ONEPIECE世界を過去キャラと満喫   作:一匹犬

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29話「狂姫」

〜新世界・ガンリュウ島〜

 

 

 

 〜エネルside〜

 

 

色々あったが……図抜けた強さを誇るカイドウ一味とやらはどうにか帰ってくれた。だが……

 

 

 

「「「…………」」」

 

シオリと対峙し続けている私達。誰一人として恐ろしい重圧を感じる中、異様な気配を放つ彼女に声を掛けられない。

 

「……お前は誰だ? お嬢様ではないな?」

 

クロがボロボロの体で爪を構える。傷自体はシオリに癒してもらいはしたが。

 

「!? おっおいクロ!? どうしたんだよ!?」

 

クリークが戸惑っているが……

 

「ああ……確かにカシラとは何かが違いやがる。テメェ……ナニモンだ?」

 

アーロンも躊躇なく臨戦態勢に。

 

「えっ? 二人とも一体何を……」

 

クリーク、ベラミーなど見聞色の覇気が未熟な者は気づいておらんか。

 

「…………」

 

ルッチも当然臨戦態勢だな。

 

「うろたえるな小僧ー!!」

 

私達がうるさかったのか狂姫とやらが攻撃性を伴った両腕を振り上げた途端、訳の分からない力により私を含む全員が天高く飛ばされてしまう。で、地に叩きつけられるがたいしたダメージはない。

しかし全員を飛ばしたのに小僧とは……言葉がおかしくないか?

 

「落ち着かぬか者共。私は天草詩織……の影。別の言い方をすれば隠された本性とも言えるモノ。」

 

「ドンの!?」

 

いや、シオリの事ではないだろうな。おそらく彼女、アマクサ・シオリではなく『天草詩織』か。シオリに聞いた話が本当ならワノ国で使われる文字……確か『漢字』だったか?

 

「違うわたわけ。お前達が知っているのは……いわば余所の世界の住人。」

 

「「「!?」」」

 

い、今……何を言った? 余所の……世界?

 

「よそって……新世界出身とかって事?」

 

フィンガーが問うがおそらく……いや、彼女が言っているのは……

 

「否。……この世界に生きる人間ではないという事よ。」

 

「こ、この世界の人間……じゃない? 一体……」

 

「そこの坊主……エネルだったか? おぬし程の見聞色の覇気の使い手ならば薄々感づいていたのではないか?」

 

……こやつ!

 

「……確かに、時々青海人……みなが知らぬ事を知っていたり、他にも面妖な所はあった。」

 

これ以上話しても……いいのか? 下手をすれば……

 

「今までおぬしらと行動を共にしていた者は……ろくに経験を積んでおらず、ただ超常の存在に力を貰っただけの未熟者だという事だ。鬼謀にも取られかねない識者ぶりも…………」

 

? 何を言い澱んだのだ? ……だが、なぜかは知らんが聞いたら何か取り返しのつかない事が起きそうな……

 

「……あやつはシロップ村での麦わらの一味とクロネコ海賊団の争いからこの間の頂上戦争までの知識を事前に知っておったのよ。」

 

「なっ!? あの戦いを!?」

 

! クロが驚いているが、確かクロネコというのはクロの海賊団だったか。要はグランドラインではない海をも知りつくしているのか。

 

「不自然とは思わなんだかおぬしらは?」

 

……なんとなくは察しておった。時折預言じみた事をしてのけたり、人では有り得ない力を誇っていたり……

 

「「「…………」」」

 

この空気は……まずい……か?

 

「それがどうしたんだよ。」

 

「!? ホゥ……何が言いたい? クリークとやら。」

 

「……自分で言うのもなんだが……ドンに会うまでのおれぁ救いようのねぇ悪党だった。それが鷹の目に痛めつけられ、麦わらのルフィに敗北した瞬間、まさにおれの存在価値はゼロになっちまった。……そこにドンが清々しいまでのどギツイ邪悪な笑みをして現れやがったのさ。」

 

エライ言いようだが……不思議な程悪意は伝わらんな。アーロンなども頷いておるし。

 

「ドンが今までに築き上げてきたそれなりのプライドを砕き、新しく生まれ変われるきっかけをくれた。」

 

