ONEPIECE世界を過去キャラと満喫   作:一匹犬

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34話「天と地と(前編)」

〜頂上戦争から20年前、シャボンディ諸島・海軍駐屯所〜

 

 

 

〜セフィス軍曹side〜

 

 

「…………」

 

 

「ど、どうしたんすか?先輩……」

 

ボヘーッとしてたらアフロヘアのイカツイ顔した、後輩のベリーグッドが恐る恐る話し掛けてきた。彼はまだ学校に在席している。ここにいるのは課外授業の一環だ。確か期間は一週間だっけ?

 

「大方、政府による定期検査に辟易してるのだろうよ。」

 

「そんなんじゃないですよ。ストロベリー先……いえ、中尉。」

 

恐ろしく長い髪、いや頭の持ち主のストロベリー中尉がグッドに返した言葉に反論する。

…………まぁ読まれてるわねぇ。けど、なんだってお偉いさんはあんなしつこく……いくら私が超美人で最高級のスタイルをしているとはいえ……

 

「……言葉の意味はよく分からんがとにかくすごい自信だ……」

 

? しゃべってないのに何で私の考えを……そういえば学校の時からそうだったわね。

私達より数段上の人らは何かしら変な力を持ってる……細工してる様に見えないのにすごい攻撃力を発揮したり、紙絵を使ったわけでもないのにこっちの攻撃がカスリもしなかったり……一体どんな事を……

 

「それに関しては経験を重ねれば理解できるさ……嫌でもな。」

 

ちょっと怖いんだけど。まぁ当たり年と言われた先輩の世代の中では比較的温厚だから気が楽だけど。

 

「それにしても先輩達は強ぇな〜 けど悪魔の実さえ見つかりゃおれだってきっと!」

 

なんでかな。あんまり良い未来が見えないんだけど。なんというかハズレを引きそうな……

 

 

そんなこんなで、色々海賊だのなんだのを盗伐しながら一年が経ったある日……

完全な偶然でたまたま私は政府高官とよく海軍学校に来ていた科学者ドクターベガなんとかの会話を聞いてしまった。

 

 

 

私が……神獣種系? しかも実験台? とにかくこのままのこのこと無防備に過ごしていたら彼らの言いなりになってしまうわね。

……そして揺れに揺れていた、私の心が完全に一つの決断をする事になった、運命の出会いをしてしまう。

 

「お前が、セフィスか……ハハハ、こうも容易く巡り会えるとはな。政府は何を考えているのか……」

 

偶然にも先輩達がいない時に駐屯所近くで遭遇した黒いローブを羽織った男……口ぶりからすると私の事を知ってるみたいだけど……

 

顔の左半分に走る奇怪な入れ墨、何者をも震え上がらす鋭い眼光、そして全身から漂う圧倒的強者のオーラ。……あれ? オーラって目に見えたっけ?

 

「……おれの気に当てられ二つの覇気に……しかもそれだけでなく覇王色の覇気にも目覚めるとはな。……その身に宿る『力』の影響が多少あるとはいえ、末恐ろしいな。将来が楽しみだ。」

 

な、何を言ってるの? てかこの兄ちゃん誰?

 

「おれの名はモン……いや、ドラゴン。ただのテロリストだ。」

 

テッテロリストってね! コ、コイツ……

反射的に手持ちの刀を抜くが……

 

「止めておけ……今のお前では無駄な努力だ。おれには勝てんよ。」

 

……コイツに言われるまでもないわね。なにせ全身から脂汗が止まらないもの。こんなプレッシャーは以前サカズキ中佐の戦闘を見て以来かも。

 

「言ってくれるじゃない…………テロリストがこんなトコに何の用?」

 

虚勢を張るけど……無意味でしょうね。

 

「お前にこの世界の真実を伝えに……」

 

構えない……戦意は全くないっての!? とは言えこちらから仕掛ける勇気はとても出ずあちらさんの行動を待つ……と急に語りかけてきた。

 

ドラゴンさんが語る内容は荒唐無稽と言えるシロモノだった。まさかそんな些細な理由でバスターコールを発動したり天竜人に従ったり、あまつさえあんな事があったなんて……

今ハッキリと、自分が信じていた正義の信念が崩れるのを感じた。

 

「……けど、アンタらはどうするつもり? どのくらいの規模の組織か知らないけど、海軍並びに世界政府に敵うって思ってんじゃないでしょうね?」

 

