たぶんほかに類を見ない特典をもっての転生   作:osero11

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 前回の投稿から10日ぐらい経ちましたが、最新話が書き終わったので投稿したいと思います。
 今回の話はできるだけ本文を短くしようとしたため、一万字程度にまとまっております。なので、読みやすいと感じる方もいれば、内容が少なくてつまらないとお思いになる方もいらっしゃるかもしれません。あらかじめ、その点はご了承ください。

 オリ主、チートなどの要素は目次や小説情報の方に記載されておりますのであらかじめそちらをご覧ください。
 今回も、見る方によっては偽善的に感じる場面がございますので、そういうものに不快感を覚える方はご遠慮ください。
 それでもかまわないという寛容な方のみどうぞご覧ください。

 それと、今回から非ログインユーザーの方も感想を書けるようにしましたので、ご了承ください。

 それでは、本編をどうぞ。


 
2016/ 3/12 修正しました。
2016/ 4/ 8 ダッシュや地の文を修正しました。
2016/ 9/16 改行などの修正を加えました。


理央となのは ちょっとした昔話

ピッピ、ピピ、ピピピピ、ピピピピピ……。

 

 ミッドチルダ地上本部のとある一室、そこで理央は書類を作成していた。

 といっても、普通の、地球でよく知られるような書類の作り方ではない。ここミッドでよくあるような空中に浮いた電子パネルをタッチしながら作る書類だ。

 前世ではワープロで研究結果などを書類にまとめていた理央にとっては、最初の方こそこの方法での書類の作成は新鮮でいろいろと苦労も多かったが、今ではすっかり慣れてしまっていた。

 

 いま書類にまとめているものといえば、部隊ごとに分けられたピクミンの割り当ての確認とその数の調整や教導用のピクミンの細かな指揮の出し方、ピクミン関連のイベント出演の願書に対する返事、ピクミン、ピクミン、ピクミン……。

 理央が書かなければならないこれらの書類の量は膨大である。しかし、その内容のほとんどがピクミンに関係するものであることから、書類の量が多いのは彼女が一等陸佐という高い階級についているからではなく、現在ミッド地上において戦力としてもマスコットとしても知らない者はいないほどの人気を誇るピクミンのカリスマといってもいい存在だからだろう。書類の中には、『ピクミンに事務仕事をさせる試みについて』なんていう内容のものもある。

 

 理央は書類をほぼノンストップで作成し続けていた。理央がこのように効率的に書類を作れるのには理由がある。

 

 1つは経験。前世は科学者として多くの研究と発明を繰り返していた理央は、その経過や結果をまとめ報告する時のために何度も何度も書類にそれらを記録し残していたのだ。

 そのため、大体の書類のまとめ方は経験でわかるのだ。

 

 そしてもう一つはマルチタスク。魔導師である以上に膨大な数のピクミンをいくつもの役割に分けて指揮する理央にとって、複数の思考行動や魔法の処理を行うことは必然だったため、マルチタスクの習得は必須だった。

 もともと彼女の頭脳が極めて優秀だったのも相まってか、マルチタスクの技術はいとも簡単に習得され、今では軽く10もの物事を同時に思考できるようになっていた。

 もちろん、今作成している書類に関してもマルチタスクを使うことで、頭の中ではいくつかの書類の内容が常にまとまっている状態である。

 

 前世での経験と現世で習得した技術、これらを使って理央は次々と書類を仕上げていき、書き始めてからものの数時間もしないうちに今日の分の書類仕事を終わらせてしまった。

 仕事を終わらせた理央は、フゥ、と一息ついてからつぶやく。

 

「やっぱりマルチタスクがあると便利ね~。一度に何種類もの内容を頭の中でまとめられて、あとはそれを書類にしちゃえばいいんだから。

 おいで、ピクミンたち~♪」

 

 最後の言葉は笑顔とともに部屋の片隅にいた生き物、ピクミンに向けて発せられた。

 理央はピクミンを、非常時の戦力兼仕事のストレスの癒しとして仕事中も常にそばに置いているのだ。

 

