〜グランドライン・楽園・サイレントヒル島〜
魚人島で何日か滞在した後、しばらく留守にしていたアジトに帰還。
シリュウやアミバの報告を聞くが例の『俺の客』以外には他愛のない小競り合いはあったものの大きな事件はなかったらしい。ついでにウルージさん達を紹介する。
「カイドウ一味と遭遇しちまうとはなァ……アマクサァ以外惨敗したろ?」
「うっ!」
皆が言葉に詰まる。まぁ図星だからな。そもそも単純に生物としてのレベルが違いすぎる。
「シリュウ達は会った事あんのか?」
「昔……な。つっても会う度面子が変わってたから今もおれの知ってる奴がいるかは知らねぇがな。……大雑把に言や11人はおれと同等かそれ以下だ。勝てない訳はねぇ。」
そりゃシリュウレベルが10人以上いたらウザいしな。
「だが……『修羅』。あいつァヤバすぎる。お前や四皇以外で奴に勝てる奴が思い浮かばねェ。」
かなり本気出した俺と良い勝負だったしな。けど……今なら多分……
「そしてカイドウだ。『喧嘩番長』、『百獣』と言った異名を持つ男。だがそんな異名を通り越した単純かつ圧倒的な称号を持ってやがる。」
称号……? 異名とどう違うんだよ。
「『地上最強の生物』。『ある事件』を起こして以来世界中の人間からそう呼ばれる様になったんだよ。」
地上最強の生物だぁ?どこのオーガさんだよ。
「20年前単身マリンフォードに乗り込み壊滅させたからな。怪我人も万単位で出た。若かったおれもボルサリーノらもボコボコにされちまったよ。」
マジか。まるでロジャーや白髭みたいだな。
「人間形態でもとんでもねぇんだが……それよりはるかにヤバいのがゾオン形態だ。」
!能力者かよ。しかもゾオン…………で、詳細を聞くが……話が本当ならとんでもないな。ま、これは世界政府の自業自得だな。制御出来るシロモノじゃなかったって事か
他にも色々積もる話をし……
「しっかし、ワノ国ね〜なんでまたそんな所から名指しで来たのやら……」
シリュウらから『俺の客』の話を聞く。
……原作でもまだ明らかになってないんだよな。色々情報まとめると日本……戦国時代〜江戸時代っぽい国らしいが。
「おれもそいつらから話聞くまでは忘れちまってたが……アマクサァ……」
な、なんだよ怖い顔して……
「奴らの話がマジだったらの話だが……お前さん……ワノ国の超VIPらしいじゃねぇか。」
超VIP!? んな事言われてもなー
『ざわざわ……ざわざわ……』
クロ達が何やら騒がしい。やはり……とかあの女の言った話は本当なのか……とか、一体何の事だ?
「VIPって……どういう事だ?」
「その前に……奴らはワノ国のイヌガミ……いや、犬神バサラ、天草四郎と名乗ってたぜ。」
シリュウが報告するが…………!!? 天草四郎!? 俺の本名じゃねぇか! 一体どういう…………ん? まさか……いや、単に同じ名字だろ……
「天草の方はお前さんの弟だと言ってたな。」
!? いや、いきなり弟って言われてもな……
「おれぁ専門家じゃねぇから正確には言えんが……天草家ってのはワノ国の王族とも言える『将軍家』を守護する組織のトップらしいぜ。」
将軍家〜? まるで幕府みたいだな……
「だが現在天草家は頭領が行方不明で弟が暫定的にトップについてる。そいつの名が……」
天草四郎か……けど。
「そいつ……本当に俺の弟か?」
こいつらがそいつの言う事をあっさり信じるとは思えんが……
「髪型と服装は違うがなにせそいつはお前に瓜二つだったからな。顔をいじった形跡もないし間違いなく素顔だろうよ。それに……闘気の質も似ていた。」
外見も気も瓜二つか……つーか闘気の質を見極めるなんて見聞色をとことん鍛えんと無理なんだが……流石ベテランだ。
「しかし、いくら俺の関係者かもしれないとはいえ、余所の奴らを通すなんて気前がいいなお前ら。」
海軍や他の海賊なんかはパシフィスタとかに阻まれて上陸すら出来ねぇってのに。
「もちろん迎撃はしましたよ。……ただ我輩でも気付くのがかなり遅れました。あのお二方は相当な手練でしたね。」
千里眼じみた眼を持つオーガーでも遅れを取ったのかよ!?