「そんなものはそれなりの力を持つ者なら誰でも出来る事だ。」

 

「そうじゃねぇよ。それにドンが美女だからとかそうじゃないとかは関係ねぇ。あの人の持つ……なんつーか……引力に惹かれたってのかね?とにかく楽しいと思ったのは初めてだったんだ。」

 

「しょっちゅうかれ……彼女に殴られていなかったか?」

 

「先に言っとくがおれはMじゃねぇぞ。……ドンに殴られる度……なんつーか……ドンと距離が近づいてる様な……あの人の考えが理解出来てきたっつーか……とにかく心が穏やかになってるのを感じたな。」

 

「…………」

 

「おれも最初は魚人族の神として崇めてたよ。だが……それだけならカシラ以外のヤツらとは仲良く出来なかったろうさ。それにクロとは別方向の形でカシラの役に立とうと盲進してたろうな。そうならなかったのは……やっぱクリークの言う様にあの人の側にいると居心地が良いというか……楽しい気分になるというか……とにかく人間と魚人の関係の事で考えるなんて馬鹿馬鹿しくなってきたよ。」

 

フ……二人共なかなか言うな。

 

「…………クロ、おぬしはどう考えている? お前は絶対的強者に仕えているという事が快感なだけであろう?」

 

「私の答えはただ一つ。お嬢様の為に己の全てを賭ける事。」

 

「フン……やはり強者であれば「だが……お嬢様はああ見えて時折抜けている所があるのでな。私がフォローしなければならないという気持ちにさせてくれるのだ。」……」

 

「他の者は……最初はどうでも良かったのだがな。私は……やはり私を頼りにしてくれたり、他の者をいたぶるお嬢様を見てる時が幸福を感じるな。」

 

「「「……」」」

 

他の者は呆れながらも不敵な笑みを浮かべておるな。

 

「ギン……おぬしは何かあるのか?」

 

「おれは…………これは、ひょっとしたら自分の思い込みかもしれやせんが……お嬢は自分に1番期待されてる様な気がするんです。」

 

「「「何をいまさら……」」」

 

「あれ!? 全員!?」

 

やれやれ……コイツ、後ワポルだけが気づいていなかったとは……つくづく不器用な男だ。

 

「普段見てりゃ分かるよ。それにおれにも言ってたぜ。ギンに新世界で大暴れしてほしいって。後おれがこんな短期間で強くなったのは予想外とも言ってたしよ。」

 

確かにクリークの言う通り、シオリはギンに対する訓練は随分入れ込んでいたな。

 

「…………フム。では……おぬしら二人に贈り物をくれてやろう。」

 

シオリ……いや狂姫が両腕を宙空にかざすと何やら不可思議な力が両腕に集まり光り輝いてゆく。これは確か先程の制極界とかいう……

 

そして光が収まると……両手には……悪魔の実!?

 

「クロ、ギン、おぬしらに相応しい悪魔の実を念じ、我が手に呼び寄せた。受け取るが良い。食うか食わないかは好きにしろ。」

 

「悪魔の実……」

 

「クロに与えたのは……超人系・パラパラの実。超希少な『概念系』とも呼ばれるモノだ。ギンに与えたのはゾオン系・ヒトヒトの実・幻獣種……モデル・鬼だ。強大な力を持つが……強靭な意思がなければ己が飲み込まれる禁断のゾオンよ。」

 

「パラパラ……? 一体……」

 

「お、鬼……」

 

二つとも普通の実よりも何か異様な雰囲気を醸し出しているな……

 

「食えば嫌でも分かる。制御、進化させる事が出来るか出来ないかは知った事ではないがな。……クリーク、アーロン。おぬしらは食わずとも更なる飛躍があるよって悪魔の実は必要ない。ましてやアーロンは魚人族だからな。」

 

「しかし……四皇幹部にあっさり負けちまった……」

 

アーロンやクリークを圧倒した象人間や大蛇になる男……正面から倒す術などあるのか?

