~冷たい真実~
「リリスさんの魂?」
「そうだ。渚がアダムの魂を宿している様に、レイにはリリスの魂が宿っている」
「ちょい待ってや。そんならレイが使徒やって言うんか?」
「いや……レイはリリスの魂を宿してはいるが、肉体はヒトの遺伝子をベースにしている。細部を除けば、基本的に我々と何も変わらない」
「僕の身体は半分アダムの遺伝子で出来てるからね。彼女とは違うよ」
ゲンドウの説明にカヲルが補足を入れる。共に始祖の魂を宿している両者だが、レイには生命の実であるS2機関が無く、それが最も大きな相違点とも言えた。
意図が読めずに困惑の表情を浮かべるシイ達に、ゲンドウは静かに過去を語り始める。
「セカンドインパクトの後、人類はここの地下でリリスを発見した。休眠状態だったのか、リリスは一切の活動をしていなかったが、何時アダムのように覚醒するか分からない。そこで我々は、リリスから魂を抽出する事で、予期せぬ事態を防ごうとした」
「魂を抽出って、そんなの出来るわけ無いじゃん」
「ヒトの科学力では不可能だ。だがゼーレの持つ死海文書には、それを可能にする術が記されていた」
使徒の出現やロンギヌスの槍の使用法など、人の身では知る事すら叶わぬ事柄を記した書であれば、魂を取り出す手段が載っていても不思議では無い。
カヲルの推測通りなら、死海文書は『何か』が授けたものなのだから。
「その後、ゼーレによってここにゲヒルンの研究所が建設された。表向きは国連所属の人工進化研究所として。実際はリリスの調査と研究、そしてそのコピーを生み出す事を目的としてだ」
「それって、エヴァの事?」
「ああ。セカンドインパクトが起きたことで、使徒の襲来は確実な未来となった。人類はそれに対抗する手段として、自らの手で制御できる神のコピーたるエヴァを造り出した」
淡々と過去を語るゲンドウ。既にシイ達は、冬月とユイから同様の話を聞いていたが、これがどうレイと繋がるのかと真剣な面持ちで話に聞き入る。
「幾多の実験と失敗を繰り返した末、プロトタイプである零号機を完成させた我々は、次のフェーズとして稼働に耐えうるエヴァの開発に取りかかった」
「それが初号機なの?」
「ああ。リリスより取り出した魂を封じ込めたコアを、初号機に搭載した。その後はお前達も知っての通り、ユイを被験者にした起動実験は失敗し、ユイの魂は初号機に取り残されてしまった」
「……で、それがレイと何の関係があるって~の?」
「そうだよお父さん。だってリリスさんの魂は、初号機に居るんでしょ?」
アスカとレイの問いかけに、ゲンドウはサングラスを軽く直しながら答える。
「一つのコアに宿る魂は一つだけだ。ユイの魂が初号機に宿った以上、リリスの魂は追い出される形で、コアから解放される。そして……レイへと宿った」
「どうして?」
「……サルベージよ」
ようやく話が掴めたと、アスカは渋い表情で呟く。そしてまだ理解出来ていないらしく、不思議そうに首を傾げているシイに、実例を挙げて説明を始めた。
「前にあんたが初号機に取り込まれた事があったでしょ。でもユイお姉さんがコアに居る以上、あんたは一緒に居られなかった。それじゃあ、追い出されたあんたの魂は何処に行ったと思う?」
「えっと……エントリープラグ?」
「サルベージが成功した事から、多分間違い無いでしょうね。ならそれをリリスに置き換えたら?」
アスカに言われ、シイは頭の中を整理しながら考える。
魂になった自分は、エントリープラグで再構成された肉体に戻れた。だがリリスにはその肉体が無い。戻るべき場所が無い魂は、何処にも行けずに彷徨うしか無いだろう。
だが、もしも魂を宿す何かが誕生したら。
「……あっ!?」
「ユイさんの遺伝情報を得るために、当然プラグ内のLCLは全部回収したでしょうね。そこにリリスの魂が居たんなら……説明が付くわ」