「そこまで傲慢になるほど戦力は整っておらんさ。……ただ、規格外と言える一騎当千の猛者は何人かいるがな。」

 

「…………私の能力の正体、マジなの?」

 

ドラゴンから聞かされたミドガルズオルムの真の力……本当ならゾオン系の常識が吹っ飛ぶわね……まさかミドガルズオルムの正体があれだったなんて……

 

「信じられんのも無理はない……が、それはお前が成長していけば嫌でも実感する事になる。それほど『神獣種系』は異質なのだ。」

 

三つ揃えば世界を変える……か。

 

「さぁ、お前はどうする? 真実を知った上で何を成したい?」

 

………………私は。

 

 

 

 

 

 

 

私はドラゴンの同志になった。革命軍という組織のリーダー……リーダー自体は複数いるとの事。ドラゴンは政府にとって最重要危険人物という事で影武者が何人もいるという話だ。私の前に現れたのは本人らしいけど。そういえば懸賞金は10億ベリーだって…………初めて聞いたわ。そんなぶっ飛んだ金額。

 

その後亡き夫との間に生まれたばかりの愛娘をココヤシ村のベルちゃんに預けた。連れていこうか迷ったけど私のいる所は危ないし、平和な地で同年代の子達……確かノジコちゃんだっけ……彼女らと育った方が良いだろうしね。

そもそも東の海だし近くには海軍の駐屯所もあるし引退したとはいえベルちゃんもけっこう強いから大丈夫でしょう……

 

 

 

だけど数年後ベルちゃんの訃報と村の現状を聞かされた時は後悔した。今すぐ村、そして愛娘を助けに行きたかったけど、日々激動化する革命軍での暮らしがそれを許さなかった。ただ東の海と聞いてドラゴンがなんか反応してたけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜頂上戦争から半年後、白土の島バルティゴ〜

 

 

 

「…………」

 

「セフィス。」

 

アジトの屋上で考え事をしてるといきなり話し掛けられた。話し掛けた人物は……全身を黒い衣装、防具で身を包んだ男。顔も黒い仮面をつけた上に頭全体を覆うターバンを被ってるので肌の露出は仮面の目の部分しかない。名前も『黒博士』といい見事に外見通りの名前だ。もちろん本名じゃないでしょうけど。

初めて会った時は怪しすぎて一周しちゃって逆に怪しめなくなっちゃったわ。本人の証言を信じれば数百だか数千年生きてるらしいけど……正気で言ってんのかしらね?

ただまぁ、彼が扱う能力はどれもぶっ飛んでて人外じみた強さを誇る。この間も海軍大将に狙われたのに平然とやり過ごすし……

 

「セフィスさん〜 博士〜 ドラゴンさんが呼んでますよ〜」

 

私達を呼びに来たのは軽鎧を着込んだ金髪の美青年のアストリア。糸目でイマイチ表情が読めず、おまけにかなりのマイペースで掴み所がない。だが彼は本気の戦闘になると『鬼』に豹変する。もっともそこまで追い込めるのは何人もいないでしょうけど。

 

「ドラゴンが? ひょっとしてテロの決行かしら……今度はどこなのかしらね?」

 

 

 

 

 

「マリージョアだ。全部潰す。」

 

会議室で幹部の皆が集まったのを確認するなり宣言するドラゴン。

 

「ボス! 正気か!?」

 

「怖いのか?」

 

仲間……身長250㎝はある筋肉ムキムキのザンバラ髪の大男が声を挙げるのに返すドラゴン。

 

「逆だよ……早く命令してくれ!」

 

歯ぎしりのしすぎで口から血垂れてるわよウボァーちゃん。

 

「許す。思うがままに暴れろ。」

 

「「「おおおおっ!」」」

 

大男のウボァーやその他の仲間が雄叫びを挙げる。相変わらずこのノリにはついてけないわねー

 

「まぁ、ウボァーさん達は熱血漢ですからね〜」

 

アストリアが相変わらずフラフラしながら呟く。

 

「それだけに良い囮になるだろう。ドラゴンと私や他の者が誘導、セフィス達は『天竜王』家の襲撃だ。」

 

! 天竜王家……という事は……

 

「『竜王』が控えているだろうな。ちなみに全部潰すというのは冗談だ。」

 

ドラゴンがこっちに歩み寄ってきた。

 

