バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第四十二話

5/17 火 晴/曇

 

 

文月学園Fクラス 坂本雄二視点

 

 

「それじゃ、また明日」

「あれ? 美波ちゃん、そんなに急いでどうかしたんですか?」

「アキが男をナンパして坂本以外の男にも手を出そうとしてるのよ」

「ええ!? 吉井くんが!?」

「待て、そこで俺を巻き込むな!!」

島田は昨日適当に言ったことを間に受けているようだ。明久が不幸になるのは望むところだが俺を巻き込まないで欲しい。

「それじゃ、ウチはそれを阻止しないといけないから!」

だが俺の言葉も聞かずに島田は外に飛び出す。

「ど、どうしましょう、吉井くんがそんな……」

「いや、あれは嘘だからな……」

「坂本が吉井に捨てられて……」

「吉井が転校先で坂本と二股かけてるって?」

「……雄二、どういうこと?」

「お前は昨日現場にいただろ!?」

今日はこの誤解を解かないといけないようだ……この学校で噂を一日放置するとひどいことになって広まるからな……

 

 

八十神高校

 

 

「とまあ、そういうわけで完二の尾行と巽屋の張り込み、両方をやることになった」

美波に殴られた次の日、学校で昨日の話し合いの結果を陽介たちから聞いた。

「尾行かあ……そっちは僕は無理かなあ、昨日のことで多分顔覚えられているし」

かなりインパクトがあっただろうし、完二くんの頭には美波への恐怖と一緒に僕の顔は刻まれたはず。

「そうだな……それになんかあった時のために男は別れたほうが良いか、なら俺は完二の尾行をする。あとは天城と里中、どっちと組むかだな」

「あんたと雪子組ませるのは何か不安なんだよね」

陽介の言葉に即座に里中さんが答える。

「いやいや、俺は紳士だよ」

「夜中に電話かけてきて変な質問する奴は信用できねーっつの」

陽介は弁解しようとするが即座に斬られる。

「なら私と吉井くん、千枝と花村くんでいいんじゃない?」

二人が言い合いになりそうなところを天城さんが提案する。

「僕は里中さんと天城さん、どちらとふたりっきりになっても昨日みたいなことが起きたら命の危機につながるんだけどね……」

女の子と二人きりなんて美波に見られたら……そう考えるだけで恐ろしいものがある。

「ねえ、吉井くんと島田さんって付き合ってるわけじゃないよね?」

「え? うん、ただの友達だけど?」

里中さんの質問に僕は答える。

「ただの友達が異性とふたりっきりってだけで襲ってくるはずないだろ……」

陽介は呆れたように言うが……

「え? 普通襲うよね? 自分が恋人いないのに友達だけが幸せになるとかって許せないことだと思うけど?」

少なくても文月学園ではよくある風景だ。

「あー、こいつが鈍いだけじゃないんだな、周囲の環境にも問題ありすぎだ……」

「あたしは吉井くんが鈍いってのも大きいと思うけどね」

二人が何を言ってるのかはよくわからないけど……

「まあ、さすがに今日も美波が来るとは思えないし、天城さん、よろしくね」

「うん、よろしく」

「昨日の様子見ると今日も来そうな気がするけど……」

「雄二はこういう方向での明久の不幸は止めないで楽しむからな……」

別れ際陽介と里中さんに「生きてまた会おうぜ」と言われたことに疑問を抱きつつ僕と天城さんは巽屋に陽介と里中さんは完二くんの尾行を開始した。

 

 

