Fate/Zero バーサーカーは強欲   作:残月

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グリードと蛮勇

 

 

 

〈おい、グリード。なんでさっきはあんな事を言ったんだ?〉

《あんな事って、どの事だよ?》

 

 

冬木教会からの帰り道、雁夜はグリードに先程の事を問い掛けていた。

 

 

〈『キャスターほったらかして他のサーヴァントを狙う』って奴だよ!キャスターは倒さないとマズいだろ!〉

《ああ、その事か》

 

 

雁夜の叫びにグリードは納得した様に反応した。

 

 

《ありゃ撒き餌みたいなもんだな》

〈撒き餌?〉

 

 

グリードの言葉に雁夜は首を傾げた。

 

 

《倉庫街の戦いでもそうだったが、他のサーヴァントとの戦いの時に狙撃しに来た奴も居ただろ?そんな奴等が居ると他のマスター達への警告だな。ああ言っとけば迂闊なマネはしねーだろうしな》

〈他のマスター達を気遣ったのか?〉

 

 

グリードの発言に更に質問を重ねる雁夜だったがグリードは鼻で笑った。

 

 

《ハッ、違ぇーよ。そう言っとけば奴等は『俺』を警戒する。そうすりゃ……色々と面白い奴が釣れる筈だ》

〈俺には何が何だかサッパリだ〉

 

 

グリードの言葉に更に混乱する雁夜。

 

 

《今はそれで良い。俺も確信が無い事だしな、ヒントはさっきの会合だ》

〈益々解らないんだが〉

 

 

グリードはヒントを出したつもりなのだろうが雁夜は解らないと言うばかりだ。

 

 

《………さっきの神父がキャスターとそのマスターが問題を起こしていると言ってたよな》

〈ああ……だから討伐なんじゃ無いか?〉

 

 

グリードの言葉に雁夜は璃正の言葉を思い出す。

 

 

《なら奴は何処から情報を得た?警察がなんの情報も掴んでないのに》

〈それは……冬木教会の神父なんだから、執行者や部下がいるんじゃないか?〉

 

 

更に問いかけを増やすグリードに雁夜は答えていく。

 

 

《なら犯人を見付けた段階で何故、始末しない?サーヴァントが居たとしてもマスター殺しをすれば事は解決だろ》

〈それは……サーヴァントがマスターを守ってるんじゃないか?〉

 

 

雁夜は少し悩んでから答えを出すがグリードは納得していなかった。

 

 

《だとしたら顔写真や容姿の説明があるだろうよ。こんなマスターでサーヴァントの特徴もな。だが神父はそれを言わなかった……いや、言えなかったんじゃないかと思ってな》

〈……どう言う事なんだ?〉

 

 

 

グリードの推測、もとい予測に雁夜は息を呑んだ。

 

 

《確証は無いが……神父はそれぞれのマスターに『キャスターを討伐してもらう』んじゃなくて『キャスターを討伐させたい』んじゃねぇの?》

〈なんだよそれ?〉

 

 

結局、雁夜はグリードが何を考えているのか分からず仕舞いだった。

その後、バーサーカーは間桐邸に戻ると再度、書籍に入り書物に読みふける。

重要なことも書かれているのだろうが、にわか魔術師の雁夜にはサッパリだった。

 

そして時刻が夜に差し掛かった頃、グリードは読んでいた本をパタンと閉じると立ち上がる。

 

 

〈どうしたんだグリード?〉

《遠くで力のぶつかり合いを感じる……始まったか》

 

 

グリードは窓から山の方を眺める。

 

 

〈始まった……ってグリードまさか!?〉

《ああ、キャスターだ。正確にはキャスター討伐で出たサーヴァントがキャスターと戦ってんだろうよ》

 

 

グリードは上着を着ると窓から間桐邸を飛び出した。

 

 

〈行くのかグリード!〉

《令呪なんざ興味は無いが、戦いにゃ興味が沸くんでな!》

 

 

民家の屋根を素早く跳んでいくグリード。目指すのは強い力のぶつかり合いを感じた方角。

その方角はアインツベルンの城が有る方角だった。

 

 

 

 

アインツベルン城では様々な戦いが行われていた。

 

城の中では衛宮切嗣とケイネス・エルメロイ・アーチボルト との戦い。

その森ではセイバーとランサーVSキャスターとの戦いが繰り広げられていた。

 

そんな中、セイバーの仮のマスターであるアイリスフィールは切嗣の相棒の久弥舞弥が城から退避していたのだが其処を言峰綺礼に狙われた。

 

アイリスフィールを守るべく舞弥は言峰と対峙するが言峰は代行者としての実力者で舞弥は敗北し重傷を負ってしまう。

 

 

アイリスフィールは舞弥を助ける。そして言峰を切嗣の所へは行かせないと自らが戦うことを決意した。

 

 

「いけませんマダム!?逃げてください!」

「大丈夫よ舞弥さん。私が切嗣から習ったのは車の運転だけじゃないの」

 

 

舞弥はアイリスフィールに逃げろと叫ぶがアイリスフィールは自身の魔力で編み込んだ鳥を舞わせた。

それを見た言峰は溜息交じりに口を開く。

 

 

「くだらんな、人はそれを蛮勇と呼ぶのだ」

『本当にまったくその通り。激情に任せて吠えた所で得な事なんかありゃしねぇ』

「なっ!?」

 

 

アイリスフィールとの間合いを詰めて拳を叩き込もうとした言峰の腕を誰かが掴んだ。

言峰は自身の腕を掴んだ人物を見て絶句し、アイリスフィールはその人物を見て瞳を見開いた。

 

 

『でもなんでかねぇ……そう言うの見捨てる気にならねぇの』

「貴様、間桐雁夜……バーサーカー!」

 

 

言峰の手を掴みアイリスフィールを救ったのはグリードだった。


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