エヴァンゲリオンはじめました   作:タクチャン(仮)

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今回は小話っぽくない小話です。

時系列はレイの正体発覚後から、葛城家へ帰宅する前となっています。


小話《チルドレン会議》

 

~チルドレン会議開催~

 

 第三新東京市のとあるファミレス。客の姿がまばらな店内の一角に、シイ、レイ、アスカの三人が向かい合わせに座っていた。

「それじゃあ、始めるわよ」

「ねえアスカ。いきなり全員集合って言われたけど、何を始めるの?」

 何も聞かされずにここに連れてこられたシイが、当然の疑問をぶつける。だがそんな常識が通用する筈も無く、アスカはいつも通り強気の答えを返す。

「あんた馬鹿ぁ? 作戦会議に決まってるじゃない」

「作戦会議って……何の?」

「ホントに馬鹿ね。このタイミングで作戦会議って言ったら、レイの事に決まってるでしょ」

 アスカは呆れたようにため息をつく。

「綾波さん聞いてた?」

「……いいえ。でもアスカだから」

 当の本人は冷静そのもの。落ち着いていると言えば聞こえは良いが、単に諦めているだけかもしれない。

 

「レイが碇司令が隠してる何かの鍵を握ってるのは、多分間違い無いわよね?」

「……多分」

 レイ自身はゲンドウがやろうとしている事を、何も聞かされていない。その為言い切る事は出来ず、あくまで可能性が高いと言う表現になってしまう。

 アスカはそれを理解した上で、仮定として話を進める。

「司令が何考えてるかは分からないけど、レイを危険な目に遭わせる可能性は否定できないわ」

「あ、なるほど」

 順を追って話すアスカに、シイはポンと手を打って納得する。

「つまりレイを守る為には、碇司令が何を企んでるのかをハッキリさせる必要があるのよ」

「でもどうやって? お父さんに直接聞くとか?」

「このウルトラ馬鹿! そんなの論外に決まってるでしょ」

「だって……」

 アスカにおでこを突かれ、シイは身を小さくする。シイなりに本気で考えているのだが、如何せん発想が素直すぎる為、アスカにはじれったく思えてしまう。

 引き下がったシイに変わって、今度はレイがアスカに問いかける。

「……何か方法はあるの?」

「ふふん、当然よ」

 その言葉を待っていたとばかりに、アスカは自信に満ちた笑みを浮かべて答えた。

 

「まず状況を整理するわよ。レイの事を知ってて信用出来るのは、あたし達三人と時田。これは良いわね?」

「うん」

「……ええ」

 アスカの確認に二人は頷いて同意を示す。

「で、信用出来無いと言うか、あたし達が警戒しなくちゃいけないのが、碇司令と副司令にリツコよ。副司令とリツコは司令の計画を知ってるのよね?」

「……ええ。二人とも知ってる筈だわ」

 レイによれば何かの計画はゲンドウを中心に、冬月とリツコが協力しているらしい。ならばこの二人もゲンドウに近い情報を持っている筈だ。

「将を射んと欲すればまず馬を射よ。前に国語で習ったでしょ」

「えっと……」

「……目的を達成する為には、まずは周りから手を着けた方が良い、と言う昔の言葉」

 言葉に詰まるシイに変わり、レイがアスカの言葉を簡単に言い換える。

「つまりあたし達は碇司令じゃなくて、副司令とリツコから攻めるべきなのよ」

「攻めるって、どうすれば良いの?」

「さり気なく情報を聞き出すの。時田みたいに味方に出来れば、尚良いわね」

 ゲンドウとは違い、冬月とリツコは比較的シイ達でも話をしやすい。特にリツコはテスト等でシイ達と接する機会が多い為、三人の中では一番情報を聞き出し易いと思われる。

 

「ただし、くれぐれも言動には注意すること。こっちがレイの事を知ってると、相手に悟られちゃ駄目よ」

「うぅぅ、出来るかな……」

 嘘や駆け引きがとことん苦手なシイは、不安げに表情を曇らせる。それはアスカとレイも同感らしく、シイをジッと見つめて、やがてため息混じりに結論を出す。

「シイ、あんたはやらなくて良いわ」

「……そうね」

「えっ!? どうして?」

 突然手の平を返した二人に、シイは思わず問い返してしまう。やらなくて良いと言われてホッとした反面、仲間はずれにされたようであまり嬉しくないのだ。

「あのね、どう考えてもあんたに情報を聞き出すなんて器用なこと、出来そうに無いし」

「そ、そんな事無いもん。私だってちゃんと出来るってば。綾波さんもそう思うよね?」

「…………」

 縋るようなシイの視線を受けたレイは、無言のままそっとシイから目を背ける。口にこそ出さないが、その態度が全てを物語っていた。

「二対一よ。あんたは秘密を漏らさない事だけに、専念しなさい」

「酷いよアスカ~」

「ばれたら終わりの綱渡り。悪いけど、余計なリスクを背負う余裕は無いのよ」

「うぅぅ……」

 アスカにハッキリと戦力外通告を受けたシイは、力無く俯くのだった。

 

 

 その後、これからの方針を立てて、第一回チルドレン会議は幕を降ろした。彼女たちがネルフの闇を突き止め、レイを守る事が出来るのかは……まだ分からない。

 




完全に16話への繋ぎになってしまいました。

本当はシイと和解して、ニヤニヤが止まらないゲンドウの話でしたが……あまりにもゲンドウが気持ち悪かったので、差し替えさせて頂きました。
加筆修正で再挑戦したのですが、残念ながら結果は変わりませんでした。

ゲンドウ&冬月&リツコ対シイ&レイ&アスカの図式です。加持とミサトはシイ達とは、違うアプローチで謎に迫っています。
使徒とは別の戦いは、果たしてどの様な結末を迎えるのか。

小話ですので、本編も本日中に投稿致します。

次回もまたお付き合い頂ければ幸いです。

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