Fate/Zero バーサーカーは強欲   作:残月

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最強の楯

 

 

 

 

アーチャーが現れる少し前まで時間は戻る。

 

 

アサシンのマスターである『言峰綺礼』は眉を顰めていた。

アサシンの死を偽装させた後に聖杯戦争を有利に進めるべくアサシン達にマスターやサーヴァントを監視させていた。

そして倉庫街の戦いが始まってからもセイバーとランサーの戦いを遠坂時臣に報告をしていたのだが事態が急変し過ぎた為に悩んでいた。

この事態をどう報告するべきかと。

 

 

「師よ。ご報告が有ります」

 

「どうしたんだい綺礼?セイバーとランサーが相打ちにでもなったか?」

 

 

レコードの様な通信機で会話をする言峰綺礼と遠坂時臣。

 

 

「ライダーが現れた後にバーサーカーも現れました。……バーサーカーに関してはなんと報告をすればよいのか図りかねる所なのですが……」

 

「?……綺礼。キミにしてはなんとも歯切れの悪い話し方だね」

 

 

今まで見ていた戦況の中で1番のイレギュラーを話すには一言二言では片付けられなかった。

 

 

「バーサーカーを自称したのは間桐雁夜です。名をグリードと言っていました」

 

「…………本当かい?」

 

 

言峰綺礼の報告に耳を疑う遠坂時臣。

 

 

「はい、間違いなく。師はバーサーカーのマスター、間桐雁夜と面識がおありなのですか?」

 

「妻の幼なじみだという話は聞いている。実際に目にしたことは数度だけで、会話もない。魔術を嫌って逃げ出した凡愚市井だと、間桐のご老人から聞いていたのだがね」

 

 

言峰綺礼の疑問に答える遠坂時臣。

 

 

「彼がマスターになると言うのはキミからの報告で知っていたが……まさか戦場に現れてバーサーカーを名乗るとは……しかも名がグリードとは」

 

「彼等の会話から察するにあのサーヴァントはマスターと一体化するタイプの様です。グリード……『強欲』ですか」 

 

 

人には七つの罪が有る

『色欲』

『怠慢』

『暴食』

『嫉妬』

『憤怒』

『傲慢』

そして『強欲』

 

 

その名を語るサーヴァントは何者なのか。

 

 

「綺礼、間桐雁夜の監視を続けてくれ」

 

「了解しました。我が師よ」

 

 

本来なら急造魔術師などには警戒しない遠坂時臣だがグリードの名を気にしていた。

 

 

「ただの名を語るだけなのか……それとも……」

 

 

遠坂時臣の呟きに言峰綺礼は返答を返さなかったが言峰綺礼もグリードに興味を持ち始めていた。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「どうやら、あれもまた厄介な敵みたいね……」

 

「それだけではない。4人を相手に睨み合いとなっては、もう迂闊には動けません」

 

セイバーとアイリスフィールが小声で何事か相談している。

この厄介な状況を危惧し、次の一手をどう打つかの相談だが場が進むことは無い。

睨み合いが続く最中、あるサーヴァントが動いた。

 

 

「誰の許しを得て我を見ておる?狂犬めが……」

 

 

底冷えがするような怒気を放つ声が響く。

アーチャーを値踏みする様に見ていたグリードをアーチャーが憤怒の眼差しで睨みつけていた。

ライダーに向けていた宝剣と宝槍がバーサーカーに照準を変えた。

 

 

「せめて散りざまで我を興じさせよ。雑種」

 

「んなっ!?」

 

 

英霊の最高の切り札である宝具をいとも人目に簡単に晒す行為にウェイバーが声を上げる。

放たれた二つの宝具がグリード目掛けて発射され、激しい音を立てて迫る。

 

 

『ハッ!』

 

 

グリードはソレを恐怖を帯びた訳でも無く笑みを浮かべると両手を前に翳す。

その行為をしている間にアーチャーの宝具である剣と槍が迫り直撃し、倉庫街に爆音を鳴り響かせる。

爆風と共に砂塵が舞い、視覚と聴覚を奪う。

 

 

「……やはり信じられん。奴は、本当にバーサーカーか?」

 

「見事。しかし、えらく面白い事ができる奴よのぅ」

 

「なんて……奴だ」

 

 

サーヴァント達は今のグリードの行為が見えたらしく、セイバー、ライダー、ランサーの順にコメントを零す。

霞でいた視界が晴れると、そこにはグリードに放たれた筈の剣と槍が地面に突き刺さっていた

 

 

「な、何が起きたんだ……」

 

「見えなかったか?バーサーカーは構えた両手が黒く染まり、その手で宝剣と宝槍を打ち払ったのだ」

 

 

ウェイバーの呟きにライダーが解説をする。

ライダーの言葉通りグリードは最強の楯を両手に纏わせると放たれた剣と槍を打ち払い、地面に叩きつけたのだ。

 

 

『中々、良い剣だな。だが、この程度じゃ俺の最強の楯は傷一つ付けられねーよ』

 

「チィ!」

 

 

グリードは地面に突き刺さった宝剣を引き抜くと品定めをしながらアーチャーに語り掛ける。

ニヤニヤと笑うグリードにアーチャーはコメカミに青筋を走らせながら舌打ちをした。


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