 声をかけられたピクミンたちは作業をやめ、ウォー、ワーという声を上げながら理央の方に向かっていった。

 転生してからの16年間、理央はピクミンたちとの触れ合いをしなかった日は一日としてなく、愛情をもって接し続けてきた。

 そのため、ピクミンたちも理央にはよくなついていた。

 

 ちなみに今部屋にいるピクミンは軽く50匹を超えている。ピクミンの数が多すぎる気もするが、(一応)非常時の戦力でもあるのでそこは普通だろう。

 むしろそこまで広くない部屋にピクミンを50匹も一度に入れておく理央の方が異常なのである(今更であるが)。

 

 そんな数のピクミンが一斉に理央に迫ってきたので、彼女はピクミンの山に埋もれることになってしまった。

 普通の人だったら、ピクミンにぎゅうぎゅうに押されて息苦しくなるだろう。

 しかしそれでも理央は苦しそうな表情を見せることなく、むしろ恍惚の表情を浮かべている。さすが理央(ピクミン馬鹿)

 

 理央がピクミンに囲まれて悦に浸っているとき、コンコンと彼女の部屋のドアをノックする音が聞こえた。

 いくらピクミンLOVEな理央でも、誰かが来たときにピクミンに埋もれたまま応対するわけにもいかない。

 ちっ、と理央は軽く舌打ちすると、ピクミンたちに部屋の隅で待つようお願いしてから椅子に座りなおし、どうぞ、と部屋の外で待つ人物に部屋に入るよう促した。

 

 ガチャリ、と扉を開け入ってきた人物の姿を確認し、理央は思わず目を見開いた。

 それもそのはず、入ってきた人物は地上部隊の局員ではなく、教育隊、それもその中でもエース級が集まる戦技教導隊の魔導師だったからだ。

 

 長い栗色の髪をサイドポニーにしてまとめており、戦技教導官の白と青を基調とした制服に出てくる体つきからは、彼女のスタイルの良さがうかがえる。顔だちの良さもあいまって、かなりの美人といえるだろう。

 しかし管理局の女性魔導師たちは、彼女の美しさ以上に彼女のその天才的な魔導師としての資質に羨望していることだろう。

 

 彼女は希少なレアスキル『魔力収束』を保有し、魔法を覚えてから1年もたたないにも関わらず、PT事件、闇の書事件解決に大きく貢献し、そのほか多くの事件を解決しながらも戦技教導官として多くの魔導師たちを育ててきたことで有名だった。

 今やだれもが無敵と認めるほどのS⁺級魔導師であり、「エースの中のエース(エースオブエース)」とまで呼ばれる彼女の名前は……

 

「久しぶりだね、理央ちゃん」

 

「……そうね。お久しぶり、なのは」

 

 理央の昔からの知り合いでもある、高町なのはだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高町なのはにとって青葉理央とは、大切な友人の一人だった。

 

 幼いころ彼女の父である高町士郎が仕事で大けがをしてから、彼女の家族たちは士郎がいない穴を埋めようと営業している喫茶店の仕事で忙しい日々を送っていた。

 そのため、彼らにはまだ幼いなのはにかまってやれる時間もなく、「いい子にしててね」という言葉をかけるぐらいしかできなかった。

 

 そのため、なのはは毎日公園に行き、いい子に、誰にも迷惑をかけないようにしていた。

 ほかの誰かと遊ぶことが家族の迷惑につながるのではないかという恐れから、公園で遊んでいるほかの子供との遊びを楽しむようなこともしなかった。

 つまり彼女は独りぼっちだったのだ。

 

 まだ幼いなのはにとって孤独とはとてもつらく、耐えがたいものだった。

 しかし、自分はいい子にしてなければならない。まだ幼いがゆえに家族の手伝いを十分にできるはずもなく、むしろ失敗して迷惑をかけてしまうだろう。母も兄も姉もみんな自分のするべきことをしっかりとやっている。だったら、まだ何も役に立つことができない幼い自分は、こうやって誰の迷惑にならない様にすることが一番なのだ。自分がどんなにつらくても、これは自分がしなきゃいけないことなんだ……。

 このような思いが彼女に孤独のつらさを耐え忍ばせた。

 それ故に、なのはは一人ぼっちで、ただただつらい日々を送っていたのだ……。

 

