たぶんほかに類を見ない特典をもっての転生   作:osero11

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 約2週間ぶりに投稿しました。今回は前回の後書きにあったオリキャラの登場回です! ですが、今回は六課のほうに焦点がおかれています。訓練と、新デバイスの支給と初出動の場面ですね。理央の出番は最初と最後くらいになります。

 あと、すみません。前回はピクミンを活躍させましたが、今回は彼ら(?)の活躍の場はありません。期待なさっていたかた、申し訳ございません。
 その代わりに、理央とピクミンがいる影響で六課のとある人がキャラ崩壊するかもしれないので、そちらにご注目ください。

 それでは、始まります。

2016/ 9/16 改行などの修正を加えました。


第四話 ファースト・アラート/人造魔導師!?もうひとりのイレギュラーなの!

ー新暦75年 5月 午後0時 ミッドチルダ 地上本部ー

 

 4月に密輸対策部隊がとある犯罪グループの本拠地へ強制捜査をおこなった際に、彼らの援護に向かい敵を殲滅(鎮圧)してからというもの、理央は主に書類を書いたり整理したりする日々を送っていた。たまにいくつかの陸士部隊を訪れ、ピクミンの指揮に関する教導をおこなったりはしたが、少なくともここ一か月のあいだは彼女が戦闘に出ることはなかった。

 

 今日も与えられた書類仕事をパパッと終わらせた理央は、自宅に帰ることにした。いつもより処理する書類の量が少なかったため、だいぶ早めの退社となった。

 出口に向かうまでに出会った仕事仲間たちにも、理央はあっさりとだが別れの挨拶をしていた。

 

「お疲れ様でした」

 

「「「「「お疲れさまであります!! アオバ一佐!!!」」」」」

 

 いつものことながら、理央に過剰なまでの信仰心を持つ局員たちは、彼女に対する尊敬の気持ちを出しすぎた態度で接してくる。

 理央は彼らの対応に苦笑いで返しながら、地上本部の外に出ていった。そして、いつものようにバイクにまたがり、エンジンをかけ、いつものように自宅へとバイクを走らせていった。その様子は、まさにいつも通りの理央だったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、彼女の胸の内はいつも通りではなかったのだ。

 

 

 

 

 

(……なんか、いつもとは調子が違うのよね……)

 

 今日の理央は、一見するといつも通りの理央なのだが、よくよく観察してみると()()()()()()()()()()が多く存在することがわかる。

 

 例えば、いつもより早めに帰ったこと。理央がピクミンを愛してやまない人間であることは、もはや周知の事実だ。そんな理央なら、仕事が終わった後は、中に膨大な数のピクミンが待機しているオニオンがある地上本部で、勤務時間ぎりぎりまでそのピクミンたちと遊んだり楽しんだりするのが普通だろう。実際、そうしている日が大半だ。

 しかし、今日の彼女は、特に用事があるわけでもないのに、ピクミンと戯れることをせず仕事が終わったらすぐに自宅に帰ろうとしている。いつも通りの彼女とはとても言えない。

 

 例えば、局員(信仰者)たちに対する反応が非常に薄いこと。いつもの理央なら、過剰なまでに崇拝してくる彼らの態度に胃をひどく痛めることだろう。

 しかし、今日の彼女はせいぜい苦笑する程度の反応しか示さなかった。実際、彼女の胃はまったく痛まなかった。これもいつも通りの彼女なら、あり得ないことだった。

 

 これらのことから、理央はいつも通りではないことがわかるだろう。

 実は今日の朝から彼女は奇妙な予感を覚え、そのことで頭がいっぱいになっているのだ。そのため、いつものように局員(信仰者)たちに胃を痛めたり、ピクミンたちと遊んだりすることをせず、まっすぐ自宅に帰っているのだ。

 

 理央がそのことに気づいたのは、帰り道もあと半分といったところまでバイクを走らせていた時だった。理央は、今日の彼女自身の行動を自分らしくないと感じながらも、胃を痛めることも、地上本部に戻ってピクミンと遊ぼうと考え直すこともせず、ただただ自宅に向かってバイクを走らせていた。

 

 

 

 その予感は、まさに奇妙なものだった。いいことの前兆のようにも感じるし、逆に悪いこと、いや、正確に言うなら、あまりいいものと言えないような、過去に起こったことがこれから発覚するという感覚を覚えるものだった。

 しかしなによりも、その予感は理央にこう告げているような気がした。

 

 

 

 

 

 ――これから起こることには、覚悟が必要だと。

 

 

 

 

 

(……前に一度だけ、こういう予感がしたことがあったわね)

 

 理央は以前にも、同じような感覚を覚えたことがあった。といっても、それはある意味()()理央の話ではない。彼女がピクミンの指導者として生まれ変わる前、つまり()()()理央に似たようなことがあったのだ。

 

 確かに、それはある幸せの始まりを告げるものであったし、同時に知らないうちに築かれていた彼女の罪があらわになることを知らせるものでもあった。なにより、予感したものは並大抵でない覚悟をする必要があることであった。

 その予感はまさしく、今回の予感と同じもののように理央には感じられたのであった。

 

 しかし彼女は、いま予感しているものと前に予感したものは、おそらく違うものだろうと考えていた。

 確かに、感覚はとてもよく似ている、思わず()()()のことを鮮明に思い出してしまうほどに。だが、いま自分が生きている世界は、前世で自分が生きていた世界とは全くの別物なのだ。

 今世で生を受けた時から住んでいた世界は、前世に住んでいた世界と名前こそ同じ「地球」だが、前世の自分を知っている人間はおろか前世の自分が知っている人間も誰一人としていなかったのだ。ましてや、前世の自分が影も形もないというのに……。

 

 そこまで考えて、理央はネガティブになりかけた思考を元に戻し、自嘲気味に笑った。

 

(死んだときこそ後のことはみんなに任せれば大丈夫だと思い、転生すると聞いた時にも前世に未練はないと思ったのに、今になって昔に戻りたいなんてね……)

 

 過去に戻ることはできない。そして、前世で生きた世界に行くことはできない。それこそ、理央がこの予感はそのときのものとは違うものだと決定づける根拠であった。

 これ以上この予感について考え込んでも気分が落ち込むばかりでしょうがないと思った理央は、地上本部に戻ってピクミンと楽しい遊びをして忘れようと思い、どこかUターンができる場所を探し始めようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――その瞬間、彼女は()が使われた感覚を、確かに感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッッッ!!??」

 

 理央は驚きのあまりバイクを横転しそうになったが、かろうじて持ちこたえた。しかし彼女の頭の中は、あり得ないことに対する驚愕と、その原因を追究しようとする思考で埋め尽くされていた。

 その時の理央は、彼女らしくないことだが冷静さが失われて、ピクミン以外の一つのことで頭がいっぱいになっていた。

 

 しかし、それも無理はないことだろう。その使われた()とは、転生させた女神が彼女に与えた特典の中ではまさしく彼女の奥の手と呼ぶにふさわしいもの、女神の手によって肉体を構成された理央だからこそ使うのを許された力なのだ。

