クレーム騒ぎの後僕と姫路さんが二回戦を終えて教室に戻って来た。二回戦の相手はCクラスの代表だったらしいけど姫路さんがいれば問題なく勝てた。
「吉井くん召喚獣の操作上手ですよね」
「去年観察処分者やってたからね、それで慣れているんだ」
姫路さんに問われて僕は答える。本当はペルソナのおかげなんだけどそれを教えるわけにいかない。
「ただいまー、あれ?」
「おかえり、お兄ちゃん」
教室に戻ると菜々子ちゃんが出迎えてくれるけど……
「なんかお客さんがいないね」
「うむ、ワシはずっと教室におったが、あれ以来クレームを付ける妙な客もおらんのじゃがのう……」
暇な時間に菜々子ちゃんと遊んでいてくれたらしい秀吉が僕の所に来て言う。
「もしかしてオレが手伝っているせいっスか?」
完二が申し訳なさそうに言ってくるけど……
「それはないじゃろ、巽はあまり表に出てきておらんしの」
「うん、それにこの学校の生徒はそんな繊細じゃないよ」
完二で寄り付かないならこの近辺で有名な雄二の方が人を遠ざけるだろう。
「うん、完二お兄ちゃんの作るのも美味しいから大丈夫だよ」
「そ、そうか……なら良いんだけど……」
僕たちのフォローと菜々子ちゃんの言葉で完二も安心したみたいだ。
「ただいまー、あれ? どうしたの?」
「お客さんいないわね、何かあったの?」
里中さんと美波も戻ってきてそう言う。
「おかえり、あれ? 天城さんは?」
「雪子は翔子のところに遊びに行ってるよ」
そっか、あとで霧島さんのところも見に行かないと、放っておいたら行かなそうな雄二を連れて行くことも前提だけど。
「お兄さん達、すいませんです」
「いや、気にするなちびっ子」
「そうそう、俺たちも目的地は一緒なんだから」
そうしていると外から雄二と陽介、そして女の子の声が聞こえてくる。
「んで、探しているのはどんなやつなんだ?」
雄二と陽介が小さい女の子を連れて入ってくる。
「あれ? 坂本、妹か?」
暇なFクラスの生徒が話しかける。雄二に妹がいるって話は聞いたことないけど。
「あれ、葉月どうしたの?」
「美波の知り合い?」
「うん、ウチの妹よ」
へえ、美波妹いたんだ。どうりで妹みたいな菜々子ちゃんがいるときは優しいわけだ。
「あ、バカなお兄ちゃんです!」
「あれ? 明久、知り合い?」
「ちょっと待って、陽介、なんでバカなお兄ちゃんですぐに僕を見るの!?」
「いや、だってバカって言えば明久だろ?」
「そんなことないぞ、バカはこのクラスにはいっぱいいる」
珍しく雄二がフォローをしてくれる。
「そもそも明久のバカは並じゃないからな、明久の場合すごくバカなお兄ちゃんになるはずだ」
「ありが……ってフォローと見せかけてバカにするのはやめてよ!? そもそも僕に菜々子ちゃん以外に小学生の知り合いなんて……」
「お久しぶりです、バカなお兄ちゃん」
「ぐはっ」
しかし美波の妹は僕に勢いよく抱きついてくる。それは良いけどみぞおちに頭が……
「アキって葉月と知り合いだったの?」
葉月ちゃん……どこかで聞いたような……
「ああ! あの時のぬいぐるみの!!」
「お兄ちゃんの知り合いなの?」
「うん、去年ちょっとあって……」
「へえ、もしかして吉井くんと美波って家族同士の交流あり?」
「え!?」
里中さんの言葉になぜか姫路さんが驚きの声を上げ、Fクラスが殺気に包まれる。
「そ、そういうわけじゃないよ、そもそも葉月ちゃんが美波の妹って今初めて知ったんだから」
あの時は観察処分者に認定されたりと色々あって忘れてたけど……
「はじめまして、堂島菜々子です」
「はじめましてです、島田葉月です!」
僕がクラスメイトに弁解している間に葉月ちゃんは僕から離れて菜々子ちゃんと挨拶を交わす。
「しかしこの客の少なさはなにがあったんだ?」
状況が落ち着いたところで雄二が訊ねる、
「そういえば、葉月ここにくる途中でお話を聞きました」
「え? お話って?」
葉月ちゃんの言葉に僕は聞き返す。
「中華喫茶は汚いから行かない方が良いと言ってました」
「性質の悪い妨害かよ……」
陽介が呆れたように言う。
「あの連中の妨害か……」
「あの連中ってさっきのモヒカンと坊主頭の?」
「ああ、名前は覚えてないが多分な」
「たかが学祭でそこまでするの?」
里中さんが疑問をあげるが僕もそこは同感だ。
「どうだかな、とりあえず様子を見に行くぞ、ちびっ子……じゃなくて葉月だったな、聞いたのは何処だ?」
雄二は奈々子ちゃんと並んでいるのを見てちびっ子から名前に訂正する。
「スカートの短い綺麗なお姉さんがいっぱいいるお店です!」
「よし、さっそく行こうぜ! 完二、お前も行くよな」
「オ、オレは別に……」
それを聞いて陽介が楽しそうに立ち上がる。正直僕も楽しみだ。完二は照れてるみたいだけど……
「せっかくじゃし巽も行くと良いじゃろう、里中や姫路、島田も、空いてるときに休憩を取ってもらいたいしのう」
「そ、そういうことならお供するっス」
「グズグズするな、行くぞ」
「そうだよ、女子を見に……じゃなくてスカートを偵察に行かないと!」
「アキ、本音を隠せて無いわよ」
「お兄ちゃん、そういうのはダメだよ」
美波が苦笑して奈々子ちゃんに注意される。
「ふむ、てっきり島田の明久へのお仕置きが出るかと思ったが注意だけとは……お主ら何かあったかのう?」
そう言えば美波が大人しい。
「あはは、別に何かあったわけじゃないわよ、アキが正常に女性に興味あるならまだマシかなって思っただけだし……」
「一応向こうの影響があったみたいだな……翔子も同じ原因で少し大人しくなったし」
「でもそっち系のネタは封印して欲しいっス……」
美波がすこし大人しくなったのは良いけど……完二の言うとおり僕が男に興味があるみたいな言い方は勘弁してほしい……
「私もご一緒させてもらって良いですか?」
姫路さんも同行を申し出て僕、雄二、陽介、完二、里中さん、美波、姫路さん、奈々子ちゃん、葉月ちゃんと大人数で出かけることになった。
今週はちょっと忙しくて更新が遅れてしまいました。
しかもあまり話が進んでない……のんびりお待ちください。
では次回もよろしくお願いします。