それ以外にもクロを圧倒したスメラギ・ショウという女の能力も異常だったし何より修羅……シオリはゴウキと呼んでいたあの幼女……シオリですら手を焼いていたというのに……

……まぁその修羅以外のその三人を圧倒したシオリは規格外だから参考にはならんしな。

 

「今はな……フフフ……まぁ今は自分が弱いと勝手に思っても構わんよ。後々分かる事ゆえな。……元CP9ロブ・ルッチ。おぬしはどうだ? ぬしはただ強さを求めるだけであろう?」

 

「…………」

 

「根幹がしっかりと根付いていない者の元で本当に強くなれると思っているのか?」

 

「……フン。今はヤツの方がおれよりもはるか先を行っている。与えられただけの力とは言えヤツ自らが動きおれを叩きのめした事に変わりはない。だから……ヤツに借りを返すまではついていってやるだけだ。他人に指図される覚えなどない。」

 

ヤハハ……素直じゃないヤツだな。確かシオリはこう言うのを『ツンデレ』とか言っていたな。

 

「……そうか。ならば……」

 

!? なんだ? 狂姫に妙なプレッシャーが……

 

「『十殺元』」

 

とさつげん?

 

「これで『十殺元』の知識が未熟者に伝達されたろうて……フフフ、地獄よりも辛い修業が始まるぞ?ルッチよ。」

 

「さっきから言ってる事が分からんが……過酷な訓練など望む所だ。」

 

シオリも呆れていた戦闘狂ぶりを発揮しているな。

……その後残りの者達にも同じ問いを繰り返し……

 

「エネル、ぬしはなぜシオリについていくと決めた? ぬしの力ならばもうシロ……シオリに利用価値はあるまい。」

 

当然私にも問うてきたか。

 

「確かに……麦わらのルフィに破れた後、シオリと同じ言葉を掛けられたら青海に降り立っていたろうな。だがスカイピアにいた時程ではないにしろ傲慢な性格は直らなかったかもしれん。彼女の無茶苦茶な振る舞いが私の心を溶かしてくれたのかもしれぬな。」

 

とても本人の前では言えんがな。……とにかく皆が言う様にここは……居心地が良い。海賊として生きていくには不利なだけかもしれんが……殺人マシーンの様になるよりはるかに良いだろう。

 

「フフフ……スカイピアで悪虐を尽くした者の言葉とは思えんな。」

 

「確かにな。それに関しては一生背負わなければならん業だろう。だが今はこの海で生きてみたいのだ。」

 

麦わらのルフィを始め、ここには無数の強者がいる。その者らと鎬を削ってみたい。皆と共に……な。

 

「…………フフフ……アッハハハハッ!!」

 

突然哄笑をあげる狂姫。

 

「フン……言うではないか。小僧共(見直したぞ)。」

 

!? 随分としおらしい事を……

 

「フフフ……ではな。お前達。次は……いつ出会うかは分からぬが、今より少しは逞しくなってて欲しいものだ……」

 

突如、彼女を纏う強大なオーラが霧散していくのを感じた。

 

「………………あ……ん!? ここはっ!?」

 

! シオリが戻ってきたな。やれやれ。

 

「エネル……」

 

「クロよ、今は待とう。彼女から我々に話してくれるまでな。シオリが我々と一線を引いているのは狂姫に言われずとも感じていたし……それを彼女自身から取っ払うのを待つのも仲間である我々の義務だろうさ。」

 

「……そうだな。お嬢様が我々を頼ってくれるのを待つのも臣下の勤めか。」

 

ヤハハ……不器用なヤツだな。

 

「どうしたんだお前ら?あれ? そういやカイドウ一味は……」

 

「何、たいした事はなかったよ。ヤツらはもう帰った。」

 

「そうか……極限まで追い詰めて自分の切り札を作りたかったが……まぁいいか。」

 

狂姫……彼女もシオリの中の一つなら再び我々の前に姿を見せるだろうな。

 

「さて……とりあえずどっか上陸するか。どこにも寄らずに『楽園』に帰るのも馬鹿馬鹿しいし。」

 

「あの島なんかどうだ? 妙に胸騒ぎがするのだが。」

 

雷が降る島のライジン島の方向を指さす。

 

「そうだな。なんか面白そうだしあっこにするか。とにかくここからは思う存分楽しむぜ……オレはようやくのぼりはじめたばかりだからな。このはてしなく遠い海賊坂をよ…」

 

そうだな。わた……俺達の冒険はこれからだ!

 

 

 

 


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