艦これ外伝〜Memory of Crossroads 〜   作:えいえいむん太郎

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10. What a strange love

「神通に格闘技を教えない理由?んなもん決まってるじゃねえか。あいつが顔に怪我でもしたらどうすんだ。あいつは武闘派だが殴るのは深海棲艦で十分だ。それに、あいつは俺が守るから心配いらねー。不知火、お前は駆逐艦で俺の秘書艦だ。神通とは違うのさ」

 

数年前、彼は自分にそう言った。

 

別に他意はなかった。ふいに疑問に浮かんだだけだ。だから聞いた。神通さんにも格闘技を教えれば艦隊の戦力も向上するのではないかと。神通と、自分は違う。そう言われても、その意味を考えることはなかった。ああ、そうなんだ。それくらいの感想だった。

 

 

「・・・川内型二番艦の神通です・・・あの・・・どうかよろしくお願いします・・・」

 

提督執務室で自分達に初めて会った時、神通さんは控えめに自己紹介した。司令は神通さんを一瞥すると、のそっと執務机から立ち上がり、一歩一歩ゆっくりと神通さんに近づいた。神通さんの横に並び立つ。じっ、と彼女を見つめ、急に司令は彼女の肩に手を置いた。無言で。

 

「あ、あの・・・提督・・・・・・?」

 

神通さんは狼狽して、困ったように司令を見上げる。

 

「ーー第二艦隊総司令官、宮元勝哉大佐だ。貴艦は俺の初めての軽巡である。心より、歓迎する。これからよろしく頼む。貴艦の活躍を期待する」

 

そう言うと、司令は席に戻り、

 

「不知火、神通を案内してやれ。今日の秘書艦は陽炎にやってもらう。鎮守府の設備とか、寮とか。神通、わからないことがあれば不知火に聞いてくれ」

 

「は、はい。了解しました。これから、よろしくお願い致します」

 

司令は優しく微笑んで。

 

「頑張れよ、華の二水戦」

 

神通さんは、深く頭を下げた。

 

***

 

神通着任から1年後

 

横須賀鎮守府

 

神通「あ、あの提督・・・?準備が出来ました」

 

宮元「おう、どれどれ・・・。ほう、似合ってるじゃねえか。モデルみたいだぜ、神通。綺麗だ」

 

神通「あの・・・その・・・ありがとうございます・・・」

 

宮元「不知火、少し出かけて来るぜ、留守を頼むぞ」

 

不知火「はい、お任せ下さい、司令。お気をつけて」

 

宮元「じゃ、いくか。神通」

 

神通「はい・・・」

 

 

横須賀、中心部

 

宮元「寒いな。大丈夫か?神通」

 

神通「は、はい。私は平気です、提督」

 

宮元「もうクリスマスだな。ウチの艦隊でも駆逐艦どもにプレゼントを配って歩かにゃならん。チビどもが寝てる間にな。今年のサンタクロース役は、誰になるんだろうな」

 

神通「去年のクリスマスは、那珂ちゃんがサンタのコスプレをしていましたね。クリスマススペシャルライブと銘打って、ステージに上がっていました。今年も楽しみです」

 

宮元「奥井少将のとこの那珂はすげえよな。自分の給金でCD作って活動してんだからよ。実は俺も一枚買って、ファンになった、って話があってな」

 

神通「えっ・・・?提督がですが・・・?それは初耳です・・・那珂が聞いたら喜ぶと思います」

 

宮元「おう。普通にいい曲だし、耳に残るキャッチーなメロディでな。思わず口ずさんじまう。恋の2-4-11〜ってな」

 

宮元は恥ずかしかったのか誤魔化すようにクククと笑う。神通はそれを見てクスリと微笑んだ。

 

宮元「お前も那珂みたいにアイドル活動してみたらどうだ?三姉妹でユニット組んでよ、絶対売れるだろうな。CD1000枚買ってやるよ、そしたら」

 

神通は慌てて手を振り、

 

神通「ご冗談を。那珂ちゃんは可愛いし明るい娘ですから、アイドルに向いていますけど・・・私は那珂ちゃんのようには出来ません・・・恥ずかしいです。姉さんは、意外と乗り気になるかもしれませんが・・・」

 

宮元はそれを聞いて数秒考え込み、ふと思いついたように、

 

宮元「まあな、お前は可愛いというよりーーー"美しい"という形容詞が似合うものな。さしずめ、演歌歌手かそんな感じかね。美し過ぎる演歌歌手。美し過ぎる女教師。いや美し過ぎる水雷戦隊教官ーー」

 

神通「もうやめて下さい・・・・・・」

 

神通はしゅ〜と赤面しながら宮元を軽く押す。

 

宮元「はは、悪い。悪い。だが俺は本心で言ってるんだぜ、それはわかってくれや」

 

神通「買い被りです・・・私より可愛い娘なんていくらでもいるじゃないですか・・・・・提督は、不知火のことはどう思っているのですか?」

 

宮元「・・・・不知火?そうだな、あいつは・・・

 

 

 

 

