Fate/Zero バーサーカーは強欲   作:残月

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アドバイスを頂き少し、修正しました。


隠遁と投石

 

 

 

 

アーチャーが撤退した後は微妙な空気が漂っていた。

セイバー、ランサー、ライダー、バーサーカーの四竦みになっている状況で迂闊に動けば集中的に狙われるかもしれない。

 

そんな思いの中、各陣営は動けずに居たが、真っ先に動いたのはやはりこの男だった。

 

 

『さぁて、第二ラウンドと行こうか』

 

 

首に手を添えてゴキゴキと骨を鳴らすグリード。

動いたグリードに対し、セイバーは剣を構え、ランサーは槍の先をグリードに向ける。

 

自然とセイバー&ランサーVSグリードの構図が出来上がったがグリードがセイバーに手で制止を促す。

 

 

「アホ毛ちゃんは下がりな。俺は女と闘う趣味はねぇ」

 

「私は女である前に騎士だ!そしてアホ毛ちゃんと呼ぶな!」

 

 

セイバー&ランサーVSグリードの構図からセイバーVSグリードの構図へと変わった。

もっともグリードはセイバーの剣を笑いながら避けている為に端から見れば戦いと言うよりはじゃれ合いレベルとなっているが。

そしてそれを好機と見たのはランサーのマスターのケイネスだった。

 

 

「何をしている、ランサー?セイバーを倒すなら、今こそが好機であろう。バーサーカーを狙ってるセイバーなら隙だらけで在ろう?貴様が隙を見てセイバーを討て」

 

「……っ! セイバーは、必ずやこのディルムッド・オディナが誇りに懸けて討ち果たします!何となれば、そこな狂犬めも先に仕留めてご覧に入れましょう。故にどうか、我が主よ!この私とセイバーとの決着だけは尋常に……!」

 

「ならぬ。ランサー、バーサーカーを援護してセイバーを殺せ。令呪をもって……ぶがっ!?」

 

 

ランサーの上申を一蹴してランサーに令呪でセイバーを殺そうとしたケイネスだが令呪を使う前に呻き声を上げた。

 

 

何事かと視線が移れば倉庫街のコンテナの先から何かが落ちる音が聞こえる。

 

 

「な、なんだぁ?」

 

「令呪を使おうとした所よね?」

 

 

ウェイバーとアイリスフィールは何が起きたのかと首を傾げるが、先程からグリードに剣を振り回していたセイバーも驚愕の瞳で、ランサーは突如ケイネスとの会話が中断された事に途惑い、ライダーは感心した様子でグリードを見ていた。

 

 

『ったく、余計な茶々入れるんじゃねーよ』

 

「ケイネス殿ッ!?」

 

 

グリードの舌打ちとランサーの叫びが聞こえる。

 

グリードは手の中に先程からアーチャーが砕きまくっていたコンクリの塊を持っていた。

サイズとしては野球ボール並だ。

 

 

「ま、まさか……」

 

「そのまさかだ。グリードはセイバーの剣を避けながら、その石を拾い上げると恐らくランサーのマスターが潜んでいた地点に投げたのだ。あの悲鳴はマスターに石が当たったんだろうよ」

 

 

ウェイバーは頭に過ぎった予想が馬鹿馬鹿しいと思いながらも口にしてしまったがライダーの言葉でそれが確信に変わった。グリードが石を投げた先に、ランサーのマスターのケイネスが居たと。

グリードはケイネスとランサーが言い争っている間に手頃な石を拾い上げるとセイバーの斬撃の隙間を縫ってケイネスが居た地点に投擲したのだ。

 

そしてそれはケイネスが令呪を使用しようとした直前だった為、ケイネスは周囲の注意が散漫で直撃を食らったのだ。

もっともグリードの投球を察知したとしても避けられたかは別問題ではあるが。

 

ケイネスはそもそも、己の身を守るための魔術迷彩をしていた。並の魔術師では看破出来ないような巧妙な隠蔽魔術だがグリードのシン出身者固有の『気』の感知能力に位置を特定され、今回の襲撃に至ったのだ。間桐邸で気付いた事とは言えどまさかリンの能力を得ているとは、グリード自身も思いもよらなかったのだが今回はそれが有効に働いた。

 

 

 

「バーサーカー、貴様!」

 

