バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第十六話

あのあと僕たちは互いに自己紹介を済ませた。クマくんの名前はそのままクマみたいだ。

「しかし犯人探しといってもどうするんだ? この前みたいに闇雲にこの世界を歩いてもな……」

「そうだな……なあ……明久、花村、お前らは山野アナと関わりありそうな場所を見つけたんだよな」

花村くんの疑問に雄二は少し考えてから僕たちに問いかける。

「うん、柊みすずの顔のないポスターとかあってすごい不気味な部屋だったよ、そこに行ってみるの?」

「いや、そっちは一度お前らが見ているんだろう、だが山野アナの場所があるなら小西早紀に関わりのある場所もあるんじゃないかと思ってな。クマ、わからないか?」

「この前ここで消えた人間クマね? うん、それならわかるクマ」

「ならまずそこに行ってみるぞ」

「す、すげーな、坂本」

「あ、ちょっと待つクマ、案内する前に3人とも、これをかけるクマ」

そう言ってクマくんが差し出してくれたのは……メガネ?

「僕は別に目は悪くないけど……」

ゲームをよくやってはいるけど僕の視力は落ちてない。

「いいから、かけてみるクマよ」

クマくんに言われて僕たちはメガネをかける。

「うお、すげえ」

「うん……これは驚きだよね」

メガネをかけるとテレビ内に立ち込めている霧が晴れて見える。

「確かにこれは驚きだな」

この効果には雄二までもが驚きの声を上げ……

「普通メガネをかけたら少しは賢く見えるのに明久はメガネをかけても驚くほど馬鹿にしか見えねえ」

「驚くところはそこなの!? もっと驚くポイントあると思うんだけど! ねえ、花村くんそんなことないよね! これをかけると僕だって普段の二割くらいに頭よさそうに見えるよね!」

「え? あ、あのな……二割に見えるってそれ減ってるんだけど……」

「ち、違うんだ、普段の二倍くらいと言い間違えただけで……」

「違うぞ、花村、普段のこいつはマイナスだから二割でも増えてるんだ」

「そ、そうか、悪い吉井……」

「そこで納得しないでよ!」

くっ……なんて屈辱的なんだ……こんな屈辱、前の学校を去って以来だ……

「えっと……案内して良いクマ?」

それから五分後、僕たちはクマくんに案内されて小西先輩のいた場所に向かった。

 

 