「……思い切ったわね。今までヤツとの接触は控えてなかった?」

 

確かとんでもない能力らしいわね。バハムートって。

 

「……一週間前、海軍で大きな動きがあった。」

 

「大きな……動き?」

 

「前元帥センゴクが引退した事により勃発した、海軍大将青キジと同大将赤犬による新元帥争奪戦だ。」

 

「あ、あの二人がっ!? ……どうなったの!?」

 

「予想通り、青キジが勝った。……そして赤犬は決闘後軍を抜け行方をくらました。彼はマリンフォードでの戦いの傷が全く癒えてなかったからな。まぁ妥当な所だろう。それに我々としても事なかれ主義の青キジに勝ってもらった方が都合が良い。」

 

「て事は今海軍って……」

 

「大将にいるのは黄猿のみ、更に中将で危険なのは……親父だけだ。」

 

「……ボロボロね。彼女一人にだいぶ狂わされちゃって。」

 

「……傾世のシオリ。彼女のマリンフォードでの狙いも我々に近いものだったのであろうな。」

 

博士がつぶやく。そういえば彼女は……

 

「彼女とは目的が同じかもしれんが……それだけに扱いには慎重にならざるを得ん。彼女も神獣種系なのだからな。それはそうと……仮に竜王とぶつかっても……セフィス、勝とうと思うな。」

 

「うん? どういう事?」

 

そんなに強いのかしら?竜王って。

 

「まだ全力でぶつかり合う時期ではない……それに仮にお互いが全力を出せば……マリージョアは滅びるだろう。混沌を楽しむヤツが『リヴァイアサン』がいないこの時にそれを望むまい。」

 

リヴァイアサンねぇ……世界を滅ぼす者とか言われてるけどそんなにおっかないわけ?

 

「疑問を持つのも無理はない。マリンフォードでみせた姿では竜王にもお前にも及ばぬからな。」

 

「まだ覚醒してないって事? ……彼女パッと見20前に見えるけど、20年近く何やってたのよ?」

 

「転生……だったか。お前は20年ほど前、竜王は赤子から始まった様に皆が同じではなかったのだろう。それにあやつには…………」

 

「? どしたの?」

 

「いや、何でもない…………さて、そろそろマリージョアだな。おれも久方ぶりに獣形態で日頃の鬱憤を晴らすとするか。」

 

「あんまりやり過ぎないでね。」

 

「獣形態に『なる』だけで災害となるお前に言われたくはないな。」

 

「へいへい……博士、ドラゴンを頼むわよ。」

 

「任されよう。」

 

獣形態になったドラゴンや風を纏った博士が先行しマリージョアの前線地帯に侵攻して行く。私は気配を殺して見守るとしますか。

 

「うわぁ〜!? なんだあの怪物は〜!? ド、ドラゴン!?」

 

「いや! ドラゴンにしちゃひょろ長すぎる!? なんだこの化け物は!?」

 

獣形態になったドラゴンを見て混乱する政府の兵士達。

 

「……『輝く息』。」

 

獣になったドラゴンの口から全てを破壊するブレスが放たれ兵士を吹き飛ばす。更にいくつもの軍施設も破壊していく。

……これに耐えれるのはロギア以外じゃ幻獣種系でも上位、それに神獣種系のみでしょうね。じゃあ私はこの隙に……

 

「待ていっ革命ぐ……お前はセフィス!?」

 

げっ!? 先輩達が全員揃ってるぅ!?

 

「裏切り者が……よくものこのこと……覚悟は出来ておるのだろうな?」

 

覚悟……ねぇ。まぁ先輩達に何言っても信じちゃくれないだろうし……薙ぎ払うか。

 

「邪魔しないんなら……見逃してもいいですよ。」

 

「抜かせ! いくら全長100mほどの巨体を誇るゾオンといえど!」

 

「……勝ちたかったら二人……いえ、三人がかりで来なさい。私はもうアンタらを超えたから。」

 

「!? 世迷い言を!」

 

オニグモ先輩が不意打ちの六刀での剣撃を放つ。それは全て私に命中。

 

ガキィン!

