バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第六十九話

「はぁ……まさか姉さんが帰ってきてるなんて……」

あの後もイザナミの話を引きずり菜々子ちゃん対象のロリコン扱いを受け、またもや命の危機にさらされたが、なんとかそれも収まり今は僕の部屋に引き上げてきている。

「お前も家族で苦労してるんだな」

雄二が僕を憐れむように見てくる。いつもは僕を率先してからかうけど珍しく今日は味方だった。

ちなみに今僕の部屋に来ているのは雄二、陽介、完二、僕の4人。秀吉、ムッツリーニ、美波、姫路さんは家に帰り、霧島さんは里中さんと天城さんを家に連れて帰って女子同士でお泊り、菜々子ちゃんは姉さんの部屋に泊まることになっている。

「雄二は霧島と一緒に帰らなくてよかったのか?」

「俺はやることがあるからな。里中たちが一緒にいたおかげで翔子も無理やり俺を拉致することもなかったし」

「普段は拉致されてるんスか……」

完二はまだ雄二と霧島さんの関係に慣れてないようだ。

「やること……そうか、やっぱダチの家に来たら部屋でのエロ本探しは基本だよな、やっぱベットの下とか?」

陽介が笑いを浮かべてムッツリーニのやりそうなことを言い出す。

「え!? まさか、陽介、そんな安易なとこに隠しているの?」

「そんなとこに入れておいても隠してるとは言えないよな」

雄二も僕と同意見のようだ。

「いや、俺だってそんなわかりやすいとこではないけどよ」

「そうだよね。命がかかっているのにそんなみつかりやすいとこに置くわけないよね」

「かかってねえよ!? なんでお前らは命かけてまでエロ本読みたがるんだ!?」

陽介の叫びに僕と雄二は呆れる。

「例え命がかかってようと僕はエロ本を読むのをやめない!」

「ま、うちのクラスの場合はそれ以外にも色々使い道あるしな」

時として男は命をかけてでもやらなくてはいけないことがある。

「それ、今じゃねえよな……ところで完二はどこに隠してるんだ?」

「は、はあ? も、持ってねえよ、そんなもん!」

呆れたように陽介は僕たちを見たあと完二に話を振る。

「おいおい、男だけなんだから隠さなくたって良いだろ」

「だ、だから持ってねえって言ってんだろ! そもそもそういうモンは18歳になるまでは見ちゃダメなはずだろ!」

「おまえ、妙なところで真面目だよなあ……」

確かに完二は妙なところで律儀に決まりを守りそうだ。でも……

「完二、そういう考え方じゃダメだよ。あれは保健体育の参考書、勉強のために持ってるんだよ」

そう、僕らはエロい気持ちで持ってるんじゃない。純粋に勉強のために持っているんだ。

「そ、そうだったんスか! な、なら俺も持っていいんスか?」

「もちろん、勉強のためだからね!」

僕は完二に力説する。

「すげえな……完二のやつ明久に説得されてるぞ」

「ああ、あいつもバカだからな」

雄二と陽介が呆れた目で僕たちを見てくる。

「それで、結局雄二と明久はどこに隠してるんだ?」

陽介はどうしても僕たちのエロ本の隠し場所を知りたいようだ。

「俺の場合は本棚の下や天井裏、防水加工して熱帯魚の水槽の中とかに隠してるな」

「それ、取り出すのに苦労しそうっスね……」

雄二の返事に完二が感想を言う。

「それくらいしないと霧島の目は掻い潜れないってことか……」

「いや、翔子だけじゃなくお袋もなかなか目ざとくてな……」

男たちの同情の視線が雄二に注がれる。霧島さんだけでも大変なのにお母さんも見つけるんだ……

「僕はそこまでは苦労してないよ。もともと一人暮らしだったし、引っ越す前に姉さんが家探しすることを予想して対策を打ったしね」

そう言って机の引き出しの二重底の仕組みを解除する。

「お? これって死神のノートを隠すときにやってた仕掛けか?」

そう、僕は某マンガを参考にしてもし二重底に気づかれてもエロ本が燃えて証拠が隠滅するように仕掛けをしておいたのだ。

「姉さんはマンガを読まないからね。この仕掛けを見破れるわけが……」

そう言ってあけた中にあったのは……

『姉萌本でないので捨てておきました。 姉さん』

と書かれた紙……

「素で解除したみたいだな」

「さすがハーバード卒、天才だな」

「先輩の考え完全に読んでますね」

そして他の隠し場所の本も全滅していた……さすが姉さん、一族に刑事がいるだけあって家探しは得意ということか!?

「落ち込んでいるところ悪いが明久、俺の用事の方に移って良いか?」

「そういえばやることがあるからって言って残ってたよね。なに?」

僕もこいつがわざわざエロ本探しのために残ったとは思わない。そういうことするのは陽介かムッツリーニくらいだろう。

「ああ、明日の試験召喚大会のためにお前に勉強叩き込もうと思ってな」

「え!? でも僕は試験受けたし結構点も取れてるよ?」

「大会のレギュレーションは試召戦争と同じだからな、明日の午前中に再試験を受けるのは可能だ。それに明日の教科は日本史。一夜漬けでも結構点数が伸びやすい教科だ」

「別にそこまでしなくても良いんじゃ……」

「ダメだ、明日は絶対に負けさせるわけにいかねえんだ!」

僕としてはいざという時は霧島さんに交渉すれば良いと思っていたんだけど……霧島さんが絡んだ時の雄二は僕の話を聞いてくれない。

「頑張れよ、明久」

「俺たちは先に寝てるんで」

陽介と完二が先に寝る中、その夜は雄二に勉強を叩き込まれることになった。




陽介コミュの部屋に遊びに来るイベントから話が広がりました。明久はそんなところに隠さないよなあと言う気持ちから場所を実家にして雄二と完二も巻き込んでみました。
では清涼祭編もようやく終わりが見えてきました。次回は二日目。
では次回もよろしくお願いします。

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