艦これ外伝〜Memory of Crossroads 〜   作:えいえいむん太郎

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2.James and Nevada

私の名はジェームズ・エドワーズ。ニューヨークで記者をしている。主に海軍や海兵隊などを専門に記事を書いている。私は、アメリカ人として、あの祖父達が戦った太平洋戦争に興味を持ち、個人的に当時の軍人達にインタビューをしたり、海軍の資料をあたったりして独自に戦史研究をしている。そして調べていくうちに、日本のヒロシマ、ナガサキに投下された原子爆弾のこと、戦艦ネヴァダ、ニューヨーク、空母サラトガを使って行われたクロスロード作戦についても調査を開始した。偶然にも、私は戦艦ネヴァダーー現代で言う艦娘のネヴァダと、知り合いであった。そこで私はありとあらゆるコネクションを使ってネヴァダに取材、というか個人的に話したい、と思い立ち、面会を申し込んだ。やっと艦娘であるネバダへのインタビューのアポイントメントが取れたのは、アメリカ海軍へ取材の申し込みをしてから半年が経過した頃だった。大量の誓約書へのサイン、私の身辺調査、電話の盗聴、GPSによるリアルタイムの監視を経て、国防総省とアメリカ軍最高指揮官たる大統領の許可を持って、厳重な警備と監視、規制と束縛の下、私へのネバダへの面会が許された。

 

黒服をきた体格の良いサングラスが数人、私を取り囲み、「お前がエドワーズか?」と一言、「そうだ」と答えると、「乗れ」と車に乗せられ、私の両端に黒服が座り、数時間のドライブを経て、

ラスベガスに到着。車から降り、「ついてこい」と私をある高級レストランの入り口まで先導し、

「指定された物以外は身につけていないな?」とここまでで5度目のボディチェックと金属探知器による検査が終わり、携帯、身分証明書、カメラ、靴紐、ボールペンに至るまで全て没収された。

 

政府の高官と思われる男が私に最終確認を行った。

「いいか、お前がサインした書類にもある通り、彼女の承諾があって始めて面会は成り立つ。もし彼女の機嫌が途中で悪くなり、彼女がそれ以上面会をしないと言えば、規定時間内であっても中断だ。また、怪しい動きがあれば、即エージェントがお前を拘束する。紛らわしい動きは避けることだな。それと、彼女に敬意を持て。忘れるな、彼女は兵器である以前に人間であり、Ladyなのだ」

 

「了解……」

 

彼女、ネバダのような艦娘の存在は、アメリカ合衆国の最高軍事機密だ。私のような一介の新聞記者、民間人に許可が下りたのは、私の祖父が戦艦ミズーリの乗員だったことと、大叔父が海軍ではそこそこ有名な 勲章保持者であること、ハーバードを出ていること、これらが関係してるかどうかは分からないが、ネバダ自身が私に借りがあり、彼女が半ば面会を希望している所もあるのだろう。

しかし、私とネバダの2時間程度の面会に、数百人が動員されているというから驚きだ。軍、ペンタゴン、ホワイトハウス、FBI、CIA、NSA....今、私は体にあるホクロの数まで彼らに把握されるほどの監視を経て、ようやくネバダとの面会を果たすことになった…。

 

 

----ラスベガス、ネバダ州、アメリカ合衆国、ある高級レストランのVIPルーム

 

Nevada:Yo, Boy. Long time no see, huh? You been doin' good? (よう、少年。久しぶりだなぁ、おい!元気してたか?)

部屋に入った私を見つけると、ネバダはグラスに入ったワインをぐびぐびやりながら、フレンドリーに手をひらひら私に振った。

既に酔っているようだ。

 

"You been missing me and sad, right?" (会えなくて寂しかったろ?)とニヤニヤしながら言うネヴァダ。

 

"Who the hell was?" (誰がだよ?)と私は座りながら言う。

 

"Yeah..I have been good, by the way, stop calling me boy. I have my name. James."(ああ、元気だよ…というか私を少年と呼ぶのはやめろ。私にはジェームズという名前がある。)

 

彼女の誕生の地であるマサチューセッツ州特有の独特な発音と、簡易化された文法、軽々しいスラングが彼女の話し方の英語の特徴だ。カウガールを連想させる帽子に、ブロンドのストレート、オッドアイに、ビキニとサンバのコスチュームが混ざったような、チェーンで構成された扇情的な格好が、ネバダの豪快な性格を表している。

 

Nevada:" Uh huh? Most guys are boy for me."「そうかい…アタシにとっちゃ大抵の男はBoyだけどね」

 

"Except William, He was real man."「ウィリアム以外はね…彼はリアルな男だった」

 

ウィリアムとは、彼女の初代艦長、ウィリアム・S・シムス大佐のことらしい。

艦娘という奴は、前世の記憶、とりわけ沈んだ瞬間の記憶を強く覚えているものらしい。

誕生した瞬間のことも覚えているとすれば、初代艦長は父親のようなものなのかもしれない。

 

"Well, Take it easy and drink this! This Red wine is really good."

