Fate/Zero バーサーカーは強欲   作:残月

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サーヴァント召喚

 

 

 

 

 

間桐家の屋敷の地下に二人の男の姿があった。

 

 

一人は黒いパーカーを着た白髪の男

 

もう一人は和服を着たどこか化け物染みた雰囲気を纏った老人

 

白髪の男は魔法陣らしきものに手をかざしながら呪文のようなものを詠唱していた。

 

 

「ぐっ……がっ……」

 

 

呪文の言葉を詠唱する度に、白髪の男『間桐雁夜』の体に激痛が走った。

 

 

体の至る所から血を流し、端から見ている者の方が気分を害してしまう程に

 

 

しかし雁夜は詠唱をやめなかった。

 

雁夜には果たさねばならない誓いが有った。

 

叶わなければならぬ願いが思いが有った。

 

守らねば成らぬ少女が居た。

 

 

それら全てが雁夜を突き動かし、今にも壊れそうな体を支えていた。

 

 

 

唱えていた呪文が終わり、地下室に描かれた陣から光が増し、地下室を照らす。

 

 

 

召喚に上手くいっていたのか隣に居た老人『間桐臓硯』は皺だらけの顔を歪ませ笑った。

 

 

 

 

 

 

 

光が収まり、描かれた陣の中心には自身が召喚したサーヴァントが居る

 

 

 

 

 

 

筈だった。

 

 

 

 

「い、いない!?」

 

「ふん、上手く行ったかと思えば失敗か。所詮は落ちこぼれかのう雁夜よ」

 

 

サーヴァント召喚に失敗した事に驚愕する雁夜に臓硯は鼻を鳴らし、笑う。

 

その時だった。

 

 

「ぐ、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

雁夜の体に激痛が走った。自身を蝕む、刻印蟲とは違った痛みに雁夜はグリンと右目を白くして気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『起きろ!』

 

「う……あ……なっ!?」

 

 

何者かの声に気を失った筈の雁夜は目を覚ます。

妙に重く感じる体を起こした雁夜は言葉を失った。

 

 

雁夜は先程まで居た筈の蟲蔵ではなく謎の空間に居たからだ。

周りからは怨嗟の声が聞こえると同時に人の顔の様な壁が存在している。

 

常に雁夜の周囲を囲むような状態で旋回している為に雁夜の気は狂いそうになっていた。

 

 

「此処は……コレはいったい何なんだ!?」

 

『此処は俺の中だ……マスターさんよ』

 

 

怨嗟の声が渦巻く中、叫んだ雁夜。

その問いに答える様に誰かの声が頭の中に響き渡る。

 

 

「な……なんなんだ……お前は?」

 

『「なんなんだ」は無いだろう?手前で呼び出したサーヴァントによ』

 

 

雁夜の目の前には黒い人の顔をした化け物の姿が映っていた。

黒い化け物は雁夜の言葉に笑うと不気味な笑みを浮かべていた。

 

 

『俺の名はグリード。『強欲』の名を持つホムンクルスだ。お前の召喚にバーサーカーとして喚ばれたんだよ』

 

「お、お前が俺の召喚した……サーヴァント?」

 

 

グリードの言葉に雁夜は呆然と聞き返した。

 

 

『ああ、そうだ。聖杯戦争とやらに参加するんだろう?』

 

「ま、待て……召喚は失敗したんじゃ!?」

 

『俺は肉体を持たない存在なんでな。お前の中に入らせて貰った』

 

 

雁夜の疑問に答えるグリード。対する雁夜は自身の理解できるキャパシティをオーバーしたのか呆然としている。

 

 

『ククッ……親父殿に殺されて消えたかと思えば面白い状態になったもんだ』

 

「おい、バーサーカー。お前は聖杯に何を求める」

 

 

雁夜は笑うグリードに問い掛けた。

雁夜の願いは遠坂時臣の抹殺と桜を葵の下へ返す事だ。

 

こんな化け物の願いを聞いてみたくなったのだ。

 

 

『俺か?全てが欲しい』

 

「は?」

 

『金も、女も、名誉も、その全てがだ!俺は強欲!全てを奪う!』

 

 

ゲラゲラと笑うグリードに雁夜は何も言えなくなっていた。

 

 

「そ、そんな願い……」

 

『「あり得ない」か?良いことを教えてやるよ「あり得ないなんて事はあり得ない」んだよ』

 

 

グリードの言葉を否定しようとした雁夜だが逆にグリードの言葉に飲まれてしまう。

 

 

『全ての行動には『欲』が生まれる。「願い」「希望」「望み」どんな言葉に置き換えようがそれはソイツの欲から生まれた物だ。マスターさんよ、お前もそうだ』

 

「ち、違う!俺は……」

 

『違わないね。俺はお前の強欲に惹かれて召喚されたんだ。『憎い奴を殺したい』『誰かを救いたい』『運命を変えたい』それはお前にとって『使命』であり『目標』なのかもしれないが、それもお前の叶えたいと言う『欲』からきている感情だ!』

 

 

グリードは捲したてる様に雁夜に迫る。

 

 

『テメェの魂の声を聞きな!なんて言っている!俺には聞こえるぜ!『己の魂を満たせ』ってなぁ!』

 

 

グリードの言葉に雁夜は目を伏せる。

そして再度開かれた時、雁夜の目には闘志が籠もっていた。

 

 

「バーサーカー」

 

『グリードって呼んでくれや。俺は真名がバレた所で問題はねーし、『グリード』の名は俺の魂の友が呼んでくれた名なんで気に入ってんだ』

 

「ならグリード……勝てるんだな?聖杯戦争に?」

 

『当然だ』

 

「俺の体を使うんだな?」

 

『今よりも強くなれるぜ。刻印蟲も必要なくなる』

 

「ならば、くれてやる。この肉体を!そして叶えろ!俺の願いを!」

 

『ククッ……ハァーハッハッハッ!やはり人間ってのは面白れぇ!良いだろう!契約完了だ!』

 

 

グリードは一頻り笑うと雁夜の体と完全に融合を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

臓硯は困惑していた。

 

 

「死におったか?」

 

 

雁夜がサーヴァント召喚に失敗したかと思えば急に苦しみだして倒れた。

そして倒れたままピクリとも動かなくなってしまったのだ。

 

 

「フン、所詮は落ちこぼれ。やはり桜を次回の聖杯戦争にあてるしか……」

 

「させる……か……」

 

 

臓硯の言葉を遮る様に雁夜は起き上がる。

 

 

「フン、生きておったか死に損ないめが」

 

「死ぬのは……貴様だ、爺!」

 

 

雁夜が叫ぶと右手と左手に光が走る。

右手には令呪、左手にはウロボロスの紋章が刻まれていた。

 

 

これが間桐雁夜とグリードの聖杯戦争の始まりだった。




今回も短編小説でしたが実は今回の『Fate/zero バーサーカーは強欲』は新連載候補の一つです。

未だに連載にするか悩んでる状態でしたが先ずは短編小説として書かせて貰いました。
もしかしたら短編から連載に移行するかもしれません。

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