エヴァンゲリオンはじめました   作:タクチャン(仮)

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3話 その5《激情》

 シェルターを抜け出したトウジとケンスケは、山の中腹を移動していた。

「うん、ここなら」

 第三新東京市街を見下ろせる絶好のポジションを確保し、満足げな笑みを浮かべるケンスケ。そこからは、戦いに対しての恐怖は感じられなかった。

「おぉぉ、あれは」

「な、なんや、あのけったいな化け物は」

 赤紫色の使徒を目撃し、ケンスケは興奮気味に歓喜の声を、トウジは怯えや恐れが入り交じった声をそれぞれあげる。

「凄い。あれが敵なのか」

「……転校生は、あない化け物と戦っとったんか」

 喜ぶケンスケとは対照的に、トウジは複雑な思いを胸に抱く。まだシイを殴った感触の残る右手。まだ脳裏に焼き付いているシイの怯えた顔。それがトウジの心を乱していた。

 

 使徒は街の中心で制止すると、身体を折り曲げて大地に立つ。それはまるで、これから始まる戦闘に備えている様にも見えた。

 ケンスケは使徒の姿をカメラに収めながら、エヴァの登場を今か今かと待ちわびる。一方のトウジは、ただ自分の拳を見つめるだけ。

 そんな彼らの背後から、デジャブを感じる叫び声が聞こえてきた。

「あんた達! 何やってるの!」

「「い、委員長!?」」

 ビクリと肩を震わせた二人が振り返ると、息を切らしたヒカリが、怒り心頭と言った表情で立っていた。

「な、何で委員長が?」

「それはこっちの台詞よ。嫌な予感がして様子を見に行ったら、二人は居ないし、天井は外されてるし。……外に出ちゃ駄目だって言われてるでしょ!」

「いや委員長、これには深い理由があってやな」

「とにかく早く戻りなさい。今ならまだ誰も気づいてないから」

 真面目なヒカリは、委員長として二人をシェルターに連れ戻そうとする。彼女の言葉は正しく、もしこの行動がバレれば何らかのペナルティーは避けられないだろう。

 トウジはここまでかと、ケンスケを説得しようとするが、

「来たぁぁ!!」

 二人にとって最悪のタイミングで、エヴァ初号機が地上へと姿を見せてしまった。

 

 

 初号機のモニターには、赤紫色の使徒がハッキリと映し出されていた。相手も自分を認識している事が分かり、シイは恐怖を押し込めるように固く唇を噛みしめる。

『シイちゃん、まずは射撃で様子を見るわ。そのライフルで先制攻撃を仕掛けて』

 ミサトの指示に従い、シイは用意されたライフルを構えて使徒に向けて射撃する。放たれた銃弾は使徒を的確に捉え続ける。

「倒れて……倒れて……」

 シイは何かに急かされるように、落ち着かない様子でレバーのトリガーを引き続ける。無抵抗の使徒へ降り注ぐ銃弾。だが、単純な攻撃は思いも寄らぬ副作用をもたらしてしまう。

『不味い、爆煙で敵が見えないわ!』

 ミサトが叫ぶ通り、使徒の姿はすっかり着弾の煙に隠れてしまった。発令所のメインモニターも、初号機のモニターも完全に使徒の姿を見失う。それでもシイは射撃を止めない。

「倒さなきゃ……倒さなきゃ……倒すんだ……」

 まるで何かに取り憑かれたかのように、瞳に危ない光を宿して使徒への攻撃を続ける。

『シイちゃん射撃を中止して! 一旦距離を取るのよ!』

「倒す……ここで倒さなきゃまた……」

 自分に言い聞かせるように、呟きながらシイは攻撃を止めようとしない。その時、モニターの端に何かピンク色に光る物が映った。

「え?」

 光はまるで鞭のようにしなりながら、初号機へと襲い掛かる。射撃体勢に入っていた初号機は突然の反撃に対応出来ず、手にしたライフルは光の鞭によって一瞬で破壊されてしまった。