(まあ、楽にして飲みねぇ!この赤ワイン、美味いよ)

 

私はネヴァダから瓶を受け取り、グラスに赤ワインを注ぎ、一口呷った。

美味い。ここのレストランはラスベガスでも相当の高級、豪華なそれで、かなりの値段はする。

艦娘はアメリカ合衆国から手厚い保護を受けており、申請すればラスベガスのホテルに留まり続けることも可能だ。それは彼女、ネヴァダの前世での活躍と、現在のネヴァダの戦果があってこその豪遊だが……ラスベガスの雰囲気そのものが、ネヴァダの人格そのものを表しているようでもある。

 

"Then, What do you want to do today? Interview?"(で、今日はアタシに何の用だ?インタビューか?)

 

"Ah, I have some questions I wanna ask you."(ああ、いくつか聞きたいことがある)

 

"Shoot."(言ってみな)

 

"Hold on. Did I lend my money to you, didn't I? Please pay back."

(待ってくれ。俺、お前に金貸してたよな?返してくれ。)

 

私が唐突に切り出すと、ネヴァダはいきなり咳き込んだ。そして、私から目を逸らして、

 

" I borrowed? ....Ah..I dont remember that well...how much was that?"(借りたっけ?……いやー、よく覚えてないなぁ…いくらだったっけ?)

 

こいつ……私が一年前、ベガスに遊びに来た時、隣のスロットに座っていたネヴァダが、なかなか当てられなかったのか、イラついて台を叩きながら悪態をつき始めた。私は何だこの口の悪い女は、と思いながら私がスロットを回転させると、たまたまだろうが、目が揃って(777ではなかったが、)

そこそこの額を儲ける事が出来た。当たりを宣伝するかのようにスロット君が迫真の祝福サウンドを鳴らし、ふと横に視線を向けると、見事に獲物を見つけた猫のように目を爛々と輝かせながら、

「にいちゃん、ちょっと金貸してくんない?当たったら倍にして返すからさ」見ず知らずの私に、ずうずうしくもそう依頼してきたのである。私は最初断ろうと思ったのだが、ネヴァダは上目遣いで、私の元に歩み寄り、胸を押し付けるような形で私の腕を取り、ダメ押しに耳元に息を吹きかけるように、「なぁ、頼むよ」そう囁いた。……言っておくが、ネヴァダはこんな性格のせいで粗暴な女と見られがちだが、黙っていれば相当のブロンド美人である。私の頼まれたら断れない性格…押しと女性に弱いのが災いして、私は気づけば財布を開いていた…。その後、ネヴァダが当たりを引くことはなく、彼女は段々イライラし始め、暴れる一歩寸前で黒服達が駆けつけ、ネヴァダの両腕を取って、奥へと消えて行った。私の金は?…そんな疑問が頭に浮かぶ余裕も無く、私はホテルに戻った。次の日の朝、私の部屋のドアをノックしたのは、政府から来たという怪しいスーツの男だった。私が訝る素振りを見せると、どこかで見た黒服が、有無を言わせず男の背後から出現し、私をあっという間に拘束、私は拉致され車でどこかに連れ去られた。政府からの使者であるという男と、軍人、Navyが数人私を取り囲んだ。彼女が艦娘であること、彼女はアメリカ合衆国の最高機密であることなどを知らされ、艦娘と接触を持った一般人ーーそれも金銭のやり取りだーーとして、秘密を一生口外しないか、ここで死ぬか…遠回しな言い方だったが、あれはほとんど脅しだ…私は命が惜しかったので、秘密を口外しないという誓約書にサインをしたのだが、私が今こうして5回目のネヴァダとの面会を出来たのは、大叔父が私の身分の証明をしてくれたこと、ネヴァダ自身が海軍に私と彼女との間にあったいざこざを話したこと(さすがにネヴァダも民間人に金をせびったことはバツが悪いらしい)、国が私をある程度安全な人間であると判断したおかげだろう。そして私とネヴァダとの奇妙な関係は続いている。

 

"Ha...500$....I know you can not pay today …It is the same as the last time, right?"