 

 

 

 

 とある人物が、彼女に話しかけるまでは。

 

 

 

 

 

「ねえ、そこの女の子」

 

「え?」

 

 なのはがいつものように公園で一人ブランコに乗りながら、家に帰る時間をただただ待っていた時に、その人物は話しかけてきた。

 話しかけてきたのは、長い黒髪に黒い目、身長は165センチくらいと平均より少し高めの女性だった。買い物帰りなのか、買い物かばんを肩にかけている。

 スタイルの良さと整った方である顔立ちから、美人な人だな、となのはは思った。

 

 しかしなのはの心はすぐに、この全く知らない人物に対する不審感と、もしかしてなにか迷惑をかけてしまったのではないかという不安でいっぱいになった。

 実際にはなのははこの人物に対し迷惑をかけるようなことは全くしていないので気に病む必要などは全くないのだが、迷惑をかけちゃいけないという自身の強迫観念が普通なら考え付くことがないその可能性をありうるものとして思い込ませていた。

 

 そんななのはの心情を知ってか知らずか、女性はしゃがみこんで自分の目線をなのはに合わせることで、なのはの緊張をほぐそうとした。

 

 もうお分かりかと思うがこの女性、当時の青葉理央が変身魔法を使って変身した姿である。

 理央は今日の買い物を済ませ自宅に帰っている途中だったのだが、今日はいつも行っている店が休みだったため、別の店で買い物をして帰っている途中だったのだ。

 そのため、いつもは通らない公園そばを通ることになり、その時偶然一人でブランコに乗って寂しそうにしているなのはの姿が目に入った。

 近くに親がいる様子もなく、ほかの子供と遊んでいるわけでもない。そのままにしておくのは後味が悪いと思った理央はなのはに話しかけたのだ。

 

「あ、あの、何でしょうか」

 

「ああ、ごめんね。あなた一人で寂しそうにしていたから、どうしたのかなと思って話しかけちゃったの。

 ほかの子と遊んでるわけでもなくて、お父さんやお母さんも一緒にいないみたいだから、どうしたのかな~って」

 

 やっぱり迷惑をかけちゃったのかな。なのははそう思って、思わず目に涙がたまる。

 自分はいい子にしてなきゃいけないのに、約束破っちゃった。自分の不甲斐なさや情けなさを感じ、そのままエグッ、ヒクッ、と泣きじゃくりそうになったとき、理央は優しくなのはに声をかけた。

 

「ごめんね、大丈夫? なにか悪いこと言っちゃったかしら」

 

「いえっ……グスッ、だいじょう、エグッ、大丈夫ですので、ヒクッ、気にしないで……」

 

「なにかつらいことがあるのなら、私に言ってみたらどうかしら? 全くの赤の他人だけど、だからこそ力になれることもあるかもしれないから。

 つらいことは抱え込むだけじゃなくて、吐き出すことも必要なのよ」

 

 理央は優しく諭すように話した。

 当時、人に迷惑をかけることはしてはいけないことだと思っていた普段のなのはなら、赤の他人に自分が困っていることを話すなど、自分の苦しみを他人にも押し付けるものだと思って決してしなかっただろう。

 しかし、理央の真摯な態度と情緒不安定になった彼女の心が大きな要因となって、なのはは理央に自分がなぜ一人でいるのか、その理由を話し始めた。

 

 父親が仕事で大けがをして意識不明の重体であること。自分以外の家族は実家が経営している喫茶店で、父親がいない分の穴を埋めようとずっと忙しく働いていること。そして、何もできない自分はせめて「いい子にしててね」と言われた通り、誰の迷惑にもならないように一人でいた方がいいと言って、なのはは黙ってしまった。

 涙はもう止まっているが、目は泣きはらして真っ赤になっており、顔は苦しそうな表情を浮かべていた。

 

 その話を聞いた理央は、顔こそ聞き始めた当初から真面目な顔を保ち続けてはいたが、頭の中ではさてどうしたものかと悩んでいた。

 こんな小さな子を一人で放置しているような状態は異常だとこそ思っているが、家族のほうは理由が理由であるために責めることはできず、またそちらの方から状況を改善させるのは難しいのではないかと思っていた。