 更に光の鞭は不規則な動きを見せながら、今度は初号機の腹を強くを薙ぎ払う。

「きゃぁぁぁ」

 腹部を強打した初号機は、ビルをなぎ倒しながら後方へと吹き飛ばされてしまう。

 

「う゛ぅぅ……」

 鳩尾に伝わる鈍い痛みにシイの顔が歪む。同時にこみ上げてくる吐き気を必死で堪えながら、乱れた呼吸を整える様に深呼吸を繰り返す。

『シイちゃん早く立ち上がって。今予備のライフルを出すから』

 ミサトの指示とほぼ同じタイミングで、初号機の側にある兵装ビルが開放されて、内部に用意されていた予備のライフルが姿を現す。

 どうにかライフルを取ろうと立ち上がった初号機の前に、二本の光の鞭をしならせた使徒が立ちはだかる。腕の代わりなのか、自由自在に鞭を振るう使徒。兵装ビルを楽に切り裂く鞭の威力を前に、初号機は距離を取りながら回避に専念する事しか出来なかった。

 

 

「なんや、やられっぱなしや無いか」

「トウジに殴られたのが効いてるんじゃ」

「そ、そんな訳あるかい」

 大声で否定するトウジだが、その顔には動揺がハッキリと見て取れた。何の情報も持たない彼には、自分とのトラブルがシイに重大な影響を与えてしまった可能性を否定できない。右拳と胸がチクリと痛んだ。

「碇さん……」

 明らかに様子のおかしかったシイを知っているヒカリは、祈るような視線を送る。

「あ、やばい!」

 撮影を続けていたケンスケが思わず叫ぶ。鞭をどうにか避けていた初号機だが、遂にその足首を鞭に捕らえられてしまったのだ。絡みついた鞭が大きくしなると、初号機の巨体は軽々と遙か後方へ吹き飛ばされてしまう。

 抵抗も姿勢制御も出来ずに、空を舞う初号機。

「こ、こっちに来る!」

「あかん!!」

「いやぁぁぁ!!」

 その落下予想地点は、三人が居る山の中腹だった。

 

 

「アンビリカルケーブル、断線!」

「初号機内部電源に切り替わります」

「活動限界まで、後五分です!」

 オペレーターの報告と同時に発令所内にタイマーが表示され、カウントダウンを始めた。非常に不味い状況に、ミサト達の表情が引きつる。

 エヴァンゲリオンは電気を動力源としている。だが大量の電力を内部に保持することは出来ないため、普段は背中にアンビリカルケーブルという、電力供給用の線を繋いで活動している。

 それが失われた今、初号機は内部に蓄えられた僅かな電力で動くしかない。フル出力の全力稼働で一分。最小限の稼働でも五分と言うのが、人類の科学の限界だった。

「どうするのミサト」

「予備のケーブルは……遠すぎるわね」

 第三新東京市には予備のケーブルが各所に配置されている。ライフルが収納されていた先のビルと同様、この街はエヴァの戦闘補助を前提に建設されているからだ。

 だが、初号機は市街地から離れた山の中腹に放り投げられてしまった。予備の電源にしろ武装にしろ、現在初号機が居る場所からは遠すぎた。

「一番近い回収ルートは?」

「ルート74が最短です」

「仕切直すしかない、か」

 ミサトは山の中腹に大の字で倒れる初号機を見て、苦々しく呟いた。

 

「うう……」

 全身に伝わる激突の衝撃にシイは顔をしかめる。

(これ、確かリツコさんが言ってた、内部バッテリーの稼働時間……ケーブル切られちゃったんだ)

 初号機のプラグ内に現れたタイマーに、シイは訓練を思い出して状況を把握した。こうしている間にも、刻一刻とタイムリミットは迫ってくる。

(後四分、急がないと……あれ?)