『慌てんなよ、死んじゃいねーよ。テメェのマスターが死んだならテメェも消えてんだろ』

 

 

自身のマスターを攻撃したグリードを怒りと共に槍を向けるが当のグリードは平然とケイネスの安否を話す。

更にグリードは持っていた石を三つに割ると先程と同じように振りかぶった。

 

 

『他にも覗き見してる奴等ぁ!』

 

 

そう叫びながらグリードは先程ケイネスに向かって投げた方向とは逆方向に向かって石を投げた。

投げた先でバキャと何かが砕ける音がして、グリードは満足気だ。

 

 

『さっきのライダーじゃねーがよ。コソコソとしてるのは気に入らねーな』 

 

 

ガッハッハッと笑い飛ばすグリードに他のマスターやサーヴァントとは飲まれっぱなしである。

ライダーだけは気が合うのぅと髭を弄りながら呟いていた。

 

 

「セイバー……勝負は預ける。バーサーカー!ケイネス殿に手傷を負わせた責はこの槍を持って償わせるからな!」

 

「ああ、必ず」

 

『おうよ、何時でも掛かって来いよ』

 

 

ランサーはケイネスの救出に向かうべく背を見せた。

セイバーには再戦の約束を取り付けて、バーサーカーには打倒の意気込みを告げるのだった。

 

ランサーが居なくなった後にセイバーも剣を下ろした。

 

 

「今宵はここまでの様だな。場の引き合わせに感謝するぞバーサーカー」

 

『ま、次を楽しもうや』

 

「なんだ? 余には何も無いのか? 寂しいのう」

 

 

セイバーとグリードの会話にライダーが混ざってくる。

 

 

「そもそも、お前は何をしに出てきたのだ? 征服王」

 

「ただ気の向くまま、血の滾るまま、存分に駆け抜けただけよ。お前も同じだろ、ん?」

 

『ククッ……違えねぇな』

 

 

眉を顰めるセイバーにライダーは気の向くままに駆けたと告げ、グリードにも同意を求めた。

グリードもライダー同様に気ままに動いただけに過ぎず笑みを溢しながら同意をした。

 

 

「では、さらばだ!」

 

 

チャリオットを走らせて空を駆けていくライダーをセイバーとアイリスフィール、そしてグリードと雁夜は空を見上げて見送った。

因みにウェイバーは荷台で気絶をしていた。

 

 

『後は俺等か……』

 

「な、なんだ」

 

 

この場にグリード、セイバー、アイリスフィールの三名になるとグリードはセイバーに歩み寄る。

セイバーはグリードに警戒をしつつも戸惑っていた。

 

 

『金髪といい、チビといい、そのアホ毛といい……本当に似てやがるな』

 

「貴様……良い空気で終わりそうな所を蒸し返すか」

 

 

グリードの言葉にセイバーは影を落としながらゴゴゴッと効果音と共に剣を構えた。

 

 

『ガッハッハッ……気にすんな俺の知り合いに似てるっつーだけだ』

 

「頭を撫でるな!」

 

 

そんなセイバーをグリードは笑うとポンポンとセイバーの頭を撫でた。

セイバーはフシャーと怒ると剣を一刀するがグリードは最強の盾を発動させて、真剣白刃取りをする。

 

 

『本当に似てんな……特にその目がよ』

 

「……え」

 

 

グリードの呟きにセイバーは剣に込める力が緩んだ。

グリードの目は今日初めて見るような目をしていたからだ。まるで大切な者を見るかのような。

 

そしてグリードも思い出していた。

自身を仲間と呼び、どんな時でも挫けなかった小さな錬金術師を。

 

 

『じゃあな、アホ毛ちゃんとそのマスターさんよ!』

 

「あ!?待てアホ毛じゃないと言ってるだろ!」

 

 

一瞬の隙を突いて、その場を後にしたグリード。

最後の言葉を聞いた怒りと共にセイバーはグリードの逃げた方角にブンブンと剣を振り回していた。

 

 

そんな光景を見ていたアイリスフィールはセイバーにもこんな可愛い所があるのね、と和やかにセイバーを見ていた。




気がつけばライダーがレイや天津飯みたいな解説キャラになっていました……
次回、、切嗣&舞弥視点。
ソラウさんも出ます。

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