バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第五十六話

「くそっ、まだ来てるのか!」

僕は追っ手から逃げ回りながら考える。

もうすぐ召喚大会の一回戦だ。行かなければ不戦敗、その場合はパートナーの姫路さんにまで迷惑をかける。

「まて、吉井! 素直に異端審問会に出頭しろ! 今なら紐なしバンジーで許されるぞ!」

覆面を着けているせいで追いかけてきている人物が誰かは特定できないが異端審問会のメンバーであることは間違いない。

「それって死刑だよね!? 助からないよね!?」

僕は逃げながら反論する。

「大丈夫だ、坂本はこの前10人による床にバックドロップの刑から生き延びた!」

雄二……僕の知らないところで意外に苦労してたんだね……

ここに来ることで追いかけられる事は予想していたけど、まさかここまでの事態になるとは思わなかった……そして何故こうなったか、それを思い出す。

 

 

「「「いらっしゃいませー、中華喫茶ヨーロピアンにようこそ!」」」

Fクラスに行った僕たちは姫路さんと美波、そして秀吉の華やかな声に僕たちは迎えられる。

「中華喫茶でヨーロピアンっておかしくね?」

「吉井くんレベルのクラスだよ、そのへん気にするだけ無駄だって」

「ああ、言われてみればそうだな」

陽介の疑問に里中さんが答えるがそれで納得されるのは複雑だ。

「え? 何かおかしいんスか? 洒落た名前だと思うんスけど……」

「ここにも同レベルがいるよ」

完二はこのクラスと同レベルのようだ。

「ぷ……ウププ……中華喫茶ヨーロピアン……」

「天城さん最近どんどん笑いの沸点低くなってない!?」

会話に参加しないと思ったら天城さんは笑いを堪えていた。

「なんだ、アキじゃないの、そこに止まってないで早く中に入ってよ」

「あ、うん、六人でお願い」

美波に声をかけられて僕は店内に足を踏み入れる。

その時周囲の空気が変わった。

「おい、あれ、吉井だよな」

「女の子が二人に幼女を一人連れてるぞ」

「あの黒髪の子、美人じゃね?」

「いや、俺はあっちの緑の健康的な子が好みだ」

「俺はむしろあっちの小さい子が……」

「ロリコンは黙ってろ!」

うん、ある意味予想通りだ。女の子とここに来ることの危険性はわかっている。でも……

「よお、よく来たな、ちびっ子、それに陽介に完二、天城と里中も楽しんでいけ」

「雄二、今わざと僕を無視したよね!」

「なんだ、明久、いたのか」

僕の幸せを許さないと公言する雄二や……

「注文はどうするの?」

「おススメはどれ?」

僕を殴るのが趣味と言い張る美波……

「…………お勧めはゴマ団子」

異端審問会の情報収集役ムッツリーニが普通に接している今、危険性は少ないと思っている。

「坂本たちが普通に接してるぞ」

「これはむしろ吉井と親友と言い張れば俺たちにもチャンスがあるんじゃないか?」

こうなると抜けがけ防止で潰し合いになってくれるはず……あと菜々子ちゃんに何かしようとしたら叔父さんに連絡して逮捕してもらおう。

「よ、吉井くん!」

「あれ? 姫路さんどうしたの?」

そしてFクラスの男子たちが牽制し合っている間に僕たちは注文をして待っていた。そして注文待ちのあいだに姫路さんが話しかけてきた。

「今日の召喚大会、よろしくお願いします!」

ああ、そうか、そういえば僕のパートナーは姫路さんだったっけ……ってここでそれはまずい!?

「陽介、菜々子ちゃんの分の支払いは後で払うから貸しておいて!」

「え? それは良いけど、どうしたんだよ?」

陽介はまだ殺気感知が甘いようだ。

「おい、吉井のやつ……転校先の女子だけなら俺たちにチャンスをくれるということで見逃してやろうと思っていたが……」

「このクラスの二つの癒しのうちの姫路にまで手を出そうとしてたってことか?」

「お主ら、その二つのうちもう一つは島田のことじゃな?」

「まて、吉井の奴はもう一人の癒しの木下とも仲いいぞ」

「お主ら、おかしいじゃろ! なんで男のワシに癒しを感じるのじゃ!?」

僕も秀吉は癒しだと思う。でもそんなことより……

「それじゃ!」

僕は席を立ち上がり全力で逃亡する。

「「「「待て、吉井!!」」」」

「あれ? お兄ちゃんどうしたの?」

せめて菜々子ちゃんは平和に過ごしてくれるように祈りつつ……

 

 