 背中と後頭部に残る激突のフィードバックダメージに耐えながら、気持ちを引き締め直すシイ。そんな時、ふとある異変に気づく。モニターの左端に、何やら矢印の様な物が表示されている。

 シイは小さく首を傾げながら矢印の先へ視線を向けて、顔を恐怖に歪めた。

 山にめり込んだ初号機の左手。大きく開かれたその指の間に、身体を小さく丸めている人間が居たのだ。その人物はシイもよく知っている、二年A組のクラスメート達だった。

「あぁ……ああ……」

 もし僅かでも左手の位置がずれていたら……。沸き上がる恐怖が、シイの身体を金縛りにしてしまう。

 

 

 民間人の存在は、メインモニターで状況を見守っている発令所でも確認していた。非常事態宣言が発令され、避難終了報告を受けていたミサトは、苛立ちながら声を荒げる。

「どうしてこんな場所に民間人が居るの!」

「……データ照合終了。これは……シイちゃんのクラスメートです!!」

 素早く端末を操作した青葉によって、瞬く間に三人の身元が割れる。第三新東京市に住む人間は、一切の例外なくID登録されている為だ。

「相田ケンスケ、鈴原トウジ、洞木ヒカリ……何でここに」

「使徒、初号機に接近!」

 日向の報告に、発令所の空気は一段と厳しくなっていった。

 

 

「みんな、どうしてここに……っっ!?」

 三人に気を取られていたシイは、使徒の接近に気づくのが僅かに遅れる。体勢を立て直す機会を失った初号機は、繰り出された光の鞭を、仰向けの状態で受け止めるしか無かった。

「くぅぅ……」

 ビルをも切り裂く鞭を掴んで無事な筈がない。初号機の手の平は装甲がみるみる熔解し、素肌がむき出しになってしまう。だがそれでもシイは鞭を離さない。

「……みんなを……守らなきゃ……」

 焼け付くような手の平の痛みに耐えながら、シイは歯を食いしばって鞭を掴み続ける。

 

 

 避けることも反撃もせずに、ただひたすら鞭を掴む初号機を三人は呆然と見つめる。間近に迫った初めて感じる死の恐怖で足が竦んでいる為、この場から逃げ出す事は出来なかった。

「な、なんで戦わへんのや」

「僕らがここに居るから……自由に動けないんだ」

「そんな……」

 自分達が足を引っ張って居ることに、三人は後悔の表情を浮かべる。

 

 

「初号機活動限界まで、後三分三十秒」

 膠着状態に陥った戦闘の中、マヤが読み上げるカウントダウンが発令所に響く。時間制限がある以上、戦況は刻一刻と悪化していく。

(不味いわね。いっそあの子達を見殺しにして、初号機を回収すれば……)

 脳裏に浮かぶ考えをミサトは即座に打ち消す。もしそんな事をすれば、シイは間違いなく心を病むだろう。それ以前にシイがそんな命令に従うとも思えなかった。

(あの子達を助けて、かつ現状の危機を脱する手段……ちょっち賭けになるけど)

「……シイちゃん。その三人をエントリープラグに乗せなさい」

 考え抜いた末にミサトは、大きな賭に挑んだ。

「何を言ってるの、葛城一尉。許可のない民間人を、エヴァに乗せられる訳無いでしょ」

「私が許可します」

「巫山戯ないで。貴方、自分が何を言ってるのか分かってるの?」

「……このまま何もしなければ、シイちゃんがやられるわ」

 ミサトの言葉に思わずリツコは怯む。

「かといって友達を見殺しにしたら、あの子の心に一生もんの傷が残るわ」

「それは……そうかもしれないけど……」

 シイと科学者の理性が、リツコの中で激しくせめぎ合う。その様子を見て、ミサトはだめ押しの一言を。

「多分、『リツコさんも冬月先生も、みんな大っ嫌い!』て泣くでしょうね」

((うぅぅぅぅぅぅぅ!!!!))