「な、なんだ、ここ町に商店街にそっくりじゃないか」

クマくんに案内されてきたのは商店街みたいなところ、僕はまだここには来たことないからわからないけど実際の商店街と同じ作りらしい。

「最近おかしな場所が出現しだしたクマよ。いろいろ騒がしくなって困るクマ……」

「最近? つまりこの場所は突然出来たということか?」

「うん……」

雄二の問いにクマくんが答える。

突然出来たって……建物って急激に出現するものじゃないよね。やっぱりこの世界って不思議なんだなあ……

「ところでお前、なんでそんな離れたところにいるんだ?」

花村くんに言われてみればクマくんは僕たちと距離をとっている。

「ほら、雄二があまりに凶悪だからってクマくんが怯えてるよ」

「何言ってんだ、お前のバカさが伝染らないように警戒してるんだろう」

僕たちは互いの胸ぐらをつかみ合う。

「そ、そうじゃないクマよ、あんま近くにいるとキミたちの活躍の邪魔になるから」

「調子いいこと言って何かあったら逃げる気じゃねーのか」

「あはは、雄二じゃあるまいしそんなことないよね」

「そうだな、明久じゃあるまいし協力し合う仲間を置いて逃げるなんてするはずないだろう」

互いに睨み合う僕たち

「モモモ、モチロンそんなことないクマよ」

「お前わかり易すぎだろ。そして吉井と坂本、お前ら仲が良いのか悪いのかどっちだよ……」

「何言ってるの、僕は雄二のこと好きか嫌いかと言われたらぶち殺したいと答えるくらいだよ」

「気が合うな、俺も明久のことを八つ裂きにしたいと常々思っているんだ」

「はぁ……お前らが仲いいことはよくわかったよ」

僕の想いは花村くんには通じてないようだ。

「けど町のいろんな場所の中でなんでここなんだろうな」

「なんでって言われても……ここに居る者にとってはここは現実クマ」

「どういう意味?」

「俺にもよくわからねえな」

雄二がわからないなら僕が考えても無駄だよね。

「でもここが商店街ならこの先はたしか小西先輩の……」

今度は花村くんが先導して進む。向かった先は

『コニシ酒店』

「間違いないようだな」

「間違いないってなにが?」

雄二が何かを確信したように言う。

「お前らが見たという山野アナと関わりのある部屋、そして小西早紀の実家の酒屋、前者だけなら相手が有名人ということもあるから偶然とか見間違いもありえたが、知り合い、しかも二回目となるとこの世界と事件が関わりあると見て良さそうということだ」

「え? まだこの世界と事件が関わっているかどうかを考えていたの?」

「俺はそのマヨナカテレビとやらは見てないし断定するほどの情報も集まってなかったしな」

相変わらずこいつは色んなことを考えている。

「先輩、ここで消えたってことなのか……」

僕と雄二が話していると花村くんが酒屋に入っていこうとする。

「ちょ、ちょっと待つクマ、そ、そこにいるクマ」

「いるって何がだよ?」

クマくんに言われて僕と雄二もあたりを見渡す。

「……シャドウ。やっぱり襲ってきたクマ!」

その時酒屋の中から仮面をつけた黒い影みたいなのが出てくる!

「な、なんだ!?」

それに驚いた花村くんがその場で尻餅をつく。

その影は途中で大きな口のついた丸いものに変化し花村くんに襲いかかろうとする。

「危ない!」

僕はさっき預かった木刀を構えて飛び出す。

『我は汝』

この声はこの間のテレビの!?

『汝は我』

「くっ……」

突然頭に響いてきた声に僕は頭を抑える。今はそれどころじゃ……

『双眸を見開き……』

そしてふと僕は気づく……

『……今こそ発せよ』

自分の中の力に……そして僕は笑みを浮かべてその声に従い力を解放する。

 

試獣召喚(サモン)

 

「「「…………」」」

 

間違えたーーーー!! つい観察処分者のときの癖で言葉に出ちゃった!?

あたりは沈黙に包まれる。なぜか花村くんに襲いかかろうとしていた化物までもが僕を呆れた目で見ているような気がする!?

「明久、ここは召喚フィールドではないし、そもそもお前は学校辞めたから召喚獣の設定がもう消えてる」

「何がしたいクマ……?」

見ないで、そんな目で僕を見ないで……

「ふっ、今のは敵を惑わすためにやったんだ!」

「俺たちまで惑わされたけどな」

気を取り直して僕は構えを取る。

「今度は本番だ!」

雄二の言葉をかき消すようにして僕は言葉を発する。

「ペ・ル」

目の前に舞うカードを木刀で一閃し

「ソ・ナ!」

そしてその力を解放する!

「な、なんだ!?」

黒い学ランのようなものを着て巨大な太刀を持った存在……もうひとりの僕、『イザナギ』が具現化する。

「さあ……行くぞ!」

この力ならこの化物たちと戦える、何故かそれが理解できる。

さあ、戦闘開始だ!




良いところで次回に続く。正直戦闘シーンを書くのはあまり自信はないんですが初戦闘は次回ということにさせていただきます。
なんと三日連続アップ、自分でも驚くくらいにこのシーンは進めることができています。まあ、天気が悪くて家でのんびりしてた昨日に書いた分が多いんで次回以降は平日進行に戻りまた更新ペースは戻りますが。
脳内でバカテスキャラのメガネ状態を妄想しつつ書いていますが明久がメガネつけて『カッ』とかやってるのを想像すると「似合わないんじゃね?」とか思ってしまいます。絵心がないんでイラスト化はできませんけどね。
では次回もよろしくお願いします。

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