〜グランドライン・楽園・サイレントヒル〜
「いや〜おもしれェ喧嘩だった。よっし、次はおれ達の番だぜェ?」
カイドウが満面の笑みを浮かべ俺に向き直る。
戦闘狂め……今の今まで途中からギン達の戦いを観戦するまで殴り合ってたからな。この俺相手に正面から戦えるなんて……この間の全盛期白ひげ以来だな。
「よそ見してんじゃねェ! このヤロー!!」
カイドウが俺の前髪を引っつかみ、額辺りに拳を叩きつけてきやがった……つー……ナックルパートってやつか。
つか急にでかい声出すな。……ったく、こいつ……ニュートラルから急にテンションMAXになるとは……まるでF1カーだな。
「んじゃ、ちょっと本気出すか。」
覇気を7割ほど解放。この時点でギンや豪鬼達と同レベルだ。
「うおっ!? すげェな〜」
マフィアが着る様なスーツを脱ぎ捨て上半身裸、下半身は黒パンツ一丁になったカイドウが素直に感心してる。まさに闘う男の体つきだな。ある意味うらやましいわ。
……しっかし、さっきからどうにも何考えてるのか掴めねぇな……ま、とにかく訳分からん事される前にさっさと片付けるだけだ。
「おぉっと! スキあり!」
!? うわっと……危ねぇ……一瞬カイドウの動きが読めなかった?
「お嬢様!」
!? うっ!?
カイドウがバックから俺の左足に自らの左足でフックしてきて、俺の左腕を自らの左腕で巻き込み、更に俺の体をねじり上げる。くっ……払いのけようにも足のフックが強すぎる……これは、プロレスのコブラツイストか?
「パワーはすげェが……間合いの取り方がお粗末すぎらァ……そんなんじゃ俺とプロレスなんて出来やしねェぜ! シャイッ!」
「うるせぇ! つか裸で抱き着くな! 汗が気持ち悪ぃ!」
「ダーッ!!!」
聞けよ! 人の話!
ク……ロックは完璧……どうす……右腕が空いてるか!
「ウォータージェット!」
「うぉっ!?」
当たりはしなかったが一瞬怯ませ、脱出に成功。このスキに……ぐぅ!?
「だから甘ェって……」
首に奴の腕が……なんて流れる様な体移動……こ、これは頸動脈が締め……
「チョークスリーパー……おれが使う場合は魔性のスリーパーって言われてるがなァ……これで巨人族や海王類を締め殺した事もあるのさ。」
腕のサイズ的に無理だろ! ってツッコミたいがそんな余裕はない。
「ぐ……」
締めてる腕を外す様試みるが、固い!
「バックを取ったからなァ〜簡単には外させねェぜ!」
く……意識が…………朦朧としながらもなんとか両腕で俺の首を極めてる奴の左腕を掴み……
パンッ!
何かが弾ける音がした。
「ぐぉっ!? おでれーたなァ……伝説の力技『握撃』が見られるとは……」
カイドウの右腕の真ん中辺りの皮膚が裂け、しかも中の血管もことごとく破裂してる。漫画でもグロかったがいざ現実に見てみると比較にならんな。つかちょっと漏らしてもうた。危ねぇあぶねぇ。
「しかもやられたのがおれとは……つくづく人間辞めてるパワーしてんなァ〜」
うるせぇよ。まぁこっちも花山さん式脱出法が成功するとは思わなんだけどな。
「さぁ〜てと……段々盛り上がってきたなァ〜」
こっちはごめんだよ。中距離、もしくは遠距離からで攻めないと奴のペースに巻き込まれる。それ程奴は敵を捕まえるのが異常に上手い。ここは間合いを詰められる前に一気に大ダメージを与える!
「アクアセイバー!」
「うおっ! すげぇ水圧だなオイ!」
6000加圧だ。これなら武装色の覇気ですら容易く貫通できる。
「死にさらせ! 伸びよアクアセイバァー!!」
10m以上伸びた超水圧の刃がカイドウを両断した。斬った感触もそうだが気配、何より真っ二つになった体からは血と臓物が溢れ出てる。間違いなく偽物ではな……
ガンッ!!
!? え……? 延髄に……衝撃?
