バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第四十八話

5/19 木 晴

 

 

「……やっぱ行かなきゃダメか?」

全員集合しクマに案内される途中で既に陽介は弱気だ。

「陽介、安心しろ、狙われるのは明久だ」

それは僕には安心できる要素が一切ない。

「雄二はマヨナカテレビ見てないからそんなに呑気にしてられるんだよ……」

僕と陽介のテンションが低いまま完二くんのいる場所に向かう。そして……

「なんか暑苦しいわね」

そちらの方に向かうとなぜか熱気が充満している。

「なんか、この霧、今までとちがくない?」

里中さんが言うとおりここは霧というより……

「……これは霧じゃなくて湯気?」

霧島さんが言うとおり霧というより湯気という感じがする。

「メガネ、曇っちゃった」

天城さんの言うとおり霧は晴らしてくれるけど代わりに熱気でメガネが曇ってしまう。

「確かに暑いわね」

美波も暑そうに顔を顰めている。

その瞬間……

『僕の可愛い子猫ちゃん……』

ダンディ風な男の声が響き渡る。

『ああ、なんて逞しい筋肉なんだ』

そして優男風に口調が変わり返事が響く。そして逞しい筋肉の件でみんなが一斉に雄二の方を見る。

「ち、ちょっと待て、お前ら、俺のほう向くな!?」

『怖がる必要ないんだよ』

「怖いわ!?」

再びダンディ風な声が聞こえてそれに対して雄二が突っ込む。

「雄二、彼は僕じゃなくて雄二が好みみたいだね」

僕は雄二の肩に手を乗せて今までさんざんからかってくれたお礼にそう言う。

「ふざけんな! 同性愛者の相手はお前の役割だろう!!」

「勝手にそんな役割にするな!」

その場で僕達はつかみ合いの喧嘩をはじめようとする。

『さ、力を抜いて……』

「ほら見ろ、これを聞く限りお前も受け入れてくれるみたいだぞ!」

再び響き渡るダンディ風な声に対して雄二が勝ち誇ったように言う。

「い、嫌だ、どっちにしろ行きたくねえ……」

陽介が全力で拒否しようとする。

「ねえ、本当に完二くん、ここに居るの?」

天城さんがクマに確認を取る。そうだ、ここでいないと言ってくれれば……

「クマの鼻センサー、舐めたらいかんぜよ」

そのクマの返事に僕たち男3人はがっくりと脱力する。

「こ、ここは女子メンバーだけで戦うというのはどうだろう、戦力としては十分だろう!」

雄二がそう提案する。

「「それだ!」」

僕と陽介は即座に賛成する。

「却下に決まってんじゃん。あたし達だけでどうしろって言うのよ」

里中さんに却下される。でも僕たちは引き下がるわけにいかない!

「ほ、ほら、女子だけで四人いるし、僕たちは馬車要員ということで」

某有名RPGでもダンジョンに入れるのは4人であとはダンジョンの外で馬車待機しているものだ。

「ああ、そうだ、物理アタッカーの里中に支援能力のある島田、各種攻撃魔法使える霧島に回復使える天城、これで問題ないだろ! 俺たちいらないだろ?」

陽介も僕の提案に乗ってパーティバランスに問題ないことを主張する。

「多人数でも行けるのにわざわざ少数で行く必要ないでしょ、文句言ってないでさっさと行くわよ」

しかし美波は許してくれない……くっ、僕たちの身の危険だというのに融通が利かない……

「よし、ならば明久を差し出そう、俺と陽介は待機ということで」

「待って、雄二、それって僕だけが狙われるよね!?」

こいつ我が身可愛さに僕を差し出す気だな!?

「安心しろ、お前の安全も考慮している」

そう言って雄二が荷物を取り出す。

「これを着ろ、そうすればお前も安全だ」

さすが雄二、安全対策を考えたいるとは……伊達にかつて神童と呼ばれたわけではないということか。

「わかったよ」

丁度よく完二くんの心が作り出した場所は入口が脱衣所のようになっている。物陰で着替えることにした。

 

 

「雄二、どういうことか説明してもらおうか」

今僕はセーラー服を着ていた。雄二はなんでこんなものを持っているんだろう。

「これでお前は女子に見られるから襲われることはない!」

「そんなわけ無いよ! 僕は男なんだからこんなの着たって女に見えるわけないんだから!」

「「「「…………」」」」

しかし僕の主張に女の子達からの反応がない、もしかして女装が気持ち悪いと思われている!?

「およ~、クマはびっくりクマ、アキヒサは女の子のペルソナ使えるだけでなく自分も女の子になれるクマね」

「うん、普通に女の子に見えるよ」

と、思ったらクマと里中さんがそんなことを言い出す。

「そ、そうね、アキ、似合ってるわよ」

「クマも里中さんも美波も、そんなこと言われても嬉しくないからね!? 僕は女でも秀吉でもなく男なんだから女装が似合うわけないじゃないの!?」

「え? これってツンデレってやつ?」

どうしよう、天城さんが斜め上な感想を言ってる……

「そもそもノリノリで着替えた時点で何も言えねーだろ、それじゃ明久頑張ってこいよ」

陽介が助かったという顔で僕に言う。

「まって、陽介! 雄二だけじゃなく陽介まで僕を見捨てる気なの!?」

「え? 何言ってるの花村?」

しかし里中さんがそんな陽介に疑問の声を上げる。

「え? なにって明久もいるし俺と雄二はここで待ってるって……」

「手段があるのにここで待ってる必要ないじゃん」

「ま、まさか……」

「いやいや、ちょっと待て、明久ならともかく俺に女装とか無理だって!?」

その言葉に雄二の顔が青くなり陽介が即座に拒否をする。

「そうだ、俺のこの体格で女装とか無理に決まってるだろ!?」

確かに雄二の高い身長とごつい骨格だと女装は無理に思える。

「大丈夫、なんとかなるよ」

しかし天城さんがそれを許さない。

「わかった、陽介を差し出す、だから俺は許してくれ!」

「てめえ、友人を見捨てる気か!?」

陽介、それを君が言う資格はない。

「……雄二、往生際が悪い」

「し、翔子!? 待て!?」

「それじゃ、覚悟してもらうわよ」

「里中、無理やりはやめて!?」

そして陽介と雄二は引っ張られていった。

 

 

「うう、ありえねえよ……」

里中さんと美波が着せた女子校生風の陽介、照れなのか微妙に内股になっていてこれは普通にいそうレベルの女装になった。

「アキヒサの方が似合ってるクマね」

クマの評価は僕の女装の方が上らしい、またく嬉しくない……

「なんだ、この格好は……」

そして天城さんと霧島さんによる雄二の女装。

「なんで昔のスケバン風なんだよ!」

「これなら体のライン隠しやすいでしょ」

ロングスカートに上も冬服、詰め物をしているのか胸はをごまかしカツラもつけている。はっきり言って酷い……

「およ~、これは怖いクマね……」

高身長ですごく威圧感がある。

「それじゃ、頑張って行こう!」

こうして女装3人、女の子4人という異常な集団が出来上がった……




完二ダンジョン突入です。バカテスの原作の合宿時の女装でもそうですが、なぜ雄二は女子の服を持っていたんでしょうね。ちなみに陽介と雄二の服装はきっとジュネスで買ったんでしょう。
外見的には秀吉プロデュースではないのでかなりアレな感じです。陽介はペルソナ4のあの時の衣装、雄二はその時の番長の衣装を代わりに着せられている状態です。明久は普通に女装が似合う男子なので……
では次回もよろしくお願いします。

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