バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第六十六話

雄二と陽介が負けたため僕と姫路さんはもう負けることができない。

相手は……常夏先輩だったっけ?

よく覚えてないけど準決勝、本日最後の試合が始まる。

「恥かくのを承知でよく顔出せたな、吉井」

坊主頭の先輩が僕に声をかけてくる。

「そちらこそ後輩に負けたあとの言い訳は考えてるんですか、常夏先輩」

「ちょっと待て、お前対戦相手の名前すら覚えてないのかよ!?」

あ、違った、そういえば常夏ってのは相棒と組み合わせた名前だったっけ……

「そ、そんなことありませんよ、ちゃんと覚えてますよ、変態先輩……でしたっけ?」

「自信なさそうにありえない名前出してるんじゃねーよ! これだからバカは……」

「ち、ちょっと人の名前覚えるのが苦手なだけじゃないですか!」

「覚えるのが苦手なのは人の名前だけじゃねーだろ!」

くっ……坊主先輩の言葉に何も反論できない……

そんな風に坊主先輩と言い合ってるうちに司会の先生の観客に向けての召喚獣の説明が終わる。

「それでは、試合開始!」

「「「「試獣召喚(サモン)」」」」

 

Fクラス  姫路瑞希

保健体育  389点

   &

ゲスト   吉井明久

保健体育   82点

    VS

Aクラス  夏川俊平

保健体育  201点

   &

ゲスト   田中次郎

保健体育  373点

 

「へっ、言ったとおり恥じゃねーか、てめえだけが二桁だぜ」

「先輩だって偉そうに言うほどの点数取れてないじゃないですか」

200点は立派なものだが、他と比べると高いわけではない。坊主先輩の相棒は……あれ? 雄二達と戦った相手にそっくりに見える。

「双子の兄の無念は俺が晴らす!」

「無駄にキャラ立てようとしなくて良いよ!」

「そ、そうか? せっかく観客も多いから目立とうと思ったんだけど……」

「あの、流石に観客席に会話までは聞こえてないと思います」

「そうか……」

姫路さんの言葉に落ち込む田中次郎さん、意外と悪い人ではないのかな?

「そっちの女は結構点数高いな。だがそのくらいの点数差だったら二年と三年の経験差で埋めれるんだぜ。それともたかが80点程度のお前が俺を相手にするのか?」

いやみったらしく坊主先輩が言う。

「吉井くん、ここは私が急いで一人を倒して……」

「いや、姫路さん、坊主先輩は僕が倒すから姫路さんはあっちの得点の高い人の方をお願い」

いくら姫路さんでも保健体育は腕輪を持っていないみたいだ。特殊能力なしで速攻で倒そうとしたら思わぬミスが出るかもしれない。だけどじっくりやれば点数も高いし操作技術でも他校の生徒には負けることはないだろう。

「はっ、学校を転校した野郎が低い点数で3年とやり合おうなんてバカとしか言えねえな」

「それはやってみればわかることだ!」

僕は召喚獣で坊主先輩の召喚獣に切りかかる。

「姫路さん、そっちは任せたよ!」

「は、はい」

姫路さんも田中さんに向かっていく。

「そんな貧弱な攻撃で俺に通じるかよ!」

僕の攻撃を受け止めて坊主先輩は言う。確かに言うだけあって動きが今までの二年生たちとは違う……

「偉そうに言っておきながらセコイ妨害外工作してましたよね」

「あれはお前らが恥かかないようにっていう俺たちの親切心なんだよ!」

坊主先輩が話しながら仕掛けてくる攻撃を受け流す。力で負けていても攻撃を受け流せばダメージはない。

「それで失敗して僕の後輩にボコられていたんだ。今回も失敗してそっちに恥かかせてやるよ!」

普通に考えて誘拐しようとするのはやりすぎだ。勝つために手段を選ばないという考えは僕と雄二にとっても同じだが犯罪行為はしない(ムッツリーニの盗撮、盗聴は除く)。僕は反撃しながら言い放つ。

「てめえのツレのおかげで命拾いしただけだろうが!」

僕の攻撃が当たったが浅い……かすっただけか。

「命拾いしたのはそっちだ! 言っておくがお前が誘拐しようとした僕の従姉妹の父親は刑事だからな!」

「な、なんだと!?」

動揺して隙ができ僕の一撃が腕に入る。

 

Aクラス  夏川俊平

保健体育  174点

 

でも思ったよりダメージは少ない……やはりこの点数差だと急所に決めないと致命傷にはならないな。

「やってくれるな、てめぇ……だが経験の違いってやつを見せてやる。召喚獣にはてめえらの知らない戦い方もあるんだよ!」

そう言って坊主先輩は少し距離を取る。

「うおおぉぉぉ」

そして気合を込め始める……まさか3年生には僕らの知らない何かが教えられているのか!?

そう思って召喚獣に注意を払っていたけど坊主先輩がニヤリと笑うのが視界の端に見えた。

「いけっ!」

なにか企んでいるみたいだけど攻撃を仕掛けないとどうしようもない。僕は召喚獣を向かわせる。

「そら、引っかかった!」

その瞬間、坊主先輩が僕に目潰しの砂を投げつけてくる。

「はは、卑怯とは言わねえよな、てめえのダチの坂本も試召戦争では相当きたねえこともやったそうじゃねえか!」

そして勝利を確信したのか自信満々に僕の召喚獣に切りかかってくる……けど

「言いませんよ、その程度の不意打ちくらいには!」

これが文月学園で召喚獣でだけ戦っていたなら引っかかたかもしれない。

「戦場で……本体を狙われることは慣れてるんだよ!」

テレビの世界ではペルソナが戦っているうちに他のシャドウが本体を狙ってくるというのはよくあることだ。だから僕は戦闘の時に戦場全体を見わたす癖をつけている。

「姫路さん!」

だからこの位置関係だと……

僕は勝利を確信して大振りになった坊主先輩の召喚獣にに対して体当たりをさせ、吹き飛ばす。

「僕ごと攻撃して!」

そしてそのまま姫路さんが戦っているところに割り込み、その勢いのままついでに姫路さんと戦っている田中さんにもぶつかる。

「わかりました!」

フィードバックがあればこんな作戦は取れなかっただろう。でも痛みがないなら自分を犠牲に敵をまとめて吹き飛ばすのに抵抗はない。

 

Fクラス  姫路瑞希

保健体育  353点

   &

ゲスト   吉井明久

保健体育  DEAD

    VS

Aクラス  夏川俊平

保健体育  DEAD

   &

ゲスト   田中次郎

保健体育  DEAD

 

そして高得点の姫路さんの攻撃が僕たち3人の召喚獣をまとめて吹き飛ばし、試合は終わった。




常夏コンビはここで退場です。ペルソナ組にとっては教頭の陰謀とか大した関係ないですからね。
そして学園祭一日目の学校パートもここで終了、次はお泊りパートです。
では次回もよろしくお願いします。

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