「シリュウ、お前から見ても強いのか?」
「二人共小僧だが相当場数踏んでんな。単独でパシフィスタを倒せる力を持ってやがる。映像伝電虫で拝見させてもらったが弟(仮)は剣術、銀髪は身体能力が図抜けてやがった。多分ゾオンだな。」
銀髪……確かバサラとか言う奴か。……熱気バサラ? いや、銀髪だからちゃうか。
……しかしタイマンでパシフィスタ落とせるか……現時点のルフィより相当上だな。
「奴らはここまでやって来て戦いになりそうだったんだけどよ……銀髪の奴が話し合いを持ち掛けてきやがったんだ。」
バージェスが報告する。こいつドンドン体がデカくなってきたな。ただあんまりあご髭は似合わんが。
……あ、そういや。
「そいつらどこ行ったんだ? もうこの島にそいつらの気配感じねぇが……」
「ワノ国に帰ったよ。一ヶ月後にまた来るとか言ってたが……で、コレだ。」
シリュウが見るからに立派な雰囲気を醸し出す鞘に入った刀を取り出した。……すげぇな刀がオーラ放ってやがる。
「刀……業物か。」
「業物ぉ? 馬鹿言っちゃいけねぇ。こりゃあ刀の頂点である最上大業物の内の一振りだぜ。」
最上大業物っつーと確か……ミホークの刀『黒刀・夜』だっけか? あと確かシリュウも……
「あぁ、おれのも最上大業物の『村雨』だ。」
シリュウの刀からはなんつーか禍々しいというか……物騒な気配が漂ってる。血の匂いもするし。
「これはなんてんだ?」
「あいつらの言葉を信じりゃ最上大業物の『月下美人』。まぁ名前が違ってたとしても最上には違いないんだがな。」
まぁ刀を見る目はありそうだし、そうなんだろう。
「俺が受け取ったとして……どうすりゃいいのよ。俺は剣術は素人だし、そもそもアクアセイバーで充分なんだぞ?」
「おれに言われても知らねぇよ。常に悪魔の実の力が使えるとは限らねぇし予備として持ってたらどうだ?」
う〜〜ん……刀ねぇ……そういやいつの間にか安物の刀持ってていつの間にか無くしてたな。どういう事なのやら……
「あんま使う事ないだろうし……イラネ。シリュウが使ったら?」
「……刀は、大業物までならともかく最上になると……持ち主を選ぶんだよ。持って分かったがその刀はおれとは合わねぇな。そもそも二刀流にするつもりもねぇし。」
「う〜ん、いつまでも村雨が使えるとも限らんし万が一を考えたら?」
「最上は作りが作りなだけに絶対に破壊、劣化しねぇよ。それに無くしても独りでに戻ってくる。」
何そのダイの剣。い、いやどっちかと言うと呪いのアイテムだな。装備したらデロデロデロデッデーンっていうSEが鳴りそう。
「分かったわかった。じゃあとりあえず俺が持っとくよ。」
で、受け取る。
…………何だ? この感覚は……無性に刀を抜きたくなる……ちょっと見てみるか。
ズキン!
〜クロside〜
「ほぅ……見事な刀身だな……」
シリュウが褒めているという事は相当な逸品なのだろうな。しかしワノ国か…………むっ!? なんだこの気配は!? これは……お嬢様?
「…………」
抜き身の刀を持ったままうなだれているのだが……
「おい? どうした? ……! お前……何者だァ?」
シリュウも恐ろしいまでの殺気を放った。何者? …………! もしやあの時の!?
「狂姫かっ!?」
「きょうき? ……狂姫か。どういうこった? お前ら……! っとぉ!」
さっきまでシリュウがいた位置を斬撃が疾る。
「お前達は何者です? 『狂姫』の事を知っているとは……それに伐沙羅はこんな時に何処を……いえ、まずは目の前の事に集中しましょうか。」
!? この口調は……狂姫とやらとも違う……一体どういう事だ?
「………………成る程。海賊『傾世のシオリ』とその仲間……ですか。」
!まさか思考を読んだ……? 何と言う見聞色の覇気の技量……
「道草を食うわけにも行きません。……一刻も早く『江戸城』に帰らなければ……」
! そんな! お嬢様に抜けられたらこの海賊団は瓦解する!
