〜マリンフォード近海〜
〜『海侠』のジンベエside〜
マリンフォードから脱出……いや、これは出港でええんかのう……
とにかく無事出れたわしら。しばらく後に軍艦が近づいてきたが、乗っておったのはハンコックと石化した海兵達じゃった。
彼女は頑張ったルフィ君をねぎらうために女ヶ島に誘ってくれた。
……とは言ってもわしらはゴミみたいな扱いじゃが……ま、敵地から離れとるし、かまわんか…
「傾国のシオリ! そなたまで呼んだ覚えはない! いい加減ルフィから離れんか!」
なぜかシオリさんを敵視しとるが…
「ハンコック! シオリはおれを助けてくれたんだ! コイツも一緒に頼むよ!」
「! はいっ♪ そなたがそう言うのなら!」
……ウブなヤツじゃのう。将来タチの悪い男に騙されても知らんぞ……ん?シオリさんが……
「何か勘違いしとる様だが……俺ぁルフィをどうも思ってねぇよ。むしろお前の恋を応援したいぐらいだ。」
「!? まことか!?」
「ああマジマジ。」
「おおっ……話の分かるヤツじゃのう! 疑って済まなかった! わらわとそなたは良き友になれそうじゃ!」
……恋は盲目というが……実際に目にするとキツイのう……
その後は女ヶ島に着くまでにイワさんとニューカマーの者達が帰っていった。
「イワさん……俺ら傾国海賊団は……を本拠地にするつもりだ。」
「アラあそこ?……いい所に目を付けたっチャブルね。それにカマバッカ王国、女ケ島、魚人島に近いじゃない。」
「でな、あんたに紹介したいニューカマーがいんだけど、時々彼にオカマ拳法の修業をつけてやってほしいんだ。」
「ひょっとして戦場にいた前髪パッツンの子? それは興味を引かれるわねぇ。」
確か……凄まじいスピードで空を飛び、脚から衝撃波を放ちまくっておった男か……奇妙奇天烈な格好をしておったのう。
「じゃ、それ以外にもなんかあったら気軽に連絡くれや。」
「そちらもね! じゃあ達者で〜ッンナ!」
イワさんにもずいぶん助けられたわい……革命軍。一概に良いとは言えんが思想には共感出来ん事はないのう。
「傾国……おれはゼロから出直す。誰かの下につくってのは死んでも嫌なんでな。
今は……テメェに及ばねぇが……いつか越えてやるぞ?」
「二人で旗揚げってのは……たいした奴だ。ま、あんたは武装色の覇気を鍛えて水気のない所にいりゃけっこうやれんだろ。」
「海に出るなって事かよ!? ……フン、まぁ色々策はあるさ……」
「ワニ……いやクロコダイル。おれはアラバスタでの事許してねぇけど……あの監獄じゃ助かった。ありがとうな!」
「!? クハハハ……相変わらず甘ぇヤツだ……次会う時は容赦しねぇぜ? 麦わら。」
「ああ! 望む所だ!」
クロコダイルはもうオヤジさんを狙わんじゃろうな……余命いくばくも無いオヤジさん……もう一度会っておかんとのう…
「クロコダイルよ。わしからも礼を言っておく。」
「……白ひげが衰えすぎて拍子抜けしただけだ。仲良しこよしするつもりは毛ほどもねぇ……行くぞ、ダズ。」
「はい、ボス。」
全く……次会う時は敵かも知れんが……今は感謝しよう。
しばらく進むと一隻の船を見かけたが……赤鼻のがえらく喚いておるのう。
「バギー船長ぉ〜〜!!」
一輪車に乗った長髪の男と羊の毛皮を着た(※地毛)変な男に、えらい人間味溢れるライオンと黒髪の女性か……妙ちくりんな一団じゃな。
「おおおおお前らぁ〜〜!!会いたかったぜぇ〜!!」
「船長ぉ〜〜!!」
ヒシッと抱き合うとるな。
「ん? バギーの仲間カネ? 変な連中だガネ……」
3のが呆れとる。
「アンタら……バギー見捨てたよね?」
黒髪の女性がツッコむ。……彼女がまとめ役か。それでひとしきり騒いでから……
「じゃあなぁ麦わら! 傾国! ジンベエ! また会おうぜぇ〜!」
赤鼻の船に船長である赤鼻のと3の、それに赤鼻のに心酔した囚人達が乗り込む。
「おう! お前もな〜ありがと〜」
赤鼻のォ……あやつの明るさで助けられた場面も………………え〜と……あったかのう?