 見事、ミサトは発令所全員の急所を打ち抜いた。

「そ、そうね。人命が最優先だものね」

「うむ。私が許可しよう。直ちにあの三人をエントリープラグに乗せたまえ」

 あっさり手の平を返し、三人の救助命令を出す二人。

(はぁ~、碇司令が不在だったのは不幸中の幸いね)

 もしゲンドウがこの場に居れば、こんな作戦など許可される筈が無かった。頭の固い最高責任者の不在を、ミサトは大きなため息をつきながら感謝する。

 

『シイちゃん聞こえる!? エヴァを固定モードにして』

「え!?」

『今からあの三人をそこに乗せるわ。その間、使徒の鞭を抑えるの!』

「わ、分かりました」

 シイは鞭を掴んだ状態で初号機の動きをロックすると、一時的にシンクロを中断する。そして起動状態を維持したまま、エントリープラグを外部へと露呈させた。

 

『そこの三人、聞こえてる!』

 自分達へと呼びかける女性の声に、三人は困惑した表情を浮かべる。

『今、白い筒が外に出たでしょ。そこに乗り込んで!』

「え? え?」

『急いで!』

「「は、はい」」

 ミサトの一喝を受けて三人は慌てて動き出した。使徒の前で動くと言う恐怖に耐えながら、初号機の首筋から地面すれすれに飛び出ているエントリープラグへと近づく。

「こ、ここに入れっちゅうとるんか」

「そうみたいだ。でも……」

「迷ってる場合じゃ無いでしょ。早く入るのよ」

 三人は開かれた上部の緊急用ハッチから、エントリープラグへ飛び込んだ。流石に中が液体で満たされているとは思わなかったのか、LCLの存在に彼らは戸惑う。

(な、なんやこれ……水やないか)

(がぼがぼ、カメラが……)

(うう、生臭い)

 慣れないLCLに表情を歪める三人だったが、やがて肺がLCLに満たされ呼吸が可能になると、少しずつ落ち着きを取り戻す。

 そこで三人は、 

「転校生!」

「碇!」

「碇さん!」

 自分達の前方にあるコクピットに座る、シイの後ろ姿を見つける事が出来た。

 

 

「三名のエントリーを確認」

「プラグを再挿入します」

 再びエヴァの中に吸い込まれるエントリープラグ。直ぐさまシンクロを再開したのだが、異常を示す警告アラートが一斉に鳴り響いた。

「ハーモニクスと神経パルスに異常が出ています」

「異物を三つも取り込んだんだから当然よ」

「動かせる?」

「シンクロ率は起動ラインを超えています。最低限の動作は問題ありません」

 マヤの言葉にミサトは軽く頷いた。どのみち三人を救出した初号機は、回収ルートを使って撤退させるつもりだ。戦闘に支障が出ようが、射出口まで動いてくれれば充分だった。

 

 シンクロを再開したエントリープラグは、外部モニターも復活していた。それに大きく映し出される使徒の姿に、三人は怯える仕草を見せる。

『シイちゃん、とにかく使徒を引き離して』

「うぅ~、あっちに……行ってっ!!」

 使徒の身体を遠ざけようと、鞭を掴んだ両腕を力任せに振るう。使徒が飛行体勢に変わっていた事も幸いし、踏ん張ることの出来ない使徒はエヴァからゆっくりと離れていく。

 

『初号機、活動限界まで後一分十秒』

『今よ。一旦撤退しなさい。ルート74まで直ぐ移動して』

 千載一遇のチャンスとミサトは急ぎ指示を出すが、シイは答えない。俯いたまま荒い呼吸を繰り返すだけだ。

「お、おい転校生。逃げろって言うとるで」

「今の声って、お前の上官だろ?じょ、上官の指示には従うんだろ? な?」

 トウジとケンスケの声にも、シイは反応を示さない。無言のシイに彼女以外の全員が不安を抱く中、徐々にシイの呼吸が整っていく。

「今逃げたら……また傷つく人が出るから……だから……だから……」

 シイは初号機の左肩から出したナイフを、焼けただれた右手に握らせる。それはミサトの指示を、逃げるという行動を完全に否定した動作だった。

「碇さん……」

 シイの呟きが聞こえたヒカリは沈痛な面持ちで呟く。

『初号機、活動限界まで後一分!』

 その瞬間、プラグ内が真っ赤に染まった。初号機に残された時間があと僅かと示す非常灯に照らされながら、シイはレバーを力一杯握りしめると、

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 悲鳴にも似た叫びをあげて、使徒へ突進した。普段のシイからは想像すら出来ない気迫に、トウジもケンスケも、ヒカリでさえも言葉を失う。