 自分にしか使えないはずの、奥の手の中の奥の手であるとっておきが使われたのだ、冷静でいろというほうが無理があるだろう。

 

「! こっちね!」

 

 激しく動揺してしまった理央だが、すぐにその()が使われた場所を、おおざっぱだが独自の感覚で把握し、そこに向かってバイクを走らせた。

 

 

 

 

 

 理央がそこにたどり着いたとき、その場所にはトラックが、ボディが大破した状態で横転していた。

 横転しているトラックを見つけた理央は、すぐにバイクから降りてキャブのほうに向かい、運転手の安全を確認した。

 

 運転手は気絶していたが、幸いにも目立った外傷は見られず、キャブのほうも全く破損していなかったので、比較的安全かつ容易に救助することができた。

 運転手をトラックの外に運び出し、安全なところに寝かせた理央は、すぐに付近の陸士部隊のほうに通報した。

 

『はい、こちら陸士58部隊です』

 

「こちら地上本部の青葉理央一等陸佐です。

 クラナガン東部のB-27地区の地下道路でトラックの横転事故が発生。現在確認できるけが人は、トラックの運転手が一名、軽傷です。

 至急捜査員と救急車の手配をお願いします」

 

『は、はい! わかりました!』

 

 通報を終えた理央は、付近の状況をもう少しよく調べてみることにした。

 トラックの周りには、積み荷と思われる缶詰や飲料ボトルなどの食料品が散らばっていたが、トラックが横転した原因ではないと理央は直感していた。

 

(……どう考えても、()()が原因なのよね……)

 

 理央がここに来る原因となった()()()の行使、それがこの事故を引き起こしたんだと理央は予測していた。ならば、近くにその力を使った誰かがまだいるのかもしれない。理央はそう考え、周囲を警戒しながら探索した。

 

 すると、来たときにはトラックの陰になって見えなかったが、トラックの向こう側を調べるために回り込もうと移動し始めたときに、理央の視界にとあるものがチラッと映った。

 

「……生体ポッド?」

 

 そう、そこには生体ポッドの、ちょうど台座の部分が落ちていることに気づいた。しかもその生体ポッドは、公で使われている治療用ポッドの類ではなく、人造魔導師や戦闘機人の製造・保存用に使われている違法な代物であった。

 理央は、前に戦闘機人事件を独自に追っているゲンヤやクイントから同じものの写真を見せてもらったことがあるため、すぐにその事実に気づき、警戒心を強くした。するとその時、理央はあることに気づいた。

 

 その台座の部分から、ちょうどいま理央がいる場所からはトラックの陰になって見えないところに向かって、保存液と思われる液体が伸びているのだ。

 つまりそれは、生体ポッドの()()があったのなら、そちらのほうにあることを示していた。

 

 ――念のため、()()を使う覚悟もしておいたほうがいいわね。

 

 理央は、この生体ポッドとその中身もトラックの積み荷の一つであり、そして、この生体ポッドの中に入っていたのは人造魔導師、あるいは戦闘機人の可能性が高いと思った。それが、自分にしか使えないはずの力をどうやってか使用し、トラックを横転させたのだと彼女は当たりをつけた。

 場合によっては、どこからかこの奥の手の情報が洩れるリスクも考慮したうえで対処しなければならない。そう考えた理央は、いつでもその力を使えるように気を引き締め、その力を使ったであろう()()がいるトラックの裏側へ飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、理央の思考は停止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー同日 時空管理局遺失物管理部 機動六課隊舎ー

 

「はい! せいれーつ!」

 

 なのはの掛け声とともに、彼女のもとに機動六課の新人フォワード陣が集まっていった。スバルやティアナはともかく、まだ体が発達途中のエリオやキャロも、息を切らしながらもすぐにやってきた。

 

 なのは主導の訓練が開始されてから二週間、本出動もなかったため、新人たちは訓練漬けの日々を送っていた。

 この二週間、新人たちは主に基礎体力を鍛える訓練を受けており、そのためまだ10歳という年齢のエリオとキャロにもそれなりの体力がついてきているのだ。

 

「じゃあ、本日の早朝訓練、ラスト一本。みんな、まだ頑張れる?」

 

「「「「はい!」」」」

 

 なのはからの問い掛けに、元気よく答えるフォワードメンバーたち。

 

「じゃあ、シュートリベーションをやるよ。レイジングハート」

 

『All right,Accel Shooter』

 

 なのはの足元にミッドチルダ式の桃色の魔法陣が展開され、同じくピンク色をした誘導弾がいくつも出現していく。そして、それぞれの誘導弾はなのはを守るかのように、彼女を中心として高速で回り始めた。

 

「私の攻撃を5分間、被弾なしで回避しきるか、私にクリーンヒットを入れればクリア。

 誰か一人でも被弾したら、最初からやり直しだよ。頑張っていこう!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 つまり、相手は魔力の量にリミッターをかけていて、かつこちらは四人(と一匹)がかりとはいえ、彼らは管理局でも名高いエースオブエースに一撃でも攻撃を当てなければいけないのだ。

 

「このボロボロ状態で、なのはさんの攻撃を5分間さばき切る自信ある!?」

 

「ない!」

 

「同じくです!」

 

 ティアナからの問い掛けに、スバルとエリオが答えた。

 

「じゃあ、なんとか1発入れよう!」

 

「はい!」

 

「よーし! 行くよエリオ!」

 

「はい、スバルさん!」

 

 彼らの方針が決まったところで、まずフロントアタッカーであるスバルとガードウイングのエリオが攻撃態勢をとる。

 

「準備はオッケーだね。それじゃあ……」

 

 なのはは手をゆっくりと振り上げ、それにともなって誘導弾も動きを変える。

 

「レディー……ゴー!!」

 

 そしてなのはが手を振り下ろすと同時に、スバルたちに魔力弾が襲いかかる。

 

「全員、絶対回避! 2分以内で決めるわよ!」

 

「「「おー!!」」」

 

 ティアナの指示に三人が答えた次の瞬間、魔力弾が彼らのいた地面にぶつかり炸裂した。しかし、四人とフリードは寸前で回避しており、魔力弾に当たった者はいなかった。

 

 土煙が立ち込める中をなのはは観察していたが、彼女の後ろにウイングロードが展開されたのに気づき、すぐに後ろを振り返る。

 

「うおおおおおーーーー!!」

 

 なのはが振り返った先では、スバルが拳を構えながらウイングロードの上でローラーを走らせ、雄たけびを上げてなのはに向かって突進してきていた。

 一方、その近くの廃ビルの窓からは、ティアナが射撃魔法でなのはを狙っていた。

 

「アクセル!」

 

『Snap Shot』

 

 それを確認したなのはは、アクセルシューターを操作し、二人に向けてそれぞれ一つずつ誘導弾を発射した。桃色の魔力弾は、一直線にスバルにティアナに襲い掛かっていく。

 

 しかし、誘導弾は二人を貫通し、二人の姿はオレンジ色の光を少し残して消え去ってしまった。

 

「シルエット……やるね、ティアナ」

 