「有能だけど、怖い。」

 

 

 

ってのが率直な感想だな」

 

 

神通「怖い・・・?どういうことですか?」

 

 

宮元「男、宮元勝哉ーー大抵どんなもんにも動じねえ、怖がらねえという自負があるがーー奥井少将は例外だぜ?ーー艦娘というやつに恐怖を感じたのはあいつが初めてだ」

 

 

神通「・・・・?」

 

 

宮元「目がやべえんだよ、あいつは。普通の艦娘の目じゃねえ。ただ眼光が凄いとかいうレベルじゃねえ。闘志溢れる目とかそんな比喩でも表せねえようなーー闇だ。深い闇を感じる。俺が昔イスラエルにいた話はしたよな?まあ、ある時にモサドっつー諜報機関でキドン、っつー暗殺の実行部隊にいた男と話す機会があった。100人は殺ったそうだ。そいつの目はイッてやがった。初対面の俺に掛けた一声目が、"君を殺すには骨が折れそうだね、少なくとも今この場にある道具では息の根は止められそうにない。頭の中で君を30回殺すシュミレーションをしたけど、全部失敗してしまったよ"・・・だぜ?頭おかしいと思わねえか?そいつっていつもカウンターを持ってるんだが、ほら、あの人数数えるやつな。俺と一緒にテルアビブの街を歩いててよ、人とすれ違うたびにカチカチ押してんだよ。で、疑問に思って、"何してんだ?"、聞いたわけよ。そしたらなんて答えたと思う?

 

"今すれ違った人間のうち、何人を10秒以内に殺せるか数えてたんだ。85人。85人、死んだ"」

 

 

神通「ひっ・・・怖いですね、その方・・・でもそれと不知火と何の関係が?」

 

 

宮元「まだ俺と不知火が出会った頃の話だ。出撃から帰ってきた陽炎達と不知火は、俺に報告を終えると、執務室から出ていったが、不知火だけが俺をじっと見て、ニヤって笑って言いやがったんだ。

 

"司令。今日は、三体を海の藻屑にしました。あいつらって、死ぬ間際に凄い甲高い声で鳴くんですよ。うるさくて、うるさくて。つい腹が立って顔面直接吹き飛ばしてしまいました。見て下さい、この染み。奴らの返り血です。予備を頂いてもよろしいですか?拭っても拭っても拭っても拭っても拭っても拭っても落ちなくて・・・"

 

いや鳥肌たったね。即ドクターに電話して受診させたわ。あれは完全にいかれてやがった。モサドのそいつと同じ目をしてやがったからな、どうにかしねえと壊れちまうからな。今はそうでもないんだが、あいつ戦闘中とか感情が昂ると目の色が変わっちまうんだよ。その状態の時は危険だからな。暴走状態っつーか、なんつーか。色々と危うい部分があるってことさ。結構、心配なとこもある」

 

 

神通「そうですか・・・私から見る限り、彼女は真面目で訓練も一生懸命に取り組んでいますが・・・過激とも言える深海棲艦への憎悪は、冷静な判断に基づいた艦隊行動を阻害しますから」

 

宮元「もし勝手に深追いしたりとかしたら怖いよな………今はだいぶよくなった・・・が、神通、あいつの目が黒く染まったら、気をつけろ。おそらくお前でも止められないかもしれんぞ」

 

神通「わかりました・・・。肝に銘じておきます」

 

宮元「あいつを疑う訳じゃねえが、危険性はひとつひとつ潰しておきたい。心配のし過ぎだとは思うがな・・・」

 

神通「大丈夫ですよ、提督。私がいますから」

 

宮元「・・・・・・・・・・・」

 

宮元はふっと笑って、神通の頭に優しく手を置く。

 

宮元「強さと優しさを兼ね備えるお前はーー本当に頼もしいな。信頼して側に置いておけるのはお前だけだ」

 

神通「それは嬉しいですが・・・不知火のことも信じてあげてください。彼女は・・・誰よりも、私よりも提督をお慕いしています」

 

宮元「わかってるさ。あいつぁ俺の秘書艦、なんだかんだでうまくやっていけるさ」

 

外套を着込んだ宮元と神通は、まるで長年連れ添った夫婦のように仲良く横須賀の街を散策する。

 

その時、甘い香りが彼らの鼻腔をくすぐった。

 

宮元「・・・たい焼き屋か。いいね。買ってくか。神通、2000円やるから俺とお前の分買っといてくれ。トイレ行ってくる」

 

神通「はい、わかりました・・・ではここでお待ちしておりますね」

 

神通はたい焼きを購入すると、紙袋をぎゅっと抱きしめる。

 

あったかい。神通が息を吐くと、白い息が空中に消えていく。

 

雪でも降りそうな寒さだ。

 

宮元が帰ってくるまでぽつん、とベンチに座っていると、

 

 

"Yo, cutie. What'ya doing here? You alone? Don't you wanna have some tea with us, if ya free?"

(よう、子猫ちゃん、何してんの?一人?暇ならお茶でもどう?)

