『明久、何も言わずに召喚大会に出ろ』
完二くんを助けて数日、今日は部活がないので何をして過ごそうかと思っていたところに雄二から電話が来て告げられる。
「ちょっと、雄二、突然どういうことなのさ!?」
『なんでわざわざ理由を説明しないといけないんだ?』
「頼んできたのはそっちだよね!?」
『お前はバカだから説明しても理解できねえしなあ……』
どうしてこいつは頼み事するのにこんな態度を取れるんだろう……
「ふん、どうして僕が雄二の頼み事なんか……」
『言う事を聞かないと天城の時の逆ナンの件を島田にばらす』
「なんでも言ってよ」
天城さんも里中さんもわざわざ話さないだろうからと安心してたのに……
『そうか、とりあえずいつものメンバーを集めて相談したい、わざわざそっちに行く時間ないから電話になるが』
「わかったよ、陽介たちには声をかけておくよ」
そして陽介と里中さんは捕まったけど天城さんは今日は家の手伝いらしく帰っていた。
坂本雄二視点
ひとしきり明久をからかってから俺は教室に戻る。
今回の条件は俺と翔子の如月ハイランド行きを阻止しつつFクラスの誰かを優勝させなくてはいけない。
「お、雄二、話し合いはどうなったのじゃ?」
ババアのところに行ったことを知っている秀吉が俺に声をかけてくる。
「秀吉、ムッツリーニと島田、あと姫路も来い、作戦会議だ」
「む、なんじゃ?」
「…………何の用?」
「どうしたのよ?」
「え? 作戦ってなんの話ですか?」
本来なら姫路には教えないで極秘でやったほうが良いのかもしれない。おそらく明久ならそうするだろうが……
「島田、例の話には姫路の力も必要だ、だから話をさせてもらう。ムッツリーニ、他に聞いている連中はいないな?」
「…………問題ない」
条件に関しては完全極秘ではない。条件がFクラス生徒の優勝だから一部のクラスメイトに話を通す許可は得ている。
だが他の連中に話す前に姫路と島田には話す許可を取ったほうが良いだろう。
「姫路、島田から事情は聞いている」
「え!?」
俺は転校のことを聞いたと姫路に話す。
「ごめん、瑞希、何とかするには坂本の知恵を借りるしかなくて……」
「あ、いえ、良いんです。美波ちゃんが真剣に何とかしてくれようとしたわけですし……」
「ありがと」
島田が俺に相談したことを責められなくてホッとする。
「でも坂本くんはなんで協力してくれるんですか?」
あのバカなら友人というだけで無条件で助けただろうな。その影響を受けてしまったのかもしれない。向こうで自分の影に会ったとき指摘されて俺が持ちたいと思ったものだ。だが俺は姫路に問いに対して
「姫路はこのクラスの最強の戦力だからな、代表として失いたくない」
建前の理由を口に出す。
「ふむ、まあ、理由はどうあれ雄二が手を貸してくれると心強いじゃろう」
秀吉が見透かしたように言う。くそっ、嘘が通じないこいつは面倒だ。
「まあ、事情はまとめて話した方が良い、だからここからは協力者も交えて話すとしよう」
そう言って俺は明久に電話をし、スピーカーモードにして全員に聞こえるようにする。
『もしもし、雄二? 言われた通り陽介と里中さんは呼んだよ、天城さんは家の手伝いでいないけど……』
「とりあえずそっちも全員で話せる状態にしてくれ」
「え? これ、吉井くんですか?」
姫路が明久の声に反応する。ふむ、やはりか……前からクラスで明久の話題が出ると気になっている素振りを見せていたが……
『うん、わかった、ところで今の声って誰?』
「ああ、それも今から話すからさっさとしろ」
明久が操作をして向こうも全員が聞き取れるようになる。
『それで、どうしたんだよ、俺たちまで集めて』
陽介が訊ねてくる。
「ああ、今から説明をする」
俺は如月ハイランドの結婚の件を除いてすべてを話すことにする。そのことも教えたら陽介辺りがなにかしてきそうだしな。
『召喚大会か、出るのは良いけどわざわざテスト受けるのは面倒だな……』
確かに遊びに来るのにわざわざテストを受けるのは嫌だろうな。
「すみません、私のために……」
『ああ、いや、気にしないで良いって……』
だが基本的に人が良い陽介は予想通り断ることはない。
『そうだよ、僕も陽介も転校組だからね、大変さはわかるよ』
当然明久も断らない。
『ま、あたしは元から美波と登録してるしね、でも雪子は翔子と出るって言ってたよ』
予想はしていたがやはりか……翔子が誘う前にできれば、くらいには思っていたが。
「ちなみにお前らの成績はどんな感じだ?」
『えーと、天城は学年トップクラスで俺は平均よりちょっと下、明久は赤点ラインで里中が明久よりはマシって程度だな』
陽介が答える。予想通りとは言え翔子と天城のペアは厄介だ。
「そちらの学校で他は誘えないのかのう? 例えばワシが小沢あたりと組むとかはどうじゃ?」
そういえば秀吉は明久を通して向こうの演劇部と知り合っていると言っていたな。
「清涼祭は二日だしな、泊まる場所の問題もあるし来るのが確定しているメンバーで何とかしたほうが良い」
「それもそうじゃな」
俺の言葉に秀吉はあっさり納得する。本当はペルソナ使いじゃなければ操作技術の問題で戦力が期待できないからだがそれは関係者以外には説明できないことだ。
ひとまず組み合わせを決める前に俺は頭の中で条件を整理する。
①Fクラスの誰かの優勝。
②俺以外のやつらを如月ハイランドに送る。
いくら如月ハイランド側が結婚を企んでいるといっても翔子みたいに異常な乗り気がなければ結婚させることはできないと思う。
つまり島田に渡り、明久と一緒に行っても問題はないということだ。また別の組み合わせでも結婚まで考えている奴らはいないはず。
それに……
「ではペアを発表する」
俺は考えをまとめてその組み合わせを発表する。
試験召喚大会、現在の参加者予定
島田美波&里中千枝
霧島翔子&天城雪子
坂本雄二&花村陽介
姫路瑞希&吉井明久
明久が元Fクラスの生徒ということを主張すれば優勝者が姫路でも両親の説得に使えるだろう。
それにもし俺の予想通り姫路が明久に惚れているならば二人で如月ハイランドに行き、俺の身も安全だ。結婚まではいかないように妨害する必要はあるけどな。
今回も視点は雄二がメインです。翔子と雪子のコンビは皆さん予想したでしょうが、普通に雄二と明久のコンビを予想し、陽介が誰と組むのかで考えた方が多いと思います。
作者なりの引っ掛けです。だから前話でババア長の条件が「雄二の優勝」ではなく「Fクラスの生徒の優勝」にしたのです。
まだ雄二が優勝する可能性も0じゃないですけどね。
まあ、白金の腕輪の暴走条件からすると瑞希の優勝ではダメなんですが、作品内の辻褄としてはFクラスの試召戦争戦争禁止の間に不具合を直す。というのがババア長の意図です。
考えが浅いと言われても仕方ないのですが作者としては試召戦争が物語のメインではないのでと言い訳しています。その辺は見逃していただけると嬉しいです。
では次回もよろしくお願いします。