 なのはが感心したようにつぶやく。

 そう、なのはに攻撃を仕掛けようとした二人の姿は、ティアナが幻術魔法【フェイク・シルエット】で作り上げた幻だったのだ。

 

 なのはがティアナを称賛する一言をつぶやいた次の瞬間、彼女のすぐ隣でウイングロードが展開される。そのことに気づいたなのはがすぐ上を見上げると、ティアナの幻術魔法【オプティックハイド】によって今まで姿を隠していた本物のスバルが、ウイングロードの上を走りながら拳を構えて攻撃を仕掛けようと突進してきていた。

 

「でりゃあああああああ!!」

 

 なのははすぐに防御魔法【ラウンドシールド】でシールドを張り、スバルの攻撃を防いだ。

 スバルはシールドを何とか破ろうとするが、なのはが張ったシールドはなかなか破ることができなかった。その数秒間のあいだに、なのはは先ほど幻影を貫通したアクセルシューターを操作し、その誘導弾でスバルに向けて攻撃を再開した。

 

 自分に向かってくる誘導弾の存在に気がついたスバルは、ローラーを後ろに向けて回転させ、後ろに飛びのくことでなんとかぎりぎりのタイミングで誘導弾を回避した。

 

「うん、いい反応」

 

 なのははスバルがしっかりと回避できたことに、満足そうにうなづいた。後ろに下がったスバルはウイングロードに着地するが……

 

「わっ、とと……」

 

 着地した瞬間にバランスを崩し、ウイングロードに乗りながらもその勢いのまま下に滑り落ちていってしまった。

 

「うわああああああああ!」

 

 どうやら、バランスを崩したことだけではなく、ローラーブーツの調子が悪いのもスバルが滑り落ちた原因のようだ。

 

「わっ、とと、と、と、つぅ……」

 

 なんとか体勢を取り直したスバルは、ウイングロードの上を走りながら、自分を追ってくる誘導弾から逃げていた。

 

「《スバルバカッ! 危ないでしょう!》」

 

「うっ、ごめん……」

 

 怒りのあまり、思わず念話だけではなく肉声でもスバルを叱責するティアナ。それに対してスバルは誘導弾から逃げながらティアナに謝った。

 

《待ってなさい、今撃ち落とすから》

 

 ティアナは自分の拳銃用デバイスを構え、オレンジ色の魔力弾を精製し、スバルを追っている誘導弾に狙いを定めた。そして引き金を引き、魔力弾を発射しようとした。

 

 

ガスン!

 

 

「うえっ!?」

 

 だが、ティアナのデバイスの調子も悪かったのか、不発に終わってしまった。

 

「あーーーん! ティア援護ーーー!!」

 

 いまだに誘導弾に追いかけられ続けるスバルが悲鳴を上げる。このままだと魔力弾はスバルに直撃してしまうだろう。

 

「このっ、肝心な時に!」

 

 ティアナは急いでデバイスから空になったカートリッジを排出させ、新しいカートリッジをセットしなおす。そして魔力弾を作り直し、スバルを追っている誘導弾に向けて3発放った。

 

「来たっ!」

 

 それを確認したスバルは跳び上がった。すると、ティアナの魔力弾に追いかけられているなのはの誘導弾はスバルを追うのをあきらめ、下に逸れた。

 役目を果たしたティアナの誘導弾は、彼女のコントロールを外れてなのはの魔力弾が向かったのと同じ方向にとんでいった。

 

 スバルの様子を観察するなのはの後ろでは、キャロがグローブ型のブーストデバイス「ケリュケイオン」の助けを得ながら、エリオに加速の効果を与える補助魔法をかけていた。

 

「我が乞うは、疾風の翼。若き槍騎士に、駆け抜ける力を」

 

『Boost Up Acceleration』

 

 キャロの詠唱により発動したその魔法は、エリオの槍型のアームドデバイス「ストラーダ」に対し発動し、より素早い攻撃を繰り出すことが可能な状態へとさせた。

 

 そしてキャロの補助魔法が発動したすぐ後、エリオの足元に浮かんでいたベルカ式の魔法陣がより強く輝き、ストラーダの噴射口からは黄色の魔力が激しく噴き出し始めた。

 

「あの、かなり加速がついちゃうから、気を付けて」

 

「大丈夫! スピードだけが取り柄だから」

 

 キャロが心配そうな様子でエリオに注意を促す言葉をかけるが、エリオは励ますようにその言葉に答えた。

 

「いくよ、ストラーダ!」

 

 その時、なのははティアナの誘導弾を華麗な様子でかわしていたが……

 

「キュクルー!!」

 

 真上からのフリードの口から吐き出される火炎弾【ブラストフレア】による攻撃に気づいた。2,3発放たれたそれらをかわした後、なのはは攻撃態勢を整えたエリオを攻撃するため、彼の方に向かって移動を始めた。

 

「エリオ! 今!」

 

 ティアナからエリオに指示が飛ぶ。キャロから速度上昇の魔法をかけてもらい、最高の速度で攻撃を放てる今こそなのはに一撃与える最大のチャンスだった。

 

「いっけええぇぇぇぇぇ!!」

 

『Speerangriff』

 

 エリオは槍を後ろに引き、かけ声を上げて魔法を発動させた。その直後、ストラーダはロケットのジェット噴射のように魔力を噴射させ、エリオはその勢いのままなのはに向かって突撃していった。

 

 その新人たちによる息の合ったコンビネーションを見て、なのはは少しほほ笑んだ。

 その直後、エリオとなのはは激突した。土煙が激しく舞い上がり、二人の姿を覆い隠した。

 

「うわあっ!」

 

 先に土煙の中から姿を現したのはエリオだった。後ろに吹き飛ばされたエリオだったが、廃ビルの上に着地することができた。

 

「エリオ!!」

 

「外した!?」

 

 スバルはエリオのことを気遣い彼に声をかけ、ティアナは今のエリオの攻撃が外れたと思い、驚きの声を上げた。

 

 そして、土煙が収まり、空中に浮くなのはの姿が確認できるようになった。一見すると、彼女は無傷のように見えた。

 

『Mission Complete』

 

「お見事! ミッションコンプリート」

 

 しかし、レイジングハートとなのはのその一言が、エリオたちが彼女に一撃与えられたという事実を示してくれていた。

 

「ホントですか!?」

 

 ダメージを受けていないように見えるなのはの姿を見ながら、エリオがなのはに確認をとろうとする。

 なのはは自分のバリアジャケットの左胸のあたりについた焦げ跡を指し示しながら、彼らが一撃与えることができたことを再度伝える。

 

「ほら、ちゃんとバリアを抜いて、ジャケットまで通ったよ」

 

 なのはの言葉を聞き、エリオとキャロの二人は顔をほころばせる。

 

「じゃあ、今朝はここまで。いったん集合しよ」

 

「「「「はい!」」」」

 

 こうして、新人たちの今朝の訓練は終了した。

 なのはは地面に下り、バリアジャケットを解除し、六課の制服姿に戻った。そしてなのはは集合した新人たちに歩み寄りながら声をかけた。

 

「さて、みんなもチーム戦にだいぶ慣れてきたね。」

 