 

軽薄そうなチャラチャラした外国人が、突然神通の隣に座ってきた。

 

神通「え・・・?え・・・?あの・・・?」

 

"You stupid Alex. Why you speak English? It seems she doesn't understand what ya saying, eh? Let me show you how to pick Japanese girl up."

(馬鹿じゃねえのかアレックス。日本人ナンパすんのに英語でどうすんだよ。俺に任せな、手本を見せてやるよ)

 

スキンヘッドの二人目の外国人は、金髪の外国人を無理矢理どかすと、

 

「こんにちは、お嬢サン。僕タチハ、旅行に来てる。もしヨカたら、お茶でも飲んで、案内してくれませんカ?」

 

片言の日本語で神通をナンパし始めた。

 

神通「あの、すいません・・・待ってる人がいるので・・・行けません。ごめんなさい」

 

それを聞いたスキンヘッドは、"You with man? No, you are lying. You don't wanna talk cuz we are GAIJIN, right?"と神通に詰め寄る。

 

 

 

"Man, enough that! Pretty girl, you just come with us and have a good time. Do you understand who we are? We are protecting your country! why not appreciate? Come'on, let's chill !!"

 

恰幅の良い黒人の男が、神通の手を掴んで連れていこうとする。

 

神通「やめてください・・・痛い、放して!!」

 

神通も抵抗するが、男三人には敵わない。

 

通行人たちも何の騒ぎかと注目するが、誰もが見て見ぬふりだ。相手は怖そうな外国人三人組、しかも英語である。誰も神通を助けようとはしなかったが、たい焼き屋のおっさんはたまらず屋台を放り出して外国人を止めに入った。

 

 

おっさん「あんたたち・・・いい加減にしな。そのお嬢さんを放してやりな。警察を呼ぶぞ」

 

 

"What? Who the fuck are you? None of your business, old man. Fuck off."

(あ?誰だよ、おっさん。関係ねえだろ。引っ込んでろ)

 

 

190cmはあろうかという黒人が、160cmほどのおっさんにズンズンと詰め寄る。

 

 

おっさん「ビビると思っているのか?ここは日本だ!!お前らの基地があろうと、ここで好き勝手していいわけではない!!さあ、その娘を放してやりな」

 

"That's funny old sucks. You fuck with us, Ah?"

(おもしれえな、ジジイ。俺らに文句つけようってか)

 

 

黒人がおっさんの胸倉を掴みかけたその時ーーー

 

 

 

「神通、悪い悪いーー思ったより長期戦でなーーあ?何やってんだテメエら?」

 

 

宮元勝哉少将その人が、人混みを掻き分けて戻ってきた。

 

 

「・・・提督!!助けてください!!」

 

神通が叫ぶ。

 

 

宮元は周りを見渡す。そして一瞬で状況を把握する。

 

 

宮元「たい焼き屋のおっさん・・・・・神通・・・・んで何だテメエらは」

 

 

 

宮元は外国人三人組を睨み付ける。

 

 

「誰だ、お前?ヒゲのおっさん、すっこんでろよ」

 

金髪が宮元に詰め寄る。

 

宮元は無言でその金髪を見下ろし、無視して胸倉を掴まれているおっさんに近づき、黒人の手首を掴む。

 

 

「何だ、コラ。離せよ、ボケ」

 

宮元「Leave him.(おっさんを放しな)」

 

「・・・・やだね」

 

宮元「仕方ねえ、強行手段だ」

 

宮元は合気道の要領で黒人の手首を捻ると、するっとおっさんの胸倉から外した。

 

「!?」

 

宮元「おっさん、逃げな。そして、ありがとう。あんたは勇敢な人だ」

 

おっさん「あんちゃん・・・俺のことより嬢ちゃんを・・・連れだろ?」

 

 

宮元はコクリと無言で頷くと、スキンヘッドと金髪を一瞥し、さらに黒人にガンを飛ばし、

 

 

"神通が今まで見たことがないほどの恐ろしい顔"で、ブチ切れた。

 

 

宮元「クソッタレヤンキーどもが、俺の部下に手ェ出してただで済むと思ってんのかコラァ、ああ!!!!?????」

 

 

ライオンの咆哮を思わせる怒声だった。

 

 

黒人「うるせーんだよ、テメエ。殺すぞ、コラ」

 

宮元は黒人に取り合わず、神通にまとわりついているスキンヘッドを実力行使でどかし、神通を軽く抱きしめた。

 

宮元「悪い、怖い思いをさせちまった。もう安心しろ、大丈夫、大丈夫だから。俺の責任だ。無責任過ぎた。ごめんな」

 

神通「・・・・・・・・」

 

神通は宮元の肩の中でふるふると首を振る。肩が、震えていた。

 

宮元は神通をたい焼き屋のおっさんに任せ再び外国人に対峙する。

 

 

神通「あの、提督、暴力は・・・」

 

 

宮元「安心しろ。平和的解決方法でこいつらを諌める」

 

黒人「何をぶつぶつ言ってやがる?やるんだろ、え?」

 

 

 

