バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第五十七話

「お待たせ、姫路さん」

ヨモツシコメ(仮称)を巻いたあと僕は召喚大会の会場に来た。

「あ、吉井くん」

僕が着いたときすでに姫路さんは僕が来るのを待っていた。

「遅くなってごめんね」

「いえ、私もギリギリまでクラスの仕事をしていましたから、それにこういう会話しているとまるでデートみたいで……」

なにか言いたそうだけどもう時間がない。

「姫路さん、もう時間がないから行こうよ」

僕は召喚大会の会場に入り込んだ。

「い、一回戦から姫路さん相手!?」

「え? あの子強いの?」

相手は同じ二年生の女の子みたいだ。姫路さんの点数知っているから躊躇う気持ちもわかる。

「でももうひとりは転校したって聞いたけどバカで有名な吉井くん、二対一なら勝ち目があるかも!」

僕を侮っていることを後悔させてやる。

「「「試獣召喚(サモン)」」」

「ペルソナ!」

 

Bクラス 岩下律子

数学  179点

   &

ゲスト モブ上モブ子

数学  171点

   VS

Fクラス 姫路瑞希

数学  416点

 

 

「吉井くん?」

「また間違ったーーー!?」

いつもの召喚の癖でペルソナ呼んじゃったよ!?

「す、すぐに呼ぶからちょっと待ってて……」

「大丈夫です、私一人でも戦えます!」

「試獣召……《サモ……》」

僕が召喚しようとした時、姫路さんの召喚獣が付けている腕輪が光って相手の召喚獣は消し炭になっていた。

「勝者、姫路瑞希」

そしてタッグなのに勝者の中で僕の名前が呼ばれることはなかった……

 

 

「おう、明久、お疲れ」

僕が戻ろうとすると召喚大会の会場前で陽介が声をかけてくる。

「僕は何もしてないけどね……」

「そうだな、こいつはどうせ間違えてペルソナを呼ぼうとしただろうしな」

「雄二、見てたの!?」

そして陽介と一緒にいるのはパートナーの雄二。

「本当にやったのか……」

「お前、最初にそれの逆パターンやったのに、こりねーな……」

雄二と陽介が呆れたような顔をする。しまった黙っていればバレなかったのに……

「ああ、そうだ明久、Fクラスの追っ手だが……」

「そうだった、急いで逃げないと!?」

雄二に言われて思い出したけど僕は今追われているんだった。

「そっちはもう片付いた。他校の生徒がいる前で暴れてると鉄人に通報しておいたからな」

「え!? ほんと!」

雄二が僕を助けてくれるなんて珍しい。

「その代わりうちのクラス手伝えよ、料理できるやつが少ないんだ」

「あの、坂本くん、それでしたら私が厨房の方に……」

今まで黙って様子を見ていた姫路さんが会話に入ってくる。

「い、いや、姫路、女子はウェイトレスに回ってくれ、そのほうが集客率が良い」

なぜか雄二が顔を真っ青にしてそう言う。女子の手料理で釣るのも手だと思うんだけどなあ。真面目な姫路さんなら料理もできそうだし。

「雄二、そろそろ俺たちの出番だぜ」

陽介が時計を見て雄二に声をかける。

「そ、そうだな、明久、絶対に女子を厨房に入れるなよ!」

やけに念を押していったな、さては女子の手料理を食べて霧島さんのお仕置きを恐れているな。

「坂本くん様子が変でしたね」

「あはは、そうだね、でもあれでも一応色々考えているみたいだから従っておこうよ」

いつもならここであえて雄二に食わせてやるところだけどFFF団を追い払ってくれた借りがある。今回は見逃してやろう。

「あ、あの、ところで吉井くんは優勝したら誰と如月ハイランドに……」

姫路さんが僕に話しかけてきたところで……

「ふざけんじゃねえぞ、コラァ」

完二の声らしき叫び声が聞こえてきた。

「ごめん、姫路さん、話は後で!」

僕は声の聞こえた方向……Fクラスに急いで行くことにした。

 