「「「「ありがとうございます!」」」」

 

「ティアナの指揮も筋が通ってきたよ。指揮官訓練、受けてみる?」

 

「い、いやあの……戦闘訓練だけで、いっぱいいっぱいです」

 

 なのはからのさらなる訓練のお誘いに、ティアナは謙遜した様子で(内心、「これ以上ハードな訓練は御免だわ」と思いながら)断った。そんなティアナの様子がおかしくて、スバルはつい笑ってしまった。

 

「キュル? キュクル?」

 

「え? フリードどうしたの?」

 

 そんななか、フリードが突然なにかを気にし始めたのように鳴き声を上げながら首をかしげた。そんなフリードの様子にキャロも気が付いた。

 

「なんか、焦げ臭いような……」

 

 フリードの次にエリオが異変に気づき始めた。エリオの言葉から、ティアナがその異変の原因に心当たりがつき、スバルに声をかけた。

 

「あっ……! スバル、あんたのローラー……」

 

「えっ?」

 

 そしてスバルたちが視線をスバルのローラーブーツに向けると、右足のローラーが黒煙を上げながらショートを起こしていたのだ。

 

「あっ! うわっ、やばっ……! あちゃー……」

 

 スバルは、壊れてしまった右足のローラーを外しはじめた。その様子をなのはは黙って見つめていた。

 

「しまったー……。無茶させちゃったー……」

 

 いまだに黒煙を上げている右足のローラーは、スバルに抱きかかえられた。

 

「オーバーヒートかなー? あとでメンテスタッフに見てもらおう?」

 

「はい……」

 

「ティアナのアンカーガンも結構厳しい?」

 

「はい……だましだましです……」

 

 なのはからの質問に答えるティアナ。実際、訓練校時代から使われ続けている二人のデバイスは、メンテナイスを定期的におこなっているとはいえ、本格的なデバイスマイスターではない二人の整備ではあまりうまくいかず、寿命が近かったのだ。

 

「みんな、訓練にも慣れてきたし、そろそろ実戦用の新デバイスに切り替えかなー」

 

「新……?」

 

「デバイス……?」

 

 なのはの口から出てきた言葉に、新人メンバーたちはキョトンとしてしまうのであった。

 

 

 

 

 

 訓練が終わった後、なのはと新人たちは話をしながら隊舎に戻っていた。

 

「じゃあ、いったん寮でシャワー使って、着替えてロビーに集まろうか」

 

「「「「はい!」」」」

 

 なのはに元気よく返事をした新人たちであったが、ティアナは向こうから自分たちのほうに向かってくる車に気がつく。

 

「あれ? あの車って……?」

 

 そしてその車はなのはたちのすぐ近くで停まり、窓が開いて運転席と助手席に座った人たちの姿が見えるようになった。

 

「フェイトさん! 八神部隊長!」

 

 キャロからの言葉に、フェイトとはやてはうなずいて返した。フェイトたちが乗っている車に驚く新人たち。

 

「すごーい! これフェイト隊長の車だったんですかー!?」

 

「そうだよ、地上での移動手段なんだ」

 

 スバルが驚きの声を上げ、フェイトがそれに答えた。

 

「みんな、演習のほうはどないや?」

 

「あー……えへへ」

 

「頑張ってます」

 

 はやてからの問い掛けに、スバルはあいまいな返事を返し、ティアナはしっかりと答えた。

 

「エリオ、キャロ……ごめんね、私は二人の隊長なのにあんまり見てあげられなくて」

 

「あ、いえそんな……」

 

「大丈夫です」

 

 フェイトは申し訳なさそうにエリオとキャロに謝るが、二人は特に気にしていないという旨の返事で言葉を返した。 

 

「四人ともいい感じで慣れてきてるよ。いつ出動があっても大丈夫」

 

「そーかぁ。それはたのもしいなぁ」

 

 部隊長であるはやてからの「たのもしい」という一言に恥ずかしそうに笑う新人たち。

 

「二人は、どこかにお出かけ?」

 

「うん、ちょっと6番ポートまで」

 

「教会本部でカリムと会談や。夕方には戻るよ」

 

 なのはからの問いかけに答えるフェイトとはやて。どうやらはやては後見人の一人との会談のために出かけるようだ。

 

「私は昼前には戻るから、お昼はみんなで一緒に食べようか」

 

「「「「はい!」」」」

 

「ほんならな~!」

 

 はやての言葉とともに走り去っていく車を、新人たちは敬礼のポーズをとりながら見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーミッドチルダ北部 ベルカ自治領「聖王教会」大聖堂ー

 

 聖王教会とは、管理局と同じく、危険なロストロギアの調査と保守を目的としている宗教団体である。

 

 かつてベルカを統一し、数々の偉業を成し遂げた古代ベルカの王の一人である『聖王』やその血縁者、彼らに仕えた騎士たちなどを信仰の対象としている聖王教会は、宗教団体の中では次元世界で最大の規模を誇っている。

 また、統一によって戦乱時代にあったベルカに平和をもたらした聖王の意思を尊重している彼らは、人々に危険をもたらす可能性のあるロストロギアを回収することで今の平和を守っていこうとしているのだ。

 

 そのため、目的を同じくする管理局との関係は比較的良好で、聖王教会の依頼を管理局が受けたり、管理局の任務に各世界の聖王教会が協力するといったことも珍しくないのである。また、カリム・グラシアのように管理局に籍を置く騎士も少なくはない。

 

 特に八神はやては、ミッド式や近代ベルカ式の魔法が繁栄している現在では希少な古代ベルカ式の魔法を所持しているため、カリムとの私的な関係はもちろん、技術協力などの公的な関係においても聖王教会とは非常に友好的な関係を築いていた。はやてはそういう意味では、管理局内では聖王教会の助けを一番得ることができる人物だと言えるだろう。

 

 その聖王教会の、ミッドチルダ北部にある大聖堂にて、聖王教会の理事であり教会騎士団の騎士でもあるカリム・グラシアは自室で書類仕事をしていた。といっても、理央のような電子媒体ではなく手書きで書類を作成しており、羽ペンで優雅に仕事をこなしていた。そこに、彼女の秘書であるシャッハからの通信が入る。

 

『騎士カリム、騎士はやてがいらっしゃいました』

 

「あら、早かったのね。私の部屋に来てもらってちょうだい」

 

『はい』

 

「それから、お茶を二つ。ファーストリーフのいいところを、ミルクと砂糖付きでね」

 

『かしこまりました』

 

 シャッハの一礼とともに、映像付きの通信は切られた。

 カリムは羽ペンをペンスタンドに戻し、書類を机のわきに寄せて来客を迎える支度を整える。

 

「よしっと」

 

 その直後、カリムの部屋のドアがノックされた。どうぞ、とカリムは入室を促してから席を立つ。

 部屋のドアが教会に所属している壮年の男性によって開かれ、はやては案内役であった彼に軽く会釈してからかぶっていた頭巾を外しながら部屋に入った。ちなみにはやては今、六課の制服の上にベルカ伝統の外出用の頭巾と上着を着ている。