 

生物の肌とは思えない音が響く。

 

「ぬっ!? 鉄塊と武装色の重ね掛けか!」

 

「違うわよ。何もしちゃいないわ……ただ肌を人獣形態にしただけ。」

 

「! ゾオン系……ミドガルズオルムか! だが幻獣種系だからといってこれ程の硬さはっ……」

 

? あぁ神獣種系ってのは『上』の連中にしか知られてないのね。

 

「『尾撃』」

 

下半身を獣形態にすると大蛇の様に変貌する。それを高速で振り回すと衝撃波が発生。五人を吹き飛ばす。

 

「ぐ、む……なんという圧力っ……」

 

「実力の1%も発揮出来ない人獣形態でその様じゃ時間の無駄ね。消えなさい。」

 

ま、頑固者の集まりだから聞いちゃくれないでしょうけど……

 

「な、何を馬鹿な事を……死んでも先には進ません!」

 

その時、巨大な闘気が発生する。

 

「ストラッシュ。」

 

光り輝く斬撃波が私の後方から現れ一瞬で五人を叩き伏せた。

 

「「「ぐわっ!?」」」

 

想像を絶する威力により一撃で立てない程のダメージを負う五人。と、そこに……

 

「いや〜 やっと追いつきましたよ〜セフィスさん〜」

 

気の抜けた口調で喋りながら現れたのは同志のアストリア。

 

「(い、今のは斬撃波……だが、ヤツは剣を持っていない……一体どういう事だ……)」

 

フフ、ビックリしてるわね。アストリアの戦術は誰もが真似出来るシロモノじゃないしねぇ。

 

「セフィスさん、この人達は僕が相手しておきますよ。」

 

「ん、分かったわアストリアちゃん。」

 

「! そ、そうか! コイツが『戦鬼』!」

 

「えぇ、そーですよ〜今後ともよろしく〜」

 

日本のサラリーマンみたいにペコペコする彼。今の態度の内なら先輩達はヒドイ目には遭わないでしょうね。今の態度なら……ね。

 

「懸賞金8億ベリーの超危険人物……何故『戦鬼』と恐れられた貴様が革命軍に……」

 

脂汗を流しながらストロベリー先……中将がうめく。まぁ中将程になれば相手との実力差もよく理解出来るでしょうよ。彼らが取るべき道は撤退。もししなければ……

 

「それは秘密です。まぁ知ったところで意味はないですしね。」

 

「……おれが仕掛ける。皆はヤツの体勢が崩れたら最大攻撃を放っておれごと潰せ。」

 

ドーベルマン先輩が不敵な笑みを浮かべ仲間に作戦を伝える。

 

「……一時的にもあの『戦鬼』の動きを止められるのか?」

 

「なに、どうにでもなるさ。屍は拾わんでいいぞ!」

 

仲間となにやら会話していたドーベルマン先輩が剣を大上段に構えながらアストリアちゃんに向け突っこんでくる。

 

「あれ? なんでそんな大振り……」

 

もちろんアッサリとかわしたんだけど……

 

「あれ? 剣は……」

 

ドーベルマン先輩の手にあるはずの剣がない。そして先輩はアストリアちゃんの背後に回りこみ羽交い締めにした。

 

「ありゃ!? ヤバいですね〜!」

 

「「「死ね!!」」」

 

残りの四人が各々の武器に武装色の覇気を纏わせ殺到する。

 

「これは……参りましたね。……しょうがないな〜 ……オーラソード!!」

 

アストリアちゃんが叫んだ瞬間まばゆい光が辺り一面に広がる。

 

「「「ぐわっ!?」」」

 

次の瞬間薙倒される五人。

 

「く……一体何をした?こ、この痛みは……斬傷!?」

 

武闘派の中将レベルともなれば鉄壁の防御力を誇るんだけどそれすらアッサリ貫通したのは……彼の右手に生まれた剣の形をした闘気の塊。彼は……剣を持たない剣士。徒手空拳でありとあらゆるモノを斬る事が出来る。

 

「闘気の剣……オーラソード。ですがこれはまだ初歩の技ですらないですよ。本来あなたがた普通の人間に振るうモノではないんですから。」

 

「ぬ、ぬう……」

 

「さて、セフィスさん、急いでください。彼らは僕が無力化しときますから。」

 

「えぇ。やりすぎないよーにね!」

 

この場を任せ天竜王家に直行する私。大将黄猿も出撃したらしいけど博士が足止めしてるって情報も入った。これで強力な敵はもういない。

さ〜て、竜王ちゃん、あなたのお手並み拝見と行こうかしら?

 

 

 

 


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