鋭い視線を向けるアスカに、ゲンドウは動じた様子を見せずに無言で頷いた。
「レイさんの魂がリリスさんだって事は分かったよ。でもそれがどうしたの?」
「そやな。ちょい前に渚とも同じ様な話をしたけど、別に大した事や無いやろ」
「魂が誰のもんでも、あの子は無口無表情関節バカのレイよ」
既にシイ達はレイの出生について知っており、それを受け入れていた。ゲンドウの話に驚きこそすれ、レイとの絆は少しも揺るがない。
「……分かっている。だからお前達をここに連れてきた」
「え?」
まるで自分達の反応を予測していたかの様なゲンドウに、シイは戸惑いの声を漏らす。そう、単に今の話をするだけならば、こんな場所へ連れてくる必要は無いのだ。
アスカとトウジもそれに気づいたのか、表情に僅かだが緊張の色が浮かぶ。
「私はお前達に隠していた事がある」
「はぁ? そんなの今更じゃん」
「補完計画やら何やら、司令は隠し事のデパートやったからな」
軽口を叩くトウジだったが、ゲンドウから感じる威圧感に思わず口を閉ざし、気づいた。今自分達に何かを話そうとしているのは、シイの父親では無く、ゼーゲン本部司令としてのゲンドウなのだと。
「……アダムとリリスの禁じられた融合を果たし、神に等しい存在となった後、初号機を取り込む。そして全ての人類の魂を一つにし、完全な生命体へと進化させる。それが私の計画だった」
「うん……。お母さんから聞いたよ」
「この計画を完遂させる為には、レイの存在が必要不可欠だ。しかし万が一が起こる可能性は否定できない。だから私は保険をかけた」
ゲンドウはシイ達から離れ、部屋の中央にある円柱状の水槽へ近づく。そしてゆっくり振り返ると、上着のポケットからリモコンの様な機械を取り出した。
「それが……これだ」
右手に持った機械をゲンドウが操作すると同時に、部屋の壁に埋め込まれていた水槽に光が灯る。ぐるりと円を描くように、シイ達の周囲に現れた水槽。
その中には……レイに酷似した人型の何かが、無数に存在していた。
「な、何よこれ」
「レイさん……?」
動揺を隠しきれないシイがポツリと呟いた瞬間、水槽の中を漂っていたものが一斉に視線を向ける。無数の赤い瞳に見つめられたシイは、ビクリと身体を震わせて数歩後ずさる。
生まれたままの姿で水槽を漂うものに、シイ達は戸惑いつつも目を離せない。
「い、生きてるのよね?」
「動いとるさかい、そうやろ。レイによう似とるけど……」
「……ううん、違う。この人達はレイさんじゃ無い」
確かに外見は酷似しているが、何かが違う。根拠を問われれば困ってしまうが、水槽の中の彼女達とレイは似て非なる存在だと、シイは確信していた。
「この感じは……クローン、かな?」
「そうだ。レイに万が一が起きた時、リリスの魂を受け入れる存在が必要だった。その為に造られたのが、これだ。レイと同じ身体を持ち、しかし魂を宿さぬもの。魂の受け皿だ」
カヲルの確認にゲンドウは頷きながら言葉を紡ぐ。
「レイはここで定期的に、記憶と思考パターンのコピー処理を受けていた。何時不測の事態が起きた場合でも、クローンに記憶を移植し、新たなレイとして活動させる為に」
「っっ、お父さん!」
あんまりなゲンドウの物言いに、カッとなったシイは父親へと飛びかかろうとする。だがそれをカヲルが、肩を掴んで食い止めた。
「シイさん。話を最後まで聞こう」
「でも!」
「本来であれば、この話を僕達に聞かせる必要は無かった筈だ。黙って闇に葬れば良かったのだからね。でもあえて話した。……きっと何か理由があるんだよ」
優しく諭すようなカヲルの言葉に、シイは暫し考えた末に頷いた。
「さて、お義父さん。今更レイに関して何を言われたところで、シイさん達は揺るぎませんよ。それはもう十分確かめられた筈。本題に入っても良いのでは?」
