バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第四十九話

「やっと見つけた!」

完二くんの作り出したダンジョンに入ってしばらく探し回りようやく完二くんの姿を見つけた。

「見つけて嬉しいような悲しいような……」

「陽介、あまり喋るな。声で男と気付かれるぞ……」

「そ、そうだな……」

僕たちが話しているのが聞こえたのかフンドシ一丁の完二くんがこちらを振り向く。

『ウッホッホ、これはこれは……ご注目ありがとうございまぁす!』

「……こっちは本物じゃなくて影の方」

完二くんの態度を見て霧島さんが言う。確かにこれが本体だったら嫌すぎる……

『さあ、ついに潜入しちゃった、ボク完二。あ・や・し・い、熱帯天国からお送りしていまぁす。まだ素敵な出会いはありません。このアツい霧のせいでしょうか』

「よし! 僕たちは男と認識されてないみたいだ」

「……それ、喜ぶとこか?」

僕の言葉に陽介が言う。でもこの完二くんに出会い認識されるよりかは気付かれない方が良いと思う。

『汗から立ち上る湯気みたいで、もう胸がピンピンしちゃいますねぇ』

完二くんの影は僕らの態度に構わず言葉を続ける。

そして

 

『女人禁制 突入 愛の汗だく天国』

 

天城さんの時のようなテロップが出てくる。

「ヤバイ……これはいろんな意味でヤバイ……」

陽介の言葉に僕と雄二が頷く。

「たしか……雪子の時もノリとしてはこんなんだったよね」

「……うん」

里中さんの言葉に霧島さんが頷く。

「う、うそ、こんなじゃないよ!?」

「もしかしてウチもこんな目にあったの?」

「いや、美波のときは影が出た時近くに僕がいたからこんな風にはならなかったよ」

「よかった……」

僕の言葉に美波は安堵の表情を浮かべる。

その時、周りから笑い声が聞こえてくる。

「またこの声……てか、前より騒がしくなってない?」

「この声……もしかして……被害者しか居ないのに……誰の声か不思議だったけど、もしかして外で見ている連中ってことか?」

里中さんの言葉に陽介が答える。

「え!? ということは稲羽中に僕たちの今の姿が……」

だとしたらとてつもなく不名誉な噂が流れる気がする……

「いや、外の連中という説はあり得るとしても俺たちの姿h見えてないだろう。見えていたら俺たちに対しても何か反応があるはずだ。っていうかそう思いたい……」

雄二が自分に言い聞かせるように言う。たしかにそう考えたほうが僕の心の平穏のためにも良さそうだ。

「でも今の完二くんは見られているわけだよね? これは余計な伝説増えそうだね……」

里中さんの言葉を聞いて完二くんに同情する。こんなの見られたらすごく恥ずかしいし……

「ま、シャドウなんだろうけど……そんなん普通のやつにはわからねえもんな」

ザワザワザワ

「シャドウたち、めっさ騒いでるクマ!」

シャドウのザワめきにクマが警戒を促す。

『僕の求めているモノ……本当に見つかるんでしょうか、ウフッ』

「明久、求められているぞ」

「あはは、何言ってるのさ、求められているのは雄二だよ」

「お前ら、状況考えろよ、押し付け合ってる場合じゃねーだろ!?」

『それでは、更なる高みを目指して、もっと奥まで突・入』

僕たちが喧嘩している隙に完二くんが向こうを向いて立ち去ろうとする。

『張り切って……行くぜオラァア!』

「完二くん!」

「ちょっと、アキ、何してるのよ、追いかけないと」

天城さんと美波が止めようとするけど……

「あいつが求めるのはお前みたいな女っぽい男だと言ってるだろうが!」

「何言ってるのさ、雄二みたいな逞しいタイプに決まってるじゃないか!」

「だからお前ら、喧嘩するなって!」

僕と雄二が喧嘩して陽介がそれを止めようとするのをに忙しく、そのまま逃してしまった……

 

 