(はぁ…500ドル、払えないんだろ?今日も。この前と同じで…)

 

"ah ha....sorry.."(あは…ごめん)

私はこいつに初対面の分も合わせて1000ドル貸している。半分は返して貰ったのだが、

彼女の給金のほとんどはラスベガスでのギャンブルと酒、クラブ、男に消える。

なぜ返せないのに借りるのか。私はこのBitchの性格をよく知っているので、最早怒る気すら起きないのだが(金は早く返せ。)…

 

"Today....I would like to ask you.....about "Nevada" .....yourself."(今日はな、ネヴァダ、お前自身について聞きたい。)

 

私は本題に入ることにした。

 

" You meant "me" or "Nevada as ship"? "(それは、「アタシ」か、「戦艦ネヴァダ」か、どっちだ?)

 

ネヴァダの目の色が、一瞬変わった気がした。

 

肉をナイフで切りながら聞くネヴァダ。

 

"I meant Both of You."(両方だ) と私。

 

" See. Okay."とネヴァダ。

 

改めて、お前のことが知りたい。

 

ーまずはお前自身について、ネヴァダ、普段は何をしている?ベースにいる時と、休暇の時それぞれ教えてくれ。

 

 

Nevada: I generally spend my free time in Vegas. Eatin', drinkin' and gamblin', dancin' and pickin' up boys and sometimes fuck with them. That's all I usually do.

Sortie, go back to Vegas, Sortie, Vegas. Again and again.

(アタシは大抵ベガスで休暇を過ごしてるよ。食って、飲んで、賭けて、踊って、男ひっかけて時々ファックして…そんな感じだな。出撃してベガス戻って、出撃してベガス…繰り返しだ)

 

--その何だ……お前は艦娘だろ?一般の男性客と関係を持ったらまずいんじゃないのか?

 

Nevada: Don't worry. They are male prostitute. Government prepare them for me when I request. they don't know who I am. I dont know who they are. Ain't nothing that I messd up. They are professional.

We fuck, then Good bye. It's simple business, isn't it? (心配いらないさ、商売男だから。政府が申請すっと用意してくれてさ。お互いのこと知らないままさ。ヘマやらかすような真似はしないし、やることやって、そしたらGood byeさ。シンプルなビジネスだろ?)

 

--艦娘だって人間と同じ体を有する以上、食欲も、睡眠欲も、性欲も湧くだろうが……。コメントし辛いな。まあ、そこは個人の自由だから、なんとも言えないが…。

 

Nevada:Don't think too much. You know we ship girls are soldier. We dont know when we sink.

so we do what we wanna do while living. That's it. (考え過ぎんなよ。アタシたちは兵士だ、わかってんだろう? いつ沈むかも分からない。だから、生きてるうちはやりたいことをするのさ。それだけだ)

 

ネヴァダはそう言うと、まっすぐ私を見据えて。

 

 

Nevada: Life is " All or Nothing"-----you get all or you lose all.....? Win or Lose, Live or die, ....Haha. Such is life. (人生はオール・オア・ナッシング…全て得るか、失うか?勝つか、負けるか、生きるか死ぬか。ハハ、それが人生だ)

 

--All or nothing、それは彼女の口癖であり、座右の銘であり、人生そのものだ。実際の戦艦ネヴァダは、弾薬室や機関室などの重要部分には最大厚の装甲を施したが、それ以外の重要でない部分はほとんど装甲に重きが置かれなかった。この考えは「All or nothing」として知られるようになり、これは後にドイツ以外の全ての海軍に採用されることになる。それを反映してか、艦娘としての彼女のベーシック・コスチュームは、胸部と秘部以外は露出度が高い。まさに「大事な所以外は隠さない」である。彼女の豪快、大胆な性格も、このあたりの史実に影響されていることは間違いあるまい。

 

 

--オーケー、次の質問だ。これはずっと聞きたかったんだが、ネヴァダ、艦娘となった今、お前は何の為戦う? 理由はあるのか?

 

私がそう聞くと、ネヴァダは呆れたようにやれやれ、ジェスチャーをし、

 

Nevada: Oh Boy, don't ask such a stupid thing. That's ridiculous question for me.(おいおい、少年、そんなアホなこと聞くなよ。バカバカしい質問だよ、そりゃ)

 

--どういうことだ?何か理由はあるだろう。お前は兵士なんだろう?国家の為とか、深海棲艦を倒す為とか--

 

 

Nevada: Huh! Come on boy! You don't know nothing!! 'Kay, I gonna tell you the reason why I fight. Listen carefully.(ハッ!頼むぜ、少年!何にもわかっちゃいないよ!!いいだろう、教えてやるよ、アタシが戦う理由。よく聞きな)

 

ネヴァダは、私の目をまっすぐ見据えて、椅子から身を乗り出し、前かがみで私に囁くように、

 

Nevada: I fight ーーーbecause I don't know how to live expect do that.

