目を回して気絶した桜を介抱した雁夜。
目を覚ました当初、桜は顔を真っ赤にして俯いていた。
感情が死にかけていた桜の感情が一気に戻った事はある意味では喜ばしいが切っ掛けはグリードのセクハラである。
「桜ちゃん、さっきのは僕のじゃなくて、僕が召喚したサーヴァントがね……」
桜にサーヴァント召喚から先程のセクハラまでの経緯を説明していた。
聖杯戦争の事も多少は話したが全容までは話していない。
「じゃあ、雁夜おじさんの中に他の人が居るの?」
「ああ、名前はグリードって……」
『そう、俺がグリードだ』
そして召喚したサーヴァント『グリード』の事を説明しようとした雁夜だが途中でグリードが表に出て来た。
『俺がグリードだ。お前のおじさんの体を借りてんだぜ』
「おい、グリード!」
再び始まるステレオ仕様の会話。桜は目をパチパチとしながら雁夜を見上げる。
「おじさん、目が左右で違う」
「え、そうなの?」
桜の指摘に雁夜は部屋の鏡で自身の瞳を確認する。
そこには自身の瞳と赤く染まったグリードの瞳に左右で色がオッドアイの様に別れていた。
「これは……」
『同時に喋る時はこの方が解りやすいだろう。んじゃヨロシクな桜ちゃんよ』
納得がいったかとグリードは体の主導権を奪うと桜に挨拶をする。
「聖杯戦争って……おじさんが危ない目に遭うの?」
『戦争だからな。だが、安心しな。俺は強いからよ』
グリードを見上げて不安気な表情を浮かべる桜にグリードは桜に目線を合わせて座る。
「大丈夫なの?おじさんは……」
「ああ、グリードが守ってくれるからね」
『ククッ……』
改めて雁夜に聞く桜。雁夜は桜を安心させるために笑顔を浮かべては桜の頭を撫でる。
雁夜の言葉に安心したのか桜は目を細めて気持ち良さそうにしていた。
夜も更けていた事も有り、桜を寝かせた雁夜はグリードと話をしていた。
「で。どうなんだグリード……勝算は?」
『まだ他のサーヴァントを見てもいないのに判断できるかよ。だが俺の最強の盾を破れる奴はそうそういねーよ』
雁夜の言葉にグリードは右手を眼前に出すと、雁夜の右手は黒く染まっていく。
「こ、これは……」
『これが俺の能力の一つで『炭素硬化』通称『最強の楯』だ』
雁夜の黒く染まった右手は炭素硬化により『最強の楯』となった。
「こんな事が出来るなんて……」
『ホムンクルスだが体の構造や構成物質は普通の人間と変わらねぇが再生能力と最強の楯が俺の武器だ。んでさっき気付いたんだが他の能力も付いたがな』
自身の能力説明をするグリードの言葉の中の「他の能力」に疑問を持つ。
『シン出身者固有の『気』の感知能力だ。分かりやすく言っちまえば他の命を感じる事が出来る。元々の俺の相棒のリンって奴が使えた能力なんだがな』
「そうか、さっき桜ちゃんの中の虫を感じ取る事が出来たのは……」
『ああ、この能力だ。どう言う訳だか俺もその能力を使える様になったみたいだ』
桜の中の蟲を感じ取る事が出来たのもこの能力のお陰だった。召喚された際に能力の付随がされた様子である。
「勝てる……これなら勝てるかもしれない……」
『ガッハッハッ!勝てるかもしれないんじゃねーよ!『勝つ』んだよ』
『勝てるかもしれない』と呟いた雁夜にグリードは『勝つ』と宣言して笑った。
これはアーチャーにアサシンが殺される3日前の出来事だった。