カヲルの言葉に頷くと、ゲンドウは覚悟を決めた様子で口を開いた。
「……ここはダミーシステムの開発プラントとして稼働してきた。全ての戦いが終わり、エヴァの破棄が決定した今、存在する理由は無い。予算削減の為に放棄する予定だった」
「放棄って、じゃあこの人達はどうなるの?」
「シイ。これは人では無い。人の形をした魂の器……人形だ」
ゲンドウの発言に再びシイは激昂するが、その反応を予想していたアスカに身体を押さえられてしまう。
「あんた馬鹿ぁ? 話を最後まで聞くって、納得したばっかでしょ」
「だけど……だけど」
「良いからちっとは落ち着きなさい。……強い言葉を使うのは、自分を守ろうとしてるからよ。司令があたし達に伝えようとしてる事は、それだけ言い出しづらいのね」
アスカはシイの耳元でそっと囁く。大人達に囲まれて育ったアスカは、人の嘘を見抜く力に長けている。そんな彼女は、ゲンドウがあえて冷たい司令の仮面を被っていると見抜いていた。
「話を全部聞くの。それでも納得いかなければ、思いっきりぶつかれば良いわ」
「……うん」
シイを宥めたアスカは、一度大きく息を吐くと、ゲンドウに鋭い視線を向ける。
「だった。過去形って事は、今は放棄するつもりが無いって事?」
「ああ。ここを存続させる理由が出来た」
「へぇ~。こんな悪趣味な場所を残す理由ってのを、是非聞いてみたいわね」
自分でも子供っぽい挑発だと理解しているが、それでもアスカはつい悪態をついてしまう。シイほどでは無いにせよ、彼女もゲンドウの発言に苛立っていたのだ。
「人類補完計画が潰えた以上、リリスの魂をレイに宿す必要は無い。レイは人として生き、肉体が終わりを迎えた時に魂をコアに封印する。それが当初描いていたシナリオだ」
「それでええや無いですか。何が問題なんです?」
「……レイに宿っているリリスの魂が、目覚めつつある」
トウジの問いかけに、ゲンドウは少しだけ間を開けて答えた。
「レイは自分にリリスの魂が宿っている事を知らない。そして我々もその事実を隠し続けた。綾波レイと言う人格を形成する事で、リリスの意識が覚醒する事を防いでいた」
ゲンドウがレイの出生を機密情報とし、特に魂に関してはシイ達ですら知り得ない程の深度で隠し通してきたのは、レイがリリスとして自覚するのを恐れたからだ。
「あえて学校へ通わせたのも、ヒトと交流する事でヒトの心を育み、レイとしての人格を強固にする為。そしてお前達と出会った事で、その目的は十分に果たせた」
レイはシイ達と共に過ごし、造られた存在であってもヒトとして生きると決意する。それはゲンドウにとって、願っても無い成果であった。
「だが……予想外の事態が起こった。渚の存在だ」
「まさかあんた、レイにリリスだって教えたんじゃ無いでしょうね?」
「いや、僕は彼女が自覚していると思っていたからね」
ジト目を向けるアスカに、カヲルは軽く首を横に振る。それとなくリリスについて触れたことはあるが、直接レイに伝えてはいない。
自分と同じ存在だと語りかけた事はあるが、レイはそれを造られた存在同士だと理解したのだろう。その時点ではカヲルの正体が、使徒でありアダムの魂を宿すものとは、誰も知らなかったのだから。
「ただそうなると、僕の存在が切っ掛けになってしまったのか……」
「どう言う事?」
「同じ始祖の魂と接触する事で、眠っていたリリスに影響を与えてしまったかも知れないのさ」
シイの問いかけに、カヲルは少し困った様子で答えた。
「ま、過ぎた事はしゃーないとして、や。リリスの魂が目覚めると、何か不味いんでっか?」
「……最も恐れているのは、回帰衝動が起こる事だ」
「回帰衝動……って何?」
「あんた馬鹿ぁ? 元に戻りたいって言う欲求よ」
いつも通りのアスカの突っ込みを、ゲンドウは頷いて肯定する。
