とある魔術の員数外   作:竜華零

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エピローグ:「日向と陰と3人と」

 

 学園都市第七学区、とある病院のとある病室。

 そこでは手術直後にも関わらず一晩中動き回っていたと言う学園都市最強の超能力者(レベル5)一方通行(アクセラレータ)がベッドの上で自分の腕を枕に横になっていた。

 昨夜の無茶は流石に堪えたらしく、眉間にはいつもより多く皺が寄っていた。

 

 

「………………っ」

 

 

 しかしどうも寝付けないらしい、そしてそれは別に能力制限による就寝中の無防備さを警戒してのことではなく、単純な話として寝られるような環境では無いからだった。

 何故、すんなりと寝付けるような状態では無いのかと言うと……。

 

 

「だからっ、ミサカがあの人に毛布をかけてあげるのって、ミサカはミサカは毛布の端を持って子供っぽく駄々をこねてみたり!」

「必要ない、私が彼にかけるから」

「むぅ~、ミサカがかけるのって、ミサカはミサカは繰り返し訴えてみたり!」

「必要ない、私が彼にかけるから」

「エンドレスなの!? ってミサカはミサカは毛布を離さずに驚いてみたり!?」

 

 

 ……すぐ傍で、何やら騒がしいためである。

 いっそのこと能力を使って音を遮断してやろうかと思ったのだが、電極が充電中なのでそれも出来ない。

 結果、一方通行(アクセラレータ)は周囲の雑音を遮断することが出来なかった。

 

 

 雑音だけなら良いのだが、耳元で毛布を誰がかけるだのかけないだの、かけるならむしろ早くしてくれと思う。

 そうでないなら、無しで構わない。

 とにかく静かにしてほしいと、一方通行(アクセラレータ)はこめかみをヒクつかせながら思っていたのだが……。

 

 

「……彼のお世話は私がするから、貴女はお昼寝でもしたら?」

「なっ!? ミサカはミサカは大人のレディだからお昼寝なんて子供なことしないもん! 第一、後から来たくせに大きな顔し過ぎってミサカはミサカは牽制を込めて言ってみる!」

「彼は私の初めての人だから、だから私がお世話をするの」

「な――――っ!? ミサカはミサカはまさかの発言に驚愕を隠せなかったり!?」

 

 

 凄まじく五月蝿い、と言うか何の話をしているんだと目を閉じたまま思う。

 やはり能力で蘇生させた後、病院に担ぎ込んだのは誤りだったかと考えるが、後の祭りだと思うことにする。

 と言うか、一部で凄まじい誤解を招いているような気がする。

 

 

「ふ、ふんだ、ミサカなんて一緒の部屋で寝たこともあるんだからって、ミサカはミサカは強がってみる」

「……出会ったのは私が先」

「でもきっと彼はミサカの方が大事だもんって、ミサカはミサカは根拠の無い自信を主張してみたり!」

「……………………」

「きゃーっ、暴力反対なんだからって、ミサカはミサカはサイコキャラはノーサンキューって悲鳴を上げてみたり――っ!?」

 

 

 ―――――――ブチッ。

 際限なくボルテージの上がってくる騒がしさに、一方通行(アクセラレータ)は己の中で何かが切れるのを聞いた。

 そしてその場に起き上がり、思いの外すぐ傍で騒いでいた2人に若干怯みつつ、しかし怒鳴った。

 

 

「五月蝿ェッ! ごちゃごちゃ騒ぐンだったら外に行きやがれっ、寝れねェだろうが!!」

「あ! 聞いて聞いて、この人がミサカを苛めるんだよって、ミサカはミサカはアナタにチクってみる!」

「知るかあああああああァァァァァッッ!!」

「どわぁ――――っと、ミサカはミサカは隣のベッドに放り投げられた事実に悲鳴を上げてみたり!?」

 

 

 打ち止め(ラストオーダー)の首を掴んで、ベクトル操作抜きで小さな身体を放り投げる。

 もちろんベッドの上に落ちたので、スプリングが跳ねるだけで何とも無い。

 一方通行(アクセラレータ)は両手を振り上げて抗議する打ち止め(ラストオーダー)を舌打ちしつつ無視すると、再び横になろうと自分のベッドに手をついた。

 

 

 そんな彼に、そっと毛布を差し出してくる少女がいる。

 一方通行(アクセラレータ)が顔を上げると、そこにいたのは黒髪黒目の少女だった。

 薄い色合いの患者衣を着て、胸元に白い包帯を幾重にも巻いている。

 

 

「はい……どうぞ」

「…………ちっ」

 

 

 軽く首を傾げて微笑を浮かべる彼女から、やはり舌打ちしつつ、やや雑な動作で毛布を奪い取ったのだった。

 それはたったそれだけのことで、そしてだからこそ尊く、また奇跡であり。

 そして、一連の事件の終わりを意味する光景でもあった。

 

 

 ――――この後、彼ら3人の共同生活はあと何人かの人間を交えて1ヶ月近く続くことになる。

 その後、打ち止め(ラストオーダー)を巡る一連の事件が連続して起こることになるのだが。

 学園都市の、そして世界の闇へと身を沈めていく一方通行(アクセラレータ)の傍には、常に1人の少女が存在していたと言う――――。

 

 

 

「うふふふふ、やっぱり私だけが常に彼の隣にいられる……」

「で、でもでもあの人はミサカの所に帰ってきてくれるもんって、ミサカはミサカは激しく主張してみたり!」

「…………オイ…………」

 

 

 

 学園都市を震撼させた超能力者(レベル5)襲撃事件は、犯人未検挙のまま終息した。

 それがその後の学園都市の歴史にどう影響を及ぼすのか。

 それはまだ、誰にもわからない――――。 

 

 





最後までお読みいただき、ありがとうございます。
竜華零のとあるシリーズは今話で終結というコトになります、魔術サイドがほぼ出なかったのが残念と言えば残念ですね、タグの通りです。

いやぁ、とあるシリーズは難しかったです。
これまでの作品とは毛色が違いましたので、原作を何度も読み直したりとかしました。
何とか最後まで描けて良かったです、お付き合いありがとうございました。

それでは、またどこかでお会いしましょう。

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