僕と天城さんは巽屋の近くに来た。

「長くなるかもしれないから、私、何か飲み物買ってくるね」

「あ、それなら僕が行くよ」

こういう時は女の子に買いに行かせるよりは僕が行くべきだ。

「何かあったら私じゃ対処できないから、吉井くんはここで張り込みを続けてて」

けどそれを遮って天城さんが飲み物を買いに行く。そっか、確かにこの状況じゃ待ってる方が不安かもしれない。

それにここからだったら近くに自販機もお店もあるしね。

「お待たせ」

「ありがとう、天城さん」

彼女の買ってきたジュースを受け取る。

「張り込みだからてっきり牛乳を買ってくるかと思ったよ」

「うん、私も牛乳にしようかと思ったけど自販機になかったから……」

僕の言葉に天城さんは残念そうに言う。

「買いにいったついでにお店の中を見てきたけど特に変わったことはないみたい、このまま何もないといいけど……」

「そうだね、ついでに僕の身も安全だとなお良いね」

「あはは、昨日は大変だったもんね」

天城さんは実際に現場を見てないせいか笑って返す。

「本当だよ、命の危機とかこっちに来てから少なくなったのに」

「え? それだと前は日常的に命に危機にあってたみたいだよ」

「うん、大体週に……5回か6回くらいあったよ」

「それ、ほぼ毎日じゃない?」

「うん、だからこの町は平和だと思うよ」

「平和じゃないよ、事件起きてるし……」

言われてみれば確かに……なぜ事件の起きてない文月の方が事件の起きている稲羽より危険に感じるんだろう……

「今まで同年代の男の子と話すことってなかったけど……なんか吉井くん相手だと話しやすいな、他の男の子だと緊張しそうだけど吉井くんとなら自然に話せるっていうか……」

「そう言ってもらえると嬉しいな、せっかく友達になったんだから天城さんとも仲良くしたいし……」

「うん、そうだよね。あ、そうだ、せっかくだから携帯の番号を教えて、何かあった時のために」

天城さんに言われて僕は携帯を取り出す。

 

 

『我は汝……汝は我

汝新たな絆を見出したり……

 

絆はすなわちまことを知る一歩なり……

 

汝、女教皇のペルソナを使いしとき

我ら、更なる力の祝福を与えん』

 

 

そのまま僕たちは話をしながら張り込みを続けることにした。

 

 

 

「誠に申し訳ない、みっかってござる」

里中さんと陽介が申し訳なさそうに戻ってくる。

「いや、仕方ないよ」

昨日の僕のせいで全員の顔が覚えられたのかもしれないし……

「とにかくここで少し待ってみよう、完二くんが戻ってくるかもしれないし、直接話してみようよ」

天城さんもフォローするように二人に言う。

「ん? テメーら、そこで何をしてやがる!」

そこに完二くんが帰ってくる。

「さっきのバカップルに……そっちは昨日の……」

バカップル……だと?

「陽介、どういうこと!?」

小西先輩のことで辛い状態だと思っていたのに、いつの間に里中さんと付き合っていたの!?

「この裏切り者め!?」

「え? なんで明久が怒るんだ!?」

まさか親友が異端者だったとは、悲しいけど始末しないわけには……

「ええ!? アキってナンパじゃなくて花村とそういう関係だったの!?」

そこで声をかけてくるのは……美波!?

「ち、ちょっと待て、俺はそんな趣味ねーからな!」

「そうだよ!? これは異端者への裁きであって!?」

どうして美波はいつもこういうタイミングで現れるんだろう……

「ち、ちょっと待て、じゃあ、昨日の行為は俺をそっち系だと思って声かけてきたのかよ!」

ええ!? 完二くんまで誤解を!?

「違うからね!? あれは全部雄二の嘘で!?」

「うるせえ! てめえら、今すぐ失せろ、失せねえとキュッとシメっぞ!!」

完二くんもすでに話を聞いてくれそうもないし……

「ねえ、雪子、これどうすれば良いんだろ……」

「さあ、なんか口出せない雰囲気だし……」

「そうだね……」

里中さんと天城さんはあきらめてるし……

「アキ! そんなに男同士が良いの!」

「僕にそんな趣味ないからね!」

美波も怒りの状態……

こうなったら仕方ない、また完二くんと美波が連携をとる前に……

「今日は解散しよう、それじゃ!」

美波単独が相手のうちに逃げる。

「あ……おい……しゃあねえ、俺達も帰るか」

「さっさと失せろって言ってんだろうが!」

完二くんもこの様子じゃ今日話を聞くこともできなそうだ。

 

 

その後美波との追いかけっこは雨が降り始めるまで続いた。雨が降ってきたらさすがに美波は諦めて帰ったみたい……




女教皇コミュ発生、それに対して美波は点数を下げてるみたいですが別にアンチではありませんから、美波もちゃんとヒロイン候補にしたいと思っています。学校違うのは不利ですけどね。
ちなみに一応補足として瑞希も怒りで追ってこないのは原作と違って同じクラスという接点がないので未だに小学生の頃の同級生という関係でしかないからです(感情的には別ですが)。
そこも後に変化させられるといいなあと思ってます。
ちょっと忙しくなりそうなんで次回以降更新ペースが遅くなります。
では次回もよろしくお願いします。

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