了解っス、タケミカヅチ」

完二がジオンガを放つ……ってそうじゃない。

「違う、お前は物理の方が得意だから物理攻撃で……」

くそっ、もっと細かく指示しないとダメか。雄二のやつよく全員の能力を把握していられるな……

「あはは、楽しんでる? でもあたしはまだ攻撃してないわよ?」

そういって撃ってくるのは……アギか!

炎が里中を襲う。

「キャッ」

しまった。火炎属性は里中の弱点だったか!

「千枝!」

「続いていくわよ!」

そして次に撃って来るのはブフ? 狙いは天城か!?

「きゃあ!?」

氷結弱点の天城が吹き飛ぶ。こいつ色んな属性の魔法を的確に撃ってきやがる。

そのあとジオ、ガルを放ち俺たちは次々と吹き飛ばされる。

「ガンガー! メディラマ!」

その時明久の声が響き、俺たち全員のダメージが回復する。

「里中は天城と、陽介と完二、島田が一塊になってそれぞれの弱点をカバーしあえ! 翔子は弱点がないから攻撃に集中だ!」

続いて雄二の声が響き俺たちは互いに庇いあえる位置に移動する。

「お前ら、目は?」

「まだ見えないけど回復くらいならおおよその位置がわかればできるからね」

「それに状況を聞いての指示くらいなら何とかできる」

本当にこいつら、すげえよ……俺じゃできないことだ。

「だから陽介、戦闘は任せるよ」

「ああ、俺たちの回復はもうちょっとかかる」

「おう! まかせておけ!」

俺も俺にできることをやってこいつらと並ばないとな!

雄二が指揮をし明久が回復、俺たちは互いを補いながらも戦う、この戦法はうまくはまった。

「シャドウは弱ってきてるクマよ!」

クマも俺たちの戦闘を見てそう声をかけてくる。

『なによ、あんたら、こんだけぶたれて不満なわけ? なら死になさい!』

そういって俺たちの方をじっと見る、なにをしてるんだ……

『お触りは禁止だから! キャハハ』

「ンな言葉に惑わされるかよ!」

完二が相手の言葉を無視して攻撃を仕掛ける。

「な、んだと!?」

しかし相手は余裕でその攻撃を回避する。

「……キビツヒコ」

霧島が回避した瞬間を狙って魔法を撃つが

『見えてるのよ! お触りは禁止だって言ってるでしょ!』

それも読んでいたみたいに当たらない。

「くそっ、どうしろっていうんだ!」

「…………向こうはこちらを分析して動きを読んでいる」

「土屋、あんた平気なの?」

康太が血の海から立ち上がり構える。

「…………問題ない。俺にも回復魔法は届いている」

そうは言うが出血でそんな青い顔して大丈夫なのかよ……

「…………分析なら負けない」

康太が自分のペルソナ、ゴエモンを呼び出す。

そしてジオンガを放つ。

『甘いわ、見えてるのよ!』

しかしその攻撃は回避される。

「…………甘いのはお前だ」

しかし土屋が回避した場所に向かいカッターを投げ込む。

『まさかあたしの動きを読むなんて』

「…………言っただろう。分析のやりないなら負けないとな」

「すごい、これなら勝てるかも……」

里中の言う通り、これで俺達にも勝利が見えてきたかも……

 

 

吉井明久視点

 

 

僕の視力がようやく回復してきたとき戦況は再び変わり、ムッツリーニが一人で戦いを続けていた。

「いや、駄目だ、他の攻撃が通じないのは変わらない、このままじゃムッツリーニの方が先に力つきる」

僕と同じように目が見え始めたのか雄二がそう分析する。

「ならせめて援護を」

低下魔法すら避けられるとはいえ強化魔法と回復魔法の援護くらいはできる。

「それも前提だがそれでも出血の多さは誤魔化しきれない……」

雄二が悔しげに言葉を出す。今こいつは必死に打開策を練っているんだろう。

「攻撃を当てられなくても時間稼ぎくらいはできるよね」

僕はムッツリーニのもとに行く。

せめて的を散らして少しでも雄二の策を練る時間を稼がないと。

「ク、クマ、何の役にも立たないクマ」

「クマは無理しないでいいよ、いざとなったら逃げると良い」

これはペルソナ能力を持つ僕たちの役目だ。クマはもう十分僕たちの力になってくれた。

そのとき、りせのシャドウが僕たちに視線を向ける。

「…………全員下がれ!?」

ムッツリーニが焦ったような声を出す。

『はーい、解析完了……まずは邪魔な後ろの連中から吹き飛ばしてあげる』

「や、やめるクマ!」

僕たちは防ごうとするがりせから強力な力が溢れて吹き飛ばされる。

「う、うそだろ、こんな」

「…………くっ、避けきれなかった」

ムツリーニも予想していたのに避けきれずに大ダメージを負う。

「クマはどうすればいい……みんな……アキヒサ……」

一番後ろにいたクマだけは被害を受けずに済んだけど……

「クマ、無理はしないで、逃げて」

クマだけでも無事なら僕たちに何かあってもまだ希望はあるかもしれない。

「みんなを見捨てて? クマだけで……そんなことできないクマ!」

しかしクマはそれを拒否する。

「クマはまた独りぼっちになるの? いや……いやクマよ!」

「…………もう一発、来るぞ」

ムツリーニが敵の様子を見てそう言う。

『は~い、またまた解析完了ぉ、さよなら、永遠にね!』

せめてみんなの盾に、僕は前に出ようとする。

しかしふらつく僕より先にクマが僕たちの前に立つ。

「か、考えるより先に体が……何前に出てるんだ、わしゃあ!?」

「クマ?」

「と、とんでもないことをしそうでクマってしまう自分! こ、こうなったらやってやるクマ!」

なにかよくわからないけどクマが何かをしようとしているの?

「クマの生き様、しっかりとみておくクマー!」

『な、なにこれ、すごい高エネルギー』

クマの体からすごい力が溢れだしているみたいだ。

『これ、あの変な奴? 突っ込んでくる気!?』

「クマ、てめえ、なにする気だ、おい!」

「ぬぉぉぉぉ!」

クマが全力でシャドウに突っ込む。

『でも……当たらなければどうということはないのよ!』

でもシャドウがその攻撃を回避しようとする。

「…………そうはいかない!」

しかしクマに気を取られた隙を逃さずムッツリーニがその足にカッターを投げる。

「行くクマァァぁ」

『キャァァ』

そしてクマが突撃し周囲が光に包まれた。

 




今回はここで中断です。ムッツリーニの武器ですが召喚獣と同じにすると陽介と同じになるので投擲武器としました。初期武器はカッターで投げていますね。
しかしペルソナ5発表されましたね。発売までにこの小説どれだけ進めるかな。
では次回もよろしくお願いします。

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