バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第八十三話

6/24 金 曇

 

 

「それで、彼どうするの?」

僕たちの前にいるのはムッツリーニだ。昨日の件で放課後こいつもついてくることになった。

とりあえず僕たちで相談するために離れて待ってもらっているけど……

「今回のマヨナカテレビって土屋が興味持つような内容だったの?」

美波が僕たちに聞いてくる。そういえば文月側で今回のマヨナカテレビ見たのは雄二とムッツリーニだけだったか。

「うん、久慈川りせがストリップするって……」

「「ギャアアアア」」

その瞬間僕と雄二の腕の関節が外され悲鳴が上がる。

「アキ、妙なこと考えてないわよね?」

「……雄二、浮気は許さない」

「「僕(俺)たちはまだ何も言ってない(ねえ)!?」」

行動を起こす前に怒られるのは理不尽だと思う。

「ま、まあ、それを阻止するために行くんだろ」

陽介がフォローしてくれて僕たちの腕は解放される。

「サンキュ、陽介、助かった(ゴキ)」

「危なく腕の関節が砕けるところだったよ(ゴキ)」

「いや、先輩方、なんで何事もなかったように関節はめなおしてるんスか……」

「完二くん、あまり気にしないほうが良いよ」

完二の言葉に里中さんが答える。慣れだよね。

「それで、土屋くんはどうするの?」

天城さんが話題を戻す。

「はっきり言ってムッツリーニを振り切ってテレビに入るのは難しい」

雄二が僕たち全員を見渡して言う。確かに逃げ慣れている僕と雄二だけならともかく、他のメンバーはムッツリーニの身体能力を振り切るのは難しいだろう。

「じゃ、中に連れてくのか?」

「それしかないだろうな」

陽介の問いに雄二が答える。

「……それじゃあ土屋の影と戦うってこと?」

「いや、前もって説明して受け入れる態勢を取らせる」

霧島さんの言葉に雄二がきっぱりと言う。

「受け入れさせるってどうするの?」

「あいつの隠したい部分なんてわかりきってるだろう」

「「「あー」」」

全員が納得したような声を上げる。

確かに、全く隠せていないがあいつの隠したいのはエロ関係に決まっている。

「まあ、受け入れやすいように一度男だけで行こうと思う」

「ああ、確かに彼の場合男同士のほうが受け入れやすいかもね」

雄二の言葉に里中さんが納得したように頷く。

「坂本、そういって男だけでストリップを見に行くわけじゃないわよね?」

「バカ言うな、島田、俺だって命は惜しい」

そのようなことをしたら僕と雄二の死は確定だろう。

「……巽、しっかり見張っておいて」

「うっす、了解です」

「雄二と明久だけでなく俺も信用ないんだな……」

「花村くんはこっそり私たちの水着準備する人だし」

陽介の言葉に天城さんが答える。どうやら男性陣で一番信用されているのは完二のようだ……

「とりあえず久しぶりにクマの様子見たいしテレビの中までは行くね」

 

 

僕たちはムツリーニとテレビに向かう。そして向こうの世界のことを説明し影を受け入れるようにと話す。

「…………そもそも俺はエロになど興味がない」

「すぐばれる嘘はつかないで良いから」

「ほら、明久にすら見破られているんだ、諦めろ」

なんか最近みんなが最低の基準で僕を出しているような気がする。

「…………なん……だと?」

「いやそこまで驚愕するようなレベルじゃねーだろ」

付き合いの浅い陽介ですらわかるレベルだというのに。

「…………くっ……わかった、受け入れよう」

渋々とムッツリーニも認める。

ムッツリーニが了承したのを確認してから僕たちはテレビの中に入る。

 

 

「おーい、クマクマ?」

僕たちがテレビに入るとクマが僕たちのほうを向かずに遠くを見ている。

「クマ、泣いてないよ」

クマは拗ねたような声を出す。

「どうしたの?」

「みんな、クマのこと忘れて楽しそうに……クマ、見捨てられた」

「そ、そんなことあるワケないじゃない」

「そ、そうよ、たしかに学園祭とかあったけど一月くらいだよね」

クマの言葉に里中さんと美波が答える。

「クマの体感的にはもっと長い時間経ってるクマ……」

完二助けてから清涼祭に行ったり林間学校行ったりしたからたしかに長い時間が経ってるような気がするけど……

「ごめんね、寂しかったの?」

「タイクツでヒクツしてたクマ。どうせクマは自分が何なのか知らないダメな子クマ。答え見つからないしみんなは来ないし。そっちの世界の楽しそうな声まで聞こえる気がして……寂しいから泣いてみようと思ったけどムリだったクマ……」

「まあ、からっぽだしな」

陽介が突っ込む。

「カラッポカラッポうるさいクマ!」

「そもそもそんなんでこの世界が平和になったらどうするつもりなんだ」

「まったくだ、お前がここで静かに暮らしたいっていうから犯人捜し手伝ってるんだろうが!」

雄二と陽介が痛いところを突く。

「まーまー、クマ君も考えすぎて疲れちゃったんだよね?」

「……悩みすぎてもよくない」

「独りだと色々考えちゃって寂しさ倍増中クマ、みんながいないと切なくて、胸が張り裂けて綿毛が飛び出しそうクマ」

「いや、クマには綿毛もないよね」

男性陣はツッコミに回っているが女性陣は同情しているみたいでクマをなでる。

「いつか逆ナンしてもよい?」

しかし調子に乗ってそのセリフを吐くとは……

「うわ、なにクマ!?」

「…………外した」

ムツリーニの投擲したカッターがクマをかすめる。

「僕が続く!」

続いて僕が木刀を振りかぶる。

「わわ、アキヒサまでなにするクマ!?」

「こいつらの前でそんな発言するクマが悪いな」

「ああ。自業自得だ」

クマの言葉に雄二と陽介が言う。

「そもそも、君はだれクマ?」

「…………土屋康太」

「ああ、そのことは説明しよう」

今までクマへの攻撃をニヤニヤしながら見ていた雄二が説明をする。

「けどムッツリーニはクマを見ても動じないんだね」

「…………男の着ぐるみに興味はない」

とてもわかりやすい理由だ。

「ふーむ、なるほど、アキヒサたちの友達クマか」

「それで、今こっちどうなってる? 久慈川りせって女の子来てないか?」

陽介が久慈川りせが来ていないかを確認する。

「鼻の調子悪くてわかんないクマ……」

「この前みたいに情報あれば探せない?」

「わかんない。なんとなく誰かがいるような気はするけど……」

「じゃ、アキたちが土屋のほうの相手をしている間にウチらは聞き込みをやってるわ」

「うん、よろしく」

こうして僕らは二手に分かれて行動をすることにした。

 

 




日曜だけど昼過ぎまでは仕事していてこの時間にようやくあげれました。
今年中はこんなペースになりますがどうか見捨てないでください。
では次回もよろしくお願いします。

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