バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第十話

叔父さんは事件で忙しいみたいだけど今日は食事の時間に間に合うように帰ってきた。

「お父さん、帰ってくるの遅い!」

「すまんな、明久、昨日もだが飯作ってくれてるんだな」

「料理は家でもやってましたから」

菜々子ちゃんは嬉しそうに食べてくれるから作りがいはあるしね。

「テレビ、ニュースに変えてくれ」

菜々子ちゃんが言われてチャンネルを変える。

ニュースでは例の殺人事件のことを報道している。

地方テレビだし地元の事件を大きく取り上げるのはわかるけど……第一発見者へのインタビューの態度はあまりよくないなあ……

でも第一発見者はどこかで見たことあるような気が……あ、さっき会った小西先輩だ。

『ジュネスは毎日が……』

見ているとテレビはニュースに切り替わる。

「あ、ジュネス。ねえお父さん……あ……」

菜々子ちゃんはジュネスに行きたいみたいで叔父さんに声をかけるけど捜査で疲れているみたいでテレビのニュースを見ているあいだに寝ちゃっていた。

「それじゃあ菜々子ちゃん、今度夕飯の買い物に一緒に行こうか?」

「うん!」

買い物に連れて行くだけでこんなに喜んでくれるなら近いうちに連れて一緒に買い物するのも良いよね。

「叔父さんどうしようか?」

「菜々子が寝るときに起こして連れて行くよ」

「うん、それじゃお願いするよ」

僕は菜々子ちゃんと買い物の約束をして部屋に戻ることにした。

 

 

「まだ時間あるなあ」

約束のマヨナカテレビが始まるまでまだ時間はある。

僕は暇つぶしに久しぶりに雄二にでも電話することにした。

「もしもし、雄二?」

『なんだ、明久か、どうした? そっちでも学園一のバカにでも認定されたか?』

「暇だからちょっと連絡しただけだよ。そっちは何か変わったことない?」

『そうだな、試召戦争を起こしたくらいだ』

「試召戦争? 雄二ってどこのクラスになったの?」

『Fクラスの代表だ』

「雄二はバカだなあ、Fクラスがやって勝てるわけないじゃない」

文月学園で行われている試験召喚戦争、テストの得点でクラスごとに戦う戦争だ。そしてクラスは成績ごとに分けられる、つまり新学期が始まったばかりで一番バカなFクラスが他のクラスに勝てるわけがない。

『だからお前は考えが浅いんだよ、戦争なんだから総合得点だけで決まるわけじゃない』

雄二が話すにはすでにDクラス、Bクラスを倒して明日にはAクラスと戦う予定らしい。

『それで、お前の方はどうなんだ? 何か面白いことでもあったか?』

「あ、うん、こういう噂を聞いたんだよ」

僕は雄二にマヨナカテレビのことを話した。

『う、運命の相手を映すだと?』

なぜか雄二が動揺したような声を出す。

『大丈夫だ……Aクラスとの戦争さえ勝てば問題ないはずだ……それにその噂がこっちまで流れてくるはずがない……」

何か小声でブツブツ言っている。

「雄二? どうかしたの?」

『あ、ああ、なんでもない、それより明久、無駄なことはやめておけ』

「あれ? 雄二ってオカルト否定派だっけ?」

そんな話は聞いたことないはずだけど……

『文月学園の試験召喚システムが科学とオカルトの融合なんだ、否定するはずがないだろう」

じゃあなんでマヨナカテレビは否定するんだろう。

『俺が言いたいのはお前に運命の相手がいるはずないと言うことだ』

「いるよ! 僕にだっていつか恋人ができるよ!」

『そういえばお前がいなくなったからと聞いてきた奴がいたな』

「え? 誰?」

そういえば美波が雄二に聞いたと言ってた気がする。もしかするとほかの子からも……

『たしか久保……』

久保……どこの久保さんだろう。

『久保利光だったな』

…………

『おーい明久、どうした?』

「それは聞きたくなかったよ……」

そのあとも軽い雑談をして電話を切った。

そしてもうすぐ0時……

誰が映るかなあ。今の学校だと里中さんとか天城さんは可愛いよね。文月だと僕と仲の良い異性といえば秀吉だけど他にも可愛い子はいるし、僕は外が雨ということを確認しテレビを覗き込んだ。

そのまま見つめているとテレビにノイズが混じり映像が見えてきた。

髪が長い……それにちゃんと女の子っぽい。少なくても久保くんではない。

『我は汝、汝は我、汝……扉を開く者よ』

僕の頭に声が響き渡る……これは経験したことがある。

「まさか……僕の中の悪魔!?」

『いやいや俺は関係ないし……』

「じゃあ天使の方!?なんでこのタイミングで!?」

『違うって現実を見ろ』

僕の中の天使でも悪魔でもないの!?じゃあこの声はなに!?

声はもう聞こえない……まさかテレビの音声?僕はそのままテレビに触れてみる。

「ええー!」

そのままテレビに僕の腕が吸い込まれる……

「わ、なに!? 何が起きてるの!」

そのままテレビに吸い込まれそうになる。

ガン!

テレビが小さいことが幸いだったのか画面の外、テレビの縁に顎を強打するだけで済んだ。

「とりあえず抜かないと……」

そのまま腕を引っ張る。

ガン!

今度は机に後頭部をぶつける……うう、酷い目にあったよ。そして部屋に駆け寄ってくる足音が聞こえた。騒ぎすぎたかも。

「だいじょうぶ?」

菜々子ちゃんの声が聞こえる。こんな夜中に起こしちゃったかな……

「大丈夫だよ、起こしちゃった?」

「すごい音したから……」

「ごめんね、夜中に騒いじゃって」

「うん、いいよ、おやすみなさい」

菜々子ちゃんが戻っていく、叔父さんは疲れて眠りが深いのかな……でももう一人暮らしじゃないんだから騒ぐのは控えないとね。




雄二登場、たしかDクラス戦で一日、Bクラス戦は二日かかっていたからちょっとズレがありますがあまり気にしないでください。始業式の日付が違っていたんでしょう。
そして最初に試召戦争は明久がいなくても結果は変わらないと思います。Dクラス戦は明久は一戦力だし、Bクラス戦は明久がいなければ瑞希がラブレター書く事もないですしね。過程は多少変わっても結果は変わらずということになっています。
そして明久の中の天使と悪魔……これ明久のペルソナと言っていい気もします。悪魔と天使のくせにアルカナ愚者とか言いそうですけど。もちろん別枠で普通のペルソナも持ってますよ。
では次回もよろしくお願いします。

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