ま、力はないが案外あやつは大成するかもしれんの。
「ジンベエにも世話になったな! これからどうすんだ?」
わしか……さてどうするかのう……いや、エースさんに頼まれておるし……
「わしは、お前さんがこれから先どうするか見届けようと思う。その後は魚人島で養生しようかのう。」
「そっか……おれ、ジンベエにもいっぱい借り作っちまったもんなぁ〜いつか礼がしてぇぞ!」
!! 全くこやつは……
「フフ……なら、みんなの期待に応えていく事じゃな。シオリさんを始め、オヤジさんもエースさんも、それからクロコダイルも今後お前さんに注目しておるんじゃからな。」
「ああ! おれ……今回ので自分の力の無さが良く分かった。エネルがいなかったら青キジとも戦えなかったし……まだまだだ……強くなりてぇな……」
エネル……シオリさんの仲間じゃったが……すさまじかったのう。
それからわしらは女ヶ島に到着し、ハンコックは凱旋帰国の歓迎を迎えるため一旦住まいに戻った。シオリさんは残り、わしらは男のため領内に入れぬため海岸で待機しておったのだが……
一人の男が海から現れた。! むっ!? なんという覇気……何者じゃ!?
「あっ!? レイリーのオッサン!? なんでだ〜!?」
!? レ、レイリー!? ま、まさか『冥王』……
「シルバーズ・レイリー……?」
「お、わしを知っておるとは……七武海にまで知られておるのは光栄だな。」
本物とは……! こんな超大物まで知り合いじゃったとは……
「俺が呼んどいた。」
と、シオリさん。なんとまぁ……
「うむ、シオリ君から連絡を受けてな……ルフィ君のこれからについての事だ。」
「おれの事?」
「うむ……その前に。ハンコック達も来てからまとめて話そう。」
しばらくするとハンコックが来てレイリーとやり取りをする。わし含め男に冷たいのはちょっと傷つくのう……
「シオリ、そなたもゆっくりくつろぐがよい。」
う〜ん、見事に……
「! この者って!傾国のシオリじゃ……姉様! よくこんなとんでもないのを……」
ハンコックの姉妹達は映像電伝虫で見とったようじゃのう……
「俺は麦わらのルフィのダチ……だよな? 敵じゃねぇよ。」
「ああ! シオリは友達だ!」
色々話しマッタリしていると……レイリーさんが。
「ルフィ君……君はこれからシャボンディに向かうつもりだな?」
「うん、みんな……仲間に会いてぇ!」
二人がシャボンディで起きた事を話すが……くま…あの男、つくづく分からぬのう……
「シオリ君とも話し合ったが……一つ提案がある。のるかそるかはもちろん君が決めろ。」
「なっなんだ!?」
もしかすると……
「しばらくの間立ち止まり、力を身につけろ。新世界で生き抜くために。」
「! …………」
「君には類い稀なる才能がある。それをわしが目覚めさせよう。」
覇気……レイリーさんなら適任じゃろうな。今のルフィ君が覇気を体得すれば……それは大いなる力になるやもしれん。
「基礎はともかく、しばらくしたらハンコック、お前も混ざれよ。覇気の扱いに関しちゃお前は世界有数レベルだしな。」
うむ、ハンコックも加われば隙はあるまい。わしも暇な時様子を見に行こうかの。
「し、しかし……ルフィに手荒な事をするなど……」
「お、おれ何されるんだ…?」
さすがに引いとるな。
「なに、拳を交えれば友情が高まる。そして性別が違えば友情はやがて愛に変わるんだ。そんなの世界の常識だぜ。」
シオリさん……ホントにもう……
「そうなのか! よし、わらわはルフィのためにあえて鬼になろう!」
「……よし、分かった! 修業する! ……あっでもみんなになんて言や……」
「ジンベエ、たしかマリンフォードにオックスベルってあったよな?」
「? うむ、あるが……どうしたんじゃ?」
問いにシオリさんが答えるが……なんとまぁ……
一週間後、わしとレイリーさん、再び来てくれたシオリさん、そしてルフィ君と共にマリンフォードにおもむき、オックスベルを16回鳴らした。
ルフィ君の仲間だけに分かるメッセージを送るために。そして女ヶ島に無事帰還。
「じゃあ、ルフィ。つい長居しちまったからそろそろ帰るわ。また『後々』な。」
「ああ……シオリ!ホントにありがとう!」
シオリさん……これからは彼女の時代じゃろうなぁ……わし含め海に住まうものは全て彼女の……
〜戦争から数ヶ月後〜
〜新世界、とある島〜
〜『白ひげ』エドワード・ニューゲートside〜
「グラララ……シオリ、ジンベエ……来てくれるとはなぁ……」
ベッドから立つ事もできねぇ…
「ああ、気にすんな。そのままでいい。」
「オヤジさん……」
「エースを目に掛けてくれた事、礼を言うぜジンベエ……恩に着る。」
「よしてくだされ……エースさんに関してはオヤジさんのためって訳ではないんですから…」
「オヤジ……」
「エース、そんなツラすんな……後はオメェを中心にみんなを引っ張ってくれ……
マルコ、ジョズ、それにオメェら…みんなで力を合わせてくれ。」
「「「ああ!もちろんだ!」」」
「なんでおれが……おれのせいでみんなに迷惑かけたのに……」
「いいんだよい。お前だから戦争の時あんなにみんなが動いてくれたんだよい……
甘い所見せたり道を間違ったら容赦なく修正してやるから……ドンと胸を張るんだよい。」
「マルコ……」
「それから、おれが死んだ後、グラグラの実は処分してくれ。」
そのせいでいろんな事が起きちまったからな……
「わしやシオリさんが見届けますよって、安心してくだされ。」
「感謝する……」
……もう……あんまりみんなの声が聞こえねぇな……
〜回想〜
マリンフォードに乗り込む前……それは起きた。
「オヤジ! 妙なバケモンが現れやがった! 覇気を纏ってやがる!」
!? 覇気を纏っただぁ!? ……ありゃ海蛇か!?
