「遅いぞ、明久」
姫路さんを振り切ってジュネスのフードコートに着くとそこにはクマとりせ以外のみんなが揃っていた。
「ごめんごめん、ちょっとトラブルがあってさ。それにまだクマとりせ、ムッツリーニが来てないみたいだしさ」
話しかけてきた雄二に答えながら僕も椅子に座る。
「3人には今テレビの中探ってもらってる。ま、明久もきたし俺たちは作戦会議を始めようぜ」
ということは僕が一番遅かったのか。雄二はともかくわざわざ文月から来ている美波や霧島さんを待たせたのは心苦しい。
「それで昨日のだけど、稲羽組は全員見たよな」
陽介が声をかけると僕と里中さん、天城さん、完二が頷く。
「見てて根暗が感染りそうだったぜ」
「千枝から話は聞いてたけどそんな酷かったんだ」
完二の感想に直接見てない美波が言う。
「ああ、死んだ魚みたいな目で挑発してきてムカついたぜ」
完二はあの少年の発言に相当苛立っているようだ。
「で、結局あいつなんなんスか?」
「うん、テレビで見たことないよね?」
完二の発言に僕は答える。
「おそらく犯人だろうな」
僕達の言葉に陽介が答える。
「うん、私もそう思う」
「そう考えると繋がるんだよね」
陽介の発言に天城さんと里中さんも同意する。
「うん、捕まえてごらんって言ってたし僕もそう思う」
僕も昨日のテレビを思い出すとそれに同意する。
「え? アキがそう言ってるってことはその推理間違ってない?」
そして美波が失礼なことを言う。
「そう言うな、島田。明久でも偶然正解するときはある。まあ、諸岡殺しの犯人で間違いないだろうな」
雄二がより失礼なことを言う。
「そうよね、犯人は高校生って話だし」
しかしそれで美波も納得してくれたようだ。
「え? つまりどういうことっスか?」
「……つまり犯人が追い詰められてテレビに逃げ込んだということ」
霧島さんが推理の補足をする。
「あー、なるほど、そういうことっスか!」
「完二……お前わかってなかったのか。明久でさえ理解できてたのに……」
「え? いや、も、もちろんわかってたっスよ」
なぜみんな悪い例に僕を出すんだろう。
「……雄二、何か気になってることがある?」
しかし雄二はその補足に対して何か考え込んでいる。
「いや、何でもない。しかしその犯人、放っておいたらテレビから出てこれないんじゃないか?」
「あ、そうか。僕の時も入れたけど出るにはクマの力が必要だったっけ」
そう言えばそれが切っ掛けでクマに協力することになったんだった。
「追い詰められて入ったから出られないってこともわかんなかったんじゃない?」
美波がそう予想する。
「いや、少なくても犯人なら出る手段があることは知っているはずだ。実際に天城達が出て来ていることは知ってるはずだしな」
え? つまりどういうこと?
「つまり真犯人なら出る手段の存在は知っている。ただしその手段がクマということまではわからないってことだ」
なるほど、なにか出る手段はあるはずってだけで飛び込んだということか。
「つまりそれってクマがこっちの世界にいる限り犯人出てこれないってことだよね? それってまずくない?」
テレビに入れてもシャドウに襲われたら死ぬかもしれない。
「まあ、とりあえず中に入って直接話を聞く必要はあるな」
雄二がそう締めくくる。
「あ、センパーイ」
そこでタイミングよくテレビの中を探っていたりせとムッツリーニが来る。
「お、ナイスタイミング、どうだった?」
里中さんが結果を尋ねる。
「だめ、手がかり少なすぎて追跡できない」
りせがそれに答える。
「ムッツリーニはどうだ?」
「…………すまん、俺のペルソナでは男の気配はつかめないようだ」
「ムッツリーニらしいね」
女の子限定ならりせの気配は掴めたことは納得だ。実にムッツリーニらしい能力だ。
「中に誰かいることは間違いないんだろうけど……クマがまだ探してる」
「今のあいつの鼻じゃあんまり当てにならねえな……手がかりがもう少しあれば探せそうか?」
「うん、多分何とかなる」
陽介がそう確認を取るとりせはそれに答える。
「ならなんとか調べてみるか」
その言葉に僕も頷く。
「それはそうとアキ。結局さっき言ってたトラブルって何だったの?」
「あ、うん。それなんだけど……」
僕はさっき姫路さんに会って話した会話内容を説明する。
「うわ、それはショックでかいわ。あんなのが運命の相手とかきつすぎでしょ」
里中さんがそれに対してそう答える。
「つまりアキは瑞希にきちんと説明できなかったわけ?」
「う、うん……」
ショックを受けているのかもしれないけど僕にできるのはマヨナカテレビを見れないようにすることくらいだし……
「わかった、ウチが瑞希と話してみるわ」
「え?」
「ウチが一番瑞希がショックを受けているのはわかるから。最悪事件のことも説明するかもしれないけど……何とかして見せる」
美波が決意の表情を浮かべる。
「わかった。美波に任せるよ」
「ならあたしも行くよ」
それに里中さんたちも続く。
「わかった。なら姫路の件は女性陣に任せる。俺たちは情報収集だ」
姫路さんのことは心配だけど美波たちを信じて任せることにして僕達は情報収集に向かうことにした。
今日は早く帰ってこれたので(出勤時間が早いため定時は早いのです)更新。
次回は美波視点かな。こことの関わりはあえて明久を外して女性陣に頑張ってもらいます。
では次回もよろしくお願いします。