 

「カリム、久しぶりや」

 

「はやて、いらっしゃい」

 

 久しぶりに妹分に会えたカリムは、笑顔ではやてを出迎えた。

 

 

 

 

 

 二人の挨拶から少しして、カリムの部屋の窓際のテーブルの上にはティーセットとクッキーが並べられ、はやてとカリムはお茶を楽しみながら話をしていた。

 

「ごめんなー、すっかりご無沙汰してもうて」

 

「気にしないで。部隊のほうは順調みたいね」

 

「えへへ、カリムのおかげや」

 

「うふふ、そういうことにしとくと、いろいろお願いもしやすいかな」

 

「あはは。なんや、今日の会って話すんは、お願い方面か?」

 

 しばらくのあいだ談笑していた二人だったが、そこまで話してカリムは表情を少し曇らせ、電子パネルを出してそこにあるボタンをいくつかタッチした。

 すると、近くの窓のカーテンが自動的に閉まり、二人のそばにいくつかの電子画面が出現した。その中には、カプセル型の機械――ガジェットⅠ型やナイトホークのような形状をした機械、さらには丸い形状の機械などが映し出されたものもあった。

 

「これ、ガジェット……? 新型?」

 

「今までのⅠ型以外に、新しいのが二種類。戦闘性能はまだ不明だけど、これ」

 

 そう言うとカリムは丸いガジェットが映し出された画面を手前に寄せ、詳しい情報を表示させた。

 

「Ⅲ型は、わりと大型ね」

 

 画面に映し出されたⅢ型は、成人男性よりも大きかった。

 

「本局にはまだ正式報告はしてないわ。監査役のクロノ提督にはさわりだけお伝えしたんだけど……」

 

「……これは!」

 

 はやての目線は、頑丈そうな箱が映し出された画面に注がれた。

 

「それが、今日の本題。一昨日付でミッドチルダに運び込まれた不審貨物……」

 

「レリック……やね」

 

 そう、この画面に映し出された箱は、超高エネルギー結晶体であるロストロギア、『レリック』を運ぶためのものなのである。

 このレリックは、外部から大きな魔力を受けると周辺を巻き込む大災害を起こすほどの爆発を起こす恐れがあるため、このような頑丈な箱で厳重に持ち運びをしないといけないのだ。

 

「その可能性が高いわ。Ⅱ型とⅢ型が発見されたのも、昨日からだし……」

 

「ガジェットたちが、レリックを見つけるまでの予想時間は?」

 

「調査では、早ければ今日明日」

 

「せやけど、おかしいな……。レリックが出てくるのが、ちょう早いような……」

 

「だから、会って話したかったの。これをどう判断すべきか、どう動くべきか……。

 レリック事件も、その後に起こるはずの事件も、対処を失敗するわけには、いかないもの……」

 

 顔をうつむかせるカリムを見て、はやては電子パネルをタッチしてカーテンを開けた。それに気づいたカリムは少し怪訝そうな表情を浮かべてはやてのほうを見た。

 

「はやて?」

 

「まあ、何があってもきっと大丈夫。カリムが力を貸してくれたおかげで、部隊はもういつでも動かせる。

 即戦力の隊長たちはもちろん、新人フォワードたちも実践可能。予想外の緊急事態にも、ちゃんと対応できる下地ができてる。そやから、大丈夫!」

 

 はやては困惑するカリムを安心させるように言った。自分たちの夢が集まった新部隊なら、どんな状況でも乗り越えることができると信じて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー機動六課隊舎ー

 

 シャワーを浴びた後、ロビーに集まった新人フォワードたちはなのはに連れられ、デバイスの整備をおこなう部屋に連れてこられた。そして今はちょうど、リインフォースツヴァイと機動六課の通信主任兼メカニックデザイナーのシャリオ・フィニーノ一等陸士から新デバイスに関する説明を聞かされていたところであった。

 

「うわぁ……! これが……!」

 

「あたしたちの、新デバイス……ですか?」

 

 スバルの前にはネックレスになっている青いクリスタル型の、ティアナの前にはカード型のデバイスが待機状態で宙に浮いていた。

 

「そうでーす! 設計主任、あたし! 協力、なのはさん、フェイトさん、レイジングハートさんとリイン曹長!」

 

「……はあ……」

 

 シャリオことシャーリーの説明を聞いていても、新デバイスがもらえるということに実感を持てず、ティアナはちゃんとした返事ができなかった。

 一方、エリオとキャロの前には、腕時計型の待機状態になっているストラーダと、宝玉に羽がついたようなアクセサリー型になって待機しているケリュケイオンが浮いていた。

 

「ストラーダとケリュケイオンは変化なしかな……?」

 

「うん……そうなのかな……?」

 

「違いまーす! 変化なしは外見だけですよ」

 

「リインさん!」

 

「はいですー!」

 

 エリオとキャロが話し合っていたところに、上からリインが飛んできた。二人の目線はリインの方に向き、そのままリインは話を続ける。

 

「二人はちゃんとしたデバイスの使用経験がなかったですから、感触に慣れてもらうために基礎フレームと最低限の機能だけで渡してたです」

 

「あ……あれで最低限!?」

 

「ホントに……?」

 

 二人が驚くのも無理はない。その最低限とされる今までの状態ですら、魔法の威力や効果を十二分に引き出して使うことができたのだから。

 

「みんなが扱うことになる四機は、六課の前線メンバーとメカニックスタッフが技術と経験の粋を集めて完成させた最新型! 部隊の目的に合わせて、そして、エリオやキャロ、スバルにティア、個性に合わせて作られた、文句なしに最高の機体です」

 

 リインが使った浮遊魔法によって、四つのデバイスが浮き上がり、リインのもとに集まっていく。

 

「この子たちはみんな、まだ生まれたばかりですが、いろんな人の思いや願いが込められて、いっぱい時間をかけてやっと完成したです」 

 

 そして四つのデバイスはリインから離れ、それぞれの所有者のもとに飛んでいった。

 

「ただの道具や武器と思わないで、大切に、だけど性能の限界まで思いっきり全開で使ってあげてほしいですー!」

 

「うん。この子たちもね、きっとそれを望んでるから」

 

 シャーリーからの一言があったところで、整備室の自動ドアが開き、なのはが入ってきた。

 

「ごめんごめん、お待たせ―」

 

「なのはさん!」

 

 なのはがやってきたのを見ると、リインが嬉しそうになのはのもとに飛んでいく。

 

「ナイスタイミングです。ちょうどこれから、機能説明をしようかと……」

 

「そう、もうすぐに使える状態なんだよね?」

 

「はい!」

 

 リインがなのはからの問いかけに答えると、モニターに待機状態になっている4つのデバイスが映しだされた。

 そして、シャーリーがデバイスの機能に関する説明を始めた。

 

「まず、その子たちみんな、何段階かに分けて出力リミッターをかけてるのね。

 一番最初の段階だと、そんなにびっくりするほどのパワーが出るわけじゃないから、まずはそれで扱いを覚えていってね」

 

「で、各自が今の出力を扱いきれるようになったら、私やフェイト隊長、リインやシャーリーの判断で解除していくから」

 