 公園で遊んでいる子供たちを説得して一緒に遊ばせたとしても、本人が迷惑をかけちゃいけないと常に考えているのなら、あまりうまく溶け込むことはできないだろう。

 

 名案はないものかと頭の中で必死に思考を巡らせていたが、そこは前世では人類史上最高の科学者と呼ばれた人物の頭脳、すぐに案は浮かんだ。

 結構詐欺みたいな部分もあるが、まあそれは()()()()()()()()()()()仕方のないことだと思って割り切った。

 すぐにそれを実行するため、理央はまたなのはに優しく話しかける。

 

「そう……つらかったわね。一人ぼっちは話す相手がいなくてさみしいわよね。

 そんな思いをしてるのにまだ家族のためになると思って我慢していたのね。こんなことできる子はそんなにいないわ。えらいわね」

 

「いえ……私は何もできないから……これくらいしか……」

 

「でも、その年でそんなにつらいことを我慢し続けるなんてすごいことだわ。

 ……ねえ、あなたに1つ頼みごとをしたいんだけど、いいかしら?」

 

「えっ……? あ、は、はい! 私にできることなら!」

 

 なのはは突然頼みごとをしたいと言われて一瞬呆けてしまったが、こんな自分にもできることがあるのならと思わず勢いづいた調子で返事をしてしまった。

 返事をした後でなのははハッと我に返り、それが本当に自分ができることなのかと不安に思ってしまい、うろたえてしまった。

 しかし、理央はそんななのはの様子をほほ笑ましげに見つめてから、頼みごとの内容について話し始めた。

 

「実はね……今、私は親戚の子の保護者をしてるんだけどね、仕事の関係で日本中を転々と回らないといけないの」

 

「え? えっと……その子のお父さんやお母さんとかは……?」

 

「……それがね、この前事故で亡くなってしまったの」

 

「あ……、ご、ごめんなさい……」

 

「いいのよ、気にしないで。でね、親戚の中でその子の保護者をやれそうな人は私ぐらいしかいないっていう理由で、私が今までその子の面倒を見ていたの。

 その間ずっと仕事を休んでいたんだけど、最近そろそろ仕事に復帰しないとまずいかなぁ~、ていう感じになってね、その子と一緒に引っ越そうとしたの。

 でも、その子……『両親と住んでいた場所から離れたくない!』ってわがまま言って、どうしても無理に連れていくことが出来なくて……。

 たまには帰れるけど、ほら、その子が一人でちゃんとやっていけるかどうか心配でね……」

 

「そうなんですか……」

 

「それで悩んでいるときにあなたに出会ってね、だったら、あなたにその子の友達になってもらったらいいんじゃないかと思ったの」

 

「…………え?」

 

 

 

「お願い。その子の、青葉理央の友達になってもらえないかしら?」

 

 

 

「え、えええええええええええええ!!?」

 

 

 

 そう、理央のいい考えとは、青葉理央としてなのはの友達になること。

 自分が一緒にいればなのはが寂しい思いをすることはなくなるだろうし、保護者の方から自分のことを見てもらうようにお願いされていれば、『いい子にしていないといけない』という強迫観念が理央との交流を妨げることはなく、逆に積極的に交流させようとするだろうと理央は考えたのだ。

 つまり、『いい子にしないといけない』という思い込みを逆に利用し、交流関係を持たせようとしているのだ。

 

 さらに、友達になることによってなのはの家族の状態、特に今大けがをしているという父親の状態についても詳しい情報を手に入れることが可能となる。

 幼少期というのは人生においてこれからの生き方やトラウマにも影響しうる重要な時期であるから、『いい子にしないといけない』というこの暗示のようになっている思い込みが、なのはのこれからに悪影響をもたらすかもしれないと理央は考えていた。

 その対策として、なのはの父親が回復し、家族で行っているという仕事も落ち着いて来たら、なのはの友達となった自分の方から当時のなのはの心境や状況について説明し、家族のほうから『いい子にしないといけない』という強迫観念を消し去ってもらうように働きかけるつもりだった。