!! コ、コイツ……なんて覇気だ……長い間生きてきたが……バケモンが纏ってるなんて見た事ねぇぞ!
しっかし……えれぇ殺気だな……こりゃあ……
「おい、お前らは下がってろ……危ねぇぞ。」
「!? いや、しかしオヤジ一人に……」
「おれを信じやがれ……大丈夫だ。」
……バケモンは恐ろしく強かった。全力の振動パンチがろくにダメージ与えれなかったってのは……あん時以来じゃねぇか……? ヘタしたら死ぬかもな〜
そこから1時間……食うか食われるかのえげつない死合をしたが……ぐ……
「オヤジ!!??」
体が……く……
「すげぇな……病に冒されたその体で殺り合うとはさすがは『白ひげ』だ……」
!? 娘っ子の声だぁ!? ……!? 海蛇がどんどん縮んで……小せぇ娘っ子の姿に……
「ゾオン系能力者かよい!?」
同じゾオン系のマルコが驚いてんな。
「よぉ……初めましてだな。『白ひげ』エドワード・ニューゲートぉ……いや……エド。」
!? その呼び方は……アイツ以来……!? んなっ…なんで見ず知らずのお嬢ちゃんが……アイツに重なるんだ?
「なんだぁ? オメェは……なぜその呼び方をしやがる……ハナッタレの娘っ子が……」
とりあえず考える時間を……
「『おれ』だよ……エド。」
「!! まさか…」
「さっきは悪かったな。まずは力を見せねぇとおれみたいな小物は相手にしてくれねぇと思ってよ……これ飲んでくれ。」
小物とは……よく言うぜ。その覇気で……
「オヤジ! そんな怪しいの……」
ゴクン!
……ん!? 体が……
「おれの秘蔵のアイテムでな……エリクサーってんだ。体力満点になるしケガも治る。」
なんだぁそりゃ! しかしほんとに治っちまった……
「あと、これもどうだ?」
つって酒を取り出すが……おれぁ酒にはうるせぇぞ?……全く娘っ子が酒なんて…
グビッ……
!? こ、これはまさか……おれの故郷の酒じゃ……
「どうだ? まずくはないと思うんだが……」
「……最高の酒だった。これで確信した……オメェは………………」
「ああ、なんでこうなったかは知らんけど。」
「……結局どういう事なんだ?」
「まだ『こいつ』は自覚してねぇみてぇだが……おれともう一人のと混ざり合ってめちゃくちゃになってるな。ハッキリ言ってこのままじゃいずれ『二人』が危ない。……が、なんとかなる様な気もしてるがな! ガハハハ!」
「……笑ってる場合かよ……全く……ホント世の中分からねぇな……」
「とは言え、堅物の姉ちゃんに比べて訳分からん知識を持ってる方も経験積んで少しは様になってきてる。賭けてみるさ。おれ自身はもう未練はねぇしな。……それよりだが……」
「ああ知ってるとは思うが……今、エースが大変な目にあってんだ。」
「もちろん知ってる。おれも行くつもりだぜ?」
「そうか……助かる。」
「んでな……これから言う事はちょっと突拍子もねぇからな。信じる信じないは自由だ。」
と言って人払いをさせる。
……赤犬の策によるスクアードの狂行、赤犬のエース殺害、そして黒ひげ……全く全てが信じがたいが……コイツは嘘は言わねぇだろうな……
「分かった……それが分かっただけでもとんでもない助けになった。」
「これも持ってけ。」
と、エリクサーというのともう一つ『英雄の薬』というのをもらい『戦争』について話し合う。
「オメェはこれから……何をしでかすつもりだ?」
それだけの力がありゃなんでも出来そうだが……
「俺は『今』が気に入ってる。基本ヘタレなのは生前から変わってねぇしな……黒ひげの言う時代もドフラミンゴの言う新時代も受け入れがたい。やっぱ平和が一番だわ。」
ヘタレって猪突猛進野郎がよく言うぜ。
「……そうか……よう、おれの死後、エースやみんなを頼まれてくれねぇか?」
「いいぜ。」
「感謝する……」
〜現在〜
「聞こえるか……みんな……これ……からは……シオリを……たよれ……アイツと共に……この時代を……生きてくれ……」
「「「オヤジィィ〜〜!!」」」
「オヤジさん!」
「エド……」
「おれぁ……幸せだった……!!」
…………全く……おれがあの世に行っても今度はアイツがいねぇってのが……
おちょくられてるみてぇで腹立つ……が、懐かしい……ぜ………………
グラグラの実はシオリ、ジンべエに、マルコ達隊長たち立会いの元、エースの手によって燃やされた。