「ちょうど、一緒にレベルアップしていくような感じですね」

 

「あ……出力リミッターっていうと、なのはさんたちにもかかってますよね?」

 

 出力リミッターに関する説明を聞き、なのはたちにもそれがかけられていることを思い出したティアナがなのはに確認をとる。

 

「ああ……私たちはデバイスだけじゃなくて、本人にもだけどね」

 

「ええ!?」

 

「リミッターがですか?」

 

 なのはの言葉を聞き、スバルとエリオが驚きの声をあげた。ティアナとキャロも、驚いた表情をしている。

 

「能力限定って言ってね、うちの隊長と副隊長はみんなだよ。私とフェイト隊長、シグナム副隊長とヴィータ副隊長……」

 

「はやてちゃんもですね」

 

 彼女に続けて答えたリインの言葉に、なのはは頷いた。ティアナを除いた新人たちは、なのはたちの言ったことの意味がよく分からず、首をかしげている。

 

「え~っと……」

 

「ん~?」

 

「ほら、部隊ごとに保有できる魔導師ランクの総計規模って決まってるじゃない」

 

「あ! あはは……そうですね……」

 

 シャーリーの言葉で、エリオとキャロ、スバルはようやく理解することができた。

 

「一つの部隊でたくさんの優秀な魔導師を保有したい場合は、そこにうまく収まるよう、魔力の出力リミッターをかけるですよ。

 ……正直、これのおかげで厄介者が入ってこれなくなって助かりました」

 

「え? リイン曹長、なにか言いましたか?」

 

「いえ、何でもないですよー」

 

「まあ、裏技っちゃあ裏技なんだけどね」

 

 リインがシャーリーに続けてリミッターと保有ランクに関する説明をした。ボソッと最後に呟いた言葉に、若干の黒い気持ちが入っているのはリイン本人しか知らない。

 リインの後でシャーリーが、リミッターはある意味、一つの部隊に多くの優秀な魔導師を集めるための裏技だと説明した。

 

「うちの場合だと、はやて部隊長が4ランクダウンで、隊長隊はだいたい2ランクダウンかな」

 

「4つ!? 八神部隊長って、SSランクのはずだから……」

 

「Aランクまで落としてるんですか?」

 

「はやてちゃんもいろいろ苦労してるですぅ……」

 

「なのはさんは……?」

 

 SSランクのはやてが、自分たちとランクが一つしか違わないくらいにまでランクを落としていることにティアナとエリオは驚いた。

 スバルは、なのはのランクがどこまで下がっているか気になって、彼女に質問した。

 

「私はもともとS+だったから、2.5ランクダウンでAA。だからもうすぐ、みんなの相手をするのはつらくなってくるかなー」

 

「隊長さんたちははやてちゃんの、はやてちゃんは直接の上司であるカリムさんか、部隊の監査役、クロノ提督の許可がないとリミッター解除はできないですし、許可は滅多なことでは出せないそうです……」

 

「そうだったんですね……」

 

 なのはが質問に答えた後で、リインが心底残念そうに言った。エリオとキャロもリインの言葉を聞き、しょんぼりした表情になった。

 

「まあ、隊長たちの話は心の片隅くらいでいいよ。今はみんなのデバイスのこと」

 

「はい」「はい」

 

 なのはの言葉に、ティアナとエリオが順に返事をした。

 

「新型も、みんなの訓練データを基準に調整してるから、いきなり使っても違和感はないと思うんだけどね」

 

「午後の訓練の時にでもテストして、微調整しようか」

 

「遠隔調整もできますから、手間はほとんどかからないと思いますよ」

 

「はあ~……。べんりだよねぇ、最近は」

 

「便利です♪」

 

 なのはが呆れた風に言うのも無理はない。彼女が局に勤め始めたころは、いちいち調整用の容器に入れなければ微調整もできなかったのだ。時代の変化を感じざるを得なかった。

 

「あ、スバルの方はリボルバーナックルとのシンクロ機能も、うまく設定できてるからね」

 

「ホントですか!?」

 

「持ち運びが楽になるように、収納と瞬間装着の機能も付けておいたよ」

 

「うわぁ~♪ ありがとうございます!」

 

 スバルは、リボルバーナックルの持ち運びが楽になるようにしてくれたシャーリーにお礼を言った。

 スバルはお礼を言った後、とあることを思い出し、そのことをなのはに聞いてみることにした。

 

「あの、なのはさん……実は聞いてみたいことがあったんですけどいいですか?」

 

「うん? どうしたの?」

 

「以前の部隊ではよく見かけたんですけど、ここの部隊に来てからピクミンを一匹も見かけてないんですけど、なんでなんですか?」

 

「あー……。うちは本局所属だからね……。ピクミンは地上本部の戦力だから、借りられなかったんだ……。

 それに、うちの部隊にはピクミンを指揮できる魔導師もいないしね……」

 

「そうだったんですか……」

 

《バカスバル! それくらい最初に気づきなさいよ!》

 

《ひどいよティア~!》

 

 なのはは少し苦々しい表情になってスバルの質問に答えた。PT事件や闇の書事件で、理央が指揮するピクミンのすごさを目の当たりにしてきたなのはだからこそ、今回機動六課がピクミンという戦力を貸してもらえなかったことをとても残念に思っていたのだ。

 ちなみに、ピクミンは魔導師ではないため、保有できる総計規模とかは基本的にはないものとされている。

 ティアナは少し抜けている自分の相棒を念話で叱責した。

 

「あの、リイン曹長」

 

「キャロ? どうしたですか~?」

 

「スバルさんとなのはさんのお話に出てくる『ぴくみん』って何ですか?」

 

 キャロの質問に、その場にいた全員が驚いて彼女のほうを見てしまった。しかし、それはしょうがないことだろう。

 エリオは訓練校に見学に行ったときにミッドにいるピクミンのことを聞いているし、スバルやティアナは訓練校時代によくピクミンのことを学んだ上に、前の陸士386部隊では災害担当部にいたので、赤ピクミンや青ピクミンと一緒に行動することはよくあったのだ。

 シャーリーだって訓練校にいた時からピクミンのことをよく知っているし、なのはやリインに至ってはピクミンがミッドに広まる原因となった人物のことまでよく知っているのだ。だからこそ、ピクミンのことを知っているのは彼女たちにとっては常識だったのだ。

 

 しかし、キャロはつい最近まで別世界である「スプールス」の自然保護隊に所属していて、それ以前にもミッドに来たことはなかったのだ。彼女がピクミンのことを知らないのは当然のことだろう。

 一番初めに立ち直ったティアナがキャロに聞いてみることにした。

 

「えーと……。キャロ、もしかしてピクミンのこと知らない?」

 

「あ、はい……。生き物、なんですよね?」

 

「うーん……ほら、ここにはいないけど、ミッドチルダの所々で人間みたいな体をした生き物がいたでしょ? あれがピクミン」

 

「ああ! あの子たち、ピクミンっていうんですね! 