 もちろん、家族だけで彼女の思い込みをなくせなかった場合は、表面上は同い年の友達であり、実際は人生の先輩である自分がどうにかしようと理央は考えていた。

 

「で、でも……私なんかが友達になってもその子の迷惑になるんじゃ……」

 

「心配しないで。その子、素直な子じゃないから友達がいなくてね……あのままじゃろくな大人になりそうにないの。

 だから、あなたのようないい子に友達になってもらったら私にとってありがたいことだし、あの子の将来にもいいことなの」

 

「で、でも……」

 

「大丈夫、自分に自信をもって。あなたならきっとその子のいいお友達になれるわ。

 こんなに小さいのに誰かのためにつらいことを我慢しようとしているような、とってもいい子なんですもの。

 ……それにね、こんないい子がこれ以上寂しい思いをしているのは私としても嫌なの」

 

「え? や、やっぱり迷惑を……」

 

「ああ、違う違う。迷惑だとか迷惑じゃないとかそういう話じゃなくてね……こんなにも頑張っているんだから、たまにはつらいことを忘れて楽しい思いをするべきだと思うの」

 

「え?」

 

「あなたがつらい思いを抱え続けなきゃいけないのは、どうしようもない理由からだとは思ってる。

 でもね、だからといってただただつらい思いを抱えて、一人で頑張り続けるのは少し違うと思うの。

 誰か自分の苦しみや悲しみを相談できて、一緒に背負えるような相手を持って、困難なことをどうにかして乗り越えるのが一番だと思うの。

 もちろんその分相手の悩みを聞いたり解決するのに協力する必要があるけどね」

 

「だれ、か?」

 

「そう、家族だったり、学校や幼稚園の先生だったり、友達だったりね……。

 そして、困難なことを乗り越えたとき、お互いに喜び合うの、『やったね!』って。

 自分の悩みが解決された時はもちろん嬉しいだろうし、その人のが困っていることを解決出来たら、きっと嬉しい気持ちになるわ」

 

「でも、それじゃあ相手に迷惑をかけちゃうんじゃ……」

 

「それは気にしないでいいの。相手は自分の悩み事を解決したいと思うはずだから、迷惑に思うことはないわ。あなただって、家族の役に立ちたいと思っているでしょう? それと同じことよ。

 逆に家族があなたの今の状態を知ったら、仕事で忙しくても必死にあなたとの時間を作ろうとするでしょうね」

 

「そ、それはダメ! おかーさんやおにーちゃん、おねーちゃんに迷惑はかけられません!」

 

「え、ええ……(よっぽど迷惑をかけたくないのね、やっぱり根は深いか……)。

 少なくとも今は無理よね……でもお父さんが元気になって、仕事が忙しくなくなったら、思う存分家族に甘えるといいと思うわ。

 きっとご家族のほうもあなたが苦しむのなんて望んでないでしょうから……。

 だから、その時まで苦しい思いを一人で抱え込まないためにも、うちの子と友達になってほしいの。お願いできるかしら?」

 

「……私にはまだよくわからないけど、それでお姉さんやその子の役に立てるのなら……その子の友達にしてください!」

 

「ええ、もちろんよ。ありがとう、こんなお願いを引き受けてくれて

(とりあえず第一段階はクリアってところかしらね……)」

 

「いえ、気にしないでください! 

 ……そういえば、お姉さんのお名前をまだ聞いてませんでした。お名前、聞かせてもらってもいいですか?」

 

「ええ、いいわよ。私の名前は、青葉り……」

 

「り?」

 

「……り、理香よ(あ、危なかった。思わず本名を言うところだった)。

 そ、そういえばあなたのお名前もまだ聞いていなかったわね。教えてくれるかしら?」

 

「はい! 高町なのはです!」

 

「なのはちゃんね、理央にはよろしくするよう伝えておくわ。

 これから理央のことをよろしくね、なのはちゃん」

 

「はい!」

 

 

 

 これが、なのはにとっては別の人物としてだが、理央となのはの邂逅の一部始終だった。

 その後理央はなのはと無事友達になり、なのはの寂しさを埋めながらも少しずつ「いい子にしていないといけない」という彼女の精神的な歪みを直していった。

 彼女の父、高町士郎の意識もしばらくして回復し、退院して家の仕事に復帰してからは喫茶店の仕事も落ち着き始め、なのはの家族も彼女のための時間を持てるようになった。

 