宮元「はぁ〜〜〜。(英語に切り替わる)お前ら、横須賀基地のアメリカ兵だろ?俺は日本海軍の大佐でね。彼女は俺の部下だ。俺はお前らの俺の部下に対する行為を上層部に報告させてもらう。俺の上司にはそちらの司令官様と仲の良い人がいてね、この件、上にバレたらあんたらは処罰されるだろう。こんだけ目撃者もいる。お前らも軍人なら少しはそこらへんの区別もつくだろう?」

 

 

黒人「ぐ・・・・・・・」

 

スキンヘッド「・・・・・お、おい、ヤベエぞ」

 

金髪「ハッタリだろ?そんな話あるわけがない」

 

 

スキンヘッド「いや、待て。まさかこの娘・・・・・」

 

 

宮元「ブラフだと思うか?これを見ても、まだそういえるか?」

 

 

日本海軍少佐の階級章と、身分証明書。

 

 

外国人's「マジか・・・・す、すいませんでした・・・」

 

 

宮元「謝る相手は、俺か?それとも、俺の部下か?」

 

「お、嬢さん、すまなかった・・・」

 

「すみませんでした・・・」

 

神通「・・・・もう、いいですよ。謝って頂ければ」

 

 

 

宮元「・・・・・・・だそうだ。アメリカ人諸君、俺は日本に駐在して日本を守ってくれている君たちに感謝している。深海棲艦が現れる前までは、君たちが北や中国に対する抑止力になっていた。友好国として、同盟国として、仲良く、うまくやっていこうじゃないか。よし、基地に戻ったらどうだ?」

 

 

 

外国人「あ、ああ。あんたの言う通りだ。すまなかったな。俺らはもう行くよ。おい、ずらかるぞ!」

 

 

外国人たちはダッシュで退散していった。

 

 

 

おっさん「あいつらを行かせてよかったのか?名前と所属を聞き出して、横須賀基地に報告すべきだ」

 

宮元「別に行かせてもそれは構いませんよ。俺はあいつらを知っているんでね。俺の部下に手ェ出した落とし前はきっちりつけさせてもらうぜ」

 

宮元はニィィと笑って、神通を抱き寄せた。

 

宮元「神通に手ェ出す奴は誰であろうと容赦しねえ。俺の持てる全てを使って叩き潰してやる」

 

 

狂気。凶器。なぜこの男はなぜここまで自分に入れ込むのか。そして、なぜ自分はここまで彼に魅せられるのか。この男は、一見相手を許すと見せかけて、徹底的に追い込む。この男自身が優しいのは知っている。とてもいい上官なのは知っている。でも、彼は暴力装置だ。格闘技をやっているから、体がでかいからではない。この提督は、一度スイッチが入ったら止まらないんだ。平等に愛している風に見えて、この男は自分に寵愛を向けている。そして私は寵愛を受けている。

 

 

 

でも、なぜか私はこの依存が心地いい。

 

 

夜戦バカだけど底ぬけに明るい姉。

 

いつも笑顔のアイドル的存在の妹。

 

 

自分は、二人に比べれば感情表現は苦手だ。性格も大人しめだ。だから、いつも真面目で従順と思われる。華の二水戦ということで、一目置かれ、駆逐艦たちからは恐れられるけど、この神通という自分自身を理解してくれる仲間は少ない。肩書きで、経歴で、判断されてきたし、それを甘受してきた。

 

 

でも彼は違った。等身大の自分を見てくれた。褒める時は褒めて、叱る時は叱ってくれた。彼が上官であるからというのもあるかもしれないけれど。それでも、この気持ちは本当だ。

 

 

 

「提督・・・・神通は、どこまでも貴方についていきます」

 

 

これは崇拝?盲信?妄信?愛?敬意?

 

 

わからない。ただ、この身を、彼の為に捧げる覚悟は出来ている。

 

おかしいと自覚していても、矛盾していると指摘されても、

 

 

 

私は、

 

 

 

この甘美な依存に咲く薔薇。妖しく、虚しく、棘を彼の敵に向ける。

 

 

美しくも潔く散る桜の花びらとは違う。

 

 

この苦悩を快楽に、狂ったロンドを奏でましょう。

 

 

闇夜に怨念渦巻く深海の底に、私がその身を横たえるまで。

 

**

 

金髪「あいつ、何者だったんだ・・・ただのJapaneseじゃねえぞ」

 

黒人「何かしらの格闘技をやってやがんな・・・握力90キロの俺様の手を外しやがった」

 

スキンヘッド「あいつ・・・・どこかで見た気が・・・・あの髭面・・・・」

 

 

 

スキンヘッド「思い出した・・・!」

 

 

数週間前の日米親善武道大会で大会常連のアメリカ兵を次々とねじ伏せて優勝した、日本海軍の武術家・・・

 

 

スキンヘッド「クク、ククク・・・・俺らは、どうやら命拾いしたようだぜ。単なる殴り合いであいつに勝つのは不可能だろうな。それこそ、三人で同時に襲い掛かるか不意打ちするか、銃でも使わん限りはな・・・」