 なんだか仲良しで、強そうな子たちだな~って思ってたんですけど」

 

 ――強そう? あれが? いや、確かに集まると強いけど。

 

 その場にいるキャロ以外の全員の思いが一致した瞬間であった。

 確かに、ピクミンの見た目は強いとは程遠いイメージがある。しかし、自然保護区で数多くの野生動物を見てきたキャロだからこそ見ただけでわかったのだ。ピクミンの一匹一匹が持つ強さはもちろん、集団でこそ発揮されるピクミンの驚異的な潜在能力を、キャロは見た瞬間に直感したのだ。

 

 次に口を開いたのは、一応集団ならではのピクミンの強さを知っているなのはだった。

 

「まあ……確かにピクミンは集まると強いよね……。

 特に理央ちゃんが指揮すると、とんでもなく強くなるしね」

 

 なのはの言葉を聞き、ティアナの体がピシッ!と固まってしまった。ほかのみんなは、そんなティアナの様子を疑問に思ったが、ギギギギ…とティアナは首をまわしてなのはのほうを向いた。

 

「アノ……ナノハサン……?」

 

「ど、どうしたの、ティアナ……?」

 

「ソノ『リオチャン』ッテ……モシカシテアオバイットウリクサノコトデスカ……?」

 

「そ、そうだけど……それがどうしたの?」

 

 なのはの言葉を聞いたティアナは跳びあがり、そして空中にいたまま土下座のポーズをとりそのまま着地した。いわゆるジャンピング土下座だ。

 

「お願いします!! ぜひアオバ一等陸佐に私のことを紹介してください!!」

 

「「「「「え?」」」」」

 

 ティアナのいきなりすぎる行動に、ほぼ全員がポカーンとしてしまった。ただ一人、スバルだけはティアナの行動に苦笑いしていた。

 なのははティアナの尋常じゃない様子に激しく動揺しながらも、なんとか口を開いた。

 

「ど、どうしたのティアナ!? いきなり土下座なんてして!?」

 

「お願いします!! お願いします!! お願いします!!」

 

「ねえティアナ!! お願いだから私の話を聞いて!!」

 

「あー……なのはさん、たぶん今のティアには聞こえていないと思いますよ」

 

 なのはがスバルの声を聞き彼女の方を向くと、スバルが少し呆れた様子を含んだ顔を浮かべていた。

 

「ス、スバル……。いったいティアナはどうしちゃったの……?」

 

「実は……昔、ティアのお兄さんが任務中に理央さんに命を救ってもらったことがあって、その時からティアにとって理央さんはお兄さんと同じあこがれの人らしいんです……。

 たぶん、一度でも会ってみたいっていう気持ちが強いから、こんなにも必死に……」

 

「お願いします!! お願いします!! お願いします!!」

 

 にしてもちょっと必死すぎるんじゃないだろうか。なのはは冷や汗を浮かべながらティアナの必死すぎる土下座を見てそう思った。

 下手に会わせたら理央の胃に多大なダメージを与えることになるだろう。できるだけ理央の胃を痛めないように、ティアナの態度を改めさせてから会わせようと、なのはは心に決めた。

 

「……って、あれ? 理央さん? スバル、理央ちゃんのことを親しそうに呼ぶんだね?」

 

「え? ああ、実はあたしの母さん、昔は地上本部勤務で理央さんと交流があったんですよ。今でも時々、理央さんはあたしの家に来ることがあって――」

 

 スバルが言い終わらないうちに、ティアナの全力の右ストレートがスバルの顔に入った。スバルは「ギャフン!」と言いながら床に倒れ、ティアナは横になったスバルに馬乗りになって猛ラッシュを彼女の顔面にたたきこんだ。

 

「げふっ! ティ、ティア、がふっ! や、やmごふっ!」

 

「あんたはっ!! どうしていつもいつも大事なことを言っとかないのよ!! 

 もしあんたがそのことをちゃんとあたしに言っとけば、もっと早くにアオバ一佐に会えたかもしれないのにっ!!」

 

「あ、そうだった」

 

「この大バカアホタンチンスバルがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「きゃああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

「ティ、ティアナやめてーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はやてを目的地まで送り届けたフェイトは、車を走らせて機動六課に帰っていた。今は高速道路を走っており、はやての留守中に部隊を任されているグリフィスと通信越しに話していた。

 

「うん、はやてはもう、向こうについてるころだと思うよ」

 

『はい、お疲れ様です』

 

「私はこの後、港湾地区の捜査部に寄って行こうと思うんだけど、そっちはなにか急ぎの用事とかあるかな?」

 

『いえ、こちらは大丈夫です。副隊長お二人は交替部隊と一緒に出動中ですが、なのはさんが隊舎にいらっしゃいますので』

 

「そう……」

 

 そろそろ道路から降りるため、フェイトは車を道路の右側に寄せた。その時、車のフロントガラスに『Alert』と表示された画面が映しだされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、機動六課の隊舎のほうでも異変が起こっていた。なのはたちがいる部屋では、ありとあらゆるモニターに『Alert』と表示され、けたたましい警報が鳴り響いていた。

 さすがの緊急事態に、ティアナもスバルを殴るのをやめていた。

 

「このアラートって……!」

 

「1級警戒態勢……!?」

 

「グリフィス君!」

 

 なのはは通信越しにグリフィスに呼びかけた。

 

『はい! 教会本部から出動要請です!』

 

『なのは隊長! フェイト隊長! グリフィス君! こちらはやて!』

 

 なのはとフェイト、それとグリフィスのもとに、はやてからの通信が開かれた。フェイトは即座に、はやてに現在の状況について質問をした。

 

『状況は?』

 

『教会騎士団の調査部で追ってた、レリックらしきものが見つかった! 場所はエイリの山岳丘陵地区! 対象は、山岳リニアレールで移動中!』

 

『移動中って……!?』

 

『まさか……!?』

 

 はやての言葉に、フェイトとなのはは悪い予感がした。そしてその予感は、残念なことにあたりだった。

 

『そのまさかや……。内部に侵入したガジェットのせいで、車両の制御が奪われてる。

 リニアレール車内のガジェットは、最低でも30体。大型や飛行型の、未確認タイプも出てるかもしれへん。いきなりハードな初出動や。なのはちゃん、フェイトちゃん、行けるか?』

 

『私はいつでも』

 

「私も」

 

 急な出動要請にも関わらず、すぐに行けるとなのはとフェイトは答えた。優秀なSランク魔導師である二人は、こういう緊急事態に直面したことも少なくはないのだ。

 

『スバル! ティアナ! エリオ! キャロ! みんなもオッケーか!?』

 

「「「「はい!!」」」」

 

 新人たち四人も、はやてにしっかりとした声で返事をした。

 

『よーし! いいお返事や! 

 シフトはAの3、グリフィス君は隊舎での指揮、リインは現場管制!』

 

『はい!』

 

「はい!」

 

『なのはちゃん、フェイトちゃんは現場指揮!』

 

「うん!」

 

『ほんなら……』

 

 

 

 

 

 ――機動六課フォワード部隊、出動っ!!