「ぐ……」
めまいを起こし片膝をつく。
「おおう、延髄斬りをまともに喰らって少し怯む程度かよ。やっぱデタラメな堅さだなぁ〜えぇ?」
目の前にいるのはカイドウ……どういう事だ? 現に斬り捨てた死体はまだ残ってる……
「それは後で教えてやるよ……しっかし人間形態じゃキリがねェな〜」
人間形態? まさかこいつ……能力者か?
……と、警戒してたらカイドウの体中がボコボコしだした?
「ぬぅんっ!」
カイドウの右腕が急激に膨張、続けて左腕、両脚も膨張……いや、巨大化していく。
「ぐぅおおおっ!」
変貌は止まらず胴体、頭も巨大化。この姿は……巨人化か!?
「ぬぇぇぇいぃ!!」
と、思ったら今度は全身が四足獣みたいな姿に変化してきた。この姿はこの前の腹黒牧師のやまたのおろちよりを彷彿とさせるがあれよりはるかにでかい。全高30m近く、全長50m以上はあるな。
……ん? 奴の肩辺り全体がうねうね動いてるが……
「ぶるあああああっ!!」
どこぞのCV若本みたいな叫び声を上げた次の瞬間、うねうねしてた肩全体から何やら飛び出した。……山羊、獅子……他にも数十個の動物の頭部らしき物、尻尾は蛇が……これは……?
「フゥゥ……これがおれのゾオン……実験種・キメラだ……」
キメラぁ!? キメラってアレか? ドラクエとかのモンスターの……いや、それより実験種……?
「今から40年前……おれが海賊になる30年前だが、おれは海軍にいてね……」
こいつ……元海軍かよ……意外だな。
「つってもケンカしか取り柄のねェ絵に描いた猪武者でねェ……要は見捨てられて、ドクターベガパンクに悪魔の実の実験種であるキメラを食わされたのさ。」
ベガパンク!? ちょっと待て40年前って……何歳だあいつ! 声の質も相当若かった。若作りとかそういったレベルじゃない程の若さがあった。声だけで判断しても肉体年齢は20……高くても30前後なのは間違いない。クローンらしいアミバがそうだったからな。
「ベガパンクか……お前は奴の事をどれだけ知ってる?」
「? いやァ……昔ならいざ知らず、現在のヤツに関しちゃ世間に知れ渡ってる程度の情報しか知らねェよ。」
ベガパンク……色んな奴に影響与えてんな……要注意だな。
「んでまァ……悪魔の実の力で脱走してその10年後……今から20年ぐれぇ前だが海軍潰したくなってマリンフォードに乗り込んで大暴れしたのさ。ちょうど脱獄してたシキのおっさんとつるんでな。」
シキ? ……あぁ劇場版のボスか。2年の修業前ルフィに負ける程度だからどーでもいいか。
「シキのおっさんもなァ……最盛期に比べるとずいぶん弱くなっちまって……で、おれが強くなって海兵時代何度もボコられた仕返しをしようと思ったらあの衰えっぷりだ。ロジャーといい白ひげのジジイといいどうにも最盛期の奴らとケンカ出来なかったのが心残りだった。」
一旦言葉を区切るカイドウだが……体の中央の獅子がすげぇなんとも言えない哀愁漂う笑みを浮かべてるな……ひょっとしてアレが中心……弱点か?
「そこに現れたのがお前だ……修羅以上の強さを持つお前はこのおれを楽しませるために現れたんだよ!」
今度は山羊がものすんごいニカッとした笑みを浮かべる。……『どれが』じゃなく『どれも』本物か? もしくは弱点は顔じゃない……こりゃ弱点を狙うってのは無理そうだ……
つか何勝手にライバル宣言してんだよこの暑苦しいおっさんは……
「フン……四皇に認められるとは光栄だな〜なんだったら今すぐぶっ倒してやろうか?」
こういうのはあんまり粘着されても困る。
「出来るんならこっちから頼みてェなァ〜」
奴の巨体全身から強烈な覇気……これは覇王色の覇気か。
「「「ぐぁっ!?」」」
クロ達はおろか元黒ひげ一味も片膝をつく。シリュウも苦虫を噛み潰した様な表情。平気なのは休憩して呑気に駄弁ってるギンと修羅のみ。まさかシリュウ越えしたのかギン?
