バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第七十三話

6/16 木 曇

 

 

明日から林間学校。僕たちは飯盒炊飯の買い出しのためジュネスに向かっていた。

「ねえ、カレーでいいよね? 人気No.1の国民食」

「うん、もちろんこういう時の定番だよね」

「キャンプの時のカレーって妙に美味いんだよな」

里中さんの提案に僕と陽介は即座に答える。

「明久くんはカレー好きなんですか?」

姫路さんが僕に話しかけてくる。

「うん、もちろん好きだよ」

「カレー嫌いって人は少ないよね」

勿論嫌いな人はいるんだろうけど割と少数派だと思う。

「辛さはどのくらいが好きですか?」

「う~ん、そうだね、僕はどの辛さでもいけるけど」

「あ、私あんまり辛いのは苦手」

食べられるというだけで僕は満足、けど天城さんは辛すぎるものは苦手みたいだ。

「なら甘口で良いんじゃないか?」

陽介が提案する。こういう時は辛いのが苦手な人に合わせるべきだよね。

「甘口……ということは甘味が必要だから……」

姫路さんが考え込む。隠し味とかを考えているのかな。これは結構期待できるかも。

そうやって話しているうちにジュネスに着く。

「おっと、俺買う物あるんだ。明久、ちょっと付き合ってくれ」

「え? 別に良いけど……荷物持ちくらいしないと」

「大丈夫ですよ、明久くん。買い物は私たちに任せてください」

「うん、そうだね、買い物くらいあたし達だけでいいよ」

陽介の言葉を聞いて姫路さんと里中さんは陽介に付き合うように促してくれる。

「それじゃ、お言葉に甘えて陽介の方に付き合うかな、それで、何を買うの?」

「付いてくればわかるって」

なぜか陽介はニヤニヤと笑っている。

これはもしかして……保健体育の参考書を買いたいけど店員が知り合いだから恥ずかしいとかかな? まあ、陽介はここで働いているし、この町では他に店が少ないしなあ。仕方ない、陽介に協力してあげよう。

 

 

陽介の行動は僕の予想をはるかに上回っていた。

「どうもー」

陽介は女性水着売り場に入っていく。僕はこういう場所に居心地の悪さを感じるのになぜ陽介はこんなに堂々と入っていけるんだろう。

「あら、陽介くん」

店員のお姉さんとは顔見知り気軽に声をかけられる。

けど陽介はこんなところに何の用なんだろう……待てよ、今は林間学校前だ。林間学校では川で泳ぐことができるらしい。そして水着売り場に来たということは当然水着を買いに来たということだ。

つまり……

「そうか……陽介、この前の事件で女装に目覚めてしまったのか……」

しかしいきなり学校の林間学校で女物の水着を着るのは問題あるだろう。

「陽介、そういう趣味なのは仕方がないけどせめてもう少し人目に付かない時が良いと思うよ」

例え女装趣味でも陽介は大事な友達だ。せめて僕だけは見放さないようにしないと……

「え? 何の話?」

「例え陽介が女装趣味だろうと僕は友達だよ。でも女子のみんなはショックを受けると思うんだ」

店員さんと知り合いなのは既に何着か買っているんだろう……

「ちげーよ!? っていうか女装趣味なのはお前だろうが! 清涼祭のときもメイド服着てたし!!」

「あれは常夏コンビを退治するために仕方なく着たんだよ!」

まるで僕を変態みたいに言うのはやめて欲しい。

「そもそも女装じゃないならなんで女性水着売り場に来たのさ?」

「なあ、明久、女子たち……里中、天城、姫路の水着姿、見たくないか?」

「見たいに決まってるよ!」

陽介の言葉に僕は即座に返答する。

「すごい食付きだな。でもあいつら水着持ってくるかわからないだろ? だから準備しておこうと思ったんだよ、でも俺じゃ女性用水着とかわからねーから知り合いの店員さんに見立てを頼んだんだ」

「そっか、よかった、陽介が女装に目覚めたんじゃなくて」

「普通そっちの発想にはならねーだろ……まあ、明久だから仕方ねーか」

陽介が諦めたように言う。

「それで、僕が付き合う必要はあったの?」

「ん、ああ、それなんだけどな。水着買おうにもあいつらのサイズとかってわからねーんだよ……」

「ええ!? でも僕だって里中さんたちのサイズなんてわからないよ!?」

むしろ陽介が知っているのなら教えて欲しいくらいだ。

「ああ、だからさ、この前土屋が服作ってただろ? あいつならわかるんじゃねーかなって思ってさ」

そう言えば清涼祭のときムッツリーニがその場にサイズの合う服を作ってたっけ

「……でもムッツリーニは携帯もってないんだよね、この時間なら補修が終わった頃だから学校にいると思うけど」

試験召喚戦争の影響で最近補修が増えたと雄二が言っていたので僕たちの学校より終わるのが遅いらしい。

「なら雄二に電話して代わってもらったらどうだ?」

陽介に言われて僕は雄二に電話をしてみる。

『明久か、何かあったのか?』

丁度補修が終わったばかりらしく雄二は電話に出てくれる。

「あ、雄二、そこにムッツリーニはいる?」

『ん、いるな、事件の方じゃないのか?』

「うん、今回は別件」

『そうか、おーい、ムッツリーニ』

電話の向こうで雄二がムッツリーニを呼ぶ。

『…………もしもし』

この話し方は間違いなくムッツリーニ本人だ。

「実は里中さんと天城さん、そして姫路さんの服のサイズを知りたいんだけどムッツリーニは知ってる?」

『…………その程度一般常識』

姫路さんはともかく里中さんと天城さんとはほとんど面識がないはずなのに……相変わらず恐ろしい男だ。

「それじゃ教えてくれる?」

「…………一人500円、と言いたいところだけど3人なんでセット価格で2000円」

「よし、買った!」

陽介が水着代を出すなら僕もそれなりの資金提供は必要だろう。

「…………代金は今度受け取りに行く」

その後、店員さんに伝えて僕たちは水着の購入に成功した。




ペルソナ4原作で陽介はどうやって千枝と雪子の水着のサイズを知ったんでしょうね。店員さんがムッツリーニ並の眼力を持っていたんでしょうか。
ということで陽介、明久ともに千枝たちの買い物を知らずに現地に向かうことになりました。
ちなみにムッツリーニの情報料は誤字じゃないですからね。
では次回もよろしくお願いします。

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