「ところで美波はどこからその武器持ってきたの?」

「そういえば……いつの間にか翔子も物騒なもん持ってるし……」

武器として使うために持参したのか美波はレイピア、霧島さんが釘バットを持ってきている。

「……私が用意した」

「そうなんだ、美波の分まで用意するなんて霧島さんは優しいね」

わざわざ仲間の分の武器まで用意するなんて、それに出処が霧島さんなら僕の身に降りかかるダメージは小さいし。

「いや、待て、その前にどうやってその武器を用意したのかが俺には気になるんだが!?」

「雄二は些細なこと気にするなあ、戦いに必要なものを用意するなんて立派じゃないの」

「些細じゃねえよ、こっちは命がかかってるんだよ!?」

「あはは、確かにね、翔子が武器持ってると坂本くんはいろいろ危険そうだしね」

「でもそのレイピアはフェンシング用としても釘バットはどうやって手に入れたの?」

雄二の言葉に里中さんと天城さんも疑問に思ったのか霧島さんに訊ねる。

「……テレビ通販」

「まて、なんでテレビ通販でそんな物騒なもん売ってるんだよ!?」

霧島さんの答えに雄二がツッコミを入れる。たしかに普通そんなもの売るとは思えないんだけど……

「……?」

その言葉に霧島さんは首をかしげるが……

「ああ、通販か、納得」

「ええ!? 納得しちゃうの!?」

なぜか美波は納得している。

「そういえば武器とかたまに見るよねー」

里中さんまで!? おかしいのは僕なの!?

救いを求めるように陽介の方を見るが陽介も驚いているようだ。

「……時価ネット田中では普通に武器とか黒魔術入門とか売ってる」

「「「あー……」」」

その言葉に僕と雄二と陽介が納得の声を上げる。怪しい商品を売ることで有名な時価ネットなら納得できる。FFF団でも利用している人が多いくらいだ。

「しかし装備は重要だな。まあ、ペルソナがあるから武器より防具の方を優先したいが」

「けど滅多に装備品は落ちてねーしな……」

雄二と陽介も言っているがここの世界にはなぜか武器や防具が落ちている。といってもその数は少ない。

「お、あの宝箱装備品入ってんじゃね?」

そして豪華な宝箱には装備品が入っていることが多い。大抵はちょっと特殊効果のあるアクセサリだけど防具が入っていることもある。前に天城さんの城で手に入った紳士タキシードは雄二が「タキシードを着せられるとか嫌な予感しかしねえよ!?」と言っていたからクマに預かってもらっているけど……

「それじゃ、開けるぜ」

陽介が宝箱を開ける。そしてそのまま動きが止まる。

「どうしたのよ、花村、何入ってたの?」

里中さんがそう聞くが……

「は、ははは……な、なにも入ってなかったぜ?」

「なんで疑問系?」

なぜか陽介の顔が引きつっている。

「宝箱が空だとちょっと残念だよね、でも二重底になってて隠されてるとかじゃないの?」

僕が横から覗き込もうとする。

「よせ! 明久、見るな!」

陽介が止めようとする。しかしそれが間に合わず僕は見てしまった。

 

仁義のフンドシを手にいれた。

 

「…………」

「だから見るなと言ったのに」

「うん、ごめん……」

僕の頭にはさっきの完二くんの影の姿が思い浮かぶ。

「よ、よかったじゃん、男性専用みたいだしあんたらの誰かが付ければ……」

里中さんの言葉に……

「「「付けれるわけねー!?」」」

僕たち3人の絶叫が響き渡る。

「……雄二、着る方法がわからないなら私が着せてあげる」

「そう言う意味じゃねえよ!?」

たしかにフンドシのつけ方なんてわからないけど……なんで霧島さんは知ってるんだろう。

「あ、そっか、今はスカートだもんね、三人とも」

天城さんがズレたことを言う。

「え? まさか三人とも女性用の下着を?」

美波、そこは頬を赤らめるところじゃない。

「違うからね! 下着は普通に男物だよ!?」

「うう、俺はもうここが嫌だ……帰りてぇ……」

陽介の言葉に僕と雄二は頷く……




完二戦は次回です。楽しみにしていた方申し訳ありません。
だいだらもそうですが時価ネットもバカテス世界にあったら恐ろしいですよね。P3Pでは普通にスキルカードとかも売ってるし……品揃えがすごいです。
まあ、作品内で出しても歌詞を入れれないので楽しさ半減、ですから出さずに明久以外の人が利用してるということになります。P3コミュで出てくるインチキ商品に騙された奴らもいるでしょうが……
では次回もよろしくお願いします。

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