もしも、タツマキがヒロインをしたら?   作:ミミヤヤ

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二人の日常

 時刻は昼時、空は曇天だった。

一等地に立っている一軒家のソファで寛いでいるのは、シオンの勧めたヒーロー試験に無事、というか余裕で合格したタツマキだ。キッチンにはシオンがおり、昼食を作っているのか、『サクッ、サクッ』となにかを包丁で切る快音が聞こえる。

 

 「そういえばマキたん」

 「なによ?」

 

 キッチンの方から包丁を動かす音とは別にシオンの声が聞こえ、それにマキたんことタツマキは寛いだまま返答した。

 なんというか慣れているといったところだろうか。

 二人の外見はタツマキが小学校高学年程で、シオンはギリ高校生に見えるかくらいだ。だが、ぶっちゃけるとこの二人は二十代である。より厳密にいえばタツマキは二十五歳、シオンは二十三歳だ。なんと、まさかのシオンの方が年下という真実。年齢詐欺もいいところだろう。

 

 二人が一緒の家で暮らし始めたのは約八年前程からだ。シオンとタツマキは普段家に居り、好きなように動いている。それを八年という長い時間過ごしてきた、それは慣れる筈である。

 

 「ヒーローって普段どんなことをやるの?」

 「……あんた、それ知らないで私に勧めたの?」

 「いや~、なんというか、ね? 協会側が被害負担って部分しか興味無かったから、あはは」

 「はぁ~、まったくあんたは……」

 

 溜息を吐くタツマキだが、シオンがやったことがはやはり自分自身を考えての行動だと分かっているからなのか強く当たれない。いや、シオン以外ならばそんなこと関係なく当たっていたのだろう。しかし、そこは八年も一緒に暮らしている仲だ。信頼関係といっていいのか、ともかく丈夫で長い繋がりがある。

 

 「ヒーローっていうのは、まあ基本その名の通りよ。人助けとか、事件解決とかそんな厄介事を綺麗に掃除。そんなところよ」

 「ふ~ん。あ、そういえばマキたんは何級になったの? やっぱりC級から?」

 「いいえ、S級(・・)よ」

 

 ……え? と驚いたような声がすると、ヒョコッとキッチンからシオンの顏が飛び出る。

 

 「マジ?」

 「マジよ。何、嘘でも吐いてると思うの?」

 「いや、思わないけど……。そっか、S級か。じゃあやっぱりこれから忙しくなったりするのかな……残念だなぁ」

 

 は? と今度はタツマキの方が声を出す。その声を聞いてシオンはキョトンとしてタツマキの顏に『違うの?』とでも言いたげな表情をつくる。

 

 「別に忙しくなんてならないわよ。自分の好きな時に活動すればいいの、私忙しいの嫌いだし。……家で一緒に居れなくなっちゃうし」

 「あ、なんだそうなんだ。ん、最後何か言った?」

 「い、言ってないわよ!!」

 「そう? まあいいや。マキたん、ハンバーグにかけるのは何がいい? デミグラス? それとも和風おろし? あ、チーズとか目玉焼きもあるよ」

 

 何気に種類が豊富で悩むところだ。というかシオンの主婦力、いやこの場合主夫力であろうか? それが飛びぬけているのだ。朝あっさりしたものから夜がっつりしたもの、なんでもござれ。一家に一台は欲しい主夫となっている。まあ、タツマキと結婚している訳でもないので主夫ではないのだが。もちろん主婦でもない。

 

 「そうね、久しぶりにデミグラスだけにするわ」

 「そっか、いつもチーズか目玉焼きも付けるもんね。分かったよ、あと一、二分でできるからテーブルについといてね」

 

 そして、数分後。テーブルの上には美味しそうな匂いを香らせ、美味しそうな湯気もあげた、実際に美味しいハンバーグが乗っていた。

 

 「「いただきます」」

 

 その日、いや毎日のことなのだがタツマキが落ち込んだという。その理由は勘ぐらないことが彼女の為となるだろう。ヒントは料理。

 

 




はい、どうも。
評価、感想くれた方ありがとうございました。

一応、この作品は連載を続けることにしました。ですが、できたとしても一週間に一、二回くらいだと思います。それでも良ければよろしくお願いします。

 次回はヒーローっぽいことをさせるかも?

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