 

 

素手での戦闘(ステゴロ)を想定したタイマンの喧嘩や試合において、宮元勝哉に敵うものはいない。

 

なぜか?ある程度離れれば空手の突き、100キロ超の体重から繰り出される回し蹴り、不用意に組み付けば柔道の技で投げられ後は締められるか関節極められるかのどちらかだ。

 

そして極めつけはイスラエル軍格闘術クラウマガ。「敵の無力化」を第一目標に置いたコンバットである。

 

 

彼が異常かつ異様な理由。それは、彼は陸軍ではなく海軍人であるということ。海軍陸戦隊などもいないことはないし、海軍でも武道は嗜むが、彼は陸海軍合わせても最強である。

 

例えば、主にボクシングを訓練している大柄なアメリカ兵ぐらいなら、タイマン前提なら勝てるだろう。

 

ボクシングはすなわちジャブの応酬、パンチの連続で相手を脳震盪、KOを狙う格闘技である。すなわち、コンビネーションが前提にあるのである。

 

 

だが宮元は空手、柔道、クラウマガを組み合わせ自己流で開発した戦闘メソッドによって、

 

 

 

最低でも3撃以内での決着を義務づけている。

 

 

壱撃必中(初撃を必ず中てる。ここで先制の一撃を与える)

 

弐撃必殺(弐撃目で必ず倒す。ここがメインポイント)

 

参撃確殺(万が一倒しそこねた時の保険、また止め)

 

 

この理念は不知火や神通の水上戦闘でも影響が色濃く出ており、格闘技に置いても高速かつ重い一撃を繰り出すことによって相手に反撃の隙さえ与えず葬る。

 

 

おっさん「お嬢さん、大丈夫か?最近ああいう輩が増えてな。集団で日本人にちょっかい出してるんだ」

 

宮元「ああいう下っ端が一番タチ悪い。横須賀のアメリカ海軍も完全にその威厳と栄光を失ったからな・・・俺らと艦娘が台頭してきてからは。かといって、それを逆恨みすんのはおかしいだろ」

 

 

神通「あ、の、ありがとうございました・・・・提督、その方が私を助けてくれようとしてくださったんです」

 

 

宮元「・・・どうやら、そのようで。海軍を代表し深く感謝致します。ありがとうございました」

 

宮元は頭を下げる。

 

おっさん「オレァ大したことはやってねえよ。困ってる人見たら助けるのが当たり前ってもんさ。それに・・・嬢ちゃんとアンタは俺らの国を守ってくれてる。あんなアメリカなんざもう何の役にもたたん。ありがとうよ、日本を守ってくれて」

 

宮元「こちらこそ、国民の皆さんのご理解があってこそ海軍は職務に励むことが出来ますから。日本を守る。それは、我々の義務でありーーー」

 

 

神通「私達艦娘の使命なのです」

 

 

宮元「・・・・・! ふん、言うじゃねえか、神通」

 

 

神通「・・・・・・私達に与えられた、天命ーーこの体に転生しても、愛する祖国を守ることです」

 

 

宮元「・・・・・・ああ。そうだな・・・・」

 

 

 

宮元、おっさん、神通は三人並んでたい焼きを頬張る。

 

 

宮元「しかし、美味しいですね。餡がとても甘い」

 

神通「とても美味しいです。口の中でとろけるみたいで、ふんわりしてます」

 

 

たい焼きのおっさんは、二人を見てニカッと笑い、

 

 

 

おっさん「そうかい。ありがとうよ。俺は元々東南アジアで日本の菓子を輸出するビジネスをやってた。和菓子ってやつは、外国人に人気でね。だが化け物どもが現れて、海上輸送路が壊滅してな。会社は赤字、倒産寸前まで追い込まれたがーー俺は横須賀で洋パブを経営した。在日米軍相手にな。だが経営はうまくいかなくてな。今はしがないたい焼き屋さ」

 

 

おっさん「俺には息子がいてね。実は海軍の学校に行ってるんだ。いずれアンタの世話になるかもな、提督ってやつを目指してるらしいから」

 

宮元「そうだったのですか。御子息のお名前は?」

 

 

おっさん「隆二。富原隆二だ。もし会う機会があったら、厳しくやってやってくれ」

 

 

**

 

数年前、宮元少将

 

新人研修

 

 

宮元「よう。俺が今からお前の教育係になる宮元勝哉少将だ。バシバシいくから覚悟しろよ。名前は?」

 

 

新人「はっ!自分は、富原隆二と申します!!よろしくお願い致します!!」

 

 

宮元「・・・・・・何?どこかで聞いたような名前だな」

 

 

**

 

宮元「隆二、少佐に昇進したってな。これで提督として着任出来るわけか。めでたい、めでたい」

 

富原「宮元さん、ありがとうございます!これも宮元さんに色々なことを教わったおかげです!」

 

宮元「今日は俺のおごりだ。飲め、飲め!ハハハハハ!」

 

**

 

宮元「そうか、お前もついに初期艦を持つ時期か・・・そうか」

 

