Fate/Zero バーサーカーは強欲   作:残月

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冬木教会とグリード

 

 

 

 

最初の戦いから夜が明け、雁夜とグリードは臓硯の書籍に居た。

 

 

『ふーん……なるほどな』

〈グリード、此処に有る本は?〉

 

 

グリードは朝から本に読み耽り、雁夜は何事なのかと思っていた。

 

 

『単純に俺等は聖杯戦争の知識が少なすぎる』

〈現界した時に知識は得たんじゃ無かったのか?〉

 

 

グリードは臓硯の書物から聖杯戦争の更なる知識を得ようとしていた。そして雁夜の疑問も尤もでサーヴァントは現界した際に聖杯戦争の知識が自動的に入ってくる筈なのにグリードは調べ物をしているのだ。

 

 

『どうにも妙な気がしてな……この蔵書量を見れば何かあると思うさ』

〈それで……何か分かったのか?〉

 

 

グリードの説明に雁夜は何か分かったのかを聞こうとしたが其処でグリードと雁夜の耳に何かの砲撃の様な音が聞こえた。

 

 

『なんだ?』

〈音……いや魔力のパルス信号か?〉

 

 

グリードは窓際に行くと空を見る。其処にはある方角から煙が立ち上っていた。

 

 

『なんだありゃ狼煙か?』

〈多分、冬木教会の監督役がマスター達に向けた合図だな。魔力で編み込んだ煙だから一般人には見えない筈だ〉

 

 

聖杯戦争において冬木教会の監督役がマスター達を呼び寄せる事は滅多に無い。あるとすれば聖杯戦争のルール変更や勧告事項がある時だ。

 

 

〈グリード、アレは確認した方が良い〉

『面倒だが……行ってみるか』

 

 

グリードは雁夜の言葉を聞くとスタスタと玄関に向かう。

 

 

〈え、ちょっと待てグリード。使い魔を飛ばすから直接行く必要は……〉

『直接、行った方が面白くなるだろ』

 

 

雁夜の制止も聞かずにグリードはそのまま冬木教会へと向かい始めた。

 

 

「いってらっしゃい雁夜おじさん、グリード」

 

 

桜は馴れた様子でグリードと雁夜を見送った。

 

 

 

◆◇冬木教会◆◇

 

 

冬木教会の中では神父の『言峰璃正』が集まった者達に話し掛けていた。

 

 

「さて……教会から知らせた合図に来て頂いたのはこれで全員か……」

 

 

璃正の視線の先には四体の使い魔が居た。各マスター達が教会に姿を現さずに話を聞くための処置だった。

 

 

『失礼するぜ』

「っ!?」

 

 

これで全員と思った璃正だが突如、教会の扉が開いて何者かが入ってくる。

その人物は黒い服を着てパーカーをスッポリと顔を隠すように着ている男だった。

 

璃正にはその姿に見覚えがあった倉庫街の戦いでバーサーカーを名乗った間桐雁夜(グリード)だ。

 

 

『適当に座らせて貰うぜ』

「あ、ああ……構わんよ」

 

 

グリードは了承を得る前に教会に設置された椅子に座ると行儀悪く足を前席の椅子の背もたれに投げ掛け、足を組む。

 

 

「コホン……礼に叶った挨拶を交わそうと言う御仁が一人しか居らぬが……」

『構わねぇよ。サッサッと話を進めてくれや』

 

 

璃正がグリードの方を向いて挨拶をしようとするがグリードは話を進めろと促した。

 

 

「では、話を進めよう。諸君等の悲願へと至らしめる為の聖杯戦争だが此処に裏切り者が現れた。最後のマスターである者とサーヴァントは聖杯戦争の大義を忘れて、己の欲望の為に人々を苦しめる行為に及んでいる」

 

 

璃正は言葉を句切ると使い魔やグリードに視線を移した。

 

 

「そのサーヴァントはキャスター。そしてそのマスターは昨今の冬木市を騒がせている連続誘拐・殺人事件の犯人だと判明した。彼は犯行にサーヴァントを使役し、更にその痕跡を平然と放置している。この行為が聖杯戦争にどんな影響を及ぼすか説明は不要だろう。さて、私は其処で……」

 

 

璃正は言葉を句切ると自身の袖を捲る。

其処には大量の令呪が備わっていた。

 

 

「見事にキャスターとそのマスターを仕留めた者に過去の聖杯戦争に残された遺産の令呪の一角を授けようと思う。全てのマスターは直ちに互いの戦闘行為を中断し、キャスター陣営の殲滅に尽力せよ。そしてキャスターの消滅を確認したら令呪を譲渡する。もし単独で成し遂げたなら達成者に。他者と共闘しての成果であれば事に当たった者達に全員集合時に一つずつ寄贈となる」

 

 

璃正は袖を直すと再度、使い魔とグリードに視線を移した。

 

 

「キャスターの消滅を確認した後に従来の聖杯戦争を再開する。さて……質問がある者は今、この場で申し出るがいい。尤も人語を発せられる者に限らせてもらうがね」

『そうかい。んじゃ質問させてもらうわ』

 

 

璃正は使い魔を寄越したマスター達に嫌味を込めた発言をしたがグリードは直接来ているので質問をした。

 

 

「ああ……構わない。何かね?」

『キャスター討伐の間に他のサーヴァントに負けた場合は脱落とされるのか?』

 

 

グリードの言葉に璃正は言葉を失った。

 

 

「そうだな……それは脱落とされる」

『そうかい。んじゃキャスターをほったらかして他のサーヴァントを狙うのも有りって事だ』

 

 

璃正の言葉を聞いたグリードは悪い笑みを浮かべた。

 

 

「そ、それは困るぞ!キャスター討伐が最優先だ!」

『ククッ……困るだけだろ?』

 

 

叫ぶ璃正にグリードは笑いながら席を立つ。

 

 

『……この中にマトモにキャスター討伐に走る奴がどれ程いるかねぇ』

 

 

グリードは教会内の使い魔達を見渡してから教会の外へと出て行った。

 

 

「……………理性の有るバーサーカーと聞いていたが、所詮はバーサーカーか」

 

 

各陣営の使い魔達も居なくなった後に璃正は教会の扉を見て呟いた。

 


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