バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第四十五話

坂本雄二視点

 

 

俺と翔子は学校が終わって急いでジュネスに来たんだが……

「おう、雄二、遅かったな」

にも関わらず明久はいなくて陽介に状況を聞くことになった。

「う~む……」

話によると島田が俺たちより先に到着して明久を追い掛け回しているらしい。

「こっちの世界で動くならともかくテレビの中で明久がいないのは大きいな……」

あいつの複数のペルソナを扱う能力は強い。そろそろ島田の対策も考えておいたほうが良いかもしれない。最悪の場合Dクラスの清水を呼び出して追い払うことになる。人を豚呼ばわりするあいつと接触するのは嫌なんだが……

「あと俺たちで少し犯人について話してたんだけど……」

陽介たちが事件について教室で話し合ったことを教えてくれる。

「愉快犯か……」

その線は俺も考えたことがある。しかし愉快犯だと動機から特定するのが不可能といっても良い。マヨナカテレビを見るだけなら誰にでもできるのだから……

「完二がなにか目撃してるといいんだがな……」

結局それしか手がない。

「ひとまずクマに状況を聞くか」

まずは完二が向こうの世界に入ったことの確認と救出、明久と合流する前に確認だけはしておいたほうが良いだろう。

 

 

「おい、クマ、こっちに誰か入っただろ」

テレビの中に入り、そこで俺たちを待つクマに話しかける。

「あ……うん、誰かいるみたい」

クマはいつもと比べるとなにかへこんでいる感じを受ける。

「みたいって……場所は?」

「わからんクマ」

「完二くんって男の子だと思うんだけど……」

「わからんクマ……」

「もー、なんなの? なにか拗ねてるとか?」

里中はそう言うが……

「鼻クンクンしても、どこからの匂いかわからないの……」

クマは首を振りそう答える。

「クマがわからないとなると……どうするか……」

無策でこの世界を探し回るというのはあまりにも効率が悪い。

「カンジクンのヒントがあると良いかも! そしたらクマ集中できる予感がひしめいている。カンジクンのことがわかるようなこと、なにかない?」

「つまりクマの鼻は相手のことを知っていたほうが匂いがわかるということか」

クマの話を聞き俺が確認を取る。

「うん、そうクマ、例えばー、おお、また誰かこの世界に落ちてきたクマね」

「ち、ちょっと待て、さらに人が落ちてきただと!?」

マヨナカテレビに映っていたのは完二だけのはず、それなのに……

「この匂いはアキヒサと……もうひとりいるクマね! アキヒサの匂いならわかるクマ!」

って明久かよ!? もうひとりは島田か? あいつは何をやっているんだ……

「おいおい、逃げてるうちにテレビに飛び込んだのか……?」

陽介はそう言うが

「あいつの場合落ちたのかもしれん、あのバカはたまに常人を超えたことをするからな……」

一年あいつと付き合ってきたが、あのバカのイレギュラーな行動は読めない。どうやったら街の中を逃げ回ってテレビに入れるんだ……

「吉井くんだしね……」

「そだね……」

それで納得できるとは里中と天城もあいつに馴染んでいるということだろうな。

「アキヒサのところに行くクマよ、付いてくるクマー」

とりあえずこっちから迎えに行かないといけないか、やれやれ世話の焼けるやつだ……

 

 

吉井明久視点

 

 

僕は美波と一緒にテレビに落ちてしまった。

僕は眼鏡をかけて周囲を見渡す、知っているところに落ちてればいいんだけど……

見たところどこか外国の町みたいだ、見覚えはないけど商店街……かな?

「え!?」

美波が驚きの声を上げる。それはそうだろう、テレビの中に落ちたと思ったらどこかの町にいるんだから。

「美波、落ち着いて、見覚えがない景色に戸惑うのはわかるけど……」

「なんで……? 霧がすごいけど……間違うわけがない、なんでウチらがドイツにいるの!?」

ええ!? ドイツ!? なんで!? テレビに入ったらクマの世界じゃなくて外国にワープしたの!?

「どうしよう、美波!? 僕、ドイツ語わからないよ!?」

もしかして英語なら通じるかも、でも僕、英語も苦手だし……いや、その前に僕はパスポートも持たずに外国に来てるわけだ。もしかしてこれって密入国!? 密入国って捕まったらどうなるんだろう。日本に強制送還だけなら良いけど……でもそれでも警察官である叔父さんに身内から犯罪者とかは迷惑をかけることになっちゃう……それが原因でクビになって菜々子ちゃんと一緒に路頭に迷うことになったら……

「その時は僕が責任もって二人を養うしかない!」

「え!? 何の話? でもおかしいわね……なんで人がいないのかしら、それに霧が濃くてよく見えない……」

「あ、そっか、美波は眼鏡つけてないもんね」

「眼鏡? そういえばなんでアキが眼鏡かけてるの? 目悪くないわよね?」

「うん、視力は良いよ、でも霧を見通すにはこれをつけないと……」

そこで僕は気付いてしまった。

「なんでドイツにこの霧が!?」

この霧は向こうの世界で発生しているはずだ。なぜこの世界に……まさか僕たちの世界にもシャドウが!?

「美波、気を付けて!」

クマがいないと感知能力もない、僕は用心深く周囲を見渡す。

「ど、どうしたのよ……」

いる……そこには見覚えのあるシャドウが……あの天秤みたいなやつ、あれはお城にいたのと同じやつだ。弱点とかは覚えてないけど……

「ヨモツシコメ!」

とりあえず僕はペルソナを呼び出して先制攻撃を仕掛けようとする……が

「キャアア!?」

「ギャアア!?」

僕の呼び出したペルソナ、ヨモツシコメを見て美波が悲鳴を上げて僕に抱きついてくる。その力が強すぎて……

「み、美波……もうちょっと力弱めて……ペ、ペルソナが……使えない……」

「で、でもあんな不気味なお化けが……」

そう言って指さすのはヨモツシコメ、シャドウより僕のペルソナがお化け呼ばわりされてる。そしてその言葉で傷ついたのかヨモツシコメも落ち込んで見える。確かに外見的なインパクトは強いかも……

なら、こっちはどうかな、これはコミュの力がないからあんまり使いたくないんだけど……

「グール!」

僕はペルソナをチェンジして呼び出す。

「キャアアア!?」

「ギャアアア!?」

僕の腰からコキっと鳴ってはいけないような音が聞こえる。グ、グールでもダメだというの……

さっきよりも大きな声に驚いたシャドウが逃げていく……も、目的は達成できたけど……

「ア、アキ……なんなのよ、ここ……」

「えっと……」

どう説明すればいいんだろう、テレビに入ったら向こうの世界に侵食されているドイツについたとか……僕も状況わかってないのに……

『あはは、なに今更女の子ぶってるのよ』

その時、背後から美波と同じ声が聞こえた。




美波シャドウ戦前に一度終了です。
事情を知らない美波と明久だけではツッコミ不在、雄二と陽介の存在の大事さがわかります。だれも明久の誤解を解いてくれない……
では次回もよろしくお願いします。

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