富原「艦娘、というのは中学生くらいの女の子と聞いたんですが・・・宮元さん、どうしましょう。僕、女の子苦手なんですよ」

 

宮元「何?っても年齢的にゃ兄と妹くらい離れてるだろ、妹の面倒見る感じで接すりゃいい。まあお前は逆に秘書艦に面倒見られる立場だがな」

 

富原「妹、ですか・・・。宮元さんは不知火ちゃんと出会った時はどうやって打ち解けたんですか?」

 

宮元「不知火ちゃんぅ?クク、ククク・・・・ハハハハハハハハハハ!腹いて・・・カカカッ」

 

富原「えっ?なんかおかしかったですか?」

 

宮元「いや、悪い悪い。俺の秘書艦をちゃん付けで呼ぶやつは初めてでな。ちゃん、なんて柄じゃねえよ、あいつは」

 

富原「はぁ・・・あ、後最初の一言って、どうすればいいんですか?

 

 

宮元「しらねーよ。まだ会ってもいねー年下の女の子にビビってんな。オラ、艦娘学校いくぞ」

 

**

 

叢雲「初めまして、宮元少将。いつもウチの少佐がお世話になっております。私は少佐の秘書艦を務めております吹雪型五番艦の叢雲と申します」

 

富原「いつもと言葉遣いが違くないか・・・?」

 

 

叢雲「うっさいわね!アンタの上官なんだから挨拶申し上げるのは当然でしょ!」

 

 

宮元「宮元勝哉だ。これからよろしく頼む。それにしても、叢雲を選んだか・・・不知火、叢雲ってのはどんなやつだったんだ?」

 

 

不知火「不知火と叢雲は同期ですが、不知火は7年前司令の秘書官に着任し、叢雲はずっと艦娘学校に残って待機していたのですよ。彼女は、古株なんです。秘書艦としての能力はどの艦より上でしょう。彼女は、有能です」

 

宮元「しかし、あれじゃあまるでかかあ天下だな。完全に尻に敷かれてやがる」

 

不知火「でも、とても仲が良さそうですよ。見てください、あの自然な距離感を」

 

宮元「叢雲が背伸びして少佐の身だしなみを整えてやってるな。新婚夫婦か何か?」

 

不知火「お似合いですね・・・我々もやってみますか、司令?」

 

宮元「・・・お前ネクタイとか直す振りして首絞めそうだからヤダ」

 

不知火「不知火は、司令の中でどんなイメージなんですか・・・」

 

宮元「・・・・・・ん?」

 

 

違和感。不知火は、こんな冗談めかしたこと言う奴だったか?

 

 

 

 

何を考えている?

 

 

 

 

まあ、気にしすぎか・・・

 

 

 

**

 

大反攻作戦前

 

宮元「神通に改二実装だと・・・?それは本当か?」

 

技術者「ええ、艤装の調和周期も艦魂の方も安定してしますし、すぐにでも改造に取りかかれますよ」

 

宮元「・・・・・・・・」

 

数秒深く考え込み、

 

宮元「よし、やってくれ。全部署には俺から通達しておく」

 

技術者「かしこまりました。では、また48時間後に彼女をお引き取りにお願いします」

 

 

神通「改造・・・ですか?私の?」

 

宮元「ああ。どうだ、受けてみないか?」

 

神通「私が強化されることで、艦隊に貢献出来るのなら、喜んでお受け致します」

 

宮元「そうか。じゃあ、行くか。」

 

 

技術者「ああ、宮元少将。ご苦労様です。彼女は、こちらに」

 

宮元「神通!・・・調子はどうだ・・・」

 

神通「・・・・!あ、あの、提督・・・。私、改二になりました・・・どうでしょうか・・・」

 

 

宮元「・・・・・・・・・」

 

神通「・・・・・・・・・あの」

 

 

宮元「クク、いいね。益々凛々しく、美しく・・・華の二水戦旗艦神通、惚れ直したぜ。これからも、よろしく頼む」

 

 

神通「・・・はい!!よろしくお願い致します!!」

 

 

 

神通「ケッコンカッコカリ、ですか・・・?その、指輪を、私に?私で、本当によろしいんですか?」

 

 

 

宮元「出会ってから今まで・・・常にお前のことを考えていた。俺の水雷戦隊の最強戦力であるというだけじゃなく、一人の、女として・・・馬鹿げてる、こんなことは言うべきではないんだが、お前が愛おしくて仕方がなかった・・・フン、柄でもねえ、だがな、俺の気持ちは」

 

 

神通の手を取りーー

 

 

 

宮元「本物なんだよ。心からの気持ちだ」

 

 

宮元「俺とケッコンしてくれないか。お前に、俺の全てを捧げよう」

 

 

 

神通「提督、嬉しいです・・・私は、私は・・・・提督が私を選んでくださって・・・言葉に出来ないくらい幸せです・・・・グス」

 

 

 

不知火「・・・・・・・・・。」壁を背に腕組み

 

 

 

 