「……何の真似です? 『雨の』シリュウ。」
シリュウがお嬢様?に向け刀を突き付けていた。
「いや、なに……今お前さんに抜けられたらつまらなくなっちまうんでなァ……おれ、いや、おれ達を誘った責任は最後まで取ってもらうぜ?」
「面倒な。……まぁ致し方ありませんね。では力ずくで退いてもらうとしましょう。」
両者が覇気を放つ。やはり我々とはレベルが違う出力だ。これでは助太刀すらできない。そして二人が何度か斬り結ぶが……シリュウが優勢に見える。
「なかなか粘るが……どうした? そんなもんじゃないだろうよ……お前さんの実力は。天草家の『サイキック』……見せねぇと死んじまうぜェ?」
「……『死鏡剣』」
「がはァッ!」
いきなりシリュウが血だらけで倒れた!? 一体何が起きた!?
「存外……あっけないものですね。」
「一体何をしたのだ!?」
思わずお嬢様?に尋ねてしまった。
「『死鏡剣』……相手をサイキックで作り出した鏡の中に閉じ込め鏡ごと破壊する技ですよ。と言っても我が一族に伝わる秘技の中の一つに過ぎませんが…………むっ!? これは……」
いつの間にかお嬢様の胴や手足を赤い紐状のものが纏わり付いていた。
「『血縛』……だ。血のオーラで相手を拘束する。成功した所を見るとその姿での覇気はおれ以下って所だな。」
「…………見事です。裏をかかれるとは私も未熟……」
「ふん!」
シリュウが手刀でお嬢様?が握っていた刀をはたき落とした。
「……月下美人はおれが持ってた方が良さそうだな。」
刀を握ると人格が……変わる?
「………………ん? あれ俺は一体……ってうおっ! どうしたんだよシリュウ血まみれじゃねぇか!」
「いや、大した事はねぇ……」
「本当かよ……とにかくエクスポーション飲め。」
「ありがとよ……あぁそうだ。この刀な、お前さんが扱うにゃ難しすぎる。もうちょっと剣術を会得しねぇとな……それまではおれが持っとくぜ。」
「? いいけど……武器レベルが足りないってやつかなぁ……」
「で、これからどうする?」
傷を癒したシリュウがお嬢様に尋ねる。
「皆に提案したんだがこれから楽園や東の海を巡って皆の元部下をかき集めるつもりだ。」
そういえば魚人島でおっしゃられていたな。
…………シャム達元仲間の事はともかく……今の私は力になれているのか?……狂姫。彼女が私に与えたこの悪魔の実……本当に食べても大丈夫なのだろうか…………
〜シオリside〜
「まぁ……頭数は多い方がいいか。だがちっとは鍛えねぇとすぐ死んじまうぜェ? 新世界はよォ……」
でしょうね〜そりゃ新世界で君臨してる面子を見れば分かるしね。つか新世界のそれぞれの島の一般人はどうやって暮らし……あぁ、大半は四皇の支配下にあるって事かな?
ま、とにかく明日から本気出す……じゃなくて、明日から各地を巡らないとな……しかしどういう構成にするか。アジトに数人残すのは当たり前として、残り全員で一塊で行動するのか何チームかに分けるのか……悩む所だな。
で、深夜。数ヶ月前に島の中央に建てた砦を生活拠点にして日々暮らしている。
俺は頭領の部屋として作られた自室で就寝しようとしていたのだが……
「!」
一つの殺気が徐々に俺の部屋に近づいてくる。……のはさして珍しくない。半年前にいつでも襲って来いと言ったのは他ならぬ俺自身だしな。実際カバとかクリークとかはしょっちゅう不意打ちしてくるしな。だが今回来た奴に少々面食らった。
……クロだ。あいつが不意打ちなのは今まで無かった。他にもシリュウ、ルッチ、エネルも不意打ち、夜襲は決して仕掛けてこなかった。
しかし……それは良いとして……殺気が気になった。クロが俺に対して闘気を見せる事はあったが殺気を向けるなんて一度もなかったからな。……割り切れる様になったのかな?
…………と、考え事してる間にも更に近づくクロの気配…………ん? なんか妙な違和感……
そしてついに気配を殺しながら部屋の扉を開け俺に向かってきた。
「死ね! 女!」
俺に向けてやけにゆっくりとしたスピードでクロの『猫の手』が迫ってきた。