もしも、タツマキがヒロインをしたら?   作:ミミヤヤ

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ヒーローのすゝめ?

 空は快晴だった。

 一等地に建っている一軒家の傍で涼しい風を楽しみながら、高校生ほどであろう白髪の少年、シオンは笑顔で呟いた。

 

 「ヒーロー、かあ。アゴーニとかいう人が最近作ったんだっけ?」

 

 とあるチラシを宙に浮きながら見ていた。宙に浮きながら、という点は紛れもない事実だ。

 そんな時、シオン隣から声がした。

 

 「あなた、それに興味あるの?」

 

 天然パーマのおかげで渦巻きのように巻かれている緑の髪を揺らしながらシオンに問うのはまたも宙に浮いた小柄な少女、タツマキだった。

 タツマキの問いかけに『う~ん……』と言った様子に首を傾げるシオン。しかし、そうしていたのも少しの間で言葉が見つかったのかタツマキの法を向いて笑顔になる。

 

 「まあね。マキたんはないの?」

 

 ないわね、と即答するタツマキだが、何かを思い出したようにシオンの方を睨む。

 

 「その“マキたん”っていうのはなによ!」

 「いやぁ、だって“タッちゃん”は男っぽかったし“タキたん”は語呂がなんか悪かったからマキたんでいいかなって」

 「あんたのそのネーミングセンスはどうにかならない訳!?」

 

 またよ、またこれよ……! と何故か嘆くマキたんことタツマキだが、シオンはその様子を『マキたん可愛いなぁ』とぐらいしか思っていない。

 

 一通り嘆き終えたのか、それとももう諦めたのかタツマキがいつもの調子に戻る。その表情は疲れていて、どこか晴々としていた。どうやら、諦めたようだ。

 

 「それでさ、このヒーローになるため試験を明日やるらしいからマキたんやってみない?」

 「何でよ。私はヒーローなんてごめんよ?」

 「そんなこと言わずにやってみなよぉ。何かS級? とかいう一番上のランクになるとお金一杯もらえるみたいだしさ!!」

 「結局お金じゃないの!!!」

 

 シオンの目は小判の形になっていた。正に外見からして金の亡者、といったところだろうか。タツマキはその様子に溜息を吐くと指をクイッと動かした。すると、あら不思議。シオンの手元からチラシが独りでに抜け出してタツマキの元へと宙を浮遊していった。

 

 「ふぅ~ん。S級、ねえ。確かにこの金額は魅力的ね。でも、それだけが目的じゃないんでしょ? あなた、最初金額の方に視線を向けてなかったわよ」

 「あれ、バレてた? っていうか俺のことを見てくれてたんだ、嬉しいなぁ!」

 

 にへらぁ~、と頬が緩むシオンだが、タツマキはその様子を見てもそっぽを向くのみ。シオンはそれを見て少し寂しげな表情になるのだが、すぐにそれも消えてヒーローの催促をする。

 

 「理由はなによ? 言ったら考えてあげなくもないわよ」

 

 タツマキは一番気になった点を尋ねた。

 すると、その言葉にシオンは照れ臭そうに答えた。

 

 「いや、ヒーローになればマキたんの力も存分に使えるかなぁ~、なんて思っちゃたりして」

 

 ……そう、とタツマキはそのシオンの返答に少し間を置いて呟き、そっぽを向いてしまう。

 

 タツマキの小さな手が握るヒーロー教会についてのチラシ。シオンが最初に注目した部分、そこには『ヒーロー活動による被害は協会側が負担いたします』の文字。

 

 シオンがヒーローを勧めた理由、それが全て自分自身の為だと知ったタツマキはシオンに顏を見せられない状況になってしまった。

 

 

 

 




 ワンパンマンを読んでいて思いついた文字通りの思いつき。

 更新を続けるかは不明。

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