 そこで理央はなのはの家族に、士郎が大けがをして喫茶店の仕事があわただしくなっていた当時、なのはが一人でどのように過ごし、自分のことをどう思いながらつらい日々を過ごしてきたのかを話した。

 気付かなかったとはいえ、まだ幼いなのはにそんなつらい思いをさせてしまったことに家族は全員深く後悔し、なのはにそのことを謝りながら、「なのはは自分たちにとってかけがえのない、大切な家族だ。つらい思いをしているのなら一緒に背負うから、もう二度と一人で抱え込もうとしないでくれ」という旨の話を涙ながらに語った。

 

 なのははその話を聞き、呆然とした表情を浮かべたかと思うと、彼女の目から一筋、涙がほほをつたった。それをきっかけにして、まるでダムが決壊したかのようになのはは目からどんどん涙を流しながら、大声をあげて泣いた。

 家族からの暖かい話は、彼女が当時抱えていた寂しさからくるつらい思いに泣きたい気持ち、愛する父が目覚めて帰ってきたときに、大声で泣いたら迷惑が掛かるかもと考えできるだけ表面に出さない様にしていた泣きたい気持ち、今の話を聞き、家族が自分をここまで大切に思っていたのかという嬉しさからくる泣きたい気持ち……そんな内側に押し込めていた泣きたい気持ちを一気に外へ解放させたのだ。

 

 兄と姉と父が涙ながらに――心配させないようにだろうか――精いっぱいの笑みを浮かべながら優しくこちらを見つめている。

 母は泣いている自分を、もう二度とこの子に寂しい思いをさせるものかと言わんばかりにしっかりと抱きしめている。

 自分に暖かく接してくれる家族に囲まれながら、なのはは理香が言っていたことを理解した。

 

 

 ――ああ、家族ってこんなにも暖かいものなんだな。

 

 

 なのはは心の中で、自分に優しく接してくれ、誰かと苦しみや楽しみを共有することの大切さとその機会を与えてくれた理香と、自分の寂しさを埋めてくれた大切な友達であり、家族の暖かさを思い出させてくれた理央に深く感謝した。

 後日、理央はなのはから感謝の言葉とともにこの話を聞き、自分のしたことが結果的にいい方向に向かったことに満足したという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれからもう十数年、二人は家庭の事情などから違う学校に通わなくてはならなくなり、小学校に入ったころから一緒にいられるのは放課後や休みぐらいしか無くなってしまった。

 同じ管理局で働くようになってからも、動機などの違いによりなのはは本局、理央は地上本部と働く場所が別々になったため、直接会うことが出来る時間はすっかり減ってしまった。

 それでも、なのはにとって理央は大切な友人であることには変わりないし、理央の方もなのはのことを、自分が懇意にしている数少ない人間だと思っているのだ。

(まあ、理央にとってなのはは友人というよりもかわいい妹分といった方がいいかもしれないが)

 

「今日はどうしたの? アポもなしに突然来たからびっくりしたわ」

 

「今日はお休みだったんだけどね……理央ちゃんのことをふと思い出しちゃったから、つい来ちゃった。

 ここに来たときに受付の人に取り次いでもらえるように言ったんだけど、いくら待ってても連絡が帰ってこなかったから部屋に来たの」

 

「……ああ、ごめんなさいね。基本連絡は受け付けない様にしていたからそのせいね」

 

「…………もしかして、()()が原因?」

 

「そう。()()が原因でそうしてたの」

 

「あはは……、いつも大変だね、理央ちゃん」

 

「まったくよ……まあ、ある意味自業自得なのかもしれないけど……ハア……」

 

 彼女たちの言う()()とは、理央を慕う地上部隊の局員(手の付けられない馬鹿)たちである。

 彼らの勢いはとどまることを知らず、何の対策もしなかったら理央の部屋には彼らの感謝の気持ちという名の迷惑メールならぬ迷惑連絡がひっきりなしに届いてくるのだ。

 もはや彼らは、レジアス中将や理央でも抑えきれない地上本部最大の問題点かもしれない。

 

 ……というかこの前「オール・ハイル・アオバリオ!!」って大勢で叫んでたけどアレは何なの? なんでわざわざ英語で言うの? ふつうそこに入るのは私の名前じゃなくて国の名前とかでしょ? マジやめて。胃の痛さがヤバいからマジやめて。せめてやるなら家の中だけでやって。いや、できれば家の中でもしないでほしいけどとりあえず私の胃をこれ以上攻撃(ダイレクトアタック)しないで。もう私の(胃の)ライフはゼロなのよぉっ!