「元々魂と身体は密接な関係にある。もしリリスの魂が覚醒すれば、再び完全な状態へ戻ろうと、肉体への回帰を望む可能性がある」
「それって、レイさんがリリスさんになっちゃうって事?」
「ああ。そして今、リリスの肉体はロンギヌスの槍で拘束している。もしその状態で魂を宿し、神として覚醒した場合は……サードインパクトが起こるだろう」
ゲンドウの言葉にシイ達は絶句する。命を賭けて戦い抜き、多くの人達の協力を得て、やっと食い止められたサードインパクト。今再びその危機に直面するとは、予想だにしていなかったからだ。
「マジかいな……」
「完全なる神とロンギヌスの槍。この二つが揃ってしまえば、十分あり得る事態だよ」
サードインパクトが起これば、生命が個として存在する為に必要なATフィールドを失う事で、肉体はLCLに還元され、魂が始まりの場所へと還る。
ゼーレは人類の罪を贖罪してから、新たな生命体としての誕生を。ゲンドウは人類の魂を一つにし、神となる事を目的とし、サードインパクトを起こそうとした。
両者が描いていたシナリオは異なるが、必要な条件は同じ。
生命のATフィールドを消失させる事が出来る程、強力な反ATフィールドを発生できる存在。そしてその存在に死を、原始への回帰を望ませる力だ。
今のゼーゲンには、それが揃ってしまう可能性が十分にある。
「ちょっと待って。どうしてお父さんは、リリスさんの魂が目覚めかけているって分かるの?」
「へ?」
「だってレイさんに変わった様子なんて無かったもん。……最近はちょっと悩んでるみたいだったけど」
「言われてみるとそうね」
シイの主観ではあるが、カヲルと出会ってからもレイに変化は無かった。確かにここ数日は様子がおかしかったが、それとリリスを結びつけるのは難しいだろう。
「……先程言った通り、レイは定期的に記憶と思考パターンのコピーを行い、ダミーシステムの開発が終了した後も、ある目的の為に続けていた。……渚と出会ってから、そこに解読不明のノイズが混じり始めた」
「ノイズ?」
「初めは無視できるほど小さなノイズだったが、次第にそれは大きくなっていった。MAGIに根気強く解析させた結果、レイとは異なる存在の思考パターンだと判明したのだ」
「それって、リリスさんの?」
頷くゲンドウに、シイはもしかしたら勘違いかも、と言う淡い期待を捨てるしか無かった。
~選ぶべき道~
「……それにしても、まさかリリスとはね」
「ん、渚はレイの事を知っとったんやろ?」
「ふふ、それとは違う事さ。とにかく、パズルのピースが揃っているのは確かだよ。ただこのまま黙っていて、サードインパクトと言う絵が出来上がるのは、流石に遠慮したいね」
「あったりまえじゃない」
「そんなん、絶対止めなあかん!」
「うん。きっと方法があるはずだよ」
これまでも立ちはだかる困難に対し、みんなで協力し合い乗り越えてきた。今回も必ず解決出来る筈だと、シイ達は力強く頷き合う。
そんな子供達に、ゲンドウが口を開いた。
「……阻止する方法はある」
「え?」
「サードインパクト発生の必要条件を満たさなければ良い。渚の言葉を借りるなら、パズルのピースを無くしてしまえば、悲劇は阻止出来る」
「そらそうや」
「全ての鍵を握っているのは、リリスの魂が覚醒するか否かだ。魂が眠った状態ならば回帰衝動は起こらない。それはこれまでのレイを見ていれば分かるだろう」
ゲンドウの確認にシイ達は頷く。
「ならば目覚めかけている魂を、今一度眠らせれば良い」
「でもどうやって?」
「レイに宿っている魂を抽出し、クローン体に移植する。コピーした記憶と共にな」
ゲンドウの言葉を聞いて、シイは一瞬キョトンとした顔を見せる。だが彼が言わんとしている事を察し、直ぐさまその表情が引きつった。
「え、それって……レイさんを……殺すって事?」