「グハハハハッ! 全く堪えねェとは……予想通りだ。じゃあ……いい加減始めるかァ!」
キメラ形態の奴が突っ込んできた。
「!!」
武装色でガードしようかと思ったが予想を遥かに越えるプレッシャーを感じたので回避に変更。図体がでかくなったのでスピードは大きく落ちてるからやりやすいくらいだ。
止まらない奴はサイレントヒル島の自然をどんどん破壊していく。皆は巻き込まれない様必死で逃げ続けてる。……まるでゴジラが暴れたみたいだ。大きさ的にもひけを取ってないしな。くそ……本拠地周りをめちゃくちゃにしやがって……
「おぉっと〜やっぱ早ェな〜じゃあこれはどうだァ!?」
奴の全ての頭が動き出した……? ……と次の瞬間一斉に咆哮を挙げる頭部。
「!?」
な、からだが……しびれてる……? なにがおき……
「聴いた者を麻痺に陥らせる咆哮だ。言ってなかったがキメラにはマンドラゴラの細胞も入っててなァ……」
引き抜いた者に絶叫を浴びせショック死させる空想上の植物だっけか……くそ、なんでもありかこいつは……とにかくすぐに麻痺状態を治療せんと……
体内で麻痺を治す水を作り出し全身に循環させると痺れが消えてきた。
「! ほぅ……器用な真似すんじゃねェか。小細工は無駄って事か。」
「だな。さっさとどっちが上か正面からケリつけようぜ。」
全身に気を張り巡らす。
「! いよいよゾオンかァ! 伝説のリヴァイアサン! グハハハハッこいつァ楽しみだぜェ?」
この前のではでかすぎて小回りが利かないな。通常の50mサイズに留まる。
「グハハハハッ! なんて覇気だァ……実際に見るととんでもねェバケモンだぜェ〜」
「うるせぇな! くらえ!」
いちいちこいつのテンションに付き合ってたらキリがないな。
とにかく先制として尻尾でキメラ形態のカイドウをはたくが……堅いな。
「いくらなんでも手ェ抜きすぎだろォ〜……くらいやがれ!」
数十頭の頭に噛み付かれる……調子乗りやがって!
「!? ぬ、抜けねぇだと!?」
牙が俺の体に食い込んだまま身動きが取れないカイドウ。
「隙あり!」
全身を反らし大ジャンプする。もちろんカイドウを巻き込んだままだ。
数百mは上昇しカイドウの体を下にし……地面に墜落する。
「ぐっへっ……!」
血ヘドを吐くカイドウ。更に何本かの頭がチギレ飛んだ。これは結構大ダメージだろ。
「…………」
無言で立ち上がるカイドウ。……さっきまでの荒々しい闘気が消え去ってる。
「いや〜なかなかのバックドロップだった。ほれぼれする程綺麗な放物線を描いてたなァ〜全く……今すぐスカウトしたいぐらいだぜェ……」
いらんいらん。しっかしなんだこの余裕……首が何本か飛んで重傷に見えるが平然としてる……つかグロいよ!
「? あァこれか? たいしたことないから気にすんな…………よっと!」
何やら気張ると首がちぎれた辺りの肩がモゴモゴしてい……えぇ!?
ボゴン!
肩からまた頭が生えた……まさか、再生するとはな……て事はさっきセイバーでぶった斬ったのもてんで堪えてないって事か……
「このおれの体を再生不能にするにゃあ、ちっとばかり火力が足りねェなァ〜」
チッ……いくらなんでもタフすぎるな……さて、どうする? 手段はいくらか思いついたがその内の一つは逃げと同様だしな。…………それに、せっかくの四皇戦だ。逝けるトコロまでイクか!