 

 そんな感じに理央が彼らの行動を思い出し頭を痛めていたとき、なのははピクミンたちと戯れていた。

 彼女がピクミンの存在を知ったのは、理央の存在が管理局に知られた小学生のころであり、そのためピクミンたちとはそれなりの関係を築けていた。

 ウォーウォーミャーミャーと言いながら背中に上ってきたり腕にぶら下がったりするピクミンたちを可愛いと思いながら、なのははその様子を微笑ましげに見つめていた。

 

「……まあ、私もちょうど今日の分の仕事が終わったところだし、せっかくだから久しぶりに一緒に出掛けましょうか(ピクミンかわいい)」

 

 理央はピクミンたちが遊ぶ様子を見て頭の痛みを吹っ飛ばし、そう言った。

 

「え? もう? いくらなんでも早くないかな?」

 

「この前まで忙しく働いていたから、他の人が気を使ってくれたのよ。

 さ、行きましょ」

 

「あっ! 待ってよ~!」

 

 理央はそう言うとなのはと遊んでいたピクミンたちを連れ、部屋の出口に向かっていった。なのははあわてて理央たちの後を追っていったのだった。

 

 




 今回は理央となのはの出会いの話にしてみました。
 途中、理央が偽善的に思えるかもしれない発言をしましたが、それらに対して不快感を覚えた方は、申し訳ございません。今後の話でもこのような発言をする可能性は高いので、どうしても我慢ならないという方は、どうかこの小説をお読みにならない様にお願いいたします。

osero11「話は決まっているのに……! 書こうとすると間違いなく一万字は軽く超えてしまう……! 前回の話より短くしようと思っているのに……! いったいどうすればいいんだ……!!」

????「なにosero11? 話がどうしても一万字以内に収まりそうにない? osero11 それは無理矢理一話にまとめようとするからだよ。逆に考えるんだ。『二話にしちゃってもいいさ』と」

 というわけで(どういうわけだよ)、これは一応前編ということになります。後編の方では、理央がなのはと一緒にお出かけします。
 またかよと思う方もいらっしゃるとは思いますが、自分なりにこの前とは違うアレンジを加えてみたいと思いますので、どうぞ次の話も読んでいただきますようお願い申し上げます。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。最後にちょっとしたおまけを付け加えたいと思いますので、もしよかったらご覧ください。
 次回の更新もどうか楽しみにしてお待ちください。





 おまけ もしなのはと理央が人語を話せなかったら……




「なのなのな~のは?」

「ピク? ピクピ~ク。ピクピクピク、ピック」

「なの!? なのなの!?」

「ピックン!! ピクピクピックン!!」

「なの~~~~~~~~~!!」

「ピク~~~~~~~~~!!」

「……………………………………………………」

「……………………………………………………いい年してるのに、こんな遊びするんじゃないわね…………」

「……………………うん………………………………」





「お、おい見ろよ、あの高町一等空尉とアオバ一等陸佐が……」

「あ、ああ……。まるでリンゴのようにまっかだ……。めっちゃかわいい……」

「や、やっぱりあの二人はできてるって話、本当だったのか……」

「ば、馬鹿なこと言うな!! 
 あのピクミン一筋のアオバ一佐と無類の砲撃好きの高町一尉が、人間に恋するわけないだろう!!」

「そんなこと言ったらあの二人に殺されるぞ……まったく……」

「りおたんとなのはたんハアハア(*´Д`)」













 このあとめちゃくちゃKO☆U☆GE☆KIした(砲撃半分、物量攻め半分ほど)。


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