バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第七話

「それでさ、吉井くん、これ聞いていいのかわからないけど、なんで転校してきたの?」

下校中に里中さんが聞いてくる。ここは僕が馬鹿なせいで転校したことがバレないように……

「さっきモロキンと話していた成績ってどういうこと?」

僕のバカァァァァ! みんなの前でばらしちゃってるじゃないか!!

「あ、聞いちゃまずかった?」

「いや、そういうわけじゃないよ、実は……」

ここで気まずくさせるわけにいかないし僕は事情を話すことにした。

「へえ、吉井くんの学校って成績でクラス分けとかそんなことやってたんだ」

「千枝、文月学園は色々な試みをしている試験校として有名だよ」

感心している里中さんに天城さんが言う。

「転校生って聞いてもっとシンドい理由かと思ってたよ」

里中さんは僕に気を使ってくれたみたいだ。

「ここ、ほんっと、なーんもないでしょ。そこがいいトコでもあるんだけど、他所の人に言えるようなものは全然……」

里中さんは話題を変える。ここのことを教えてくれるみたい。

「あ、八十神山から取れる……なんだっけ……」

山から取れる? となると……

「金とかミスリルとかが取れるとか?」

「あ、いやそういうのじゃなくて染物とか、焼き物、それはちょっと有名かな」

「っていうかミスリルって何……」

なにか天城さんが小声で言っているけど里中さんは話を続ける。

「ああ、あと雪子んちの天城屋旅館は普通に名所!」

「え、別にただ古いだけだよ」

「隠れ家温泉とか言って雑誌とかにもよく載ってるじゃん」

「そうなんだ、それなら僕も行ってみたいな」

温泉でのんびり過ごすのは楽しそうだ。僕の悪友たちなら覗きとかを考えるだろうけど。

「この町で一番立派な老舗旅館でね、雪子はそこの時期女将なんだ。雪子んち目当ての観光客とかも来るしこの町それで保ってるよね、実際」

「……そんなことないけど」

天城さんは謙遜してるけどすごく立派な旅館みたい。僕みたいな高校生が気楽に泊まるような場所じゃなさそう。

「ね、ところでさ、雪子って美人だと思わない?」

里中さんは突然そんなことを聞いてくる。確かに天城さんはすごい美人だ。でもそんなこと素直に言って良いんだろうか。素直に言ってそのあと天城さんファンに僕が命を狙われるとか、または親友を狙う危険人物として花村くんと同じように急所を……

「え? 何でそんなに考え込んでるの?」

「ちょっと、またいきなりそんなこと言って……」

「あ、ごめん、でもたしかに天城さんはすごく美人だと思う」

しまった! 考え込んでいる途中に言われて思わず本音を言ってしまった。

「でしょ、学校でもすごいもモテんのにさ、彼氏ゼロとかおかしくない?」

そんなにおかしいかな?

「前の学校にも美人で勉強も学年主席なのに全部断ってるって子はいたよ?」

僕の言う相手、霧島さんは実は異性に興味がないって噂が流れていたけど……まさか天城さんも!?

「や、やめてよいきなり。ぜ、全部嘘だからね。モテるとか、彼氏ゼロとか!」

え!? 天城さん彼氏いるの!?

「あ、違った、えっと、違うから! 彼氏とか要らないし!」

彼氏がいらない!?

「ということは彼女がほしいとか?」

「そ、そんなわけないじゃない! なんでそうなるの!?」

「そっか、よかった」

なぜかはわからないが僕は同性愛者とは相性が悪い気がした、そして天城さんは違うと聞いてほっとした。

「もう、千枝……」

「あっはは、ごめんごめん。だってせっかくなのに雪子ノリ悪いんだもん、吉井くんの反応にはちょっとびっくりしたけど」

ただの友人同士の冗談みたい。

「あれ、なんだろ?」

そうやって話していると里中さんが前の方を見ていう。

「なんか人が集まっているね」

気になったから僕たちはそちらに見に行くことにした。

そこは警察の人たちがいて、近くで主婦の人たちが噂話をしている。

「これ、さっき放送で言ってた事件?」

聞こえてくる主婦のおばさん達の噂ではアンテナがどうとか早退した高校生がどうとか……

「こわいわね、こんな近くで死体なんか……」

「え、今なんて、死体!?」

死体が出たって……なにがあったんだろ、ってあの人は……

「おい、ここで何している」

「あ、叔父さん、うん学校の帰りなんだけど……」

そこにいたのは遼太郎叔父さん、菜々子ちゃんが言うには刑事って話だし、事件というならここにいても不思議じゃないよね。

「ああ……まあ、そうだろうな。ったくあの校長、ここは通すなっていっただろう……」

叔父さんぼやくように言う。

「……知り合い?」

「うん、僕の叔父さん」

家族を安心して紹介できるなんて初めての経験だ。

「コイツの保護者の堂島だ。あー……まあ、その仲良くしてやってくれ」

と、叔父さんは挨拶をしてから。

「とにかく3人とも、ウロウロしてないでさっさと帰れ」

叔父さんはそれだけ言って現場に戻る。

なんか新人らしい若い刑事さんが隅に行って吐いていた。

なんか平和そうな町なのに大変そうだなあ……

「ねえ、雪子、ジュネスよって行く予定だったけど今日は帰ろうか」

里中さんたちは寄り道の予定をやめるみたい。殺人事件とか起こったなら不安になるのはわかる。でも僕は夕食の材料買わないとなあ。

「ねえ、ここって食材買うのにどこ行けばいいかな?」

「え?まっすぐ帰ったほうが良いんじゃない?」

「でも冷蔵庫空だし……」

「そっか、それならジュネスが良いと思うよ、あそこ行けば何でもあるしさ」

そのあと家に帰る里中さんたちと別れて僕はジュネスに向かうことにした。




原作ではまっすぐ帰りますが食事を作るならとジュネスに寄り道。
しかし……七話にしてようやく事件発生、完結までいったい何話かかるんでしょうね。
先の場面をパーツごとに色々妄想はしてるんですがそこまでたどり着くまでに時間はかかりそうです。のんびり見守っていただけると嬉しいです。

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