「! なんだ……良〜いツラも出来るんじゃねェか……さっきまでの余裕のない虚勢じみたのとは違うのがよォ〜」
? 何言ってんだいきなり……
「こうなりゃおれも結構本気で行くぜェ?」
キメラ形態のカイドウの体全体が鈍い光に包まれる。あれは武装色か……あんな風になるとは、さっすが武装色の覇気のレベルが段違いだな。
「手加減したらアンタの負けだよ!」
「ちげぇねェ!!」
俺とカイドウの巨体が激突。サイズ的には俺の方が少しでかいがカイドウのは密度が濃いというか……とにかくものすごい当たりだ。俺は数十m、カイドウは数百mほどふっ飛ぶ。
飛ぶ先を計算しないとアジトであるこの島が廃墟になっちまうな……
「けっ……ガタイの強さは……お前さんの方がずいぶん上の様だ。久しぶりに嬉しくなってきやがった……」
カイドウが人間の姿に戻った。そのまま俺に背を向ける。
「が、今回は終ぇだ。おれもお前さんも互いに精進が足りねェなァ…………ホレ、修羅行くぞ。」
「あーおもしろかった〜すっごいケンカだったね〜修羅ももっと強くなるぞ〜」
ギンとのんびりトークしてた修羅が立ち上がる。……この二人ある意味リア充に見えるが……つっても修羅は外見10歳ちょいにしか見えないし中身がアレだもんな……
「おれが見た所シリュウ、ギン以外は弱ェな。」
「次はテメェとヤリてぇなぁ〜」
「フン……暑苦しいのは勘弁だな……」
ギンとシリュウは余裕があるな。
「グハハハ! 活きが良くて嬉しいぜ! とりあえず1年ぐらいやるよ。そんぐらいやってうちのモンと良い勝負が出来なけりゃ生きてても仕方ねぇだろうし……このおれが引導を渡してやるよ。」
……悪魔の実を食ったばかりのクロを始め、まだ皆弱いな。こりゃ本腰入れるか……そろそろルッチ辺りは十殺元を叩きこんでみるか。
そして悠々とカイドウとは違うらしい旗がたなびく海賊船に乗り込み船員をしばいてる様子のカイドウ。……どうやら通りすがりの弱小海賊を締めて足にしたな。
……で。目の前には……ギン。
「ん〜? なんだぁシオリィ……」
俺を呼び捨てにするギン。それにクリークが仰天する。
「!? お、おいギンお前一体どうしちまったんだよ……」
ギンの放つ覇気にビビりながらも健気に話し掛けるクリーク。
「クスクスクス……アニキ……どうしたもこうしたもねぇよ……」
ニタァと挑発的な笑みを俺に向ける。修羅とやったばかりなのにようやるわ。
「俺は誰の指示も命令も聞かねぇ。好きにやらせてもらうぜぇ〜?」
「しかし……一体何の実を食ったのだ? 姿が変わってない所を見ると……ゾオンではないだと?」
ルッチも奴の正体が掴めないか。
「いや、能力者じゃねぇだろ。泳いでたしよ。」
アーロンの意見はもっともだ。しかし……
「いや、ゾオンさ。さしずめ……ヒトヒトの実・幻獣種・鬼(オーガ)って所か? なぁ範馬勇次郎?」
「「「誰!?」」」
皆の声が重なる。そりゃ知らんわなぁ。
「地上最強の生物と恐れられた男……だ。」
「クックックックッ……まさか知ってるヤツがいるたぁな……ビックリだぜ。」
! やっぱ予想が当たったか?
「もっとも俺は本物じゃねぇがな。いわゆるクローンってヤツよ。」
クローン? どこのグランドマスターの仕業だよか? ……まぁ流石に本物はないよな。しかし……どういう原理でこんな事になってんだ?
「ギンは……どうなった?」
「……俺はギンであり、勇次郎コピーでもある。つまり、お前の様な憑依ではなく……融合!」
俺の様な憑依……? 何の事なんだ?
しかし……いくら勇次郎でも四皇幹部と互角なんて……せいぜい原作クリーク、アーロンレベルだろ。どーなってんだ?
「そりゃこの世界のせいだなぁ〜 ありとあらゆる所で空気中に細胞を刺激する物質が漂ってる。もっとも体を鍛えて馴染ませなきゃ元の世界の一般人となんら変わらねぇがな。」
!? 細胞を刺激する物質ぅ?
「お前の特訓から逃げず地道に精進を重ねたからこそ細胞が超進化した。この俺を扱える領域にまでな!」
……無駄ではなかったんか。そりゃ良かった。
「勇次……いや、ギン。お前はこれからどうする?」
「安心しろ。抜けはしないぜ。なにせここにいりゃ飽きを感じる事はなさそうだしなぁ〜お前を狙ってくる輩……いや、なによりお前自身だな。」
そりゃ、超一級の賞金首だしなぁ俺……
ま、それはともかくまずはエネル達楽園組が帰ってくるの待つか……
仲間順調に集まってるといいけど……まぁ電伝虫で聞いた限りじゃ順調でエネルの部下の四神官(ゲダツ以外)や四式使いの猫男も見つかったらしいし……楽しみだな。