バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第二十四話

「お~、今日は随分大人数クマね、しかも増えたのが女の子クマ。ねえ、お名前なんていうの?」

「え、里中千絵だけど……」

「……霧島翔子」

今ここにいるのは僕に雄二、陽介の前回のメンバーに加えて里中さんに霧島さん……

「って、ええ!? なんで霧島さんがいるの!?」

「……夫を追ってきた」

そう言って雄二を見る。

ふむ、つまり霧島さんは結婚していてその相手は雄二……

「くたばれ、雄二!!」

僕は木刀を振りかぶって全力で雄二に振り下ろす!

「うお!? あぶねえ! こいつの言うことを信じるな、俺と翔子はただの幼馴染だ!!」

ちっ、予想していたな、避けられるとは……

「……試召戦争で私が勝ったから付き合うって約束した」

つまり美人で頭の良い霧島さんとブサイクで頭の悪い雄二が幼馴染で現在付き合っていると……

「ペルソ……」

「お、おい、明久、落ち着けって、なんでそんなに切れてんだよ、今それどころじゃねえだろ!」

召喚しようとした僕を後ろから陽介が押さえつける。

「離せ、陽介! こいつは明日の朝には電柱にぶら下がってもらわないといけないんだ!」

「待て、発想が犯人のものになってるぞ!?」

「や、やっぱりアキヒサが犯人だったクマか!?」

「あーもう、バカなことやってるヒマ無いでしょ!」

里中さんが僕たちの争いを一喝する。

「ちっ、命拾いしたな、雄二」

確かに今はそれどころじゃない。異端審問会はあとにしよう。

「それで、翔子、どうやってここに来たんだ、俺はここに来ることは誰にも教えてないはずだが……」

「……優子に聞いた」

「優子? ああ、秀吉の姉貴か……って秀吉のメールはそういうことか!? でも俺は秀吉にも教えてないぞ!?」

「……雄二は友達が少ない、木下と土屋じゃないならもうここしかない」

「なんで俺の交遊関係まで知り尽くしてるんだ!?」

「……妻は夫の全てを把握するべき」

「ツッコミどころが多すぎて追いつかねえ!?」

「痴話喧嘩してる暇ないでしょ! それより雪子よ! ねえ、そこのクマ、雪子がどこにいるか知らない?」

「え? ユキコって誰かは知らないけど、昨日からあっちの方に人のいるニオイが……」

「あっちね、それじゃ、私、先に行ってるから!」

「おい、里中、待てって……」

「里中さん、一人じゃ危ないよ!」

里中さんは僕たちの制止を無視して一人で走っていってしまう。

「……雄二、無断外泊の理由を聞かせて」

霧島さんはマイペースに雄二にアイアンクローを仕掛けている。

「まて、翔子、今それどころじゃ……ぐぁああああ」

すごい、雄二の巨体を片手で持ち上げている。

「お、おい、雄二、急いで里中追いかけないと」

「そういうことだ、とりあえず話は後で……」

霧島さんに釣り上げられた状態で雄二は普通に話を続ける。

「……雄二はそう言って誤魔化す。だから話を先に聞かせて」

『……そう、結局雄二を信じてないからそうやって束縛しようとする」

「なに!?」

「おいおい、マジかよ……このタイミングで」

「霧島さんのシャドウ!?」

そこにいたのはもうひとりの霧島さん……

「ちっ……里中を放っておくわけにいかねえのに……」

「明久、陽介、クマ、お前らは里中を追いかけろ」

「雄二!?」

「この状況だと分担作業が妥当だ、コイツのことは俺が何とかする」

「一人で大丈夫なの!?」

「ペルソナの使い方なんて召喚獣といっしょだろ、お前ほどじゃないが俺だって文月の生徒なんだ」

「明久、ここは雄二に任せようぜ」

「……そうだね、わかった、雄二、ここは任せた!」

「おう」

「雄二、しっかりな!」

陽介が何か意味ありげに雄二に向かって親指を立てる。

「ふん、言われるまでもねえ!」

「そ、それなら急いで追いかけるクマよ」

僕たちは里中さんの向かった方向に走り出す。

しかし霧島さん……この状況に驚いて少し呆然としてたけど、それでも雄二をアイアンクローから解放しなかったな……

 

 

「な、なんだ、この城!?」

里中さんを追いかけて走ってきた僕らの前にあったのは西洋のお城みたいな建物。

「これって昨日のマヨナカテレビで天城さんが入っていったお城だよね?」

「ああ、そう見えるな……おい、クマ、あの真夜中の番組、誰かが撮ってるわけじゃないんだよな?」

「バングミ? 知らないクマよ。何かの原因で、この世界のことが見えちゃってるかもしれないクマ。それに、ここにはクマとシャドウしかいないんだってば」

「陽介、考えるのは後にして今は里中さんを追いかけようよ!」

「わりい、そうだったな、早く里中を追いかけてないと、雄二の方も心配だしな」

「雄二は大丈夫だよ、あいつが分担作業を判断したなら勝算があるんだと思うし」

「そっか、なら俺たちは里中との合流に集中しようぜ」

「クマ、里中さんはこのお城の中?」

「うん、クマの鼻にはチエチャンともうひとりの子のニオイがビンビン来てるクマよ、でもこの城にはシャドウの気配がするクマ、シャドウは普通の人は襲わないと思うけど……」

「わかった、行こう、陽介」

「おう!」




今回は短いですけど区切りが良いのでひとまずここまでで。
翔子シャドウの方は千枝が終わってからです。
異端審問会での千枝の反応を楽しみにしていた方すみません、千枝ちゃんは今は雪子のことで頭いっぱいでツッコミに回る余裕なかったです。
あと前回紛らわしい言い方をしてすみません、翔子が恋人にはならないというのは『明久のコミュとして』です。同級生の異性のコミュなのに主人公とは恋人関係にならないという意味です。P3Pのハム子ルートで順平がチドリがいるから恋人にはならない的な位置ということです。勘違いした方すみませんでした。
ちなみに一番の犠牲者は実は秀吉……お姉さんと『話し合い』をさせられて……

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