「なんとか逃げ延びないと……」

学園祭で逃げ回るスペースが多いのはいいけど……

「あの豚はあっちに逃げました。A班はあっちからまわりんでください。美春たちはこっちから行きますよ」

いつの間にか見知らぬ女子までが僕を追いかけてきている。

「許せません、あの豚、ようやくお姉さまと美春の愛の巣からいなくなったと思ったらお祭りに乗じて戻ってくるなんて!」

なんで僕は自分の知らないところで恨みを買っているんだろう……なにより問題は指揮官がいなかったあいつらに指揮を出来る人間が現れたことだ。

『ヨモツシコメに率いられたヨモツイクサ……』

僕の中からもうひとりの自分、イザナギがそう囁いたような気がした。

そ、そうか、もう一人の僕はこのような状況を体験したことがあるんだね。その知識によるとヨモツシコメは食べ物に夢中になり追うのをやめたという。

僕はアイテムを取り出す。

里中さんからもらった『肉ガム』! これを投げれば足止めできるはずだ!

「これを食べて足を止めるんだ!」

僕は姿を現して女生徒に肉ガムを投げつける。

「豚の分際で美春を馬鹿にしてるんですか!!」

「そ、そうじゃないよ!? ヨモツシコメを足止めしようと!?」

「誰が醜女ですか!」

逆に怒らせてしまったみたいだ……くっ……どうすれば……ならば……

「ほ、ほら、僕の心の中にもヨモツシコメいるし、仲間ってことで見逃して……」

「豚と仲間なんて気色悪いこと言わないでください!」

ダメだ、会話不能だ!

「仕方ない、奥の手だ……」

この女の子は予想外だがFFF団に追いかけられる可能性はあると思っていた。だから僕は対策を準備している。

「ドロン玉!」

稲羽の四六商店に売っている煙玉を使って僕は逃走する。

「くっ、何も見えません、覚えていてください、あたながこの学校にいるあいだに必ず抹殺してみせます」

殺人予告をされてしまった……しかし危険性はあるがそろそろ一回戦の時間、失格になる訳にいかないので召喚大会の会場に向かうことにした。

 

 

坂本雄二視点

 

 

あいつらもわかりやすいな……明久を追いかけていたクラスメイトたちを眺めながらあまりに予想通りすぎる展開に呆れていた。

「なあ、坂本、あれ、なんだ?」

「ん? FFF団、人の幸せを許さない集団だな、明久もその一員だったんだぞ」

俺も明久をからかう為だけに手伝ったりしてるしムッツリーニもその一員だけどな。

「あの……明久先輩大丈夫なんスか? 大会までもあんま時間ないんじゃ……?」

巽完二か、まともにこいつと話すのは初めてだが明久を心配してるようだ、割と人が良いのか?

「大丈夫だ、いつものことだからな」

「だよね、吉井くんと坂本くん似たようなことよくやってるし」

里中があっさり言う。最近は翔子との関係で俺が明久に狙われることのほうが多いけどな。たまにはあいつが処刑されるのも良いだろう。

「明久がああなるのも納得だ……」

「アキの場合自業自得よ。去年からあの集団と一緒になってやってたんだし」

そして島田が注文されたゴマ団子と肉まんを持ってくる。

「しかし、雄二よ、今は客が少ないから良いがこのまま大半が明久と追いかけっこを続けるようだと困るんじゃが……」

秀吉も会話に加わってくる。確かに俺とムッツリーニ、秀吉、島田、姫路以外は追いかけていってしまった。

「ふむ、仕方ない、何とかしてくるか、悪いが客が増えたら里中たちも店を手伝ってくれ」

「菜々子もお手伝いするよ」

明久の従兄妹のちびっ子が真っ先に手伝いを申し出てくれる。

「菜々子ちゃんがそう言うなら私たちも手伝わないとね」

それに触発されて天城たちも快諾してくれる。これでウェイトレスが増えて売上上昇が狙えるというものだ。

俺は召喚大会のスケジュールを思い浮かべながらこいつらもシフトの組み込みつつ予定を立て直した。




ということで早速追いかけっこスタートです。Fクラスの連中だけでなくDクラスのツインテールも加わってしまいました。
さて、今回の清涼祭編でバカテス側のキャラとのコミュが二つ発生予定です。
なのでアルカナクイズ……と行きたいところですが規約が変わって感想欄でのアンケートの類は禁止されました。クイズの回答は違うかもしれないけど読者の方々への問いかけという意味で同分類と判断しました。よって活動報告の方で行いたいと思います。
手間をお掛けしますがよろしくお願いします。

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