倉庫街での戦いを終えたグリードと雁夜は間桐邸に帰路を歩いていた。
〈アレが……聖杯戦争か……〉
《ま、初戦であんな感じなら上出来って所だな》
話すのは先程まで行われていた倉庫街での戦いの事だ。
〈グリード、あのセイバーやランサー、アーチャー相手にあそこまで戦えるとは思えなかったよ〉
《初顔合わせだったからな。奴等もまだ隠してる事があるみてーだ。次はこんな上手く行くか分からねーよ》
雁夜の言葉に少々否定気味の言葉を出すグリード。
〈ど、どう言う事だ!?〉
《まず、セイバーだがありゃ本気じゃ無かった。って言うよりは本気が出せなかったんだろうな。ランサーの影響だろう》
慌てる雁夜にグリードは自分なりの考察を伝える。
〈あ、そうか!あの槍!〉
《そうだ。セイバーとランサーの戦いの中、セイバーの動きが鈍ったろ?多分、それがセイバーの動きを制限してる》
セイバーとランサーの戦いを思い出した雁夜は驚愕し、グリードも肯定した。
《ランサーも大方、マスターの意向で本来の戦い方をしてなかったんだろうよ。あの手の騎士道とやらを重視する奴にしては行動がおかしい》
〈そのマスターは撃沈したんじゃなかったのか?〉
ランサーもまた全力じゃなかったと話すグリードに雁夜は先程の投石を思い出していた。
《一番厄介だったのはアーチャーだな。あの野郎……》
〈いや、最強の盾で宝具を防げたじゃないか?〉
グリードはアーチャーを思い出したのかギリギリと歯ぎしりをする。雁夜はアーチャーにも優勢だったんじゃないかと問う。
《いや、あの剣やら槍は奴にとって本気の宝具じゃなかったんだろうよ。じゃなかったら、あんな使い捨てみたいな使い方するかよ》
〈何時の間に拾ってきたんだよ……〉
アーチャーの戦い振りから相手にはまだ余裕があったと告げるグリード。その手には倉庫街で放たれた剣が一振り手にあった。どうやらどさくさに紛れて拾ってきたらしい。
〈じゃあまだアーチャーは……〉
《隠し球があるだろうよ。次は最強の盾で防げるかわからん》
グリードは右手を黒く染め盾を生み出しながら呟く。
《後は一切の手の内を見せなかったライダーだな》
〈真名を自分から明かしたがな……征服王イスカンダル〉
ある意味、宝具以上のアドバンテージを放ったライダーにタラリと汗を流す雁夜。
〈後は姿を見せなかったキャスターか〉
《考えてもしょーがねーよ。なるようにしかならねーさ》
話をしている内に間桐邸に到着したグリードと雁夜。
〈グリード……あの戦いを見た後で……いや、後だから聞くぞ。勝てるんだな?〉
《ガッハッハッ!言ったろ俺は勝つってな。それにこの世界に来てから俺の力も上がってる》
雁夜の言葉に先程、展開した最強の盾を眼前に突き出すグリード。
普通に正面から最強の盾でアーチャーの宝具を受け止めれば最強の盾でも防げなかった宝具は幾つか存在したがグリードは全てを防いだ。本来なら不可能な事をグリードは成し遂げてしまったのだ。
《試す事や調べたい事は……随分増えたがな》
グリードはそう言うと左手に持っていたアーチャーから奪った剣を眺める。
雁夜にはその言葉や行動の真意は読み取れなかったがグリードの存在がただ頼もしかった。
《辛気臭いのは此処までだ。後は休もうや》
〈そうだな。って……桜ちゃん〉
間桐邸に入って視界に入ってきたのはソファで眠る桜の姿。
《どうやら俺達を待ってたらしいな》
〈…………桜ちゃん〉
二人の帰りを待っていたらしくそのままソファで寝てしまった桜をグリードは抱きかかえる。
〈おい、グリー……ド?」
《俺は寝る。後は頼むわ》
突如、身体の支配権がグリードから雁夜に戻される。桜を抱きかかえたまま身体を戻されて驚く雁夜を後目にグリードは引っ込んでしまう。
「まったく……グリードの奴……」
「すぅ……すぅ……」
自身の腕の中で眠る桜に笑みを溢すと、桜をベッドへ運ぶ為に雁夜は寝室に向かうのだった。