 

 

 

 

 

「「「「「「「はい!!」」」」」」」

 

 新デバイスを受け取ったばかりの新人フォワード陣を待ち受けていたのは、機動六課での初出動だった。はたして彼らは、無事に任務を達成することができるのか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 理央が見たものは、たった一人の少女だった。

 地面に倒れている少女の周囲には、生体ポッドの一部だったと思われるガラスの破片が散乱していた。おそらく、事故が起きたときに割れたのだろう。

 

 少女は何も身にまとっておらず、全身のいたるところが保存液と思われる液体に濡れていた。このことから、この子がさっき理央が危惧していた人造魔導師、あるいは戦闘機人である可能性があることがわかる。

 少女の身長は大体5、6歳児くらいの高さで、理央の位置からは彼女の横顔がよく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だからこそ、理央の思考は停止したままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その横顔があまりにも―――に似ていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ありえない……」

 

 結局、理央の口から出てきたのは、否定の言葉だけだった。

 

 理央の口からその言葉が出てきた直後、少女は身じろぎをした。それを見た理央はハッと気づき、急いで彼女のもとに駆け寄り、やさしく抱き起こし、呼びかけた。

 

「しっかり! もう大丈夫だから! 目を開けて!」

 

 いつもの理央らしからぬ、冷静さを激しく欠いた呼びかけだった。しかし、その少女は理央の呼びかけによって目を覚ました。

 まぶたが開けられてあらわになった彼女の()()()()()()()()を見て、理央はようやく落ち着きを取り戻した。

 

「だ…れ……?」

 

「……ごめんね、起こしちゃって。でも、ちょっとだけ聞きたいことがあったの。お名前、なんていうの?」

 

 理央は、少女に軽い回復魔法をかけながら問いかけた。

 内心、名前があってほしいと願っていた。この子が、ちゃんとした生まれの子であってほしいと理央は願っていた。しかし……

 

「……わ……から……ない……」

 

 少女は、名前を答えられなかった。

 

「……そう……。ごめんね、後はゆっくり寝ててね。無理やり起こしちゃって、ホントにごめんね」

 

「う…ん……。ありがとう……」

 

 そう言って、少女はまぶたを閉じ、再び眠りについた。理央は少女の体を見て、()()()()()()()()ことを確認してから、この少女が()()()を使ったと確信し、傷がないことを確かめたので回復魔法をかけるのをやめた。

 

 この子が名前を答えられなかったのは、単に幼いからだったのかもしれない。しかし、この少女が()()()()()使()()()()()()()力を使ったことから、その可能性はほとんどないと理央は気づいていた。

 

 理央は少女の見た目と抱き起こしたときの重さから、少女が機械のパーツが使われた戦闘機人ではないと推測した。とすると、人造魔導師である可能性が一番高い。それも、おそらくプロジェクトFの技術で作られた……

 

(……この子の名前がわかれば、なんて……自分にとって都合のいい期待だったわね……)

 

 理央はそう思いながら、抱いている少女の顔をどこか悲しげな表情で見つめた。そして彼女は、今日の朝から続いていた予感は正しかったのだと実感した。

 

 

 

 

 

 その()()()()の少女の顔は、()()()()()()()であった……。




 これにて今回のお話の本編はこれでおしまいです。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 この少女……一体誰の○○○○なんだ……!? はい、おわかりですね。あえて言いませんが、もう皆さまお分かりですね。伏字の部分もなんて書いてあるかご存知ですよね。彼女が出番が多くなる予定のオリキャラです。
 彼女が今後、物語にどう関わっていくのかはもう決めてあります。重要人物です。転生者(笑)とは扱いがまるで違います。この少女がこれからどんなふうに物語にかかわってくるのご想像しながら、活躍にご期待ください。

 はい、ティアナさんも理央を尊敬する局員の一人です。でも、あんなでも常識はちゃんとあるので会わせても大丈夫……なはずです。
 そしてピクミンの強さを一瞬で看破したキャロ、野生動物あふれる自然の中で育ったからこそわかるんです、はい。

 理央の()に関しては、後々の話で出てくる予定なのでご心配なく。
 ……え? にしてはフラグっぽい文が多すぎる? な、何のことですかなー(;´・ω・)

 最後に恒例のおまけをいくつか書いておきましたので、よかったらご覧ください。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。





おまけ① 何かが違う訓練

「私の攻撃を5分間、被弾なしで回避しきるか、私にクリーンヒットを入れればクリア。
 誰か一人でも被弾すれば、最初からやり直しだよ。頑張っていこう!」

「ほぉー、じゃあ俺の突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)で一撃で決めてもいいわけなんだな」(槍)

「待ってください、ラン…エリオ! これはチーム戦! 協力して彼女を倒さなければなりません!」(拳)

(起源弾……被弾者の魔力は暴走し、自らの肉体を瞬時に死滅させる…)カチャカチャ(銃)

「あなたのような人物と戦えることを光栄に思います。いざ、推して参る!」(竜)

「えっ、ちょっ」

 



 この後めちゃくちゃにされた。



おまけ② 全然凡人じゃないティアナさん

「シルエット……やるね、ティアナ」

「うおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 スバルがなのはに向かって突進してきた。なのはは彼女をアクセルシューターで攻撃するが……

フッ

「またシルエット!?」

「「「「「うおおぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」

「今度は5人も!?」

 スバルのシルエットがどんどん出てきて、それを魔力弾で撃ち落とし続けるなのは。しかし、スバルのシルエットはなくなるどころかどんどん増えていく。

「くっ! 一体どうなってるの!? ティアナの魔力量だと、これだけ出すことは不可能のはず……」

『気づいてなかったんですか?』

「!? ティアナ!? 一体どこから!?」

『あなたは私の幻術にかかったんですよ……。私の最高の幻術、【月詠】にね……』

 嘘です。というかこんなティアナ無理です。



おまけ③ 普通ならこうなる

 そろそろ道路から降りるため、フェイトは車を道路の右側に寄せた。その時、車のフロントガラスに『Alert』と表示された画面が映しだされた。

「えっ、ちょっ、ま、前が見えな、キャアアアアアアアアアアアア!!」

ドカアァァァァァァァァン!!












 普通に事故った。



おまけ④ ティアナランドシェイク(If)
※お食事中の方はご遠慮ください。

 ティアナは、スバルの衝撃的発言(?)を聞いてからスバルにラッシュしていたが、突然スバルの襟元をつかみ思いっきりゆさぶり始めた。

「このこのこのこのぉーーーー!!」

「あばばばばばばばばばばばば!!」

「ティ、ティアナ…もうそのへんに……」

「うっ……」

「ス、スバル……?」

「? なによ、言っとくけどまだ許したわけじゃ…」

 そこまで言って、ティアナは言葉を止めてしまった。なぜなら、顔を青くしたスバルの口からネジがはみ出しているのに気づいてしまったからだ。

「ス、スバル……あんたまさか……」

「う、お、おv(ピーーーーーー・・・・・・・・・)





 この後、二人にこの部屋の後片付けが命じられたのは言うまでもない。
※一応言っておきますと、出たのは機械の部品という設定です。



お☆し☆ま☆い

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