(戦う以外に生き方を知らないからだよーーー。)

 

そう、ネヴァダは微笑みながら言った。その笑みは、私がこれまで見たネヴァダのそれとはいずれも違う、冷たいものだった。そして、何より目が笑っていない。まるで、遠くを見ているようなー。私は瞬間、なぜかはわからないがぞわりとした。ネヴァダは椅子に座り直し、赤ワインを自分のグラスに注いだ。彼女の眼差しは先ほどとは違う柔和なものに戻っていた。

 

Nevada: Well, what if I ask the same question? Boy, What are you living for? Do you have specific reason to live? (なあ、もし同じ質問を私がしたらどうする?少年、君はなんのために生きてる?明確な理由はあるのかい?)

 

ーーネヴァダはグラスを傾けて、さらに続ける。

 

Nevada: You are human being, aren't ya? We ain't real one. We are ship. So wanna know your opinion. Why you live? (君は人間だろう?アタシらは本物じゃない。艦だ。だから君の意見が聞きたい。なぜ、生きるんだ?)

 

ーー私は沈黙する他になかった。毎日をただ漠然と生きている我々人間は、彼女らのように常に自らの死、轟沈と隣り合わせの生活を送っていない。いや、ほとんどの人間は、漠然と生きていること自体に疑問すらもたないのではないか。誰しもが明確な人生の意義や意味を見つけられる訳じゃない。私は自分の仕事に誇りを持って働いているし、神への信仰心もあるし、アメリカを愛している。日々、より良い人間になろうと努力しているつもりだが、究極の人生の目的というものは、未だ見つけられていない。生きることに、精一杯で、生きる意味など考えたことはなかったのだ。彼女らは、本物の人間ではないからこそ、我々とは違った、一歩引いた考え方が出来るのではなかろうか?

 

 

Nevada: You know what, ....uh....I guess most people can't answer that. If there's someone who can answer clearly, he's philosophical. By the way, ....We were battle ship. We were born to fight. We once fought for our nation. That doesn't change. But for now my enemy is abyssal fleets, not human being. I must kill'em all. You see? I am fighting for people and proud of being ship of our navy.

Because I am US BB the lead ship of Nevada-class, Nevada. That's it, boy.

(なんていうんだろうか、ほとんどの奴がその質問には答えられないとは思う。もしいたら、そいつは人生達観してるよ。つまりな、アタシたちは戦艦で、戦うために生まれたんだ。かつてアタシたちは、国(USA)のために戦ったさ。それは今も変わらない。だけど今のアタシらの敵は人じゃなくて、深海棲艦だ。私は、奴らを全滅させなきゃならない。わかるだろ?アタシは、人々のために戦ってる。そして、アメリカ海軍の艦であることに誇りを感じてるのさ。なぜなら、アタシはアメリカ海軍のネヴァダ級戦艦ネームシップ、戦艦ネヴァダだからだ。そういうことなのさ、少年)

 

ーーああ、言っている意味はよく分かる。全くその通りだ。我々はお前達艦娘がいなければ、とっくに奴らに滅亡させられていただろう。感謝している。

 

Nevada: Must kill them all. That's my duty. I don't need lofty aim. If you don't beat'em, you will die. No alternative. Got it, boy?(あいつらをぶっ殺さなきゃいけない。それがアタシの義務だ。高尚な目的なんざ必要ないのさ。やらなきゃこっちが死ぬ。他に選択肢はない。分かるかい、少年?)

 

ーーああ、変なことを聞いてすまなかったな。どうやら私はあまりにもお前達のことについて無知だったようだ。自分では、お前と知り合ったことで少し得意げになっていた部分はある。

 

 

Nevada: 'Kay, anything else? I gonna answer only one more question. Kinda tired.

(で、他には何かあるかい?もう一つだけ答えてあげるよ。なんだか疲れてきた)

 

ーーそうだな。長々と付き合わせてすまん。実は、これが一番聞きたかった質問なんだ。

ネヴァダ、これはお前にとって、答え辛いかもしれないがーー

 

Nevada: I owed you. That's OK. Come on. I am ready.(借りがあるからね。構わないさ。準備は出来てる、言いなよ)

 

 

ーークロスロード作戦のことだ。私は今、クロスロード作戦について個人的に調べている。アメリカが行ったあの核実験について、私は1人のアメリカ人として、あの原子爆弾について、真面目に知りたいと思っているんだ。聞かせてくれないか、お前があの時、何を見たのか。

 

Nevada:..................