 山の斜面を利用して加速をつけながら、初号機は使徒へ一直線に向かう。

『シイちゃん何やってるの! 撤退よ! 命令を聞きなさい!』

 ミサトの怒声もシイの行動を止められず、初号機は速度を上げながら使徒へ近づく。だが愚直に真っ直ぐ向かってくる初号機を使徒が無抵抗で待っている筈が無かった。

 再び陸上形態に姿を変えた使徒は、光の鞭を初号機に真っ直ぐに伸ばす。勢いが付いている為に避けることは叶わず、二本の光の鞭は初号機の腹部を完全に貫通した。

「う゛ぅぅぅ…………この……くらいで……」

 内蔵を抉られた様な激痛とこみ上げる嘔吐感にシイは顔を歪めるが、それでも突進の速度を緩めない。極度の興奮状態にあるシイは、もう痛みでは止まらなかった。

「みんなを……今度こそ……守るんだからぁぁぁ!!」

 前進する度に使徒の鞭は腹部を通過していく。あまりの激痛から無意識に零れる涙を拭う事もせず、シイは必死に叫びながら、遂に使徒の懐へと辿り着いた。

 そして、両手代わりの鞭を封じられて無防備の使徒へと、思い切りナイフを突き立てた。それは丁度胸の位置にある赤い球体へ突き刺さった。

 

『初号機、活動限界まで後十五秒』

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 小さな身体を限界まで前に伸ばし、力の限りレバーを押し込む。真っ赤に染まったプラグに、シイの悲壮な叫びがこだまする。

 そんなシイの気迫に後押しされたナイフは、徐々に赤い球体の奥へ奥へと食い込んでいき、球体に刻み込まれたヒビは深く大きくなっていった。

『活動限界まで、後十、九、八、七、六、五、四、三』

 大逆転かと思われたが、プラグ内には非情にも迫るタイムリミットが響いてきた。このまま攻め込めば間違い無く使徒に勝てるだろう。だが残り時間はあまりに少ない。

 間に合わなかった、と誰もが諦めかけたその瞬間、初号機のナイフが一際深く赤い球体を抉る。それが決定打になったのか赤い光球が光を失い、使徒も身体を小さく震わせて活動を停止した。

 初号機が活動限界を迎える僅か一秒前、まさに紙一重の決着であった。

 

 

「目標は……完全に沈黙しました」

「エヴァ初号機、活動限界です」

 二つの報告に発令所は沈黙に包まれた。互いに最後の瞬間の姿勢で動きを止める使徒とエヴァ。夕日が照らすその光景は、どこか哀愁を感じさせるものだった。

「初号機の回収を急いで。民間人はそのまま身柄を拘束」

「了解」

「それと、使徒の残骸を保護して。貴重なサンプルだもの。後日、回収作業を実施するわよ」

「了解です」

 リツコの指示で慌ただしく動き出すネルフスタッフ。だが発令所には戦闘に勝利したとは思えない程、重苦しい空気が流れていた。

「…………あの馬鹿」

 そんな中ミサトは小さく呟きながら、人知れず拳を震わせていた。

 

 

「……うっく……ぐす……うぅ……」

 内蔵電源が切れ、青白い非常灯が照らすエントリープラグ。その中でレバーを前に押し出した姿勢のまま、小さな嗚咽を漏らすシイ。

 そのあまりに弱々しい背中に、ヒカリ達三人はかける言葉を持たなかった。

 




シャムシエルは使徒の中でも弱い部類に入ると思われますが、物語上では結構重要な役割を担っていると思います。
この件をきっかけに、トウジ達との繋がりが出来るわけですから。

少し暗い話が続きますが、もう暫くご辛抱頂ければと思います。一度どん底まで落ちれば、後は這い上がるだけですから。

次回もまたお付き合い頂ければ幸いです。

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