バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第七十五話

「またお会いしましたな」

カレー(?)を口に含んだと思ったらリムジンにいた。

でもこの現象には覚えがある。

前に夢の中でベルベットルームに呼ばれた時と違い意識を取り戻す前になんか訳の分からない言葉を色々言われていたけどイゴールさんが訳の分からない事を言うのはいつものことだしね。

「えっと、僕はカレーで意識を失ったんですよね。そして夢の中でここに呼ばれたってことですか?」

夢でベルベットルームに呼ばれるのは初めてじゃない。つまり現実の僕は意識を失ったけど生きているということだろう。

「残念ながら現実のあなたは死にかけております」

「ええ!?」

安心して話をしようとした僕に対してイゴールさんは残酷な現実を告げる。

「本来なら先ほど申したとおりここで客人の定めは途切れることになりかけていましたが……」

そう言ってマーガレットさんの方に視線を向ける。

「納得できないので今一度現実に戻ってもらおうと思います」

マーガレットさんは顔は微笑んでいるけどなぜか怒りのオーラを出している

「えっと……僕何かしましたか?」

「私は貴方の力に興味があるわ」

とりあえず美人のお姉さんが僕に興味があるというのは喜んでいいところだろうか。

「貴方が力が足りずに旅路を終えるのならそれはそれで仕方がないこと、でもカレーを食べて死の結末を迎えるというのは貴方に力を貸した身としては認められないことよ」

「つまりどういうことですか?」

遠まわしに言われても僕には理解できない。

「シャドウや事件の犯人に殺されるならまだ良いけどそんなバカみたいな死因は嫌だということよ」

「できればシャドウや犯人に殺された時も助けて欲しいんですけど」

「それは不可能というもの。今の貴方は……そうですね。貴方の経験で言えばまだ川を渡る前、向こう岸に行ってしまえばわたくし共でも助けることは不可能というものです」

なるほど、いつものように臨死体験をしているだけということか。

「今度またくだらない理由でここに来たら許しませんからね」

僕はマーガレットさんから逃げるように現実に帰還することにした。

 

 

「お味はどうでしょうか?」

現実ではほとんど時間が経っていないのか姫路さんが僕に訊ねてくる。

「は、あはは……なかなか個性的な味だね。お、美味しいよ……」

「そっか、まったく、花村は大げさなんだから」

僕の言葉を信じたのか3人は安心したような表情を浮かべる。

そうだ……陽介は!?

「あれ、小西先輩、なんでそこに……はい、俺も川を渡ってそっち行きます……」

テーブルに突っ伏している陽介が呟く。これはヤバイ!?

「陽介、その川を渡っちゃいけない!? 帰ってくるんだ」

僕は陽介に蘇生術を施す。前まではよく鼻血で死にかけたムッツリーニ相手にやっていたが……転校して以来やってない。上手くいけば良いけど……

「あ……ぐ……うう……ここは……」

よかった、上手くいった!

「陽介、大丈夫?」

「明久? 俺は確か……」

陽介は記憶の混乱を起こしているようだ。無理もない。臨死体験初めてみたいだし。

「思い出した! なんだよ、このカレーは!!」

「ちょっと、陽介、落ち着いて」

せっかく料理を作ってくれたのにそれを不味いというのは失礼だと思う。僕は陽介にアイコンタクトでそう伝える。

「明久、それは違う。不味いなら不味いってはっきり言わねーとこいつらの料理の腕はいつまでたっても上がらねーんだ」

「えっと……美味しくなかったですか?」

姫路さんが僕にそう訪ねてくるが……僕は答えられずにいた。

「不味いなんてもんじゃねーよ! 冗談抜きでに死にかけたっつーの!!」

「し、死にかけたとか流石に大げさじゃないの?」

里中さんはそう言うが……彼女たちもなんとなく気付いてるのかもしれない。

「お前ら! いつまで食事をしている!! さっさと片付けてテントに戻れ!!」

僕たちが言い合いをしているうちに時間が経ちすぎたのかモロキンがやってくる。

「じ、じゃあ本当に不味いのかモロキンに判断してもらおうじゃないの!」

「え!? ちょっと待って、流石にそれはシャレにならな……」

「やべえって、それは停学……下手したら退学フラグだって!」

その言葉に僕達は慌てて止めようとするが……

「諸岡センセー、うちらの班カレー余ったんで先生も少し食べませんか?」

「ん? お前らのカレーなんて食べられたものじゃないと思うが……食べ物を粗末にするのはいかんな、どれ……」

モロキンがカレーを口に含む……

「ぐ……ぐはぁ……」

そしてモロキンが卒倒する。

「「「……ごめんなさい」」」

女子3人が謝罪する中、僕たちは今日の夕飯が抜きということが確定した。

ちなみに介抱して蘇生したモロキンはショックのあまり記憶が飛んでいた……停学喰らわなくて済んだなあ……




バカテスの男子たちは女の子の料理にまずいと言えないんですよね。実際に女友達にきついことを言い難いという心理は理解できますけどね。
でも陽介ははっきりと言うタイプなんですよね……
まあ、でも実際難しい問題なんですよ。ギャグネタとして、瑞希の料理ベタはとてもおいしいものです。私もこの個性は残して明久たちに苦しんでもらいたいとも考えましたし。
まあ、一朝一夕で上手くなるわけはないのでまだ地獄から解放されることはないですけどね。
では次回もよろしくお願いします。

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