 

沈黙。私がそう切り出すと、ネヴァダは表情を変えた。彼女は目を伏せる。そして大きくため息をつき、大きく目を見開いて、私をまっすぐ見据え、過去見たことのないような厳しい、そして恐ろしい表情で、一語一語しっかりと声に出していった。

 

Nevada:Boy, I am sorry but I don't wanna talk about it. I don't feel like talking. This story is not one that I can talk easily. Don't feel bad, boy. Even if you are my friend, nah, I don't talk to anyone about this topic even if they are my friend. (少年、悪いがそれについては話したくない。話す気分じゃないんだ。この話はな、そう簡単に話せるもんじゃないのさ。悪く思わないでくれ少年、たとえ君がアタシの友達でもーーいや、アタシは、この話は誰にも話すつもりはないんだ)

 

 

そして、こう付け加えた。

 

 

Nevada:I have never talked to even Oklahoma about that.(アタシはな、オクラホマにもこのことは話したことがないんだよ)

 

ーーそれだけ言うと、ネヴァダは申し訳なさそうに他の質問ならいいよ、と私に言ったが、私はネヴァダの予想外の反応に衝撃を受け、自己嫌悪でいっぱいになった。私はなんて、バカな人間なのだろうか。

 

するとその時、ネヴァダの通信用端末に着信があった。

 

Nevada:Yeah? ...ah,...ok. Yeah. I know. No problem. Ok.

 

ネヴァダは、ボーイ、時間だそうだと通話を切りながら言った。

 

気づかない内に、ニ時間が経過していたらしい。私は帰る準備をし始めた。ネヴァダもハットを被り、マントを羽織る。

 

Nevada: It was nice talking. Thank you James. Sorry for being unable to answer all your questions. But let's meet again sometime. That was fuckin' awesome time.

(いい会話だった。ありがとうジェームズ。全部に答えられなくてすまない。でも、いつかまた会おう。素晴らしい時間だったよ)

 

そして、私とは反対側の部屋のドアから出て行く時に振り返り、悪戯っぽく笑って私にウィンクと投げキッスを寄越し、

 

Nevada: See you James. Have a nice day!(またな、ジェームズ。良い1日を!)

 

そう言ってネヴァダは部屋のドアを閉めた。

 

 

冷めた料理と、中途半端に飲まれた赤ワイン、そして後味の悪さと虚無感が部屋に残り、私もたまらず部屋を抜け出した。

 

 

部屋の外の廊下で壁を背に腕組みしていた黒人の黒服が、私に" Did you have a good time?"と聞いてきたので、"Yeah"と誰に皮肉を言うでもなく、私は答えた。最高の時間だった。くそったれ。

 

帰りの黒服達が運転する車の中でも、私はネヴァダのあの表情を思い出し、やるせない気持ちになった。私はすっきりしない気持ちのまま、ただただ車に揺られ、ラスベガスを後にした。

 

 

クロスロード作戦。彼女はあの日、何を見たのだろうか?私はその一部始終は歴史として知っている。誰が沈み、誰が生き残ったのかも。しかし、それはあくまで知識として、歴史の本に書かれた文章として知っているだけだ。当時原子爆弾の標的艦だったネヴァダは、すべてを見ているのだ。

私は、それを聞きたかったが、私はどうやらネヴァダのことを仲の良い親友か何かと勘違いしていたようだ。私は民間人。彼女は人類の為戦う兵器。向こうはわざわざ自分の休暇の時間を割いてまで私に会ってくれたというのに。Shit! Shit! Shit! What a stupid am I !? しばらく、彼女に会えそうもなかった。彼女は怒っていた訳ではなさそうだが、とにかく私はやらかした。Fucked up と言ってもいい。ネヴァダ、すまない。お前の気持ちを私は理解していなかった。何回も会っているから、気軽に話してくれるのではないかという淡い期待を勝手に抱いていた。あいつは借金をしまくるようなあんな性格であれ、いい奴だ。しかし、私はーー我が儘を言うようだが、もう一度お前に会って謝りたい。I am sorry...Nevada. 虚しく、私の謝罪は届くことなく、ラスベガスの砂漠に消える。

 

 

 

 

 

 

 

 




ネヴァダの容姿に関して、戦艦少女というアプリゲーのイラストを参考にしました。
アメリカは日本に次ぐ艦娘を保有しています。アメリカでは艦娘の自由はある程度保証されています。選挙権などはさすがに持てませんが。文中の英語は雰囲気を出すためのおまけ程度です。

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