 

「秀吉、何かあったの?」

教室に戻ると僕は近くにいた秀吉に事情を聞く。

「うむ、少々面倒な客がおっての、雄二を呼んで対処をしようとしておったがその前に巽が我慢しきれずに……一応雄二にはメールをしておいたんじゃが……」

なるほど、厄介な客相手に完二が怒り出したというわけか。

僕はそれを聞くと騒ぎの方に近づく。

「こんなきたねえ店で食いもん扱ってるのが悪いんだろうが!」

「だからって他人が一生懸命作ったもんバカにしてるんじゃねえよ!」

文句を言っているのはソフトモヒカンと丸坊主のコンビだ。

二人はクロスで隠しているみかん箱を周りに見えるようにする。それに対して完二が反論しようとするけど……

「学校の学園祭だからって食べ物を扱っているのに……」

それに対して周りの人まで反応している。

「ちょっと、だからってそんな大声で言うことないじゃないですか!」

僕はそこに割り込んで文句を言う。見たところクレームをつけてきている客は3年生っぽい、学校の中で一番大人のくせに大人気ないなあ……

「うるせえな、てめえもこいつもこの学校の生徒じゃねえだろ、余計な口出しするなよ!」

くっ、悔しいけど言われた通り僕も完二も部外者だ。

「なら俺なら良いわけだ」

そう言っていきなり現れた雄二が丸坊主の男を殴り飛ばす。

「て、てめえ、何しやがる!」

「はて、私のパンチから始まる交渉術が何か?」

そう言って裕二が凄む。それは普通交渉と言わない気がする。

「俺の交渉が不満なら代理人としてこちらの巽完二に任せよう」

「うっす、任せてください」

明らかに喧嘩慣れしている雄二と完二を見て

「も、もういい! てめえら、覚えてろよ!」

三下風の言葉を言い残して二人は逃げていく。

「お客様の皆様、申し訳ありません、こちらの手違いで遅れていましたがテーブルが届きました。お客様方には大変ご迷惑をおかけしました。お詫びのサービスもございますのでごゆっくりお楽しみください」

そこに陽介とムッツリーニがテーブルを運んでくる。あれは来賓室のじゃないのかな?

そして陽介がお客さんに対してお詫びの言葉を入れて頭を下げる。

「悪いな、陽介、テーブルを運ぶだけじゃなくクレーム対応までさせて」

「いや、気にするな、そういうのはジュネスで慣れてるからさ」

雄二の言葉に洋介が答える。僕も何度か見たけど陽介はジュネスでお客さんだけじゃなくバイト仲間相手にも対応している、意外に苦労人なんだよなあ……

「うむ、しかし巽もよく対応してくれたの、ワシらだけじゃ困っておった」

「いや、先輩方が大会の方に行ってたからオレがやっただけっスよ」

言われてみれば里中さん、天城さん、美波もいない。召喚大会に向かったんだろう。

そして秀吉に褒められて完二が少し顔を赤らめて照れる。

「おーい、完二、言っておくがそいつは男だぞ」

「え!?」

「えぇ……マジっスか……」

陽介が衝撃的なことを言う。

「巽は諦めるがなぜ毎回明久が驚くのじゃ……」

「秀吉は男じゃないよ! もう性別が秀吉で良いと思うよ!」

「…………(コクコク)」

僕の意見にムッツリーニが無言で賛同する。

「明久先輩といい世の中には女に見える男子が多いものなんスね……」

「なんでワシは男子の制服着てるのに毎回こう見られるんじゃろうな……」

 




他校の生徒の名前が酷すぎますね。でも使い捨てなんでご勘弁を、オリキャラはあまり好きじゃないのでわざわざ名前つけてオリキャラ的にするのも嫌ですので……
ということで常夏コンビ登場、といっても清涼祭編くらいでしか出番のない奴らなんで扱いはあまりよくありません。コンビといっても縛りがあるのでこいつらで組めませんしね。
では次回もよろしくお願いします。

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