「レイは存在し続ける。ただし、お前達が知っているレイでは無くなるだろう」
「巫山戯んじゃ無いわよ! そんなの、絶対に許さないわ!!」
流石に我慢の限界を超えたアスカが、大声で断固拒否を叫ぶ。当然シイ達も同様に、ゲンドウに対して怒りと敵対心むき出しの視線を向けた。
「……では、他に何かリリスの覚醒を防ぐ方法があるのか?」
「今はまだ分からないけど、みんなで考えて行けばきっと」
「その方法が見つかるまでに、リリスの魂が覚醒しないと保証出来ない」
理想論ともとれるシイの提案を、ゲンドウは冷たく一蹴する。
「全人類の生命が掛かっている。個人の感情で左右して良い問題では無いのだ」
「だからって、その為にレイさんを犠牲にするなんて間違ってる!」
「この世界を守るのがお前の願いだった筈だ」
「レイさんもそこに入ってるの。私はみんなで未来を生きたい」
真っ向からぶつかり合うシイとゲンドウ。だが両者の意見は平行線を辿り、決して交わらなかった。顔を真っ赤にしているシイに、カヲルが優しく声を掛ける。
「少し落ち着こう。今のままでは話し合いでは無く、ただの喧嘩だからね」
「カヲル君は平気なの? レイさんが居なくなっちゃうのに」
「僕もレイを失いたくは無いよ。……他人事では無いからね」
寂しそうに揺らぐカヲルの赤い瞳に、シイは少しだけ冷静さを取り戻す。
「今の話だけど、司令は何も今すぐレイから魂を取り出そうとは思っていない筈さ」
「え?」
「司令はリリスの覚醒が近づいた時に、先程の案を実行するつもりですよね?」
「……ああ」
「だからそれまでに、僕達は覚醒を防ぐ手段を探せば良い」
落ち着いて考えれば誰でも辿り着く結論だが、それを見失うほどシイ達は心を乱していたのだろう。それだけレイと言う少女の存在は、彼女達にとって大切なものなのだ。
「既にユイとキョウコ君、そして赤木博士が研究に取りかかっている。冬月にも無理を言って、リリスの魂に関しての対策予算を捻出して貰った」
「お父さん……最初から」
「私はレイの父親だ。娘を失いたいと思う親など居ない。……だが、私には責任がある。最悪の事態が起こった場合は、ゼーゲンの本部司令として対処する」
サングラスを直しながら宣言するゲンドウには、明確な覚悟が宿っていた。レイの為に出来る最善の努力をする。だが万が一の時には躊躇わずに行動すると。
「……そして、お前達にもある重要な役割を担って貰いたい」
「わしらに?」
「レイに不穏な様子が見えた時、言動に違和感があった時、不審な行動をしていた時、ちょっとした変化でも構わん。それを報告して欲しい」
最悪の事態を防ぐためには、レイに宿るリリスの魂が目覚める兆候を掴まなければならない。それは保安諜報部による監視だけでは不十分で、直に接するシイ達の協力が必要不可欠であった。
「あたし達がレイを庇うって思わないの?」
「サードインパクトを阻止し、人類が生きる未来を願ったお前達だ。今更疑う必要も無いだろう」
「……うん」
正直に言えば、まだ頭は混乱している。落ち着きつつあるが、心に動揺は残っている。それでもシイはゲンドウの言葉をしっかりと受け止め、明確な覚悟を持って頷いた。
静かに回り始めた運命の輪。
それがどの様な結末へと向かうのかは、まだ誰も知らなかった。
これにて説明回は終わりです。
原作でレイが自分をリリスだと自覚していたかは、作者には判断出来ませんでした。ATフィールドを展開してましたが、ひょっとしたらアダムを取り込むまで知らなかったかも。
回帰衝動については、作者の妄想設定です。カヲルがアダムを求めるなら、レイもそうだろうと。
原作だとそんな素振りは無いんですよね……すいません。
恐らく本編後日談通じて、一番長いエピソードになります。
次回もまたお付き合い頂ければ幸いです。