宮元「神通を、呉にだと?どういうことだ、月岡ァ!?」

 

 

月岡「彼女を水雷戦隊指導教官として二年間呉に異動させたい。直属の上司である君の許可を貰うべく横須賀を訪ねた」

 

 

宮元「・・・・・これぁ、上の決定か、お前の個人的な頼みか」

 

 

月岡「上の決定だ。勝哉、二年の間、神通を貸してもらえないか。彼女の戦闘技術を呉の駆逐艦達に伝授出来れば、日本海軍の戦力はさらに向上する」

 

 

宮元「・・・・海軍大臣の署名・・・・。分かった。上からの命令じゃ仕方ねえ。神通をお前に預けよう。だがな月岡、神通に手ェ出してみろ、そん時は俺の手でお前の人生を終わらせてやるぞ」

 

 

月岡「・・・・ッ。私を信用してくれ、宮元少将。彼女は責任持って私が預かる。神通は君だけのものではない。呉鎮守府の提督として暖かく彼女を迎え入れよう」

 

 

宮元「・・・・・分かった、分かった。頼むぜ、月岡・・・」

 

 

月岡「・・・・・・ああ。任せてくれ・・・」

 

 

 

***

 

五年前、大反攻作戦

 

 

宮元「お前ら、何があった!!一体何が・・・・」

 

 

宮元の目に飛び込んできたのは、満身創痍の陽炎、不知火、黒潮、瀕死状態の舞風と野分。

 

 

宮元「!?!?大丈夫か、お前ら!?舞風!!!野分!!!しっかりしろ!!」

 

 

 

宮元「医務班急げェーッ!!!!!!!!至急担架持って来い!!!!舞風と野分優先でドックに入れるぞ!!!!!!!早くしろ、クソったれ!!!!本土に連絡しろ!!!明石の準備をさせとけ!!!工廠の妖精どもに艤装を外させろ!!!不知火たちも医務室で手当てだ!!!クソ、クソ、クソ、一体何があったってんだ!!」

 

 

不知火「司令・・・・・神通さんが・・・・神通さんが私たちを・・・庇って」

 

 

宮元「!?そういや神通がいねえ!!!!神通はどこだ、不知火!?」

 

 

陽炎「神通さんは・・・敵勢力に囮として単艦で突撃していったわ・・・私たちを守るために」

 

 

宮元「・・・・・・・・神通!無事でいてくれよ・・・・」

 

 

 

宮元「分かった。今回の一件は全て俺に任せろ。お前らは何も悪くねえ。よく頑張ってくれた。よく沈まず戻ってきてくれた。俺はこの安全な陸地で見守ることしかできなかった。お前らの持ち帰った海上地図のおかげで本土の連合艦隊が動けるようになる。本当にご苦労だった。ゆっくり体を休めてくれ。俺は・・・・無力だ」

 

 

宮元「安心しろ、神通は必ず生きてるさ。そう簡単に沈む奴じゃねえ。あいつは必ず生きて帰ってくる」

 

 

 

数時間後

 

 

 

 

宮元「・・・・・。そうか。分かった。命に別状はねえのか。うむ。分かった」ガチャ

 

 

 

加賀の放った彩雲によって、気を失った状態で発見された神通。

 

彼女はリンガ泊地のドックで療養状態にあった。

 

 

リンガ泊地、医務室、ベッド

 

 

 

コンコン。ドアがノックされる。

 

 

神通「はい。どうぞ、お入りください」

 

 

読んでいた本から顔を上げて、神通は部屋に入ってきた人物を見た。

 

 

神通「・・・・・・・・・!!!!」

 

 

宮元「・・・・・・・・・・神通」

 

 

 

神通「て、提督・・・・・あの、私は、提督に謝罪しなければならないことが」

 

 

宮元は、黙って神通を手で制すと、ベッドの横の椅子に座り、神通の手を優しく握って、顔を伏せた。

 

 

宮元「よく生きて戻ってきてくれた・・・・俺は・・・・お前がいなくなったら生きていけねえ・・・・本当に感謝する。よく部下を守って最後まで戦ってくれた・・・俺は何もしてやれなかった・・・すまん。すまん」

 

 

神通「・・・そんな・・・提督、私は謝らなければなりません。私は、提督から預かった彼女たちを・・・守れませんでした。そして、敵に止めをさせず、取り逃がしてしまいました。私は、任務を完遂できなかった・・・・」

 

神通の目からポロポロと涙の雫が零れる。

 

 

宮元「何を言ってやがる!お前はよくやったろ!今回の作戦の責任者は俺だ!!お前が敵を引きつけたおかげで皆無事に帰投できた!!大事なのは、生きて全員帰投することだ!」

 

 

神通「でも・・・私は・・・力不足で・・・申し訳ありません提督・・・・しばらく一人にして頂けませんか・・・」

 

 

宮元「・・・・分かった。神通、自分をあまり責めるなよ。俺が保証してやる。お前は、お前らはよくやった」

 

 

神通「・・・・・・はい」

 

 

宮元「無理するなよ。またなんかあったら、呼べ」

 

 

神通「・・・・・・・・はい」

 

 

 

 

廊下、宮元、一人。

 

 

宮元「クソ、畜生!!オレァどうしたらいいんだ!!」

 

 

壁を拳で殴り、うな垂れる。

 

 

 

 

 

2年前 都心国際空港

 

 

神通「では、提督、時間ですので・・・・・・お体に気をつけて。神通は、呉でも頑張りたいと思います」

 

 

宮元「ああ。元気でな。何かあったら、手紙でも電話でも・・・遠慮なくしてこい。お前は遠く離れていても、俺の大切な部下だ。それを忘れるなよ。月岡少将のことをよく聞いて、自らの職務に全力であたれ」

 

 

神通「・・・・はい!!ではまた、2年後に。お見送り、ありがとうございました!!」

 

 

 

 

神通と呉からの迎えの役人を乗せた飛行機は、轟音とともに東京を飛び去っていった。

 

 

 

 

不知火「行ってしまいましたね・・・・寂しいですか、司令?」

 

 

 

宮元「・・・・・・何を言ってんだ。俺は神通だけの上司じゃねえ。お前も含めて、他の大勢の艦娘の提督なんだ。神通は自慢の部下だ。俺抜きでも上手くやるさ」

 

 

不知火「・・・不知火が全力で司令をサポートします。お任せください」

 

 

宮元「・・・・ふん」

 

 

 

 

 

*******************

 

そして、現在

 

横須賀鎮守府内、BAR

 

 

静寂の中に神秘的な雰囲気が醸し出されているその鎮守府の片隅にある小さなバーは、特別に許可を貰ってとある駆逐艦の艦娘がバーテンダーを務めていた。

 

 

早霜「・・・あら、宮元少将。いらっしゃいませ。お仕事の方は、もうよろしいのですか?」

 

宮元「ああ。だいたい終らせてきた。ひと段落ってところだな」

 

 

宮元はカウンターの椅子に座る。

 

 

宮元「最近どうだ、早霜」

 

早霜「私、ですか?そうですね、毎日演習したり、遠征に行ったり・・・大変ですけど、充実した毎日を送っています」

 

宮元「そうか。それは良かった。バーテンダーまでやって疲れるんじゃないかと思ってな」

 

早霜「いえ・・・週末限定ですし、私はこのバーの雰囲気が好きなんです。来店される方たちのお話を聞くのも楽しいですし・・・司令官は、ジャズはお好きですか?」

 

宮元「音楽はあまり詳しくないが、ルイアームストロングが好きだな。What a wonderful worldが一番好きな曲だ」

 

早霜「あら奇遇ですね。私も彼のアルバムをたくさん持っているんです。ふふ、今度お貸ししましょうか」

 

宮元「おう、そいつはありがたいね。しかし、お前もなかなか大人な趣味をしてるよな」

 

早霜「と、申しますと?」

 

宮元「一番艦の夕雲もそうだが、悪い意味じゃなく駆逐艦らしくない雰囲気があると思ってな」

 

早霜「そうですか・・・駆逐艦らしい、と言えば高波姉さんや清霜がそうかしら。私たちと比べれば幾分かは・・・ね」

 

宮元「随分と大人びてるよな。妖艶というか、何というか・・・魅力的、と言ってもいい」

 

早霜「・・・少将、そんな事言われたら、私、困ってしまいます・・・あなたには不知火さんがいらっしゃいますし・・・私は大戸島大将の部下ですし・・・」

 

宮元「・・・・・?何の話をしてんだ、早霜?」

 

早霜「は・・・い、いえ、何でもありません。ところで、今夜は何をお飲みになります?」

 

宮元「そうだな・・・・マティーニを一つ」

 

早霜「かしこまりました。少々お待ちを」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・こんばんは、宮元少将、早霜」

 

 

 

 

 

早霜「ーーーーーーーーあら、龍驤さん。いらっしゃいませ。飲んでいかれますか?」

 

 

 

 

 

 

 

龍驤「そうやな。宮元少将にちょうど話があったんや。少し飲んでこか」

 

 

 

 

 

 

宮元「龍驤か。珍しいな。なんか用か?」

 

 

 

 

 

 

 

龍驤は、真剣な面持ちで宮元を見据え。

 

 

 

 

 

 

 

「観艦式、もうすぐやなあ。色々準備で忙しいとは思うけど、どうしてもその前に片付けておかないといけないことがあんねん。その相談に来たんや」

 

 

 

 

宮元「・・・・・?なんだ?俺にできることなら協力してやるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

「うん、ていうかな、キミの問題なんや。もうこっちも見ててじれったくてしゃあないから、

 

 

 

 

ケリ、つけよか?」

 

 

 

 

早霜がカクテルを作り出す。

 

 

ルイアームストロングのwhat a wonderful worldがかかりだし、

 

 

 

早霜の綺麗な指に摘まれたオリーブがぽちゃんと音を立ててジンの中に沈んだ。




英語が嫌いなのと喋れるのは別の問題の可能性が・・・?

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